大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・048『みんなで万博・3・ソ連館』

2023-08-19 16:51:44 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

048『みんなで万博・3・ソ連館   

 

 

 今朝も始発電車……とはいかなかったけど、7時には船場の町家を出て8時半にはゲート前に並んだ。

 

真知子:「いっそ、ソ連館はパスかなあ」

ロコ:「そうですねえ、マイナーなパビリオンなら待ち時間だけで10個は周れますよぉ」

佳奈子:「うん、ロスタイム長すぎ」

たみ子:「日本館は行ってみたいかなあ」

真知子:「グッチは?」

わたし:「あ……ううん……」

 

 実は、ゆうべスマホで調べてみた。

 わたしのスマホはMS仕様(魔法少女仕様)だから、1970年でも使える。

 正直、どれもこれもショボい。

 話題のソ連館は、ドッキングに成功したソユーズの実物大を見せてくれる。令和の時代ではすでにポンコツになっている国際宇宙ステーションは、ソユーズの数十倍の大きさがある。でもね、その国際宇宙ステーションが展示されてるといって観には行かないと思う。

 本当を言うと、ぼんやりと人を眺めているのがいい。

 直美さんと仕事でやってきて、直美さんはパビリオンなんかそっちのけで人ばかり撮っていた。

 明治や大正生まれのおじさんやおばさんが目をキラキラさせて、待ち時間もお連れさんたちと子どもみたいにお喋りしていて、そういうのを横で見ている方が楽しかった。

 でも「じゃあ、人を見ていよう!」なんて言えないよ。

わたし:「じゃあ、一応ソ連館目指して、待ち時間長いようなら、近場のパビリオンを観るってのでどうかなあ」

真知子:「そうね、やっぱ、初志貫徹。それでいこう!」

佳奈子:「よし、じゃあ、ロコ選手、いっぱい調べといてよ!」

ロコ:「了解!」

 

 それで、いざ開場になってみると、意外にソ連館が空いているというほどじゃないけど、30分も待っていたら入れそうな雰囲気!

 

ロコ:「やっぱり、ソ連館です!」

 ボールペンで指さしたロコの手元にはメモ帳がひらめいている。ビッシリと文字やら図やら計算式やら……ロコって、やっぱすごい子なんだ。いっそ、スマホを貸してやったら……ウソウソ(^_^;)

たみ子:「あ、やっぱり人が戻って来る!」

 他人より首一つ高いたみ子は列の後ろを見て感心。

真知子:「みんな同じなんだぁ」

佳奈子:「そうね、試合も中盤になって、敵も味方も対策は似てくるんだ」

 なるほど、早朝から並んでるのはリピーターが多くて、みんな初回でアメリカ館やソ連館は観ていて、微妙に敬遠してたんだ。で、少し落ち着いたら、意外に空いてる(それでも、30分とか1時間待ちとかなんだけどね)ってんで、戻って来るんだ。

 

 ソ連館は、なんか赤旗押し立てて行進してますってイメージ。正面のトップには共産主義共通のシンボル、鎌とトンカチ。まだまだ元気なころのソ連。

 

「「「「おお!」」」」

 昨日と同じリアクション。

 確かにソユーズの実物は迫力。ドッキングしてるのはレプリカだけど、実物大だからね。

 ソユーズの横にはガガーリン少佐の写真。最初に人工衛星に乗って「地球は青かった」とか言った人。

真知子:「いい男ね、ガガーリンて」

 真知子が感心して、みんなで見上げる。

わたし:「チャーミング……」

 ガガーリンの笑顔はアメリカ的だ。屈託のない100%の笑顔。ソ連人には珍しいタイプ。

ロコ:「まあ、ヒーローだし、ソ連の広告塔ですからねえ」

真知子:「死んじゃったしね」

わたし:「え、死んじゃったの!?」

みんな:「「「「は?」」」」

 声が大きかったので、他の人たちも何人か見てるし、ちょっと恥ずかしい。

ロコ:「グッチ、知らなかったんですか!?」

佳奈子:「飛行機事故で死んだんだよ」

たみ子:「うん、二年前。ケネディー暗殺ぐらいにショックだった」

真知子:「グッチ……」

わたし:「え、ああ……ど……(;゚Д゚)」

 ど忘れ……と言おうとして動揺した。

 ガガーリンなんて歴史上の人物、それも教科書の欄外の参考程度。令和のJKとしては名前知ってるだけでも上出来。死んだ年までは知らないし。

 ヤバイ、展開によっては未来人だってバレてしまうかも。

 ど忘れの『ど』は、どうしようの『ど』になってきて、涙が滲んできた。

ロコ:「グッチ……」

 と、わたしの横に人の気配。

「オジョウサン、ガガーリンを好いてくださってたんですね」

 赤いユニホーム、ソ連館のコンパニオンのロシア美人が立っていた。

「え、あ、あの……」

「わたし、ユリアといいます。ガガーリンと同じスモレンスクの人です、わたし。日本、情報多い。知らないこともあります。でも、いま知って悲しんでくれました。うれしいです。記念に、これもらってください」

 ガガーリンバッチをもらった。

「仕事あるので、これでね。ほんとにありがとうオジョウサン」

 ハ、ハグされた(#^_^#)。

ロコ:「これ、売店で売ってるやつじゃないですよ!」

真知子:「特別製!?」

たみ子:「うわあ、いいなあ」

佳奈子:「ガガーリンを愛していたのねぇ」

わたし:「ユリアさん?」

ロコ:「グッチのことですよ!」

わたし:「え、あ、それは……」

 なんだか周囲の人も感動してるっぽいし、そそくさと……いきたかったんだけど、みんなに付き合ってじっくり見て、ソ連館を出ようとしたら、ちょうどユリアさんがお見送り係り。親しみのこもった笑顔を返されて、顔が真っ赤になってしまった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。

  


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