巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
お祖母ちゃんは時々お香をたく。
お香は、線香とかもぐさみたいに焚くものから、アロマっていうんだろうか、香水っていうか油っていうかみたいな時もある。
それが、今朝はお線香だよ。
「いい男が二人も逝っちゃったんでねぇ……」
そう言って、ソファーに浅く座ってお線香の煙を見ている。
「え、だれが亡くなったの?」
お祖母ちゃんの視線を追うと、線香の煙が『アランドロン』と『高石ともや』という名前を描いた。
「えと……だれ?」
「ええ、知らないのぉ……」
「あいにく……」
そう言うと、お祖母ちゃんはめんどくさそうに指を動かす。
すると、ラックから朝刊が浮き上がり、テーブルの上でパサリと三面を開いた。
たしかに、アランドロンという人と高石ともやという人の訃報が大きく載っている。
「ええと……映画俳優とシンガーソングライター?」
ハーー
ため息をつくと、もう一度指を動かすお祖母ちゃん。
すると、映画の一コマなんだろうか、すごいヤサオトコが胸の大きなオネエサンと恋人の距離で見つめ合ってる映像が出てくる。背景は海で、ちょっとやるせないギターの曲が流れてる。
太陽がおっぱい……いや、太陽がいっぱいか(^_^;)。
もう一度切り替わると、高石ともやっていう人の若いころの映像が出て、陽気な歌を唄ってる。
おーいでみなさん聞いとくれぇ♫ ボークは悲しい受験生ぇ……(^^♪
「ああ……」
そういえば、クリスマスイブの集いとかで歌ってた曲っぽい。
深入りするとお互いギャップにため息つきそうなので戻り橋を渡って写真館に行く。
ボスの直美さんが晩夏をテーマに写真を撮りたいというのだ。
いつもは家業の記念写真のために結婚式場とかだったりするんだけど、直美さんはプロの写真家でもあるんだ。
それで、気心の知れた助手を連れて秋に応募する写真を撮りまくりたい。
それを企画を練る段階からわたしを参加させ、テンションを上げたいという目論見。
まあ、もう半分は、こんなわたしでも慰労してやろうという気持ちでもあるんだと思う。
あ……ああ(-_-;)ゞ
橋を渡った1971年は、令和と変わらない暑さ。
でも、やってきた電車はめったに出くわさない冷房車。冷房の設定温度は令和より5度くらいは低くてラッキーだった。
☆彡 主な登場人物
- 時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
- 時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
- 滝川 志忠屋のマスター
- ペコさん 志忠屋のバイト
- 猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
- 宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
- 辻本 たみ子 2年3組 副委員長
- 高峰 秀夫 2年3組 委員長
- 吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
- 横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
- 加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
- 安倍晴天 陰陽師、安倍晴明の50代目
- 藤田 勲 2年学年主任
- 先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
- 須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
- 御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
- 早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
- 時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
- 妖・魔物 アキラ
- その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
- 灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人