せやさかい・254
記者会見見た?
スカイプが繋がると、お祖母ちゃんの第一声。
「う、うん。ちょっとひどかった」
『ヨリコも、そう思うわよね……』
そこまで言うと、お祖母ちゃんの目線は上を向いた。
他の人が見たら、誰かがモニターの向こうから声を掛けたと思うだろうね……これは、お祖母ちゃんが身内にだけ見せるクセ。
考えをまとめているんだ。
たとえ身内でも「それを言っちゃあおしまいよ」って言葉がある。
そうならないように、いったん咀嚼する。でも、この姿勢って、見る人によっては傲岸に見えたりするから身内以外には見せない。
すごいよ、女王という立場は、そういう身に付いたクセさえコントロールしてしまうんだ。
「応援してくださった全てのみなさんに感謝しますって……間違ってるんだよね、お祖母ちゃん?」
『そうよ、多くの国民が、心配するからこそネットで発言したり、デモをかけたりするのよ……それを『誤った情報による誹謗中傷』と言ったり、無視したり……』
「わたしも未熟だけど、あれは無いと思ったよ」
『うんうん、他に感じたことは?』
「Kのお母さんのこととか、Kが海外に拠点を持つこととか、ぜんぶ自分がかかわったって……」
『そう、あれは、憲法に抵触する。ヤマセンブルグでも、けして許されないことよ』
「うん……似たような立場だから、ショックだった」
『これが、うちやイギリスだったら王制廃止の論議を巻き起こしてしまう』
「うん、ヨリコもそう思うよ。お祖母ちゃん」
『他には?』
「……ジョン・スミスやソフィーを大切にしなくちゃと思った」
『大切にするって、どういう意味かしら?』
「あの二人なら『刺し違えてもお諫めします!』って言いそうだもん」
『そうよ、今度の事で、いちばんショックだったのは、あの方の側近がまるで機能していないことよ……むかしの皇室の側近なら、切腹してでも諫めてるわ。頼子、他山の石よ、これは』
お祖母ちゃんは難しい日本語を知っているよ(^_^;)。
「分かってる、けして他人事だとは思うなってことよね」
『そうよ、今度の事ではイザベラが、ひどく心配してね日本に行くってきかなかったのよ』
「え、サッチャー……いや、ミス・イザベラ……」
『大丈夫よ、そうやって年寄りが出ていっては若い者が育たないって、思いとどまらせたから』
「そ、そうだよ、コ口ナだってまだまだなんだし(^_^;)」
『12月1日の『ヤマセンブルグ練習艦遭難100周年慰霊式典』のことは大丈夫ね?』
心配してるんだ、きちんと日付と正式名称まで言って確認してきたよ。
「大丈夫、ちゃんと制服も試着したし」
『あ、その写真は、まだ見てないわよ』
「あ、えと、このあと送るから、アハハ……」
『よろしくね、イザベラが心配しないように』
「う、うん、それからね……」
慌てて話題を変えた(^_^;)
その後、お祖母ちゃんはジョン・スミスとソフィアにも電話していた。
「ごめんね、わたしとスカイプしていたら、ソフィアたちにも言っておかなくっちゃって思っちゃったんだよね、お祖母ちゃん」
すると、ソフィアがポーカーフェイスで、こう言った。
「いえ、陛下がお電話くださったんで、サッチャーさんは電話してこないことになりましたから」
あ、そうか。女王が電話して、さらにダメ押しの電話って、ちょっと不敬になるもんね。
わが王室は、連携がとれている。
寝ようと思っていたら、さくらからメール。
さくらも留美ちゃんも、そろって聖真理愛学院を受験することに決めたって!