わたしの徒然草・2
さて、第二回目。いよいよ本題。
高校生なみ……以下の知識しか持ちあわせていないわたしは、とりあえず『徒然草』について書かれた本にあたってみるしかない。と思いさだめ、図書館から『徒然草』について書かれた本を借りてくることから始めました。
結論は「こら、あかんわ……」であります。
図書館にある六十冊の中の数冊を見ただけですが、ありていに言えば、うまい料理を味わうのではなく。料理の材料の産地や、脂肪がどうの、タンパク質、ビタミンがどうのと成分分析をしているようなものばかり。高校生用の『国語便覧』にいたっては、いかにも「これ暗記しとけ!」というような記号化された情報だけ。「成立、千三百三十年から~千三百三十一年。学問、芸術、男性論、女性論、飲酒論、説話的なもの、有職故実。中心的思想をなすものは仏教的無常観……」 大人むけの本でも「ひぐらし」が正しいのか「ひくらし」がいいのか、まことに人体解剖図。人を理解するために、その人柄を知るのではなく。エイヤ! とぶち殺して解剖しているような感じです。
これはもう原文と適切な現代語訳を読んで、自分の感覚で「なるほど、そうでっか……」と、自分のアンテナにとらえられたものを「兼好さんは、そない思わはりますか。わたしはね……」と、それこそつれづれなるままに、書いていくしかないと思いました(^_^;)。
最初にアンテナにひかかったことば、百五十一段「五十歳をすぎたら」であったので、厳密には二番目であるが。「やるぞ!」と、思い定めてからはこれが第一号なので、最初としておきます。
最初のことば、それは「あやしうこそものぐるほしけれ」です。口語訳はさまざまですが「ふしぎに、物狂おしくなる」が、標準的。「物狂おしい」が、ちょいムズイ「気ぃにかかってしゃあないで!」といったところでしょうか。この「気ぃにかかってしゃあない」が、さらにむずかしい。自分の信条や意見にあわないことが「気ぃにかかってしゃあない」ということで手を打ちます。
ふだん、「これが自分の意見だ」と、思っていることは人の受け売りであることが多いものです。
教師時代、多くの先生にとって、「日の丸、君が代」に反対することや、「三十人学級の実現」が疑いようのない「自分の意見」でありました。
わたしは「気ぃにかかってしゃあない」でした。 わたしは、幸か不幸か、高校からずっと劣等生でした。高校は四年、大学は五年、就職するのに、さらに三年かかってしまいました(-_-;)。ろくに授業など聞いていなません。だから、わたしの知識や感覚は学校で学んだものではありません。
学校で習って身に付いたものは中学までの読み書きと計算力だけです。
それ以外はバイトや、つれづれなるままに読み散らした本などから自得したものばかりです。わたしが小学校のころ、昭和四十年ぐらいまでは、正月の旗日には多くの家で日の丸が掲げられていた。卒業式に「仰げば尊し」「蛍の光」は定番でありました。多くの先生たちが、それらを侵略戦争の象徴であると、思いこんでおられて。また、いまも思いこんでおられます。その思いこみが正しければ、戦後すぐに日本人の多くがそれらを拒絶したはずなのではないでしょうか。
昭和四十年ごろは、戦後の教育をうけた人たちが、社会の中核になりはじめたころです。
侵略戦争の象徴ならほかにいっぱいあります。所得税の源泉徴収をはじめとする税制。大規模な私鉄や電力会社など戦時中に統合されたもので、戦時中の国策がそのまま残っているものです。また横左書きの文章は、今やだれも不思議には思いませんが、戦時中の一時期までは左右混交。多くは右書でした。昔の写真や資料をみれば歴然としています。左書になったのは、旧南洋庁が出した通達によるものであります。南方の植民地の人たちが旧宗主国の欧米の文章に慣れているため、左右混交の表記では混乱するためであり、昭和二十七年の内閣通達がこれを追認したかたちになったものなのです。ことほどさように、その気になって探せば、戦時中の国策の結果現状にいたっているものが多く残っています。その中で「日の丸」をはじめとする特定のモノに対する反対が、教育現場で多数になってきたのは、わたしの記憶がまちがっていなければ、昭和四十年ごろだと思うのですが、どうでしょう。
『三十人学級』もそうです。わたしが現職であったころ、わたしの勤務校は入学者が二百四十名。卒業する生徒は毎年百人をきっておりました。二三年生は三十人学級はおろか、二十人学級が実現していました。問題はもっとほかにある……が、ヤボな話になりかけてきたのでこれくらいにしておきます(^_^;)。「物狂おしい」とは、かくもやっかいなものであるようですね。
通り雨がすぎたあとの、街の香りがほのかに夏を感じさせるようになってきました。次回は夏にかかわる「よしなしごと」を書ければと思う。
〈注〉原文は夏に書いたもので季節感があわなくてすみません(n*´ω`*n)