宇宙戦艦三笠
みかさんが消えると、オレたちは普段の服装に戻っていた。
オレはジーパンに生成りのシャツ。樟葉はチュニックの下に厚手のタイツ。天音はチノパンにチェックのシャツ。トシは引きこもり定番のジャージ。
「フワ~、とりあえず寝ようか」
いつもの生活時間では、もう寝る時間なので他の3人も異議が無かった。
艦内の様子は頭に入っていた。さっきあれだけのチュートリアルをやったので、艦内のことが頭に入っているのはなんの不思議も感じなかった。
どうやら、オレが艦長らしいのはチュートリアルで分かっていたので迷うことなく艦長室に。他の三人も船の幹部なので、それぞれの部屋に向かっていった。艦長室のクローゼットには、日ごろ俺が着る服がかかっていて、迷うことなくパジャマに着替えるとベッドに潜り込む。が、なかなか寝付けない。ようやくウトウトしかけたころに、みかさんの声がした。
「レム睡眠を利用して説明の続きをさせてもらうわね」
「え、睡眠中に?」
「うん、ただ眠っていてもロクな夢みないから。それに、睡眠中の方が冷静に理解ができる……見て、これが今の地球」
「……きれいだ」
「そして、これが100年後の地球」
「え……」
それは、表面がほとんど真っ白になった雪の玉のようだった。これじゃ、どんな生物も生きてはいけないだろう。
「あれはUFO……?」
「そうよ。UFOに合わせて画面を切り替えるわね……」
スライドショーになった。100以上のUFOが入れ替わり立ち代り映し出された。
「タイプは様々だけど、グリンヘルドとシュトルハーヘンの探査船」
「マゼラン星雲の?」
どうやら、宇宙の事もインストールされているっぽい。
「そう、地球が氷河で覆われ尽くしたら、移民するつもりで監視してるの」
「氷河の地球に?」
「彼らには部分的に氷河を溶かす技術があるの。氷河の1/4も溶かせば、十分に20億人ぐらいは住めるわ」
「で、オレたちが目指すのは……?」
「ピレウス。マゼラン星雲の良心……ここで氷河防止装置を受け取るの……あなたたち4人の力で」
「それって……どこかで聞いたような……」
そこで、オレはノンレム睡眠に落ちていった……。
習慣と言うのは恐ろしいもので、朝、目が覚めると制服に着替えてしまう。で、朝食の7時になるとトシを除く3人が士官食堂に集まった。インストールされた情報によるものか、美味そうな朝飯の匂いに釣られたのかは分からない。
「ハハ、やだ、みんな制服着てる!」
天音がケタケタ笑い、オレと樟葉はなんだか照れた。
「トシは?」
「あいつは、まだ寝てんだろ」
「ああ、引きこもりだものね」
そして、朝飯を食べながら夕べ見た夢の話をした。三人とも同じ夢を見たようだ。話がたけなわになった時に、そっとドアが開いた。
なんと、トシが制服を着てドアから半身を覗かせている。
「あ……入っていっすか?」
「ああ、入れよ。トシにしちゃ上出来の早起きじゃんか」
「ま、座れ」
「トシ君も、夢見たんでしょ?」
「はい、おそらく同じ夢……って、みかさんが言ってました」
「やっぱり、ピレウスに氷河防止装置をとりにいくとこまで?」
「ボク眠りが浅いんで、続きがあるんです……ちょっと怖い続きが」
「怖い続き……」
三人の視線がトシに集中した……。
☆ 主な登場人物
修一 横須賀国際高校二年 艦長
樟葉 横須賀国際高校二年 航海長
天音 横須賀国際高校二年 砲術長
トシ 横須賀国際高校一年 機関長
みかさん(神さま) 戦艦三笠の船霊