大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!45『シーシュポスの岩みてえだ!』

2024-10-29 08:59:44 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
45『シーシュポスの岩みてえだ!』 




「このままじゃ、終わらないよ……」


 言葉の意味は、すぐに分かっぜ。

 あたりに、ウヨウヨとサメが集まってカジキマグロを狙い始めやがった!


 サンチャゴは、モリを構えて立ち上がった。


 波に揺れるボートの上で仁王立ちになり、獲物を狙うサメたちを寄せ付けまいと必死の形相だ。
 普通の人間なら、あの揺れるボートに立っていることすらできねえだろう。それをサンチャゴはサーファー顔負けのバランス感覚で立ってやがる。

 立っているだけじゃねえ、カジキマグロに寄ってくるサメのやつらを追い払ってやがる! 

 ガシ! ガシ! ドガ!

 最初の三匹は、急所の鼻面を一撃にして仕留めたけど多勢に無勢。一騒ぎ終わったころには、カジキマグロは半分近く食いちぎられていたぜ。

「こういうことなんだな……」

 マユは、小悪魔らしからぬ気弱さで呟いちまった。

「まだまだ、これからよ(-_-#)」

 ミファは怒りと闘志のみなぎった声で言うと、船縁をギュッとつかんだ。

「これが夢でなきゃ、魔法で助けてやれるんだけどな……」

「これは夢だけど、サンチャゴじいちゃんが言っていた最後の漁よ」

「……じゃ、これはドキュメンタリーなのか」

「うん。なにもかもサンチャゴじいちゃんの話のとおりだもん……ほら」

 また、サメの一群が来やがった。

 ガブガブ! ガシ! ガシ! ドガ! ガブ! ガシ! ガブガブ!

 カジキマグロは半分以上食われちまったぜ!

「まだまだサメは襲ってくるよ」

 ミファの予想どおり、サメはもう二回やってきて、とうとうカジキマグロを骨だけにしてしちまいやがった。

 しかし、サンチャゴは最後までサメと戦ったぞ。

 カジキマグロが骨だけになっちまって、サメも寄ってこなくなると、サンチャゴは、くたびれ果てて船縁に頬を乗せるようにしてくずおれちまった。

 え……?

 船べりに顎を載せながらも、サンチャゴは海の様子を窺ってやがる……また獲物の気配がして……え、これってループするんじゃね?

 あ、また竿を持ちやがった!


 シーシュポスの岩を思い出したぜ。


 二度まで神を欺いたシーシュポスは神に「そこの岩を山の上まで持ち上げろ」って言われるんだけど、山の上まで持ち上げた岩は、あくる日には音もなく麓まで降りてきてやがる。シーシュポスはまた岩を持ち上げて、また降りてきてを無限に繰り返すって、鬼みてえな罰だ。

 鬼は、こんなことはやらせねえ「鬼差別だ!」って怒ってやがったくれえだ。

 シーシュポスは心が折れて、死んだ魚みてえな目になって、今でも岩を運んでやがるけど、 サンチャゴジジイ、ここで無限に獲物を獲ってはサメに食われるやがるんだ!

 魔法は使えねえけど、見ることはできるぞ。小悪魔の目であたりを探ってみる……。

「あ、水平線に抜け道があるみてえだぞ!」

 ゲームの中のヒントみてえにピカピカしてるのが見えたぞ。きっと、別ルートにちげえねえ!

「あ、あそこはダメ」

「なんでダメなんだ?」

「あっちは、よその国の漁場なんだよ。うちの島はね、むかし大きな戦争に巻き込まれたの……で、負けちゃったから、漁場をひどく制限されて……頭の回る大人たちは、よその島に行って雇われ漁師をやっている。うちの島の漁師は優秀だから、どこでも重宝がられてる。あとは、ちょこっとした観光やら、葉たばこ作ったり……だから、島は、年寄りと女子どもだけになってしまったんだ」

「サンチャゴは、そういうのは出来ねえたちなんだなぁ……でも、もう一つの方は?」

「あっちは……(-_-;)」

「あっちは?」

 俯いてしまいやがる。

「ミファまでタソガレてどうすんだよ……」

「…………」

 言っても仕方がねえ感じなんで、ひとことグチっただけにする。

「それでも、サンチャゴじいちゃんは漁に出た。こうやってリアルに見ちゃうと、こっちまで折れちゃう……」

「でもよ、なんで、サンチャゴを眠らせつづけておくんだ? こんな夢を見続けるのはシーシュポス以上の拷問だぜ」

「そうだよね……」

 なんでだよ!? 

 ノドチンコのとこまで出てきたけど、マユはもう一回吞み込んだぜ。

 見てっかぁ、デーモン先生。マユも辛抱強くなっただろうが。

 ここは、もう出口がねえ。もう戻るぞ( ' ^ ' #) 。


 キリキリキリ

 カチューシャが閉まってきやがる!


 わ、分かった、もうちょっとだけ居てやっから(>皿<)!

 コツン

 そのときボートの舳先が、なにかに当たった。

「ん、なんだろう……?」

 なにかの先には、まだ海が続いているけど、ゲームのエリア限界にきたように前に進めなくなっちまった。

 しかし、サンチャゴのボートは二人のボートを残して、その先に進んでいく。

 ジャジャーーン!

 すると、目の前に大きなアラームが映し出された。


 この先Z指定! CEROレーティング(コンピュータエンターテインメントレーティング機構)


「なに、これ……?」

 ミファが首をひねった。

「だれだか知らねえけど、この夢に介入してるみてえだな」

「Z指定だったら、あたしたち入れないよ」

「フフ、こんなもの……」

 マユが、指を一振りすると、アラームは簡単に消えてしまった。

「え……どうやったの?」

 ミファは、マユに聞こうとしたが、マユの姿は見えねえ。

「マユ、どこに行ったの……海に落ちた?」

 ミファは船縁から海を見た。すると……。


 海面に映っていたのは、ミファでもマユでもない三十過ぎの女だったぜ。


 なかなかの美人みてえだ。

 ミファは驚いて、後ろを見て、もう一度海面を見た。その美人は紛れもなく、ミファ。

「……これって、あたし?」

――でもあるし、マユでもある――

 自分の頭の中で、マユの声がした。

「マユ!?」

――なんだか無意識にやっちまったぁ。マユとミファを足したみてえだな。すると、こういう三十過ぎのイケたおねえさんになる。三十過ぎだからZ指定は関係なしだ……ちょ、ちょっと、どこ触ってやがんだ(''◇'')!?――

「あたしって、こんなに胸大きくなるんだ!」

――ま、二人分足した姿だからな。どっちの要素で、こうなったか分からねえ。ま、体はミファが動かせ。考える方は、マユがやるから――

「で、とりあえず、どうしたらいいの。もうサンチャゴじいちゃんのボート見えないよ」

――足もとにコントローラーがあるだろ――

「あ、これ……ワイヤレスじゃないの?」

――首からぶら下げんだ。この夢に介入したやつは、ゲーム仕様にしたみたいだから。△ボタンを押してみ――

「あ……!」

 水平線に▼マークが現れた。

――その方角にサンチャゴがいる。R2ボタンがアクセル。L3のグリグリが舵だから、がんばれ。ボートが見えたらロックオンの※が出るから、R3で合わせて、押し込む。すると自動追尾になるからな――

「よっしゃー!」

 気安く引き受けたミファだったけど、ロックオンまで二時間もかかるとは思わなかった。R2ボタンを押している人差し指がケイレンをおこしかていたぜ(^_^;)。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • 狼男
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 魔法少女なんかじゃねえぞ ... | トップ | 勇者乙の天路歴程 030『... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

不思議の国のアリス」カテゴリの最新記事