1月18日
12日間に及ぶイタリア最後の夜。
私は号泣した。
この旅何回目だろう。
でも今回は少しこれまでと違っていた。
実は、行ってから早々におなかをこわし、
けれどたいしたことなかったので
そのまま食べ続けていたら
旅の半ばには疲れも出てきて
さらにひどくなってしまい
なんとか移動は出来たものの後半には
なんにも受けつけなくなってしまった。
こんなこともあろうかと持参した
パックライスでお茶漬けやお粥を食べたが、
ピッツァ→パスタ→ピッツァ→パスタの日々は胃腸にこたえた。
パレルモではほぼ眠り、夕方暗くなる少し前から
活動を始め寝込んだりすることは
なかったが、もう食べたくない。
あったかいスープが飲みたい。
お味噌汁をカップに注いで
ホッと心を落ち着けた。
ジョニーがミシュランの2つ星のお店で
ランチを予約したから行こうと
誘ってくれたがそれも断り
最終日のミラノでは、朝はシチリア島の
洋梨ジュースだけ。
ランチにピッツァを食べに行くというのも
断り部屋でバナナとみかんを一個ずつ
食べて横になって過ごした。
ディナーは最後の夜だから、
またミシュランのお店を予約したから行こう!と
ジョニーが誘ってくれた。
さすがにもう断りたくない。
でも悲しいほどに空腹を感じない。
本当はホテルの並びにある
このコリアンレストランのスープと
麺が食べたい…それならきっと喉を通る。
旅先ではやっぱりアジアのごはんが
恋しくなってしまう。
ミシュランだったら、きっとゴージャスな
フルコースなんだろうなぁ。でもワタシ、
もうピザとパスタは食べられない…
席に座っているだけでもいいか。
気持ちを奮い立たせてタクシーで
予約したというお店に向かう。
そして「AARTO」と書かれたいかにも
イタリアンな店名の中に入る。
すると、
中に通されると檜造りの白木のカウンター。
日本人らしき料理人。
表看板のレストランの中にもう一つ
別のお店があったのだ。
状況を把握するまで数秒、
はっと息をのんだ。
最後の夜は、なんにも食べられなくなった
私を気遣ってジョニーは
日本食を用意してくれたのだった。
急に食欲が湧いてきたと同時に、
その優しさに人目をはばからず泣いてしまう私。
まさにサプライズだった。
お店の名前は「IYO Omakase 」
NYでも流行りの“おまかせ”レストラン。
カウンターの中に立つシェフはたぶん
日本人だと思うけれど、ニューヨークでも
よくチャイニーズシェフのこともあるから
確認するまではうかつに
日本語では話しかけられない。
でも担当の女性がイタリア語で
コースの始まりに挨拶と説明を始めた時に
「スズキサン」と言ったのを聞き逃さなかった。
どうやらシェフは鈴木さん、というらしい。
「鈴木…さん、あの…」と
おそるおそる声をかけ「私、清水です。
今日はよろしくお願いします」と
言ったあとに旅の経緯と状況を話した。
そうでしたか。サプライズですか。
今日は心を込めて作りますね、と言ってくれた。
イタリアのミラノで食べる日本のごはん。
さすがミシュラン、一品一品がとても丁寧で、上品。
優しい味が心と体に沁み入っていく。
どれも一流に美味しい。
カウンター越しに見る手さばきも見事なまでに美しい。
聞くと、東京生まれの東京育ち。
小さい頃から日本食の料理人になることを
夢見ていたという。
東京では仕事をしたくなくて
学校を卒業すると山梨に移り
日本料理店で働いているところを
イタリア行きの声がかかりすぐに
こちらに来たのだそうだ。
25、6才の時だったという。
料理人としてはまだ経験が
十分ではなかったために
それからというもの
「お客様に育ててもらいました」という。
あの時、親方はこんなふうにしていたな、
と思い出しながらお客さんたちの言葉や
会話の中からヒントを得て
自分なりのスタイルを創ってきたそうだ。
日本だったら手軽に手に入る食材も
こちらではそんなわけにいかない。
いかに現地のもので工夫して作り上げていくか。
簡単ではなかったけれど
それでも楽しかったですね、と
はにかんだ笑顔で答えてくれる。
7時からスタートする会とその後に
もう一回の1日2回転するのだそうで
2回目の9時過ぎからの会はすでに予約で満席。
おまかせコースの形はここ数年、
ミラノで人気になってきたという。
NYも同じだ。
Leo もジョニーも今まで食べた中で
一番美味しいよ、と大感激。
なんだかボクも
(おいしくて)泣きたくなってきたよ…と
真顔でつぶやくLeo。
デザートのあとにお抹茶をたてて
イタリア風干菓子の後にもう一つ。
お酒や焼酎、手作り柚子酒や梅酒が並び、
好きなおちょこを選び
好きなお酒を注いでくれる。
そんなサービスというか
パフォーマンスにもお客さんは大喜びだ。
日本を遠く離れて活躍する日本人。
イタリア語で堂々と説明し、
質問にもしっかりと答えているその姿を
心から誇らしく思いながら数日ぶりに
たくさん食べることができた。
これで無事に明日帰ることができます。
ありがとうございました、と
何度もお礼を告げた。
そして、優しい心遣いをしてくれたジョニー。
ありがとう🥲❤️
Bari のファミリーたちからも、
そしてニューヨークの家族たちからも
たくさんの愛をもらった今回の家族旅。
国とか人種とか言葉も、血のつながりさえも
そんなのぜんぜん関係ないんだ。
ただ「家族」だって思えばもう家族になれる。
私にとって忘れがたい旅となった。
↑〈壮麗という言葉がピッタリのガレリアの入り口〉
↑〈1867年に完成したという美しい
十字型巨大ショッピングアーケード
「ガレリア・ヴィットリオ・エマヌエーレ2世」
ディズニーランドのワールドバザールのモデルになった場所なのだそう。〉
↑〈ガレリアにある「幸せを呼ぶ牡牛」にかかとを乗せて回ると幸せになれるのだとか。〉
そして、無事に小雪舞うニューヨークへ到着。
たくさんの思い出を胸にひと息ついているところ。
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