売上が急減した中小企業などを支援する「持続化給付金」事業を769億円で受託した「サービスデザイン推進協議会」(サービス協議会)が電通に746億円で再委託した一件が、国会で激しく議論された。
経産省のHPを開くと、この給付金の対象は中小法人・個人事業者で、ひと月の売り上げが前年同比で50%以上減少した場合、中小法人は200万円、個人事業者は100万円を限度として給付金が支給される、とある。
問題点は、冒頭に述べたように、「サービス協議会」が受託したあと、電通に丸投げされたが、「サービス協議会」の中抜き額が20億円であること。15~16億円は銀行の振込手数料だというが、それでも「サービス協議会」に4~5億円落ちることになる。野党はこの点を突いて紛糾したが、20億円の正当性は全部終了してから、収支を公開させればいいことだからここでは論じない。
爺が不審に思うことは、電通に丸投げするなら、なぜ「サービス協議会」が必要だったのか、である。「週刊文春」6月11日号によれば、かりに電通から事業者に振り込まれると、「政府からの給付金がなぜ民間の電通から振り込まれるのか」という批判が生まれるからだ、と説明されている。しかし、それなら政府の「持続化給付金」口座を電通が管理して、政府名義で振り込めばいいことではないだろうか。
さて、この事業の取り扱い業者の選定にあたり、公開入札が行われ、この「サービス協議会」とデロイト・トーマツ(監査、税務分野では一流のグローバル企業)が応札し、前者に決まったという(TVのニュースショウ)。ところが、業者評価で「サービス協議会」はCクラス、後者はAクラスだったが、総合的観点から前者に決まったという(経産大臣)。最初から「サービス協議会」に発注することが決まっていた出来レースだったとしか思えない。つまり、デロイト・トーマツは当て馬だった!
そもそも、「サービス協議会」が設立されたのは2016年で、それ以降、政府の補助金事業に数回携わった実績があるが、設立当初から経産省が絡んでいたらしい。Wikipedia によれば、「サービス協議会」は電通が主体の組織と記述されている。代表理事の笠原栄一氏はマーケティング分野では定評がある学者だが、“私は「サービス協議会」のお飾りに過ぎません” と公言している(TVのニュースショウ)。
要するに、「持続化給付金」事業に限らず、政府の補助金事業は、すべて実質的には電通が受託することが決まっているのだ。法的には問題ないが、経産省と電通の間に癒着が生まれないか? どうもすっきりしない事案である。
ところで、「サービス協議会」の“怪”は、今回の「週刊文春」のスクープ記事で初めて明るみにでた。「週刊文春」以外のマスコミ(特に政府批判が得意な新聞)や野党は、2016年から今まで気づかなったのだろうか。奮起を望む。
ところで、コロナ対応のもう一つの目玉政策であるGo Toキャンペーンが仕切り直しになった。これから細目を決め、消費者にクーポン券を配るまでに、最低2カ月はかかるだろうから、それまで事業者が耐えられるかが問題だ。このキャンペーンは国民の自粛ムードを一掃する効果が期待でき、観光業界のみならず、食材の生産者含め、各分野が待望しているプロジェクトである。政府当局がスピード感をもって対応することを期待する。
【お知らせ】次回の投稿は6月15日の予定で、テーマは「朝鮮半島に残された日本の資産」です。