爺が30余年の米国在住にピリオドを打って日本に永久帰国したとき、とりあえず都内にマンションを借りて、終の棲家を探し始めた。希望する条件は、気候温暖で景色がいいことと、東京に2時間以内で行けること。その結果、湯河原の海岸に近い場所にあるマンションを選んだ。
自宅から歩いて5分の海浜公園は、左に真鶴半島、右手に伊豆半島、正面には大島を望み、三方が山に囲まれている眺望は抜群。温泉場で名が通った土地だけに、温泉宿が何軒もある。スーパーマーケットは3軒あり、小粋なビストロもある。われながらいい場所を選んだと満足している。
湯河原に限らず一般論として、地方は車の交通量が少ないので運転がしやすいとか、不動産価格が安いということもあり、退職者にとって地方移住は大きなメリットがある。しかし、移住は長年培ってきた地縁を放棄することであり、普通の人には心理的抵抗感が大きい。つまり、地方移住はそう簡単ではないということだ。
地方移住を促すいい案はないものかと考えていた時、「地域政党ゆがわら」のHPを見つけた。https://www.facebook.com/seito.yugawara/
「地域政党ゆがわら」は、新人の女性町会議員が唱導するグループであり、“子育てにやさしい街”を謳い文句にしている。その趣旨は地方移住を促すコンセプトとして面白いが、親が湯河原に住んで収入が得られることが大前提である。はて、この難題をどう解決するか。
そこに浮上したのがテレワーク。業種にもよるが、コロナ騒動で自宅勤務が脚光を浴びているようだ。ネット販売なら事務所は東京や横浜でなくてもいい。英会話教室や料理教室も、ネットで用が足りる。知恵を働かせれば、いろいろな業種でテレワークが可能だと思う。
さて、コロナ騒動が終わったあと、ライフスタイルはどう変わるか。テレワークの普及にとどまらず、ネット上で相手と双方向にコミュニケートすることが日常茶飯事になるだろう。そうなると、距離は交流の阻害要因ではなくなる。
コロナを契機として、IT技術の有効活用が進展し、地方移住の阻害要因である地縁の重要性が薄れるだろう。そうした価値観の変化により、地方移住が今よりも盛んになり、首都圏の一極集中が緩和される結果をもたらすのではないだろうか。