あるきメデス

あちこちを歩いて、見たこと、聞いたこと、知ったこと、感じたことなどを…

埼玉県立歴史と民俗の博物館で「ごぜ唄の話と演奏」

2011-06-04 21:57:16 | Weblog
 1日中雨だった5月27日(土)、さいたま市大宮区の埼玉県立歴史と民俗の博物館
で開催された「ごぜ・うた・がたり」と題した、三味線奏者、月岡祐紀子(つきおかゆきこ)
さんの講演会に参加しました。

 会場ロビーです。


 月岡さんは幼い頃から民謡を学び、高校生の時、盲目の女芸人の芸能である、ごぜ
唄、ごぜ三味線に出会って感銘を受け、最後のごぜといわれる、現在の新潟県上越市
の方々と交流を重ねました。

 大学卒業時に、ごぜの旅を追体験しようと、三味線を奉納演奏しながらの四国八十八
か所の歩き遍路に挑戦し、翌年も歩き遍路を行い、三味線や尺八、琴、唄などでの合奏
曲「遍路組曲」を作曲しました。

 さらに、作家・早坂暁氏の紹介で、2回の遍路旅を綴ったものを「平成娘巡礼記」(文春
新書)として刊行されました。

 私が月岡さんの演奏を聴いたのは、初回の四国遍路前半の2004年3月13日(土)と
翌14日、愛媛県内海村(現在の愛南町)の「DEあい21」という村のホールと、柏坂越え
の遍路道における峠の上での演奏が初めてでした。

 この時のことは、当ブログ、2006年10月26日と27日の投稿を参照下さい。カテゴリ
ー「四国遍路(前編)」からも参照できます)

 その後、東京都内や大阪市内での演奏会などに出かけて、月岡さんの演奏や話を聴く
機会が何度かありましたが、今回は、ごぜさんの話が中心とのことで、今まで聞いたこと
が無かったので出かけました。



 今回は、そのごぜさんの話とごぜ唄の幾つかを織り交ぜて、予定を30分近く越えて2
時間に及ぶプログラムとなりました。その話の要旨は、以下のようなものでした。



 ごぜは、室町時代にから昭和年代まで続き、拠点は新潟県長岡市や上越市(高田)な
ど、雪国が中心。雪国では冬、室内で過ごすので、いろりを囲むことから目の不自由な人
が増え、女性はごぜかあんまさんの修行をして、家計を助けるために旅に出る互助制度
ができた。

 旅に行くときには、「手引き」と呼ぶ、目の見える子どもか弱視のごぜさんが先頭になり、
その後に、手を前の人の肩に乗せて従ったという。

 ごぜさんが最初に唄う「門付け唄」とは、訪れた村の庄屋などの門の前でまず唄うので、
そのように呼ぶ。

 ごぜさんは関東各地にも回っており、月岡さんの住む目黒区にも、出入控帳の記録に
残っており、江戸時代に1人のごぜさんがいたとか。会場に近いさいたま市大宮区宮原町
の弁財天にも奉納記録があるとのこと。

 特に多くの記録が残るのが東京・江戸川区で、農閑期を中心に年間100人以上来たと
いう。ほかに、北海道と沖縄を除いて、全国にごぜの記録が残っているようだ。

 ごぜさんの演目は、民謡、端唄、小唄、くどき(心中や地震のことなどニュース)、段物
(物語唄)、昔話(昼間に子ども向けに)、漫才(お笑い)など、現在のテレビの役割を担っ
ていたという。

 ごぜさんにとっての打撃は、明治維新や幾たびかの戦争、そして戦後の農地改革、さら
にラジオやテレビの普及といったことがある。越後・高田(上越市)には明治30年代に
100人のごぜさんがいたが、昭和30年(1955~)には、杉本家の3人だけになった。

 ごぜさんが、ほとんど居なくなった頃、画家の斉藤真一さんが高田を訪れて描き、「ごぜ
高田の旅芸人」という著書も残した。それを見て作家・水上勉が「はなれごぜおりん」を書
き、映画化された。また、新潟日報の写真担当者が写真で記録に残し、ごぜというものが
注目されたが、すでに遅きに失したようだ。

 話の最後に、新潟日報の写真担当者が記録した写真数枚も上映されました。



 月岡さんは、これらの話の合間に何曲ものごぜ唄の演奏を行いました。その演目です。



 ・門付け唄  ・雨降り唄(雨の日の門付け唄) ・かわいがらんせ(春の門付け唄)

 ・古調おけさ(ごぜが歌ったおけさ節)  ・佐渡おけさ  ・新磯節  

 ・花の数え歌(ごぜ唄「朝広大寺節」を福曲したもの)

 ・葛の葉の子別れ一段目(ごぜ唄を代表する曲・鶴の恩返しの狐版)

 ・三河万歳・柱仕立て(家の建前などに2人1組でうたわれた祝い唄)

 ・遍路組曲(月岡祐紀子作詞作曲)



 なお、これらの歌詞は参加者に配布されました。 

 ごぜさんについて、これまでほとんど知りませんでしたが、この日の話と演奏で、当時の
農村においては、今日のテレビと同様、大きな役割を果たしていたことが理解できました。

 会場ロビーから見た庭園風景。
   

 ちなみに、画家・斉藤真一のごぜを描いた絵が、5月17日(火)のテレビ東京の番組「開
運!なんでも鑑定団」に出展され、高値に鑑定されたことをご覧になった方も居られるかと
思います。


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コメント (2)
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