2009年6月27日(土)
今日は、東京・代々木の国立オリンピック記念青少年総合センターで
開催された、日本ウオーキング学会大会に参加しました。
まず、9時から11までは、センター棟(下)309教室での「一般研究
発表Ⅰ」へ。
最初は、「歩行者が多い園路の要件」というテーマで、JWA歩行文化
研究所のSさん。
船橋市の高根公園は、市内の同規模の公園に比べて歩行者数が3
~5倍多いので、歩行者300名ににアンケートをとったとのこと。
その結果、この公園のように木陰があり、路面が土で風通しもよく、
樹木に覆われているが明るく、周回路になっていることが、多くの歩行
者に好まれている要因だと分かったようです。

公園でのウオーキングコース造りをする、自治体の関係者には、ぜひ
参考にしてもらいたいものです。
次は、日本ウオーキング協会のKさんの、「地球一周4万㎞完歩者の
生活と意見」。
日本ウオーキング協会会員で、昨年度に地球一周4万㎞完歩達成者
76名に、アンケートをした結果の報告でした。

達成までの期間は、5年未満から15年以上まであり、10年未満
と10年以上は同数、開始年齢は40歳代から70歳代まで、達成年
齢は53歳から86歳までのようです。
そのほか、地球一周を目的としたきっかけや、途中での身体のトラ
ブルの有無なども聞いたようです。全体的には、自然体で無理なく安
全重視タイプと、目標を高くして毎日を意識して達成を目指した信念
の強いタイプに分けられるとのことでした。
ちなみに私も、昨年10月末に4万㎞に到達して認定してもらいまし
たが、アンケートはそれ以前に実施したようです。私の場合、17年
かかっているので、自然体での達成を目指した方です。
そういえば、今日はここで日本ウオーキング協会の総会も開催中で、
その中で、4万㎞達成者の表彰もあるようですが、私には声はかかり
ませんでした。たぶん、表彰は正会員だけなのではないかと思います
(私は正会員でなくて賛助会員)。
3番目の発表は、日本ウオーキング協会のOさん。お住まいの金沢
を3時に出て駆けつけたとのこと。87歳とは思えぬかくしゃくたる方で、
テーマはKさんに似た、「四万キロで得たもの」。

自分のコースをつくり、記録を積み重ねるとともに、国内外の大会へ
の参加、金沢~日本橋、九州横断、淡路島縦断などロングウオーク
も加えて、42,500㎞を歩かれたとのこと。
そのための健康食品の摂取、ウオークは気力・知力・読図力の3力
に気を配ることなど、ユニークな実践内容を発表されました。
4人目は、「健康をプロデュースするウオーキングの実践的研究」と
題して、日本ウオーキング協会のUさん。
もと教員のOさんは、50歳代で糖尿病になり、克服するため60歳
からウオーキングを始め、すでに6万㎞を歩かれているようです。
いかにして「心の健康」と「体の健康」づくりをしてきたかについて、
ご自身で実践してきたことを、歩きながら使っているという麺棒を改良
した棒や、交通安全のためのユニフォームなどを使いながら報告し、
ウオーミングアップとクールダウンの重要性なども述べられました。
筑波大の I 先生のテーマは、「H.D.ソローにおけるウオーキング思
想」について。

ソローは、19世紀半ばのアメリカのナチュラリストであるとともに、
未知の空間の探索のためにウオーキングを実践し、彼の思想である
シンプルライフが、今日再評価されているとのこと。
「野生によって世界は存続している」という簡潔な一文に、ソローの
思想が集約されており、アメリカの長距離歩道「アパラチアントレイル」
は、ソローの意志を受けて作られたようです。
続いて、『「早宮小学校」での「歩育」を含むスポーツ教育推進活動
の効果』について、日本ウオーキング協会のYさん。

平成20年度に東京都が指定した「スポーツ教育推進校」100校の
ひとつである、練馬区立早見小からの要請を受け、「正しいウオーキン
グ、ラジオ体操、ストレッチ」の導入のために実践したことの報告でした。
導入して半年後の運動会の行動を先生と評価してみると、入場行進
やラジオ体操、表現体操、徒競走などいずれも、リズミカルな動き、躍
動感、力強さなどが目立ったとのこと。
小学生は体が柔らかで、すぐ身につけられるので、スポーツ教育の
効果は高いと結論づけておられました。
次は、『「歩育」・21世紀から新たなるレクリェーションの創造を目指
してPart-1』と題して、大阪府レクリェーション協会のHさん。

30年にわたり、大人を主体とした”歩く”身体活動「トリム」は、大きな
成果をあげたが、21世紀型の新たな活動として、レクリェーションとウオ
ーキングを融合させた「歩育」を提唱し、2005年から実施しているよう
です。
大阪府レクリェーション協会の3つの理念、「健康づくり、関係づくり、笑
顔づくり」を生かし、府民のライフスタイルの質の転換を目指し、下の「歩
育」の普及推進活動を図っておられるとのこと。
月2回の活動には次第に参加者が増え、特に子どもの参加者が最近
は2割以上になっているようです。参加者の増加に伴い指導者が不足
してきたので、その育成も図っておられるとのことでした。
最後の8番目は、静岡理工科大のTさんの「園児、小学生、中学生の
通学方法と歩くことへの意識調査」について。
静岡県袋井市の幼稚園、小学校、中学校の通園・通学の実態や、歩
いて感じることなどのアンケート調査の結果などについてでした。
【通学方法の実態】(幼稚園児は父兄の回答)
幼稚園児 歩き49% 自転車送迎11% 自家用車送迎40%
小学生 歩き95% バス通学 3% 自家用車送迎 2%
中学生 歩き56% 自転車 41% 自家用車送迎 2%
幼稚園児では、自家用車送迎のうち、通園距離1㎞以下で29%、
1.1~1.3㎞では47%になっていて、いかに歩かないかが明らか
になったとのこと。
歩くことへの抵抗感については、以下のような結果。

小・中学生は、わずか10分のところへも多くは自転車で、幼稚園児
については、半数近くが自動車で送迎するとの結果でした。
幼稚園児の徒歩通園を増やすには、安全の確保と、(特に)親の歩く
意識を高める必要があること、小・中学生には、ウオーキングイベントな
どへの参加を促し、ウオーキングに興味を持たせることが必要で、加え
て、安全・安心な歩きやすい環境の整備が大切だと言われました。
次は、カルチャー棟(下)に移動して、小ホールでのトレイル紹介へ。

トレイル紹介は、私も昨年「四国遍路1200㎞への道」と題して発表
させてもらいました。
今回の最初は、『熊野古道の紹介ー熊野古道の魅力と健康効果』と
題して、(財)和歌山健康センターのKさん。
熊野古道の健康効果については、木々に覆われ、適度な凹凸とクッ
ション性の高い道であること、道幅も広く歩きやすい、紫外線量は市街
地の1/50であることなど、平地公園でのウオーキングに比べて数段
高く、良質の温泉もあり、健康・保安に有効であると言われました。
次に、熊野古道のルートである中辺路、大辺路、小辺路、伊勢路など
について多くの写真で紹介されました。
さらに、語り部や熊野セラピストと呼ぶ方たちの案内も利用でき、地元
食材を使った古道弁当のこと、古道の多くは木々に覆われているので、
雨の日でも無理なく歩けることなどが紹介されました。
私も、数年前に伊勢路を、昨年秋には人気ルートの中辺路を、各々数
日歩いているので、その魅力もよく分かり、次はどこを歩こうかなと思い
ながら話を伺いました。
2番目は、船橋市の市会議員をされているというHさんの、『パシフィッ
ク・クレスト・トレイル紹介』でした。
このトレイルは、アメリカ合衆国の西海岸を、南はメキシコ国境から北
はカナダ国境までを貫く、全長2,657マイル(約4,200㎞)あり、大部分
は徒歩と馬のみが通行できる自然歩道とのこと。
道標など、コースはほぼよく整備されているようですが、標高4,000m
を越える残雪のシェラネバダ山脈(下)から、海抜0m地帯まで、気温も
40℃を越える南カリフォルニアの砂漠から、氷点下のカナダ国境の山岳
地帯まで大きな変化に富んでいるようです。
Hさんは25歳のとき、2003年4月21日から9月9日まで、単独で踏破
され、全コース踏破は日本人では初めてとのこと。下は、全コース踏破者
に授与される踏破証で、ホールロビーに掲示されていました。
トレイルの生活は、基本的にはバックパッキングによる野営で、1日8
~9時間、平均30㎞程度歩き、必要な食料・燃料などの装備を携行し、
数日おきにトレイル沿いの集落などで補給する必要があり、水や食料の
確保に綿密なペース配分が求められるとのこと。
1シーズンで全コース歩くには、約半年かかることから、気候の関係
で南から北へ向かうことになり、費用は約120万円かかったようです。
トレイル・エンジェルと呼ぶ、四国遍路での「お接待」のようなボランテ
ィアや、全世界から来るハイカーとの交流も大きな楽しみで、全行程で
なくてその一部を歩くハイカーも多く、60代以上の中高年ハイカーも見
受けられるとのことでした。
このトレイルについては、下のHさんの Web Site に紹介されています。
http://www.sam.hi-ho.ne.jp/taketo/pct_report.htm
正午過ぎ、トレイル紹介は終わりました。半日だけの参加でしたが、
ウオーキングに関する興味ある発表を、いろいろ聞くことが出来ました。