2022年7月1日(金)
前々回の投稿で予想したとおり、以下のレポートの歩いた日の翌々日の6月27日(月)、
関東甲信の梅雨明けが発表されました。4年前の2018年28日より1日早く、観測史
上最速の梅雨明けです。
その前後、6月25日(土)に続いて6月27日(月)から今日までの5日間、埼玉県
内アメダス観測地8地点の全部が35℃以上の猛暑日となり、全観測地点とも37℃以上
という日がほとんどの一層の猛暑です。
この夏は100年に1度の猛暑が続くとの予想もあり、この先の長い夏が思いやられ、
電力需要の逼迫も懸念されており、どう過ごしたら良いのでしょうか・・・
前置きはこのくらいで、大分間隔が延びましたが前回のレポートの続きです。
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2022年6月25日(土) 〈後半・中山道桶川宿めぐり〉
上尾駅東口での「旅のスケッチ展」を観覧して駅に戻り、11時06分のJR高崎線下
り電車に乗り、11時12分に2駅先の桶川駅で下りた。
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この後は、駅の東側を南東から北西に走る江戸五街道のひとつ、中山道桶川宿(なかせ
んどうおけがわじゅく)の旧跡などを巡ることにする。
ちなみに中山道は、江戸・日本橋から京都・三条大橋まで約530㎞をつなぐ街道。埼
玉県内には蕨、浦和、大宮、上尾、桶川、鴻巣、熊谷、深谷、本庄の9つの宿場があった。
私は、グループに参加して2002年~2009年にかけて、日本橋~京都間のほぼ全
行程を歩き継いで1往復しており、桶川宿には2004年10月以来17年8か月ぶりの
再訪になる。
桶川駅を11時19分にスタートした。東口の階段下にあった「桶川史跡めぐり」図中
の「中山道桶川宿」の地図、今日巡るのはこの範囲の予定で、中山道の距離としては1㎞
ほどになる。
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中山道に向かう駅前の通りを直進し、街道に出るひとつ手前のT字路を右折して南東に
少しで、浄念寺の仁王門前へ。
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仁王門は朱塗り2階建て、2階が鐘楼になっている鐘楼門である。
門の左手に金属板の説明パネルがあるが、読みにくくて全内容は判然としない。
「2階の梵鐘(ぼんしょう)は寛保元(1741)年に鋳造されたが、第二次大戦で供
出され、現在のものは昭和40(1965)年鋳造、階下の仁王像は明和5(1768)
年に開眼された」、とのことだけは分かった。
仁王門を入って左手には、格好良い松が目に入る。
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浄念寺は浄土宗の寺で、天文15(1546)年に現在の松戸市の東漸寺(とうぜんじ)
の團誉桂善壽上人(だんよけいぜんぜんじゅしょうにん)が、室町初期の1360年頃に
当地に建てた修行のための庵をもとに、寺院としたのが始まりのよう。
桶川宿とも深い関係があったと考えられ、江戸初頭には、桶川宿を治めた西尾隠岐守吉
次(にしおおきのかみよしつぐ)が地蔵菩薩像と薬師如来像を納めたことからも伺えると
いう。
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正面に堂々と構える本堂は、平成16(2004)年に再建されたとか。
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境内には、集められた板石塔婆や2つの小社殿、古い石塔群などあるが、その説明パネ
ルも金属板の文字で、判読できないのが残念。
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浄念寺の山門を出て、正面突き当たりで中山道に入り右(南東)へ。中山道は、現在は
県道164号・鴻巣桶川さいたま線である。
すぐ近くに古くからの旅館、武村旅館がある。
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桶川宿には、大名や公家などの宿泊施設である本陣、脇本陣とは別に、一般庶民のため
の旅籠(はたご)が数多くあり、江戸末期の天保年間(1830~44)には36軒あっ
たとか。
武村旅館は嘉永5(1852)年の建築、皇女和宮(こうじょかずのみや)が中山道を
下向(げこう)した文久元(1861「)年当時は紙屋半次郎名義だったが、明治時代に
武村家が板橋宿からここに移って旅館業を営んだようで、国登録有形文化財になっている。
武村旅館の間取り図
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次の交差点の南東側には、「旧跡 木戸址」碑が立っている。
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木戸は、警備のために宿場の出入口に設置されていたもの。ここに文久元(1861)
年に高さ1丈3尺、幅8寸の角材で柵を立てて木戸を開設したようで、桶川宿の江戸側末
端になる。
中山道桶川宿の案内図には、その先近くに水準点があるようなので確認に進み、イエス
キリスト教会の先までいったが見つからないので引き返す。
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帰宅後、国土地理院の地形図で確かめたら、なんとこの教会敷地の北東端付近にあり、
見落としてしまったらしい。
木戸址碑のある交差点まで戻り、さらに進む。武村旅館の斜前あたりに「藤倉家の鍾馗
様(しょうきさま)」というのがあるはずだが、これも見つからない。
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桶川駅前交差点を過ぎてすぐ、通りの右手建物横に「助蔵」の表示があるので入ると、
3階建て土蔵造りの建物で、国登録有形文化財になっている「島村家住宅土蔵」だった。
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桁行(けたゆき)6間、梁間(はりま)3間、木造3階建て土蔵で、江戸後期の天保7
(1836)年の建築と伝えられているとか。
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島村家は、桶川宿の本陣近くに店を構えた穀物問屋木嶋屋の総本家で、この土蔵の建築
工事は、天保の大飢饉にあえぐ人々に仕事を与え、その報酬で多くの民が餓え(うえ)か
ら救われたところから、「お助け蔵(おたすけぐら)」といわれたとの伝承も残るよう。
現在、壁面はトタンに覆われているが、黒漆喰壁(くろしっくいかべ)の堂々とした土
蔵だという。
その隣の矢部家住宅は桶川市指定文化財(建造物)で、中山道に面した土蔵造りの店舗
と、土蔵造りの文庫蔵、切妻造りの勝手場ほかの建物で構成されている。
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矢部家は、主には穀物問屋を営んでいたが、桶川特産の紅花(べにばな)の商いも行い、
桶川の24人の紅花商人の中に名を連ねているという。
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中山道に面した店舗に残る古い電話番号標識。
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矢部家と中山道を挟んで西側には、国登録有形文化財の「小林家住宅主屋(しゅおく)」
が目につく。
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小林家住宅主奥は、江戸時代末期頃に穀屋吉右衛門が旅籠(はたご)として建て、棟札
(むねふだ)から文政11(1827)年、天保11(1840)年、嘉永5(1852)
年のいずれかの子年(ねどし)と考えられているようだ。
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その後、当主となった小林家は、材木商を営むにあたり大きく改修したが、外観は当時
の姿をとどめているという。
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看板や外の材木にそのことが伺えるが、現在は「ティー、クラフト&ギャラリー ブラ
ッドベリー」と呼ぶノスタルジックな雰囲気のギャラリー&カフェというが、入店は省く。
その先、細い十字路の先、東側は「桶川宿本陣遺構」の標柱が立ち、県指定文化財の説
明パネルがある。
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木柱の門前までは行けるが、その内部は公開されてない。
道路から門の手前には、たくさんアジサイが咲き、門の奥にはネムノキが花を見せる。
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隣接地は脇本陣跡、道路の反対側は問屋場跡や別の脇本陣跡の場所だが、遺構などは残
ってない。
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少し先、道路を挟んで西側に「中山道宿場館」があり、「桶川市観光協会」も併設され
ているので立ち寄る。
入口際には、桶川特産のベニバナの植え込みが。あとで聞いたらいまがちょうど見ごろ
で、市の西郊では「べに花まつり」を開催中のよう。
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入口に、桶川のマンホールカードがもらえる申込書があったので記入し、まずいただく。
このデザインのマンホールは、桶川駅西口に設置してあるらしい。
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入口際には、桶川特産の紅花色のつるし雛が下がり、館内は比較的小さめの説明パネル
や特産品、写真などがびっしりと展示されている。
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奥には、中山道桶川宿の説明パネルや、桶川市のマスコットキャラクター「オケちゃん」
などが。
奥に居られた観光協会の方から、桶川に関わるいろいろな情報を教えてもらい、資料や
ベニバナの種などをいただいた。
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12時30分近くなったので、近くにあるおすすめの食事処など聞くと、隣が桶川グル
メの代表格、手打ちうどんの店とのことで、その店 松屋(看板は「まつや」)に入る。
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肉汁うどん(700円)を注文し、太くて固く腰の強い桶川うどんをしっかり噛んで美
味しく味わった。
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この店は、中山道沿いで80年以上も愛されてきた老舗のようで、よじれて腰の強い麵
は、通の間では「暴れん坊うどん」と呼ばれているらしい。
店を出て先へ、東和銀行際の交差点を右折して最初の十字路を右折、さらに左折して突
き当たりの稲荷神社へ。
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創建は嘉禄年間(1225~27)で、桶皮郷(現在の桶川市と上尾市にまたがる地域)
の惣鎮守となったよう。
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本殿は、文化14(1817)年に、幕府の御用大工だった棟梁により造営されたとか。
拝殿前の2基の石灯籠は、桶川宿と周辺の紅花商人たちが安政4(1857)年に奉納
したもので、灯籠には24人の紅花商人の名が刻まれ、かつての紅花商人たちの繁栄を伝
える貴重な文化財という。
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また、境内には「稲荷神社の大盤石(力石)」と呼ぶ大石が保存されている。
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日本一といわれる重さ610㎏の石で、「大盤石」は全国でも4か所しかないといわれ、
この石を、武州岩槻領三野宮(現さいたま市岩槻区)生まれの三ノ宮卯野之助が嘉永5年
(1852)2月に持ち上げたとのこと。 信じられないような力持ちだ。
拝殿の左手には、ご神木のクスノキが 豊富な枝振りで立っている。
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その下周辺には、何株かのアジサイが豊富な花を競っていた。
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境内の西北端に立つケヤキの下部には、小さな社殿が祭られ、傍らにそのことについて
記された標柱も立つ。
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中山道に戻った東和銀行前に、「市神社(いちがみしゃ)の跡」碑があった。
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桶川では江戸時代から、毎月五と十のつく日に「五十(ごとう)の市」と呼ぶ米穀を中
心に農産物の商取引が行われて大変賑わい、その市と宿内の人々の守護神としてここに市
神社が立っていたとのこと。
明治9(1876)年に交通の妨げになるとして、いま訪ねた稲荷神社に移され、八雲
神社として祭られているという。境内に4つの摂社があったが、どれだったか確認はして
ない。
中山道をさらに進み、すぐ先左手(西)の大雲寺へ。
大雲寺は曹洞宗の寺院で、弘治3(1557)年の開山と伝えられ、足立坂東三十三箇
所霊場の第2番札所である。
桶川宿の上方(京側)にあるので、「上の寺」とも呼ばれていたようで、 本陣当主であ
る府川家の墓があり、江戸時代の俳人、府川志風、府川不莠も当寺に眠っているという。
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境内へは山門の右手から入ると、正面に本堂が堂々と構える。
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境内には松などよく整えられた植栽が配置され、鐘楼の複雑な木組みが目につく。
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大雲寺を出てさらに先へ、次の十字路の歩道橋の柱に「一里塚跡」の説明板がある。
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桶川宿の一里塚は、この付近の中山道の両側にあり、塚の上には杉が植えられ、根元に
は石の妙見菩薩が祭られていたようだが、明治9(1876)年に取り壊されたという。
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その先、広い十字路は桶川市役所入口交差点で、その南東側の一角には「史跡 木戸址」
標がある。
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午前中に見た江戸側の木戸址と同様、ここには文久元(1861)年に高さ1丈3尺、
巾8寸の角材で柵を立てた木戸を開設したとのこと。桶川宿の北端になる。
折り返して一里塚跡の表示のある歩道橋のところまで戻り、反対側の東側に古いレンガ
蔵が残っていたので奥まで入ってみた。
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説明パネルは無いのでいつの建設かは分からぬが、明治から大正の頃のものかと思れ、
現在は使われてないようで、保有しているのは細田農機という会社らしい。
往路で立ち寄った中山道宿場館の北側の駐車場横には、「桶川宿手洗い所」と呼ぶ公衆
トイレが設けられていた。
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道路際には、「滋味」と刻まれた「お茶博士・辻村みちよ顕彰碑」とその説明パネルが
ある。
緑茶の中にカテキンが含まれていることを発見した人が、桶川生まれとは知らなかった。
歩いてみると、こういう新たな知識や発見が得られるのがよい。
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そばには、「中山道のいずみ」と名付けられた防災用手押し井戸や、古い円筒形の郵便
ポストなどもあった。
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桶川駅前交差点に向かって中山道を戻る途中で見つけた、カラーマンホール。
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その先では、桶川市内循環バス「べにばなGO」と行き違う。
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桶川駅前交差点を右折して桶川駅に向かう。交差点際にあった栄屋菓子舗に、NHK総
合TV「チコちゃんに叱られる」に紹介されたという張り紙などがあり、「塩あんびん」
という菓子が気になったので入ってみた。
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埼玉県北東部の郷土菓子のようで、砂糖でなく塩あんの大福餅。餅もきめ細かくて美味
しそうだったので3ツ購入する(ひとつ180円)。
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帰宅後調べたら、「チコちゃんに叱られる」の放映は2020年10月9日だった。
なお、この店・栄屋菓子補のサイトとはこちらから。
すぐ近く、駅前通りの反対側に「おじいさんの店」という看板が目に入る。

地元っ子の間では「ぢぢ店」と呼ばれているようで、めんこ、ビー玉、ままごとセット
など昔の玩具もここなら見つかるという。昭和ムードあふれる立ち寄りスポットというが、
暑さが応えているので、寄らずに駅に向かう。

その先にも、昭和の雰囲気の感じられる店があった。
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
JR桶川駅には14時21分に戻った。改札のある2階通路には、べに花開花情報が満
開を告げていた。
14時35分発高崎線上り電車に乗る。
(天気 晴、距離 5㎞、地図 「おけがわ散策マップ」(平成26年1月発行)中の
「中山道桶川宿」食事処 お土産マップ)、歩行地 桶川市、歩数 8,700)
この日、最寄りのアメダス観測地点の最高気温は、さいたま市で33.3℃、熊谷市は
35.0℃だったので、桶川はこの中間前後になったかと思われ、暑さがこたえた。
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前々回の投稿で予想したとおり、以下のレポートの歩いた日の翌々日の6月27日(月)、
関東甲信の梅雨明けが発表されました。4年前の2018年28日より1日早く、観測史
上最速の梅雨明けです。
その前後、6月25日(土)に続いて6月27日(月)から今日までの5日間、埼玉県
内アメダス観測地8地点の全部が35℃以上の猛暑日となり、全観測地点とも37℃以上
という日がほとんどの一層の猛暑です。
この夏は100年に1度の猛暑が続くとの予想もあり、この先の長い夏が思いやられ、
電力需要の逼迫も懸念されており、どう過ごしたら良いのでしょうか・・・
前置きはこのくらいで、大分間隔が延びましたが前回のレポートの続きです。
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2022年6月25日(土) 〈後半・中山道桶川宿めぐり〉
上尾駅東口での「旅のスケッチ展」を観覧して駅に戻り、11時06分のJR高崎線下
り電車に乗り、11時12分に2駅先の桶川駅で下りた。
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この後は、駅の東側を南東から北西に走る江戸五街道のひとつ、中山道桶川宿(なかせ
んどうおけがわじゅく)の旧跡などを巡ることにする。
ちなみに中山道は、江戸・日本橋から京都・三条大橋まで約530㎞をつなぐ街道。埼
玉県内には蕨、浦和、大宮、上尾、桶川、鴻巣、熊谷、深谷、本庄の9つの宿場があった。
私は、グループに参加して2002年~2009年にかけて、日本橋~京都間のほぼ全
行程を歩き継いで1往復しており、桶川宿には2004年10月以来17年8か月ぶりの
再訪になる。
桶川駅を11時19分にスタートした。東口の階段下にあった「桶川史跡めぐり」図中
の「中山道桶川宿」の地図、今日巡るのはこの範囲の予定で、中山道の距離としては1㎞
ほどになる。
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中山道に向かう駅前の通りを直進し、街道に出るひとつ手前のT字路を右折して南東に
少しで、浄念寺の仁王門前へ。
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仁王門は朱塗り2階建て、2階が鐘楼になっている鐘楼門である。
門の左手に金属板の説明パネルがあるが、読みにくくて全内容は判然としない。
「2階の梵鐘(ぼんしょう)は寛保元(1741)年に鋳造されたが、第二次大戦で供
出され、現在のものは昭和40(1965)年鋳造、階下の仁王像は明和5(1768)
年に開眼された」、とのことだけは分かった。
仁王門を入って左手には、格好良い松が目に入る。
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浄念寺は浄土宗の寺で、天文15(1546)年に現在の松戸市の東漸寺(とうぜんじ)
の團誉桂善壽上人(だんよけいぜんぜんじゅしょうにん)が、室町初期の1360年頃に
当地に建てた修行のための庵をもとに、寺院としたのが始まりのよう。
桶川宿とも深い関係があったと考えられ、江戸初頭には、桶川宿を治めた西尾隠岐守吉
次(にしおおきのかみよしつぐ)が地蔵菩薩像と薬師如来像を納めたことからも伺えると
いう。

正面に堂々と構える本堂は、平成16(2004)年に再建されたとか。
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境内には、集められた板石塔婆や2つの小社殿、古い石塔群などあるが、その説明パネ
ルも金属板の文字で、判読できないのが残念。
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浄念寺の山門を出て、正面突き当たりで中山道に入り右(南東)へ。中山道は、現在は
県道164号・鴻巣桶川さいたま線である。
すぐ近くに古くからの旅館、武村旅館がある。
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桶川宿には、大名や公家などの宿泊施設である本陣、脇本陣とは別に、一般庶民のため
の旅籠(はたご)が数多くあり、江戸末期の天保年間(1830~44)には36軒あっ
たとか。
武村旅館は嘉永5(1852)年の建築、皇女和宮(こうじょかずのみや)が中山道を
下向(げこう)した文久元(1861「)年当時は紙屋半次郎名義だったが、明治時代に
武村家が板橋宿からここに移って旅館業を営んだようで、国登録有形文化財になっている。
武村旅館の間取り図
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次の交差点の南東側には、「旧跡 木戸址」碑が立っている。
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木戸は、警備のために宿場の出入口に設置されていたもの。ここに文久元(1861)
年に高さ1丈3尺、幅8寸の角材で柵を立てて木戸を開設したようで、桶川宿の江戸側末
端になる。
中山道桶川宿の案内図には、その先近くに水準点があるようなので確認に進み、イエス
キリスト教会の先までいったが見つからないので引き返す。
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帰宅後、国土地理院の地形図で確かめたら、なんとこの教会敷地の北東端付近にあり、
見落としてしまったらしい。
木戸址碑のある交差点まで戻り、さらに進む。武村旅館の斜前あたりに「藤倉家の鍾馗
様(しょうきさま)」というのがあるはずだが、これも見つからない。
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桶川駅前交差点を過ぎてすぐ、通りの右手建物横に「助蔵」の表示があるので入ると、
3階建て土蔵造りの建物で、国登録有形文化財になっている「島村家住宅土蔵」だった。
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桁行(けたゆき)6間、梁間(はりま)3間、木造3階建て土蔵で、江戸後期の天保7
(1836)年の建築と伝えられているとか。
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島村家は、桶川宿の本陣近くに店を構えた穀物問屋木嶋屋の総本家で、この土蔵の建築
工事は、天保の大飢饉にあえぐ人々に仕事を与え、その報酬で多くの民が餓え(うえ)か
ら救われたところから、「お助け蔵(おたすけぐら)」といわれたとの伝承も残るよう。
現在、壁面はトタンに覆われているが、黒漆喰壁(くろしっくいかべ)の堂々とした土
蔵だという。
その隣の矢部家住宅は桶川市指定文化財(建造物)で、中山道に面した土蔵造りの店舗
と、土蔵造りの文庫蔵、切妻造りの勝手場ほかの建物で構成されている。
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矢部家は、主には穀物問屋を営んでいたが、桶川特産の紅花(べにばな)の商いも行い、
桶川の24人の紅花商人の中に名を連ねているという。
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中山道に面した店舗に残る古い電話番号標識。
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矢部家と中山道を挟んで西側には、国登録有形文化財の「小林家住宅主屋(しゅおく)」
が目につく。
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小林家住宅主奥は、江戸時代末期頃に穀屋吉右衛門が旅籠(はたご)として建て、棟札
(むねふだ)から文政11(1827)年、天保11(1840)年、嘉永5(1852)
年のいずれかの子年(ねどし)と考えられているようだ。
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その後、当主となった小林家は、材木商を営むにあたり大きく改修したが、外観は当時
の姿をとどめているという。
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看板や外の材木にそのことが伺えるが、現在は「ティー、クラフト&ギャラリー ブラ
ッドベリー」と呼ぶノスタルジックな雰囲気のギャラリー&カフェというが、入店は省く。
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その先、細い十字路の先、東側は「桶川宿本陣遺構」の標柱が立ち、県指定文化財の説
明パネルがある。
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木柱の門前までは行けるが、その内部は公開されてない。
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道路から門の手前には、たくさんアジサイが咲き、門の奥にはネムノキが花を見せる。
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隣接地は脇本陣跡、道路の反対側は問屋場跡や別の脇本陣跡の場所だが、遺構などは残
ってない。
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少し先、道路を挟んで西側に「中山道宿場館」があり、「桶川市観光協会」も併設され
ているので立ち寄る。
入口際には、桶川特産のベニバナの植え込みが。あとで聞いたらいまがちょうど見ごろ
で、市の西郊では「べに花まつり」を開催中のよう。
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入口に、桶川のマンホールカードがもらえる申込書があったので記入し、まずいただく。
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このデザインのマンホールは、桶川駅西口に設置してあるらしい。
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入口際には、桶川特産の紅花色のつるし雛が下がり、館内は比較的小さめの説明パネル
や特産品、写真などがびっしりと展示されている。
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奥には、中山道桶川宿の説明パネルや、桶川市のマスコットキャラクター「オケちゃん」
などが。
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奥に居られた観光協会の方から、桶川に関わるいろいろな情報を教えてもらい、資料や
ベニバナの種などをいただいた。
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12時30分近くなったので、近くにあるおすすめの食事処など聞くと、隣が桶川グル
メの代表格、手打ちうどんの店とのことで、その店 松屋(看板は「まつや」)に入る。

肉汁うどん(700円)を注文し、太くて固く腰の強い桶川うどんをしっかり噛んで美
味しく味わった。
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この店は、中山道沿いで80年以上も愛されてきた老舗のようで、よじれて腰の強い麵
は、通の間では「暴れん坊うどん」と呼ばれているらしい。
店を出て先へ、東和銀行際の交差点を右折して最初の十字路を右折、さらに左折して突
き当たりの稲荷神社へ。

創建は嘉禄年間(1225~27)で、桶皮郷(現在の桶川市と上尾市にまたがる地域)
の惣鎮守となったよう。
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本殿は、文化14(1817)年に、幕府の御用大工だった棟梁により造営されたとか。
拝殿前の2基の石灯籠は、桶川宿と周辺の紅花商人たちが安政4(1857)年に奉納
したもので、灯籠には24人の紅花商人の名が刻まれ、かつての紅花商人たちの繁栄を伝
える貴重な文化財という。
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また、境内には「稲荷神社の大盤石(力石)」と呼ぶ大石が保存されている。
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日本一といわれる重さ610㎏の石で、「大盤石」は全国でも4か所しかないといわれ、
この石を、武州岩槻領三野宮(現さいたま市岩槻区)生まれの三ノ宮卯野之助が嘉永5年
(1852)2月に持ち上げたとのこと。 信じられないような力持ちだ。
拝殿の左手には、ご神木のクスノキが 豊富な枝振りで立っている。
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その下周辺には、何株かのアジサイが豊富な花を競っていた。
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境内の西北端に立つケヤキの下部には、小さな社殿が祭られ、傍らにそのことについて
記された標柱も立つ。

中山道に戻った東和銀行前に、「市神社(いちがみしゃ)の跡」碑があった。
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桶川では江戸時代から、毎月五と十のつく日に「五十(ごとう)の市」と呼ぶ米穀を中
心に農産物の商取引が行われて大変賑わい、その市と宿内の人々の守護神としてここに市
神社が立っていたとのこと。
明治9(1876)年に交通の妨げになるとして、いま訪ねた稲荷神社に移され、八雲
神社として祭られているという。境内に4つの摂社があったが、どれだったか確認はして
ない。
中山道をさらに進み、すぐ先左手(西)の大雲寺へ。
大雲寺は曹洞宗の寺院で、弘治3(1557)年の開山と伝えられ、足立坂東三十三箇
所霊場の第2番札所である。
桶川宿の上方(京側)にあるので、「上の寺」とも呼ばれていたようで、 本陣当主であ
る府川家の墓があり、江戸時代の俳人、府川志風、府川不莠も当寺に眠っているという。
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境内へは山門の右手から入ると、正面に本堂が堂々と構える。
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境内には松などよく整えられた植栽が配置され、鐘楼の複雑な木組みが目につく。
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大雲寺を出てさらに先へ、次の十字路の歩道橋の柱に「一里塚跡」の説明板がある。

桶川宿の一里塚は、この付近の中山道の両側にあり、塚の上には杉が植えられ、根元に
は石の妙見菩薩が祭られていたようだが、明治9(1876)年に取り壊されたという。

その先、広い十字路は桶川市役所入口交差点で、その南東側の一角には「史跡 木戸址」
標がある。

午前中に見た江戸側の木戸址と同様、ここには文久元(1861)年に高さ1丈3尺、
巾8寸の角材で柵を立てた木戸を開設したとのこと。桶川宿の北端になる。
折り返して一里塚跡の表示のある歩道橋のところまで戻り、反対側の東側に古いレンガ
蔵が残っていたので奥まで入ってみた。

説明パネルは無いのでいつの建設かは分からぬが、明治から大正の頃のものかと思れ、
現在は使われてないようで、保有しているのは細田農機という会社らしい。
往路で立ち寄った中山道宿場館の北側の駐車場横には、「桶川宿手洗い所」と呼ぶ公衆
トイレが設けられていた。
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道路際には、「滋味」と刻まれた「お茶博士・辻村みちよ顕彰碑」とその説明パネルが
ある。
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緑茶の中にカテキンが含まれていることを発見した人が、桶川生まれとは知らなかった。
歩いてみると、こういう新たな知識や発見が得られるのがよい。
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そばには、「中山道のいずみ」と名付けられた防災用手押し井戸や、古い円筒形の郵便
ポストなどもあった。
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桶川駅前交差点に向かって中山道を戻る途中で見つけた、カラーマンホール。
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その先では、桶川市内循環バス「べにばなGO」と行き違う。
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桶川駅前交差点を右折して桶川駅に向かう。交差点際にあった栄屋菓子舗に、NHK総
合TV「チコちゃんに叱られる」に紹介されたという張り紙などがあり、「塩あんびん」
という菓子が気になったので入ってみた。
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埼玉県北東部の郷土菓子のようで、砂糖でなく塩あんの大福餅。餅もきめ細かくて美味
しそうだったので3ツ購入する(ひとつ180円)。
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帰宅後調べたら、「チコちゃんに叱られる」の放映は2020年10月9日だった。
なお、この店・栄屋菓子補のサイトとはこちらから。
すぐ近く、駅前通りの反対側に「おじいさんの店」という看板が目に入る。
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地元っ子の間では「ぢぢ店」と呼ばれているようで、めんこ、ビー玉、ままごとセット
など昔の玩具もここなら見つかるという。昭和ムードあふれる立ち寄りスポットというが、
暑さが応えているので、寄らずに駅に向かう。
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その先にも、昭和の雰囲気の感じられる店があった。
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JR桶川駅には14時21分に戻った。改札のある2階通路には、べに花開花情報が満
開を告げていた。
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14時35分発高崎線上り電車に乗る。
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(天気 晴、距離 5㎞、地図 「おけがわ散策マップ」(平成26年1月発行)中の
「中山道桶川宿」食事処 お土産マップ)、歩行地 桶川市、歩数 8,700)
この日、最寄りのアメダス観測地点の最高気温は、さいたま市で33.3℃、熊谷市は
35.0℃だったので、桶川はこの中間前後になったかと思われ、暑さがこたえた。
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