2020年3月19日
2016年4月14日・・16日・・入学式を終えて初めての講義開始を目前に熊本地震は発生し、震度6~7に熊本農大・研修部も甚大な被害を受けました。
ただ、新たな研修生の安否把握、その講義開始目処や、被害を受けた施設の復旧申請に追われて、自啓館(ジケイカン)の石垣復旧までは及びませんでした。
昨年4月に再任用で戻って来たときから、(やり残していた)あちこちの石垣のズレは気になっていました。
危ない箇所は6カ所、動かさなければならない石垣(切石)を数えると、60個はありました。
専門業者に頼んだら、積み段数にもよりますが、だいたい延べ床面積で1m2で10~30万円。
この写真だと、2段ですので、10万円!6カ所全部修復すると100万円はかかりそうと見積もりました。
(令和元年は新しい研修交流館を建てたばかりで、そんな予算はとれっこ無い!ならば、自分でするか~?)
昨年のうちから、ちびちびと道具を集め、購入し機会をうかがっていました。
なぜ、私が出来るか?_!
実家の集落は石垣を巡らせた家が多く、大雨が降るとどこかの近所の石垣が崩れていました。
使い物の躯が出来た中学~高校生の頃に、何度か土建屋さんのアルバイトの声がかかり、それで要領を身につけた・・・また自宅の石垣(丸石)を築いた経験者なのです。
最初の1日目は、自啓館(ジケイカン)の入り口左手の、1番人通りの多い石垣からにしました。
前の写真の様に、飛び出した石、ズレ落ちそうな石があり、乗らないようにコーンを置いていた所です。
2mの単管3本を自在クランプで繋ぎ三脚にし、チェーンブロック2個で持ち上げます。
難しいのは、ワイヤーの結い方で、重みがかかってもほどけないかけ方です。
重たい石の下にバールを突っ込み隙間をこじ開けて、通して結びます。
後で設置しても、またワイヤーを抜き取らねばならず、その事も考えて作業をします。
吊った石は、垂直にぶら下がりますが、そのままの位置の真上だと、崩れ落ちる敷石、目止め石、土の排出と、再び詰める作業が出来ません。
かと言って、離れすぎると『ぶりっこ(空中に浮いた時、垂直位置へ大きくブレて、三脚を倒す)』して危ない!
そこを考えて、三脚を配置します。
一辺が触れる位のこれくらいが無難です。
落ちてくる目止め石、土を近くに除けておきます。
切石は、四角錐ですので、面(ツラ)が垂直に近いと、必ず錐の尖りの下に敷石が必要です。
隣の石との間を埋める目止め石、石の隙間を埋める土。
※素人は、どうして積みやすい矩形・四角の石にしないのか?と疑問を持つのですが、地震と降雨量の多い日本では、錐の方が異種物(土や砂利)の噛み合いで摩擦が増し滑りにくく、排水もし易い造りだそうです。熊本城の武者返しの様なオーバーハング的曲線は、四角錐の奥の下の詰め物の調整があればこそ面(ツラ)角を可変出来る工夫なのです。※
手袋は泥だらけで写真撮影どころではありませんでした。
敷石の準備が出来ると、ぶら下がっていた石を足でぶって(揺すって)乗せ、チェーンブロックを弛め落とします。
敷石が大き過ぎるとツラが下向きになります。足りないと上向きになりますので、隣の正常な面を同じになる様にやり直し調整します。
だいたい合致しそうなら、バール2本を使って、挟まったワイヤーを上手に抜き取ります。
バールが深すぎたり、敷石を動かしたりすると、また面の角度が変化したりするので、難しい抜き取り作業です。
この場合、最上段ですが、上の段を築く前には、全ての隙間を目止め石や土で埋めますが、樫の木の棒をハンマーで叩いて、しっかりと詰めます。
※ちなみにこの樫の棒は、薪ストーブの燃料寸前でした!
”詰め”も難しくて、叩きすぎると面が動くし、締まっていないと雨水の通り道が出来て、数年で土砂が石垣の隙間から流れだし、空洞となり、上が陥没したり、面が傾いたりしてきます。
樫の木の棒で、突き固めて孔隙(コウゲキ)を無くします。
完成したら、水を潅水し締まりを確認します。
次は正面です。
2番・7番が目立って飛び出ていますが、最下段の敷き石面から、6~9番まで前に出て、その上の2~5番も乗っかって前に出ています。
それどころか、2~4番、その下の7~9番が弓なりの凹型に窪んでいます。
これを水平にするには、ユンボで地下部から矯正しなければならず、人力では無理です。
とりあえず、1~9番を全部取り外す事にしました。
これは1番石を横から見た飛び出し具合です。
危ないのが分かります。
ワイヤーの通し方は、こんな感じでバール2本を使って通してワイヤーを結います。
今回は2カ所吊りですので、フックの掛け場所を両側上部に2カ所作ります。
吊り始めると重みで抜けない(解けない)様に結います。
角石は70~80kg、中の石は30~40kg位でしょうか
抱きかかえられるなら作業も早いのですが、腰のため地道に吊って降ろします。
ここまでで疲れて仕舞いましたが、これからが本番です。
掻き出したこの土と石の量ですが、これから積む過程で全然足りなくなりました。
と言うことは。。。。
右端の9番から始めました。
四角錐の奥に、敷石をして、面の角度を伺い、隣の石との隙間が詰まる様に配置し、目止め石、石の隙間を埋める土を入れ、ハンマーでは奥は叩けないので樫の木棒を当てて突き詰めます。
手袋もですが、袖は泥だらけです。
カミソリの刃が入る隙間が無いサクサイワマンの巨石石垣みたいにはいきませんが、地道に慌てず、一つずつ確実に面を合わせていきます。
やっと1番の角石まで築きました。
ワイヤーのかけ方・結い方の説明は難しいのですが、吊り上げた時に重みでフックが1カ所に集まらない様にします。
1カ所に集まった時に、中心で吊れるなら良いのですが、バランスが崩れて片吊りになると抜け落ちて足に落ちれば、確実に潰れ骨折します。
あと、アスファルト上の三脚は引っかかりが無く滑りやすく、何度か開脚してしまいました。
開脚防止のロープやフックの工夫が必要でした。
(市販品には、三脚ヘッド(7,000円位)と三脚ベース(3,500円位)がありますが、実績も無く買えませんでした。この実績を見て貰い、安全安全作業のため新年度は買いたいです!)
1本のチェーンブロックよりも2本の方が水平を保ちやすく安全です。
それぞれの石もこの位で吊ったままで、敷石の調整をしますが、これは角石なので、四角錐ではなく、平面な底面です。
最上部の最後の隙間埋めです。
ここまで来るうちに、土と石の量が全く足りないのが目に見えて分かって来ました。
と言うことは。。。土の流亡もあったでしょうが、そもそも突き詰めが緩かったのではと疑心を持ちました。
詰め物の石まで探さねばなりませんでした。
ちなみに、平たい石や凝灰岩のハツリ石よりも、丸砂利の方がその後の緩みは少ないです。平らな石はズレや割れが生じますが、丸石や丸砂利は動きません。
ハンマーと樫の木棒で突き詰めます。
土をかけて水を打ち、完成です。
最初の写真と見比べてください。
まだ5カ所くらい危ない石垣がありますが、新規就農研修生が、自転車小屋から自啓館(ジケイカン)に入る一番通りが多いルート上の危ない石垣でした。
ここは、これで一安心です。
入学式・開講まで間に合うかな
っていうか、石工ばかりやってられないし
ああ、腰痛っ
10万円くらい労賃・技術料もらいたいものです。
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