愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

からだの初期化を試みよう 29 アローン操体法 余話-1 背伸び (11)

2016-01-25 15:54:26 | 健康
ヒトは中年を過ぎたころから背中が丸まってきて、いかにも‘年寄り’くさく見えてきます。“背伸び”の稿を締めるに当たって、その点について想像を逞しくしていきます。

立位の“背伸び”について見ていきますが、立位ということで、骨盤から下位の下半身の具合が話題に加わります。と同時に、わざわざ“立つ”という動作を必要とすることから、座位に比較して、立位の“背伸び”は、より強い意志が働いた“運動”として捉えるべきでしょうか。

ヒトで最も注目しなければならないことは、四足獣から二足直立・歩行への進化による身体上の構造特異性です。そのことが、ヒトの活動様式に功または罪の大きな影響を及ぼしています。まずそのもっとも重要と考えられる構造特異性を見ていきます。

四足獣について。写真1は、ネコの骨盤周囲について、筋および靭帯の様子を模式的に示したものです。ここで大きくて大事な筋は、大腰筋と腸骨筋で、両者を合わせて腸腰筋と呼ばれています。股関節を補強している大事な靭帯は腸骨大腿靭帯です。

写真1 ネコ:骨盤周囲の筋骨格系

大腰筋は脊柱の腰椎部と大腿骨の付け根内側の小転子と呼ばれるところを繋いでいます。腸骨筋は骨盤上部の内側と大腿骨の小転子の間を繋いでいます。これらの筋は四足獣が歩くまたは走る際に、股関節を支点にして大腿骨を前屈させて、下肢を前方に引っぱり、からだを前進させるときに働く筋です。

ヒトが2足直立・歩行態勢をとるようになって、これらの筋及び靭帯は、非常に特異的な状況に置かれることになりました。ヒトの立位でのこれら筋の状況を写真2に示しました。直立したためにこれら筋が引き伸ばされていることが解ります。ヒトでも、四足獣と同様で、これら筋は身体を前進させる際に働きます。

写真2 ヒト:骨盤周囲の筋骨格 前面

股関節はどうか。骨盤の両側にある寛骨臼と呼ばれる窪みに大腿骨頭がはまって股関節をつくり、腸骨大腿靭帯がしっかりと固定しています。この靭帯は、四足獣では関節にほぼ直角(写真1参照)に走っていましたが、2足直立の状態では引き伸ばされ、ねじれた状態となります(写真3)。

写真3 ヒト:ねじ伸ばされた腸骨大腿靭帯

その結果、写真4で見るように、ヒトでは腸腰筋に引っ張られて骨盤が前に傾き、また腰椎部が前に弯曲して落ち着く結果となりました。さらに腰椎が前弯したことに端を発して、体軸上、頭部を垂直に保持するために順次に調節が進み、胸椎部では後弯、頸椎部では前弯と弯曲した姿となりました。

写真4 ヒト:脊柱の弯曲

ヒトでも、誕生直後は四足獣同様の筋骨格系の形をとっていて、仰向けに寝た状態では、両脚は前に曲げています。訓練を積んで、生後1年前後にヒトらしく2足直立・歩行ができるようになります。

生後成長に伴って、平衡感覚をつかさどる脳内ネットワークが形成され、また下肢の筋力が強くなっていきます。その変化に合わせて、訓練により腸骨筋が徐々に伸ばされ、また腸骨大腿靭帯がねじ伸ばされていき、2足直立・歩行態勢が完成することになります。

掴まり立ちから伝え歩きの時期を経て、2足直立・歩行ができるようになるまで、成長期にある小児でさえ、数か月もの長い訓練期間を要している点、記憶に留めておくべきでしょう。

さて、これら人体の構造上の特徴、特異性を念頭に、中年以後の‘年寄りくさい’、‘丸まった腰’について想像を巡らしていきます。なお、本稿では、成人、特に壮年期以後のヒトを念頭に話を進めます。

まず、骨盤周囲の筋や靭帯の状況から見てわかるように、立位で身体を前屈させる、あるいは大腿を前方に挙げる動作は楽であり、またその可動範囲も広い。しかし、後屈や大腿を後方に反らすには抵抗が強く、可動範囲が狭い。すなわち、自然と前かがみになろうとする傾向にあると言えます。

日常生活の中で、ちょっと一服、ゆっくりと休息をとるとき、横になることはさておいて、まず座ります。この場合、伸ばされた腸腰筋やねじ伸ばされた靭帯は、誕生直後の状態に戻る、つまりご先祖返りの状態となります。

また日常の活動、例えば、PCの前でのデスクワーク、園芸での作業、農作業等々について言えば、椅子に腰かける、腰を下ろす、あるいは上半身を前に屈めるなどのご先祖返りとなる姿勢をとることが多く、日中の多くの時間をこの状態で過ごしています。

つまり、日常生活を通して 骨盤周囲の筋や靭帯は、ご先祖返りをした状態で固まっていくことになるでしょう。その結果、時に立位をとると、自然に‘丸まった腰’となるであろうことが想像できます。

これら自然にご先祖返りをしようとする傾向に対して、何らかの逆らう力を加えないかぎり、時間の経過とともに腸腰筋はより短く、また腸骨大腿靭帯はよりまっすぐに近い形となって落ち着き、固まっていくことになります。ひいては‘丸まった腰’の状態が進行していくことを意味しています。

立位の“背伸び”は、‘丸まった腰’を防ぐためのヒントを提供してくれると考えています。続いて、その点について想像を巡らせます。
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からだの初期化を試みよう 28 アローン操体法 余話-1 背伸び (10)

2016-01-16 15:49:30 | 健康
腱の反射について考えていくつもりですが、本論に入る前に「膝蓋腱反射」について触れます。

「膝蓋腱・・・」とあるから、腱から起こる反射反応と間違われそうです。写真1をみて頂きましょう。膝の図です。足を床から離し、ブラブラと浮かせ、リラックスして椅子に座っている状態を想像してください。膝のお皿の下側(膝蓋腱)を軽く叩くと、反射的に足がピョンと伸びあがります。「膝蓋腱反射」としてよく知られている反射反応です。

 写真1 膝蓋腱反射

ここで生理学的用語の解説を加えておきます。図で、筋紡錘から発した信号は、知覚神経を通って神経中枢である脊髄に入り、そこで運動神経に信号を伝達します。その信号は運動神経を通って、筋に至り、筋を収縮させます。

この信号発信から筋の収縮に至る経路を「反射弓」、脊髄内で神経線維が変わるところ、また運動神経が筋と接するところはともに「シナプス」と呼ばれている。シナプスでのそれぞれの神経線維の末端部は文字通り「神経終末」です。神経終末は、いろいろな刺激を受けて、信号を発信します。

ここで「膝蓋腱反射」は、確かに腱を叩いて起こしたわけですが、腱は、ポンと叩かれただけであって、「反射弓」の中に入って、何らかの役割を果たしているわけではありません。膝蓋腱を叩くことによって、その腱と繋がった太ももの前面にある大腿四頭筋が急に引っ張られます。ひいてはその筋の中にある筋紡錘が引き伸ばされて変形し、信号を発信して起こした反射反応というわけです。

したがって、「膝蓋腱反射」は、前回述べたと同様の脊髄反射に属します。図の脊髄の中で、知覚神経から運動神経へと一個のシナプスだけを経ていることにも注意してください。この場合は、「単シナプス性」反射と言われています。刺激から反応までの時間は短いわけです。

以上を押さえたところで、腱内の神経終末が関与する反射反応を見ていきます。

腱は、筋を骨に繋ぐ役目を担っている線維性結合組織です。それ自身収縮する能力を持っていません。そこで腱に関わる反射反応では、腱から発した信号で、腱自身に対してではなく、その腱に繋がっている筋などにどのような影響を及ぼすかが重要なのです。

腱では筋線維に近いところにゴルジ(Golgi)腱器官と呼ばれる知覚神経の終末が来ています(写真2)。ゴルジ腱器官は筋が収縮すると引っ張られて変形し、“引っ張られる強さ”を感知してその情報を発信し、神経中枢に伝える役目をします。筋の緊張状態を中枢に伝える鋭敏なセンサーでもあるわけです。

写真2 ゴルジ腱器官

写真からわかるように、腱は筋と直列に繋がっています。このことは筋が収縮した場合ばかりでなく、外力で引っ張られた場合でも、腱に対して引っ張る力が加わることを意味しており、このことを忘れてはならないでしょう。

筋が収縮した状態で、さらに外力の引っ張る力が、生理的範囲内であれば、ゴルジ器官から発信された信号は、生体を保護しつつ補償する方向に働くでしょう。しかし極端な例ですが、「こむら返り」のように、強力に筋が収縮したところで、さらに腱に負担を掛けるような処置を施していることを見かけることがあります。腱に損傷を与えるのではないでしょうか。この点は、次の項をご参照願いたい。

   「こむら返り」の対処法 -序   (2015-03-20投稿)
        〃         -実際 (2015-03-21投稿)
        〃        -あとがき (2015-03-23)

腱から発信された信号は、脊髄内では2,3個のシナプスを経て筋に行く運動神経につながります。すなわち、多シナプス性で、筋紡錘の場合とは違っています。

複数のシナプスを経る過程では、反射反応に時間がかかるばかりでなく、神経線維を変える過程で皮膚や関節、他の筋、また上位の脳中枢など、外部の状況の影響を受ける形をとります。したがって、反射反応の結果は一様ではないということです。

腱から発信された信号は、それが繋がった筋に対しては緊張をほぐす(抑制)方向に、一方、拮抗する側の筋に対しては緊張を増す(促進)方向に働くことが、よく見られるパターンのようです。これは負帰還性に働いて筋の緊張度を調節する働きであると考えられています。

逆に、状況によっては、自らの繋がった筋に対してむしろ興奮性に働く反射反応が起こることも知られています。筋が置かれている状況によって反応は異なるようです。

いずれにせよ、腱受容器の反射は、筋の張力の情報に基づいて、姿勢や運動を調節する働きをしていることのようです。

以上、座位での“背伸び”姿勢をもとに、からだの反応、さらに運動との関連を見てきました。立位での全身の“背伸び”では、日常の活動との接点がより多くみられるのではないでしょうか。続いて、<余話-1>の最終章として、立位での“背伸び”について考えていきます。
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からだの初期化を試みよう 27 アローン操体法 余話-1 背伸び (9)

2016-01-12 11:33:12 | 健康
“背伸び”の効用で、“目覚める”と一言で言っていますが、それは“脳を活性化”することと、合わせて“全身を活動できる状態にする(賦活する)”ということを言い表しているように思われます。つまり、前者は、“背伸び”の求心性の働きの結果であり、また後者は、“脳の活性化”を介した遠心性の働きの結果と言えよう。

ただ、脳内で何が起こっているかということ、および“全身を活動できる状態にする”という脳からの働きかけについては、“ネボケ、眠気を払う”という程度にとどめて、ここでは触れないことにします。

本稿では専ら、“背伸び”の動作により引き伸ばされた末梢組織、中でも骨格筋(以下“筋”とする)と腱が重要ですが、主に筋の状況がいかに神経中枢に伝えられるか、すなわち求心性の発信の仕組みについて考えていきます。

これは、ヒトが「姿勢を制御して平衡を保ち、2本脚で立つ、あるいは1本脚で立つ」こととの関わり、また「静的ストレッチング」の意義を考える上でも重要ですので、少々微に入るようですが、我慢して読んで頂きたいと思います。

本稿の結論を先に言えば、
筋は、関節を跨いで、その両端が腱によって骨に付着していて、収縮して関節を曲げるという本質的な働きをしています。と同時に、筋および腱は、からだの末梢部の状態を神経中枢である脳や脊髄に伝える発信源でもあります。

すなわち、“背伸び”の動作で、筋や腱が引き伸ばされる。それとともに筋や腱の組織内にあって感知器として働く特殊な構造物(”筋紡錘”)も引き伸ばされ、“変形”される。その機械的変形が刺激となって感知器から信号が発信されます。その信号は、神経線維を通じて神経中枢である脳や脊髄に伝えられます。信号を受けた神経中枢では、その信号の種類や質、程度に応じて適切に対応することになります。

さて以下、筋組織内にある感知器が刺激され、発信する様子を見ていきます。

筋は、収縮能力のある筋線維の集まりですが、筋組織の中には筋線維の束の間に、筋線維と平行するようにして「筋紡錘」と呼ばれる構造物があります(写真)。顕微鏡下で外見が「紡ぎ糸巻き」のように見えるのでこの名があります。

写真

それぞれの筋での筋紡錘の密度は、手や足のような微妙な働きが要求されるところで高いことが知られています。特に、手の第2~第5指の付け根の関節を跨ぐ円柱状でミミズ様の筋(虫様筋と呼ばれる)では特に高いようです。

この筋紡錘の中には、筋紡錘内線維と呼ばれる独特の構造をした線維があります。これら筋紡錘内線維には2種類の神経が分布していて、一つは筋紡錘内線維を収縮させるよう中枢側から信号を伝える「運動神経」であり、いま一つは筋紡錘内線維のふっくらした部分に巻き付いていて、そこが変形したときに“変形した”という機械的情報を電気信号に変えて中枢側に知らせる「知覚神経」です。

これら構造物は、筋紡錘が伸ばされる“速度”と筋紡錘の“長さ”を感知して中枢に伝える働きをしていて、“速度”はふっくらした方の線維が、また“長さ”はほっそりした方の線維が感知するように役割を分担しているようです。

筋紡錘ならびにそれに分布している神経系が実際にどのような働きをしているかを最も身近な例、筋が伸ばされる、“伸長される”という状況で見てみます

筋が伸長されると、平行して走っている筋紡錘も同様に伸びます。その結果、筋紡錘の中の「ふっくら部分」が変形されます。発信する信号の強さは、その変形する速度で変わります。筋のゆっくりとした伸長では、強い信号は発せられませんが、急激に伸ばされると強い信号が発せられます。

急激に伸ばされて強い信号が神経中枢に伝わると、反射的に中枢から信号が送り返され、その筋紡錘を含んでいる当の筋を収縮させるようにします。それはその筋が急激に過度に伸ばされると傷害を受ける可能性があるので、それを防ぐように働く、つまり生体の防御機構の一つとして働くわけです。

ここで“神経中枢に伝わる”と述べましたが、一部は脳へも伝えられ、それなりに重要な働きをしていますが、ここでいう中枢は主に“脊髄”です。信号を脳まで届けていては、神経線維を幾つも代えて伝えることになり、道遠く対処が遅れる可能性があります。

そこで筋を保護するためには反射的に素早く対処する必要があり、脊髄レベルで処理されます。この場合は知覚神経から運動神経に1回だけ神経線維を代えればよいようになっているわけです。この反射反応は「脊髄反射」と呼ばれています。

我々が目指している体操の中で、反動をつけた運動の「弾性ストレッチング」では、この「脊髄反射」が作動します。その結果、伸ばすべき筋をむしろ収縮する方向に仕向けることになります。このことはまた、筋を骨に繋いでいる腱に一層の負担を掛ける結果につながります。激しい運動を急に始めてアキレス腱を痛めることはよく耳にすることです。

この事実は、「静的ストレッチング」が重要であることを意味しています。すなわち、「静的ストレッチング」では、「脊髄反射」を作動させることなく、筋の緊張をほぐすことに繋がるからです。

日常、誰しも経験する「脊髄反射」の例を挙げましょう。適度に温もった電車の座席で、揺りかごに揺られているような快い気分となることがあります。その折、うとうとツ として急に頭が倒れかかった瞬間、ハッ と目覚めて……、細目を開けて、チラリ と周囲を見回す。首の後方にある筋の筋紡錘が一役を買った「脊髄反射」の例と言えるでしょう。

なお、筋紡錘の中で収縮能のある筋紡錘内線維には、運動神経が分布していています。その働きで、筋紡錘の緊張度を変えて、“感度”を調節しています。すなわち、電熱器でサーモスタットのオンーオフの設定温度を変えるようなものです。

腱は、別の形で運動制御機構の役目を果たしておりますが、続けて次回に見ていきます。
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