愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

からだの初期化を試みよう 32 アローン操体法 余話-2 ウオーキング-2

2016-02-18 10:34:06 | 健康
‘歩く’ことは、本来ヒトに備わった能力の一つです。今日、健康増進を目して、積極的に歩く‘散歩’が推奨され、また広く親しまれています。本項では、まず‘歩行’について概観し、さらに健康体操としての‘散歩‘の意義を少しなりとも高めることができれば と一工夫を加えた歩行法をも提起します。

まず、通常の歩行での下肢の大まかな動きを見てみます(写真1)。写真1は、歩行運動の1全歩行周期を示しています。通常の歩行運動では、一方の片足が踵を地につけ(踵着地)、その足が次に踵着地するまでの動きの期間を1周期とします。都合、2歩の歩数に相当します。

写真1:全歩行周期


写真1で実際の歩行運動を見ていきます。右足は踵着地(右:踵着地)後、体重を支えつつ身体を前に進めていきます。その間、その足は‘立脚相’にあります。その途中、他方の左脚は、地面から足先を蹴りだし(左:蹴りだし)、‘遊脚相’に入ります。

左足の踵が地に着き(左:踵着地)、‘立脚相’に入り、体重を支えながら前進する間に、右足は地面を蹴りだし(右:蹴りだし)、‘遊脚相’となります。最後に右足踵が着地(右:踵着地)して、1歩行周期を終えます。

歩行運動で、身体の前進移動を推進する主な力は、足の‘蹴りだし’により生じた力、遊脚相での下肢の前方への振れによる慣性力、立脚相にある脚の推進力、さらに全身が前進移動する慣性力などである。

前進移動の推進力は、下肢の働きのみによるのではありません。下肢の動きに歩調を合わせて、全身の各部も前進を推進するように規則的な動きをします。

まず、歩行中は、前進移動を促進するように、上半身が前傾姿勢となります。この点については、余話-1 背伸び(12)の稿も参照して下さい。

さらに、例えば、右足の踵着地後の立脚相では、着地した足部を基点にして、上半身が反時計方向に回旋するよう右腕・右肩を前方に、一方、左腕・左肩を後方に振って、遊脚相にある左脚の前方への振れを加速・促進しています。すなわち、上半身と骨盤以下の下半身は逆方向の回旋運動をして身体の前方推進を助けています。

他方、踵着地の際、踵と地面との衝撃により、前方推進にブレーキが掛かることも忘れてはなりません。その際の衝撃を緩衝する機能も働きだします。

歩行周期のうち、約20%の時間は、両足が同時に地に着いている時期です。しかし残り80%の時間では、左右それぞれ40%宛、一方が遊脚相にあり、他方の立脚相では片足で立つことになります。その間、重心の左右移動を伴い、姿勢が不安定で、身体は左右に揺れます。そこで姿勢を維持するよう平衡機能が働きます。

立脚相での片足立ち期間のほぼ中間で、前方へ移動する重心が体軸と重なる時点では、重心および頭頂が最も高くなります。それはまた片足で身体の重み(‘体重’そのものではない)を最大に受けている時点でもあります。

以上のように‘歩行’運動においては、身体の前進移動の推進、地面との衝撃の緩衝、上下・左右の揺れの抑制等々、総合的な神経・筋活動により、それぞれの機能が統合されて、より平滑な歩行運動が達成されていることになります。

ただ、‘歩行’運動からなる‘散歩’では、身体に掛かる負担のほとんどが身体下部に集中していることが容易に想像できます。特に、一万歩を超すような、運動量の大きい散歩の場合、健康的な「からだのケア」を考える時、念頭に置いておくべきことでしょう。

次回、歩行運動の各相で具体的に動員される筋群・負担の軽重について見ていきます。
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からだの初期化を試みよう 31 アローン操体法 余話-2 ウオーキング-1

2016-02-09 16:12:58 | 健康
<本ウオーキング項の結論>
結論としてお勧めメニューを以下に提示して、以後、その根拠について考えを述べます。ウオーキングと言えば、まず、‘散歩’です。

散歩の開始時には、まず“背伸び”を行い、背筋を伸ばす、
1. 散歩の終了時、‘散歩のやりっぱなし’でなく、“背伸び”を2、3回行う、
2. 散歩の終了後、数時間以上の間をおいて、望むらくは、翌朝の活動(仕事)開始前に、
  (i) 「アローン操体法」第1部 [A]節 胴周り静的ストレッチング(注1) を実施する、
  (ii) 「アローン操体法」第1部の全項目 静的ストレッチング(注2) を実施する、
  (iii) 時間が許すなら、「アローン操体法」の全項目(注3)を実施する。

「アローン操体法」を勧める理由は、それが首から下、手指先から足つま先に至るほとんどすべての筋骨格系に関わる静的および動的ストレッチングから成り立っており、バランスのとれた運動法(注4)だからである。
・・ 注1) 「からだの初期化を試みよう 3 」
・・ 注2) 「からだの初期化を試みよう 4~10 」
・・ 注3) 「からだの初期化を試みよう 3~10、12~18 」、 
・・ 注4) 「からだの初期化を試みよう 11 」 を参照。        
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

‘散歩’は、最も身近な有酸素運動の一つです。‘散歩’くらい と簡単に考え、侮ってはいけません。特に、1万歩前後またはそれを越す散歩の場合、‘からだ’に対して偏った負荷が掛かり、‘散歩のやりっぱなし’では、却って‘からだ’にマイナス効果をもたらすことも考えられます。

‘散歩’では、下肢ばかりでなく、腰周囲の運動系にも多大の負荷が掛かります。それら負荷がどのようなもので、またそれを解消する術はどうか? 

上記の結論は、偏った負荷の解消法の1例としての運動を段階的に挙げたものです。以後、結論に挙げた事項の根拠に関わる事柄を述べていきます。
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からだの初期化を試みよう 30 アローン操体法 余話-1 背伸び (12)

2016-02-03 14:48:36 | 健康
朝、起き掛けに立位をとり“背伸び”を実施することは、未だ活動に適していないであろうからだの状態を、活動状態に変えるアイドリング効果を表すであろうことは、座位での場合と同様です。

立位の“背伸び”では、座位の場合と異なり、胸部ばかりでなく、腹部も伸展させることを忘れてはならない。腹部の循環状態に対して、また内臓諸器官の機能に対しても好影響を及ぼすであろうことが期待できます。

これから述べることは、立位での“背伸び”の応用編としての’体操‘です。

壮年期の ‘前屈した腰’姿勢は、過去の長い期間にわたる生活習慣の結果生ずるものと考えてよいでしょう。それを矯正する方法として、立位の“背伸び”の応用を考えていきます。

第一歩は、“背伸び”動作による姿勢の変化(ビフォー/アフター)を自ら確認することから始めます。

起立した状態の上半身が見える大きさの鏡の前で、鏡が自分の真横となるように立位をとります。自然体で直立して、特に背筋に注意して、真横の鏡に映った自分の姿勢を見ます。

以前に“背伸び” の稿の最初で示した“目覚めの刻”の写真を思い出して下さい(“背伸び"(1)の稿参照)。その写真と同様に手指を組んで、両手を頭上に挙げます。違う点は自然体で直立して、両手を真上に伸ばすことです。

この姿勢で、のびのびと天に向けて“背伸び”をします。‘琴バウアー’のように上体を反らすのではありません。

顔は天を仰いで、目は両手を見るようにします。ゆっくりと深呼吸を3、4回繰り返します。息を吐き出すのに合わせて、両足をやや爪足立ち気味にしながら、両手をさらに天に押し上げていきます。呼吸を止めて、力を入れ、ウーンと息を詰めることのないように注意しましょう。

続いて、上半身の胴体は“背伸び”したときの姿勢を保って、力を抜いて、両手をゆっくりと降ろします。自身の姿勢を、真横の鏡で確認してみてください。

“背伸び”の前に自然体で横から見た姿に比較して、“背伸び”後には腰から上位で背筋がシャンと伸びて、直になっていることに気づかれることでしょう。この“背伸び”前後での背筋変化の程度は、少なくともこれ以後の訓練で矯正できる“伸びしろ”と考えてよいでしょう。

矯正法の実際:
訓練による効果を期待するならば、一時の“背伸び”で終わるのではなく、シャンとした背筋をできるだけ長い時間維持する必要があります。そのためには、日常生活の中に溶け込ませて、できるだけ自然体で長い時間維持できるよう工夫が要ります。以下その要領を紹介しましょう。

日常、誰しも日常茶飯事として行っていることは「歩行 ウオーキング」です。毎日の日課として散歩を楽しんでいる人もいるでしょう。散歩による「歩行」は、健康管理の上で推奨されている基本的な有酸素運動の一つです。

これから活用しようとする「歩行」は、その目的・形態、また時間・時刻も問いません。日常的な生活の中での「歩行」、例えば、勤め人では朝夕、家と駅またはバス停間の行き来、あるいは家事として買い物での家と売店との行き来など とにかく日常の歩く機会を利用して実践します。

ここでは、散歩を想定して述べます。適宜、各自の日常活動リズムに合わせて応用を広げて下さい。心機一転、日課として散歩を始めることができるならば、なお結構でしょう。

散歩開始の直前に、先に述べたように、数秒間、ゆっくりと立位での“背伸び”を行います。両手を降ろし、大きく息を吸って、胸を張ります。シャンとした背筋を保ったまま、胸を張って「歩行」を始めます。これがすべてです。何の苦もありません。どこでも、いつでも実践が可能です。

ただ、胸を張ると、つい肩に力が入り、不自然な姿勢となりがちです。胸を張る程度は、不自然とならないよう体験を通じて調整していきましょう。回を重ねるうちに肩の力も抜けていきます。

初めのうちは、「歩行」を続けているうちに、徐々に姿勢がもとの木阿弥となっていく場合があります。神経質になることはないが、気づいた折に立ち止まって、今一度、立位での“背伸び”を行い、態勢を立て直して、続けていくとよいでしょう。

実行するに当たって、注意点を2,3補足しておきます。

まず、背筋をシャンと直にして「歩行」する際、同時に意識的に足をしっかりと踏ん張って、大地を蹴って前に進むように心がけることも大切です。

背筋をシャンと伸ばして散歩している人を見たとき、「元気やなあ!精気が漲っているなあ!」と感慨を覚えます。これはこのような歩行動作に因るのではないでしょうか。

立ち止まった際には、股関節と膝関節を真っすぐに伸ばして立つこと。足底に力を入れ、大地の上にシャンと立つよう心がけることも大切です。自ずと背筋は伸びます。股関節・膝関節が緩むと、上半身も緩んで、自然に腰も前屈する傾向となります。

この点は、訓練のための「歩行」の途中に限らず、普段に立位をとる場合でも、心掛けたいことです。

さらに、「歩行」運動そのものが、‘腰を曲げる方向の力を生ずる’ことを念頭に置いて頂きたい。つまり、「歩行」時には、訓練の意図とは逆方向に働く力が生じます。それは大きく2つ挙げられます。

第1は、「歩行」の際、前への移動を促進するために、からだの自然の対応として、上体が前傾姿勢となります。歩行速度を早める、または坂道を上る場合は特にその傾向が強くなります。

逆に、後ろ向きで歩くと、からだは後傾姿勢となります。特に、登り道の場合、周囲の道路状況が許すなら、後ろ向きで歩くことは一考に値する工夫と言えるでしょう。

第2は、前回 [”背伸び”(11)] で述べたように、前進動作では、腸腰筋が、骨盤上位や腰椎を起点として下肢を前に引っ張るように働いています。逆の言い方をすれば、下肢が、腸腰筋を通じて骨盤上部および腰椎を前屈させる方向に働いているということです。

訓練に当たって、これら逆方向の力に抵抗して姿勢を保つよう努力することは要求されます。しかしこれは、さほど難儀なことではありません。

生後数か月頃から、両親や周囲の人々の愛の鞭を受け、数か月に及ぶ訓練を重ねてやっと直立できた記憶(?)を呼び起こして下さい。成長期の小児でさえ、直立するという目標を達成するのに数か月を要しています。

ましてや壮年期、やや多めの期間を要することは覚悟の上、気長に続けていくことが成功の鍵でしょう。効果は、必ず現れます。

[余談]
1) 訓練の開始早々には、背筋を直に保つと、腰に、“痛み”に至ることはないが、“違和感”を覚えます。短くなり、硬くなっている腸腰筋を意識的に引き伸ばしているわけで、当然の成り行きでしょう。2,3か月も経てば、このような違和感はなくなります。

2) 実際に、「両足を踏ん張って、背筋をシャンとして、胸を張る気持」 で歩くと、いかにも「気張っている、偉そうに歩いている」 という錯覚・自意識に襲われます。しかし、その折の姿勢を鏡に映してみれば、その姿勢が何ら [不自然な姿勢ではなく、むしろ自然な、素直な姿勢である] ことに気づくでしょう。

脳では、<俯き加減にして上目遣いに見た世界>と<姿勢を正して真正面に見た世界>の落差に対して、慣れ親しんだ前者が標準であると捉えるようです。続けていくうちに正常な感覚を取り戻します。

余話-1を締めるに当たって:
立位の“背伸び”は、本稿の大きなテーマである「アローン操体法」の第1部、第1項に当たる最初の運動法である点を追記しておきます。

向後、「運動とからだ」に関し、もう少し考えを巡らせていくつもりです。筆者の考え違い、または疑問点などご指摘、コメント頂けると有難く思います。コメントを期待しています。
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