先に胎児期以降、脳内での神経ネットワーク、すなわち“塗り絵用キャンバス”が出来上がる過程を追ってきました。その中で、“ニューロン同志のつながりが出来て….云々”と再三述べてきました。シナプス形成は、 “学習する”ことに関わる根本的な点と言えますので、このシナプス形成過程について、少し掘り下げて見ていきます。
軸索や樹状突起の発達は、方向性はなく、“ヤミクモ(?)に”進んでいて、軸索の先端は、アメーバのように蛇行しながら成長していくようです。勿論、他のニューロンとのつながりを作り、ネットワーク構築にあずかるという目的で成長しているわけでしょうが。
あるニューロンの軸索先端が、成長し、伸びていった先で別のニューロンに近づくと、時には肘鉄を食らい反発され、遠ざけられることもある。馬が合えば、“相思相愛”となり、さらに接近していき、接着、結合、シナプス形成へと進んでいく と。
結合が成立した暁には、下位の相手ニューロンは結合部位でBDNFを遊離する。このBDNFは、結合の間隙を移動していき、伸びてきた軸索に取り込まれて、軸索の中を上流に流れていき神経細胞体に至ります。そこでシナプス形成が伸展するように上位の細胞機能の調整をする と。
BDNAは、神経幹細胞の分化促進や、軸索、樹状突起の成長を促進するという働きばかりでなく、シナプスが形成される過程では、下位のニューロンの意思を上流に伝えるメッセンジャー役もこなしていることになります。
さて、接近したニューロン同志がシナプス形成に向けて“相思相愛”の仲となる条件とは何であろうか?恐らく、それらニューロンを取り巻く外部環境の何らかの変化が主たる原因に違いないと思われます。外部環境の変化とは、本人の意思・意図によってもたらされた変化ではないでしょうか。
このシナプス形成に至る前の接近する状況は、まさしく“相思相愛”でテレパシーを通じて想いを伝えているような‘相惹きあう’状態にあるという。接近して偶然につながるものではないようです。
「なせばなる なさねばならぬ 何事も ならぬは人の なさぬなりけり」(江戸期、上杉鷹山)と、やる気の大切さが説かれています。シナプス形成の環境作りには、まさにこの‘なそう’とする本人の意思・意図が大事であるということでしょう。
以上の議論を踏まえて、“学習する”ということの状況の再確認を兼ねて、具体例でシミュレーションを試みてみます。
英語の学習を始めて2,3年が経っている一小学生を想像します。この生徒が新しい英単語“red:赤い”を学習・記憶しようとしている状況です。
まずキャンバスについて。
キャンバスは、生涯のいずれの時点であれ、シナプス形成・消滅が繰り広げられている中での一時点です。つまり“常ならず変転の渦中”にある一時点での神経ネットワークであることをまず再確認しておきます。
この生徒は、日本語の“赤い”という色の概念、またアルファベット”a, b, c, ~x, y, z”の知識は持っており、アルファベットの一定の組み合わせで英単語が出来上がること などなど、十分に理解できるレベルにあります。
ということは、これらの情報に関わる神経ネットワークがすでに出来上がっていて、記憶として納められていることに他なりません。
すなわち、この生徒のこの時点での‘塗り絵用キャンバス’は、色とかアルファベットなどの関連する無数のニューロンがシナプスを形成し、ネットワークとしてまとまって入っている三次元の構造体を想像するとよいでしょうか(前回に示した写真1、2を参照)。
さらにこの‘塗り絵用キャンバス’の中では、すでに繋がりの完成したシナプスとは別に、絶えず相手を求めて成長し、伸びている‘婚活中’の軸索や樹状突起も存在している状況です。
一方、‘ミツバチ’役のBDNFはどうか?この生徒は成長期にあります。したがって、‘塗り絵用キャンバス’の中でニューロンを浸している脳脊髄液中にはBDNFが豊富に存在する環境と考えられます。神経幹細胞の分化や軸索の成長などには適した環境でしょう。
今、この生徒が、英単語“red:赤い”を学習し覚えようと決心します。これは生徒本人の意思・意図であり、神経ネットワークに対して“外部環境の変化”をもたらす原因となるでしょう。
この “外部環境の変化”は、他ならぬ色の概念やアルファベットなどの関連情報に関わる無数の神経細胞やシナプスによるネットワークが詰まった‘塗り絵用キャンバス’の中で適切に処理されるようになるのが自然の成り行きと言えるでしょう。
つまり‘塗り絵用キャンバス’内にあって‘婚活中’の細胞、軸索や樹状突起の間での新しいシナプス形成が促されることになります。勿論、“red:赤い”の概念を形作るには、複数のニューロンが駆り出されてネットワークを構築することになるでしょう。
近づき‘相引き合う’ようになった“相思相愛”の関係は、学習を‘繰り返す’ごとに一層深くなり、やがてシナプス形成、ネットワーク構築と進み、記憶として固定されていくことになる。しかし、‘繰り返し’学習することがなければ、出来たつながりは消滅していく運命となる。
“継続は力なり”とよく言われます。記憶を確かなものにするのに、継続して、繰り返し実行(学習)することが重要な所以はここにあると言えるでしょう。
以上、“学習する”ことについて述べましたが、これまでに述べてきたことと運動とはどのような関わりがあるのか、続いて考えていきます。
軸索や樹状突起の発達は、方向性はなく、“ヤミクモ(?)に”進んでいて、軸索の先端は、アメーバのように蛇行しながら成長していくようです。勿論、他のニューロンとのつながりを作り、ネットワーク構築にあずかるという目的で成長しているわけでしょうが。
あるニューロンの軸索先端が、成長し、伸びていった先で別のニューロンに近づくと、時には肘鉄を食らい反発され、遠ざけられることもある。馬が合えば、“相思相愛”となり、さらに接近していき、接着、結合、シナプス形成へと進んでいく と。
結合が成立した暁には、下位の相手ニューロンは結合部位でBDNFを遊離する。このBDNFは、結合の間隙を移動していき、伸びてきた軸索に取り込まれて、軸索の中を上流に流れていき神経細胞体に至ります。そこでシナプス形成が伸展するように上位の細胞機能の調整をする と。
BDNAは、神経幹細胞の分化促進や、軸索、樹状突起の成長を促進するという働きばかりでなく、シナプスが形成される過程では、下位のニューロンの意思を上流に伝えるメッセンジャー役もこなしていることになります。
さて、接近したニューロン同志がシナプス形成に向けて“相思相愛”の仲となる条件とは何であろうか?恐らく、それらニューロンを取り巻く外部環境の何らかの変化が主たる原因に違いないと思われます。外部環境の変化とは、本人の意思・意図によってもたらされた変化ではないでしょうか。
このシナプス形成に至る前の接近する状況は、まさしく“相思相愛”でテレパシーを通じて想いを伝えているような‘相惹きあう’状態にあるという。接近して偶然につながるものではないようです。
「なせばなる なさねばならぬ 何事も ならぬは人の なさぬなりけり」(江戸期、上杉鷹山)と、やる気の大切さが説かれています。シナプス形成の環境作りには、まさにこの‘なそう’とする本人の意思・意図が大事であるということでしょう。
以上の議論を踏まえて、“学習する”ということの状況の再確認を兼ねて、具体例でシミュレーションを試みてみます。
英語の学習を始めて2,3年が経っている一小学生を想像します。この生徒が新しい英単語“red:赤い”を学習・記憶しようとしている状況です。
まずキャンバスについて。
キャンバスは、生涯のいずれの時点であれ、シナプス形成・消滅が繰り広げられている中での一時点です。つまり“常ならず変転の渦中”にある一時点での神経ネットワークであることをまず再確認しておきます。
この生徒は、日本語の“赤い”という色の概念、またアルファベット”a, b, c, ~x, y, z”の知識は持っており、アルファベットの一定の組み合わせで英単語が出来上がること などなど、十分に理解できるレベルにあります。
ということは、これらの情報に関わる神経ネットワークがすでに出来上がっていて、記憶として納められていることに他なりません。
すなわち、この生徒のこの時点での‘塗り絵用キャンバス’は、色とかアルファベットなどの関連する無数のニューロンがシナプスを形成し、ネットワークとしてまとまって入っている三次元の構造体を想像するとよいでしょうか(前回に示した写真1、2を参照)。
さらにこの‘塗り絵用キャンバス’の中では、すでに繋がりの完成したシナプスとは別に、絶えず相手を求めて成長し、伸びている‘婚活中’の軸索や樹状突起も存在している状況です。
一方、‘ミツバチ’役のBDNFはどうか?この生徒は成長期にあります。したがって、‘塗り絵用キャンバス’の中でニューロンを浸している脳脊髄液中にはBDNFが豊富に存在する環境と考えられます。神経幹細胞の分化や軸索の成長などには適した環境でしょう。
今、この生徒が、英単語“red:赤い”を学習し覚えようと決心します。これは生徒本人の意思・意図であり、神経ネットワークに対して“外部環境の変化”をもたらす原因となるでしょう。
この “外部環境の変化”は、他ならぬ色の概念やアルファベットなどの関連情報に関わる無数の神経細胞やシナプスによるネットワークが詰まった‘塗り絵用キャンバス’の中で適切に処理されるようになるのが自然の成り行きと言えるでしょう。
つまり‘塗り絵用キャンバス’内にあって‘婚活中’の細胞、軸索や樹状突起の間での新しいシナプス形成が促されることになります。勿論、“red:赤い”の概念を形作るには、複数のニューロンが駆り出されてネットワークを構築することになるでしょう。
近づき‘相引き合う’ようになった“相思相愛”の関係は、学習を‘繰り返す’ごとに一層深くなり、やがてシナプス形成、ネットワーク構築と進み、記憶として固定されていくことになる。しかし、‘繰り返し’学習することがなければ、出来たつながりは消滅していく運命となる。
“継続は力なり”とよく言われます。記憶を確かなものにするのに、継続して、繰り返し実行(学習)することが重要な所以はここにあると言えるでしょう。
以上、“学習する”ことについて述べましたが、これまでに述べてきたことと運動とはどのような関わりがあるのか、続いて考えていきます。