次にやはり『詩経』から桃夭(とうよう)を読みます。
桃夭 桃夭(とうよう)
(一)
桃之夭夭 桃(もも)の夭夭(ようよう)たる
灼灼其華 灼灼(しゃくしゃく)たる其の華(はな)
之子于帰 之(こ)の子 于(ゆ)き帰(とつ)ぐ
宜其室家 其の室家(しつか)に宜(よろ)しからん
(二)
桃之夭夭 桃(もも)の夭夭(ようよう)たる
有蕡其実 蕡(ふん)たる其の実(み)あり
之子于帰 之(こ)の子 于(ゆ)き帰(とつ)ぐ
宜其家室 其の家室(かしつ)に宜(よろ)しからん
(三)
桃之夭夭 桃(もも)の夭夭(ようよう)たる
其葉蓁蓁 其の葉 蓁蓁(しんしん)たり
之子于帰 之(こ)の子 于(ゆ)き帰(とつ)ぐ
宜其家人 其の家人(かじん)に宜(よろ)しからん
現代語訳
(一)
若々しい桃の木、赤く輝く花。
この娘が嫁げば、 家庭はうまくいく。
(二)
若々しい桃の木、ふっくらした実。
この娘が嫁げば、 家庭はうまくいく。
(三)
若々しい桃の木、盛んに茂る葉。
この娘が嫁げば、 家庭はうまくいく。
解説(抜粋)
桃の花は生命力の象徴であり、はちきれんばかりの桃の実は、花嫁のふくよかな体、そしてよい子を授かることを暗示しているようです。青々と生い茂る葉は、一家繁栄の象徴です。遠い古の中国で、村人たちに祝福されてお嫁に行く娘の姿が彷彿としてきます。
(石川忠久 監修 NHK『新漢詩紀行』ガイド 1、2010から)