愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

閑話休題 10 漢詩を読む 『詩経』3

2015-06-24 10:12:28 | 漢詩を読む

次にやはり『詩経』から桃夭(とうよう)を読みます。

桃夭      桃夭(とうよう)
(一)
桃之夭夭   桃(もも)の夭夭(ようよう)たる
灼灼其華   灼灼(しゃくしゃく)たる其の華(はな)
之子于帰   之(こ)の子 于(ゆ)き帰(とつ)ぐ
宜其室家   其の室家(しつか)に宜(よろ)しからん
(二)
桃之夭夭   桃(もも)の夭夭(ようよう)たる
有蕡其実   蕡(ふん)たる其の実(み)あり
之子于帰   之(こ)の子 于(ゆ)き帰(とつ)ぐ
宜其家室   其の家室(かしつ)に宜(よろ)しからん
(三)
桃之夭夭   桃(もも)の夭夭(ようよう)たる
其葉蓁蓁   其の葉 蓁蓁(しんしん)たり
之子于帰   之(こ)の子 于(ゆ)き帰(とつ)ぐ
宜其家人   其の家人(かじん)に宜(よろ)しからん

現代語訳
(一)
若々しい桃の木、赤く輝く花。
この娘が嫁げば、 家庭はうまくいく。
(二)
若々しい桃の木、ふっくらした実。
この娘が嫁げば、 家庭はうまくいく。
(三)
若々しい桃の木、盛んに茂る葉。
この娘が嫁げば、 家庭はうまくいく。

解説(抜粋)
 桃の花は生命力の象徴であり、はちきれんばかりの桃の実は、花嫁のふくよかな体、そしてよい子を授かることを暗示しているようです。青々と生い茂る葉は、一家繁栄の象徴です。遠い古の中国で、村人たちに祝福されてお嫁に行く娘の姿が彷彿としてきます。
 (石川忠久 監修 NHK『新漢詩紀行』ガイド 1、2010から)
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閑話休題9 漢詩を読む 『詩経』から(2)

2015-06-21 10:16:33 | 漢詩を読む

先に取り上げた「采葛」では、恋人(かな?)に対してのますます募る思いを順次に長い期間を挙げて表現しようとしています。すなわち、お目にかかれぬ一日が、「三月」、「三秋」および「三歳」に相当する と。ここで「三月(ミツキまたはサンゲツ)は3か月として異論はない。続く「三秋」および「三歳」が、具体的にいかなる期間を表しているのかが問題なのだが、それが“読む”人によって異なる点が面白いのである。「三秋」を“1年”、「三歳」を“3年”、と解釈したとき、“ミツキ、イチネン、サンネン”と順次に長くなることからすんなりと(?)胸に入ってくるように思われるのだが、話はそう単純ではなさそうである。ここで先達たちの“読み方(解釈)”を検討してみたいと思います。

先ず「三秋」。各種辞典類にはその意味として、第1に「秋季の3カ月。初秋、仲秋、晩秋。陰暦7・8・9月」とある。そのまま前掲の詩に当てはめるなら、3カ月がダブることになる。第2に「3回秋を過ごすこと。3年。」とあるが、この場合、3年がダブることになる。

先の川合康三師は、現代語訳で「一日お会いできないと、三度の秋も合わないみたい」とし、第2の意味で解釈されておられる。ただし、期間の数値として理解するのではなく、“「月」と「歳(年)」との間に“季節”という単位をおいて、時間が次第に長くなることを表している“ としている。すなわち、デジタルの間にアナログ思考を含めた“読み方”と言える。その他、「秋」を3か月とし、「三秋」をその三つ分で9か月と解釈する場合もあるようであるが、筆者はこの例に接していない。

次に「三歳」。「歳」は、大辞林では、「年齢、年数を数える助数詞」とあり、「三歳」を3年と読むのに抵抗感はない。しかし碇豊永師は、“「三歳」を「3生涯」、「3世」と解釈し、1世を35年とみれば、3世で約100年になる”としている。「三秋」は3年と読んで、前掲詩については“3カ月―3年―100年”と順次に期間が長くなるように読んでおられる[Web上、碇豊長:『詩詞世界 二千三百首 詳注』から]。確かに諸橋『大漢和辞典』では、「歳」について、古漢文資料中「一生、生涯」と読まれている例のあることが挙げられており、納得のいく解釈と言える。

「三秋」について、筆者は次のように読みたいのだが如何であろうか?直接的な意味は「秋季の3カ月」とする。一方、季節の推移は春夏秋冬の1年を単位として巡っており、一たびの秋{三秋}は循環単位の1年に包含されることから、敷衍して“1年を意味する”と採る。この“読み”が許されるなら、前掲の詩における期間は、順次に“3か月―1年―3年”と、すんなりと読めることになる。ただ、筆者の調べた辞典類ではこのような意味の記載は見当たらないし、また古漢文資料に用例があるか否かも知らない。

何事か待ち焦がれることが強い場合に使われる、現代に生きる表現として“一日千秋の思い」があるが、この四字熟語「一日千秋」は、「一日三秋」に由来するという。今や100年どころの話ではなくなっているのです。

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閑話休題8 漢詩を読む 『詩経』から(1)

2015-06-18 14:35:08 | 漢詩を読む

漢詩の最も古い詩集と言われる『詩経』の中からいくつか取り上げます。『詩経』とは、中国でかなり古い時代から口承により伝えられて(歌い継がれて?)きた詩3千余の中から3百首ほどを選び編纂されたもので、孔子(前551~前479)が編んだと言われている。したがって作者は不明である。

次の「采葛」は、王という国(今日の洛陽の近く?)で採集された民謡のようである。

采葛   采葛(さいかつ)

 (一)
彼采葛兮  彼(かしこ)に葛(くず)を采(と)る
一日不見  一日 見ざれば
如三月兮  三月(みつき)の如し
 
(二)
彼采蕭兮  彼(かしこ)に蕭(しょう)を采(と)る
一日不見  一日 見ざれば
如三秋兮  三秋(さんしゅう)の如し

 (三)
彼采艾兮  彼(かしこ)に艾(がい)を采(と)る
一日不見  一日 見ざれば
如三歳兮  三歳(さんさい)の如し

[現代語訳]

  クズ摘み

(一) 
 クズを摘みます。
 一日お会いできないと、三月も合わないみたい。
  (二)
 カワラヨモギを摘みます。
 一日お会いできないと、三度の秋も合わないみたい。
  (三)
 ヨモギを摘みます。
 一日お会いできないと、三歳(みとせ)も合わないみたい。

[解説]
 (二)の「三秋」について:「三秋」とは七月から九月までの秋三カ月、あるいは三カ月の秋の三つ分で九カ月、あるいは「あき」を「年」の意味にとって三年など、諸説ある。要は「月」と「歳(年)」の間に季節という単位を置いて、時間が次第にながくなるのをあらわす。章ごとに月、季節、年と長くなることが、いや増す思いに対応する。
    [河合康三編訳『新編 中国名詩選』(岩波書店、2015)に準拠。
但し「解説」の項は一部抜粋]

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試してみよう!からだの初期化  「こむら返り」雑感―1

2015-06-16 15:48:38 | こむら返り

 6月13日、女子サッカーW杯戦でなでしこジャパンはカメルーンを2対1で下してトーナメント戦進出を決定づけました。さらに明日のエクアドルをも下して一位で行くよう心から応援している次第です。ところでカメルーン戦後半40分ごろ、カメルーンの背番号17の選手が「こむら返り」を起こしたようで、なでしこの海堀選手が介抱していました。心温まる光景でした。数分後に立ち上がったカメルーン選手は痛みをこらえるような足取りでベンチに戻っておりました。
 
 TV画面では、海堀選手の背中からの映像でしたので、どのように対処していたか正確には解りませんでした。想像するに、カメルーン選手の脚を伸ばし、足底の爪先側に海堀選手が体重を乗せて足を伸展させる方向にいっぱい力を入れていたようであった。

 運動選手が試合中に「こむら返り」を起こしたのはサッカーばかりでなく、プロ野球のTV観戦でも目撃しました。選手の健康管理の面からも「こむら返り」発現時の対処法は研究すべき問題ではないかと感じております。というのは、これまで目撃したいずれの場合でも、収縮した筋肉を無理矢理に引き伸ばすような対処法でした。このような対処法は適切ではないのでは?却って組織を傷つける結果になるのではないか?と思うからです。

 絶対的に「これ!」と現段階で主張できるわけではありませんが、収縮した筋肉を無理矢理に引き伸ばすことがない一つの対処法の試案として、先に本ブログで提案をしてあります(3月20、21、23日投稿)。その対処法が一般的に有効ということであれば、選手の健康管理にも役に立つものと確信しております。スポーツ界で検討して頂けるよう期待して一文を認めました。
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からだの初期化を試みよう-11 アローン操体法 実際2 バランスのとれた運動を

2015-06-11 14:20:55 | 体操法
 アローン操体法は3部から成り、これまで述べてきた部分は第1部「静的ストレッチング」でした。この一連の「静的ストレッチング」では、手の指先から趾(あしゆび)の先に至るまで、体の動きに関わる筋群を余すことなく、比較的選択的に伸ばすよう設計されています。一通り実践された方は、からだが軽くなったことを実感できたはずです。このような体感は、筆者の経験したその他諸種の運動では得られない感覚です。
 『からだの初期化を試みよう-1』(2015.03.27投稿)に挙げた問題提起に戻って、ここで改めて運動・体操の種類と得られる効果について実際的に考えてみます(下図参照)。健康のために運動・体操を実践する狙いは、筋力、持久力、瞬発力および柔軟性の向上、さらに平衡感覚を養うことに要約できるでしょう。この図は、これら「運動の効果」(下側)と、それらを達成することが期待できる「運動の種類」(上側)を関係つけたものです。


 図中、[ ]内は、それぞれの要素が期待できる最も身近な具体的な運動・体操を示す。
     赤線:アローン操体法; 青線:ラジオ体操第1

 このレーダー図では、各運動の実際の運動量・質から最大に期待できる場合5点として、その他の要素では相対的に1~4 の点を付与します。例えば、アローン操体法(赤線)では、静的ストレッチングの関わる程度は大きく5点。詳細は追って述べますが、弾性(動的)ストレッチングについても5点。下半身(足腰)および上半身の鍛錬については、やや期待量が少なく4点。片足立ちに関しては、関わる程度は低いが、積極的に行うようにしており3点。一方、筋肉トレーニングを目標とする面では1点。
 最も一般的な体操である「ラジオ体操第1(青線)」については、弾性ストレッチングの面が大きく5点。足腰鍛錬の面では4点。一方、静的ストレッチング及び片足立ちの要素はほとんどない(0点)が、上半身鍛錬の面でかなり期待できることから3点。立位での体操であることから、筋力トレーニングの面もある程度期待でき1点。
 以上のように点数は絶対的なものではなく、感覚的な付与であり、また異なる種類の運動について同じ付点5であるから同等の運動量・質を示しているというわけではありません。この図の狙いは、各人が健康のために実践している運動ではどこに重きが置かれているか、さらにバランスの良いものであるかどうかを直感的に知る手立てとしようということです。アローン操体法はバランスがよくとれた運動法であろうことが容易に想像できるでしょう。
 皆さんは健康のためにそれぞれ好みの運動・体操を実践していることでしょう。各人が実践している運動・体操についてこのレーダー図に当てはめて作図してみて下さい。もし偏りがあるなら欠けた部分を補うよういかなる運動・体操を追加したらよいかを考えるヒントを提示してくれるはずです。





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