愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

閑話休題387 漢詩で読む『源氏物語』の歌 (六帖 末摘花)

2024-01-29 09:54:51 | 漢詩を読む

[六帖 末摘花 要旨] (光源氏18歳春~19歳春)

源氏は、夕顔や空蝉のことが心残りである。そんな折、乳母子である大輔の命婦(ミョウブ)から、荒廃した邸で故常陸宮の姫君(末摘花)が独り身で寂しく琴だけを友として暮らしていると聞き、源氏は興味をひかれる。早速、命婦の居所で、末摘花の琴を聞く機会を得た、が手並みのほどはわからない。 

実は頭中将も姫君に興味を持ち、両者が競って文を送るが、何れに対しても梨の礫である。源氏は、命婦の計らいで今一度姫君を尋ね、襖子を挟んで姫君と対坐した。嘆息して訴えたのが次の歌である: 

いくそたび 君がしじまに まけぬらん

             ものな言ひそと いはぬたのみに  (光源氏)            

源氏は、若々しい声の返歌をもらうことが出来、非常に喜び、さらに歌を送ったが、その後返辞はなかった。源氏は、襖子を開けて入り、契りを結ぶが、風情のなさに落胆する。

時は過ぎ、ある雪の降る晩、深夜前に、源氏はそっと姫君を訪ねた。翌朝、源氏は、雪を眺める風をしながら横目で姫君を追った。その顔に驚いた。まず姫君の鼻が並はずれで、象を思わせ、高く長くて垂れて赤みを帯びている。

源氏は、頼えるものなく不遇な姫君に胸を痛めて、以後、姫君の面倒を見続ける。

 

本帖の歌と漢詩 

oooooooooooooo  

いくそたび 君がしじまに まけぬらん 

  ものな言ひそと いはぬたのみに 

  [註] 〇しじま:口を閉じて黙りこくっていること。

 (大意) 幾たび貴女の沈黙に負けてしまったことだろう、それでも貴女が私に物を言うな と言わないことをよいことにして、諦めないでいます。

xxxxxxxxxxxxxxxx  

<漢詩> 

    申訴恋慕心     恋慕心を申訴(ウッタエ)る         [下平声一先韻]  

眷恋幾度送華箋,眷恋(ケンレン) 幾度 華箋(タヨリ)を送ったことか,

何奈無答一悵然。何奈(イカン)せん答無く 一に悵然(チョウゼン)たり。

抓住無言別搭話,搭話(ハナス)別(ナカレ) の言無きに抓住(ソウジュウ)して,

又来申訴豈非緣。 又来たりて申訴す 豈 緣(エン)非やと。

 [註] 〇眷恋:思い慕う; 〇華箋:模様入りの便箋、他人の手紙の敬称; 〇悵然:ふさぎこんでいるさま; 〇抓住:に乗じて; 〇搭話:話しかける; 〇申訴:訴える; 〇豈非:…ではないのだろうか。 

<現代語訳> 

  恋慕の思いを訴える 

思い慕っており、幾度便りを送ったであろう、残念ながら応答はなく、打ちひしがれている。話し掛けないで とは言われていないことを幸いに、又便りを送り、縁がないわけではなかろう と一縷の望みを持って訴える。

<簡体字表記> 

  申訴恋慕心       Shēnsù liànmù xīn   

眷恋几度送华笺, Juànliàn jǐdù sòng huá jiān,    

何奈无答一怅然。 hé nài wú dá yī chàngrán.  

抓住无言别搭话, Zhuā zhù wúyán bié dā huà, 

又来申诉岂非缘。 yòu lái shēnsù qǐfēi yuán.  

oooooooooooooo   

     源氏の訴える歌に対する返歌は次のようであった:

鐘つきてとじめんことはさすがにて答えまうきぞかつはあやなき 

  (大意) しじまの鐘をついてこれで終わりということではないが さりとてお答えをすることが出来ず 私は心苦しく思っています。 

  実は、この返事は、姫君の乳母の娘で侍従と言う気さくな若い女房が、見かねて、姫君の側へ寄って姫らしく代弁したものであった。

 

【井中蛙の雑録】

・日本は、曽て中国より漢詩を含めて漢字を輸入した。漢字に工夫を加えて“カタカナ・ひらがな”を創生、和歌や物語の記述が可能となり、人情の機微「もののあはれ」の表記を可能にした。その絶頂は『源氏物語』にある と(本居宣長)。

・今ここで、逆に「もののあはれ」表現の粋・『源氏物語』“和歌”の“漢詩”への翻訳に挑戦している。出来や如何? 井の底から天空を仰いでいる。

 

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閑話休題386 源氏物語(五帖 若紫) 初草の若葉の上を 紫式部

2024-01-22 10:07:53 | 漢詩を読む

zzzzzzzzzzzzzz 若紫-1  

 

[帖 若紫-1 要旨] (光源氏 18歳)

3月末の頃、源氏は、“おこり”に罹り、療養に北山のさるお寺の修験僧を訪れ、祈祷を乞うた。近くの庭の造りも凝った山荘で、10歳くらいで、一際 麗質を備えた女の児(若紫)が目を引いた。恋しい藤壺の宮によく似ていて、心が惹かれた。

  源氏は、その子を手元に迎え、教養を与えて、未来の理想的な妻として育て上げたいとの強い思いに駆られる。その旨をお寺の僧都を通じて訴えるが、その子の祖母である尼は“…未だ幼齢であることから、…”と、源氏の希望を拒み、源氏の願いは聞き届けられません。源氏は、次の歌を尼に届ける:

 

  初草の 若葉の上を 見つるより 

    旅寝の袖も 露ぞ乾かぬ (光源氏) 

 

僧都に拠れば、尼君は、僧都の姉で、亡き按察使大納言との間に娘がいた。この女人は、藤壺の宮の兄・兵部卿の宮夫人で、娘を設けたが、娘の誕生後間もなく亡くなった。その娘が件の女の子(若紫)であった。即ち、若紫は、藤壺の宮の姪である。

源氏の病は、すっかり良くなり、病苦から解放されて、京に帰って行った。

 

本帖の歌と漢詩 

ooooooooooooo   

初草の 若葉の上を 見つるより 

  旅寝の袖も 露ぞ乾かぬ (五帖 若紫-1) 

  [註] 〇初草:春の初めに萌え出る草、若草;幼い子などに譬えられる。

 (大意) 初草のような若葉の方を見てからというもの お逢いしたい気持ちで 私の旅寝の袖は涙の露で濡れたままで、乾くことはありません。

xxxxxxxxxxxxxxx 

<漢詩> 

   旅途一見鍾情小姬  

               旅途(タビサキ)で一見鍾情(ミソメ)た小姬  [上平声四支韻]

猶如若草麗小姫, 猶如(アタカ)も若草の如く麗しき小姫,

窺視鍾情多所思。 窺視(ヌスミミ)て鍾情(ミソメ)て 思う所多し。  

不能相見辛酸淚, 相見(アイマミエ)ること能(アタワ)ず 辛酸(シンサン)の淚,  

旅睡衣袖無燥時。 旅睡(タビネ)の衣の袖 燥(カワ)く時無し。

 [註] 〇猶如:あたかも…のようだ; 〇窺視:盗み見る; 〇鍾情:

   惚れ込む、好きになる; 〇辛酸:つらい思い; 〇燥:乾いている。

<現代語訳> 

 旅先で見初めた可愛い娘  

恰も若草のようなかわいい女の子、 

ちらっと眼に止まり 惚れ込んでしまい 胸いっぱいである、

直にお逢いすることが叶わず 辛く涙がこぼれ、 

旅寝する衣の袖は涙で濡れたまゝ 乾くことがない。

<簡体字およびピンイン> 

  旅途一见鍾情小姬 Lǚtú yī jiàn zhōngqíng xiǎo jī 

犹如若草丽小姫, Yóurú ruòcǎo lì xiǎo jī,    

窥视鍾情多所思。 kuīshì zhōng qíng duō suǒ .   

不能相见辛酸泪, Bù néng xiāng jiàn xīnsuān lèi, 

旅睡衣袖无燥时。 lǚ shuì yī xiù wú zào shí.

ooooooooooooo   

 

源氏の歌に対して、尼は、次の返歌を送っている:

 

枕結ふ 今宵ばかりの 露けさを 深山の苔に くらべざらなん 

 (大意) 旅寝の枕を結ぶ今宵一晩だけの涙の露を、深山の苔と較べないでください(深山の私どもは、一晩だけではなく、いつも袖が涙に濡れてかわくことはないのです」。

 

【井中蛙の雑録】 

〇『源氏物語』とは、「歌物語」と題した方が的確であるように思われる。総じて795首の歌が含まれるとされ、本帖でも25首あります。本稿では各帖1~3首を選び、漢詩化を進めつつ、物語の要旨を’語って’行くつもりです。

 

zzzzzzzzzzzzzz 若紫-2 

[帖 若草-2 要旨] 

藤壺の宮は、体調が勝れず、宮中から自宅へ退出していた。この機会を逃しては、いつ逢えるか知れないと、源氏は、藤壺の女房・王命婦(ミョウブ)に逢える機会を作るよう迫る。

王命婦の働きで、わずかな逢瀬の機会を持つことができました。しかし永久の夜が欲しいのに、思いの一部さえ告げる時間もなく、却って恨めしい、と別れの時に詠った歌:

 

見てもまた 逢ふ夜まれなる 夢のうちに

     やがて紛るる 我身ともがな    (光源氏) 

 

帝は御所へ帰るよう促すが、藤壺の宮は病の経過もよくなく、里居を続けている。宮自身、生理現象を感じ、また女房達も気づきだした。妊娠3ケ月であった。初秋七月、藤壺の宮は御所へ戻った。帝は最愛の方が懐妊したことを知り、一層 宮に思いを寄せるようになる。 

一方、源氏は、若紫を手元へ迎えるよう僧都や尼君などに掛け合うが、賛同は得られない。尼君の没後、49日過ぎのある日、父の兵部卿が引き取ることになっていた日の早朝、惟光を伴い、若紫を連れ出し、二条院に伴ってきた。

 

本帖の歌と漢詩 

ooooooooooooo  

見てもまた 逢ふ夜まれなる 夢のうちに

     やがて紛るる 我身ともがな

   (大意) こうしてお目にかかっても、これからも二度と逢う夜はめったにないでしょうから、夢としか思えぬこの逢瀬の中で、このまま紛れ 消える我が身でありたい。

xxxxxxxxxxxxxxx 

<漢詩> 

 才成就幽会        才(ヤット)成就せし幽会 

 [上平声五微-上平声四支通韻]  

從教才有会君機, 從教(サモアラバアレ)才(ヤット)君に会う機有り, 

但再逢応是稀奇。 但だ再び逢うは応に是れ稀奇(キキ)ならん。 

無端如夢茲相会, 無端(ハシナクモ) 夢の如くに茲(ココ)に相い会う, 

願此機身熄滅期。 願わくは此の機 身の熄滅(ソクメツ)する期なるを。

 [註] ○幽会:密会; 〇從教:ままよ; 〇稀奇:稀な、珍しい; 〇無端:思いがけず; 〇熄滅:消えてなくなる。

<現代語訳> 

 やっと果たせた逢瀬 

ままよ やっとこうして君に逢う機会を得た、とは言え 再び逢う機会はめったに来ないであろう。思いがけず 夢のようにここでお逢いしている、願わくば この機会にわが身がこのまま消えてなくなってほしいものだ。

<簡体字およびピンイン> 

 才成就幽会        Cái chéngjiù yōuhuì  

从教才有会君机, Cóng jiāo cái yǒu huì jūn ,  

但再逢应是稀奇。 dàn zài féng yīng shì xīqí.    

无端如梦兹相会, Wúduān rú mèng zī xiāng huì, 

愿此机身熄灭期。 yuàn cǐ jī shēn xīmiè qī.

ooooooooooooo   

 

藤壷の宮は、涙にむせ返っていう源氏の様子をみると、さすがに悲しくなって、次の歌を返した:

 

世語りに 人やつたへん 類ひなく 憂身をさめぬ 夢になしても

  (大意) 世間の語り草として、人に語り伝えられるのでしょうか 比べ物がないほど辛いわが身を 目覚めることのない夢の中のことにするとしても。

 

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閑話休題385 源氏物語(四帖 夕顔-2) 優婆塞が 行ふ道を 紫式部

2024-01-15 09:55:39 | 漢詩を読む

[四帖 夕顔-2 要旨] ()

惟光は、源氏が五条の女の所へ通えるよう手はずを整えた。源氏は、女が誰であるかも知らぬまま、狩衣などで変装して、人に知られぬよう夜のうちに行き又帰った。源氏は、これほど心を惹かれた経験がないと思うようになった。

八月十五夜の晩、源氏は、いつも暗い間に別れる苦しさを避け、気楽に明日までも話せるようにと」と言い、所を替えるよう言いだした。翌早朝、老人の阿弥陀如来に呼びかけ、祈りの声が聴かれた。源氏は、私たちも、弥勒菩薩出現の世までも変わらぬ愛の誓いをしましょうと言って、次の歌を詠み、夕顔も返歌を詠う。

優婆塞(ウバソク)が 行ふ道を しるべにて 

   来む世も深き 契りたがふな  (光源氏) 

夕顔が躊躇するのを押して、人目を引かぬ間にと、急いで五条に近い廃院に行った。その夜半、夢枕に現れた怪しい女の物の怪に呪われて夕顔は亡くなる。途方に暮れた源氏は、惟光を呼び、惟光の差配で、遺骸は丁重に火葬に付された。

源氏は二条の院に帰り、夕顔の女房・右近を引き取り、部屋を与えて面倒を見ることにした。右近の折々の話によれば、夕顔は、先に“雨夜の女の品定め”で、頭中将が涙ながらに語った話題の人であった。

 

本帖の歌と漢詩 

ooooooooo 

優婆塞(ウバソク)が 行ふ道を しるべにて 

  来む世も深き 契りたがふな  (光源氏) 

   [註] 〇優婆塞:男性の在家仏教信者。

 (大意) 優婆塞がお勤めしている御仏の道に導かれて、来世でも私たち二人の深い契りを違えないようにしましょう。  

xxxxxxxxxx  

<漢詩> 

 到来世時        来世の時までも    [上平声四支韻] 

随道導師踐, 導師が踐(フ)む仏の道に随(シタガ)い, 

来生弥勒時。 来生の弥勒の時までも。 

愛契両宣誓, 両(フタリ)が宣誓(チカ)いし愛の契り, 

応期心不移。 応(マサ)に心が移(ウツラ)ぬことを期せん。 

 [註] ○道:教え; 〇踐:ふむ、実践する; 〇弥勒:弥勒菩薩(ミロクボサツ)。 

<現代語訳> 

 何時いつまでも 

導師・優婆塞の教えに導かれて、弥勒菩薩の現れるという来世までも。二人で誓った深い愛の契りを、心が変わり、違おう事のないようにしましょう。

<簡体字およびピンイン> 

  到来世时   Dào láishì shí   

随道导师践, Suí dào dǎoshī jiàn,   

来生弥勒时。 lái shēng mílè shí.  

爱契两宣誓, Ài qì liǎng xuānshì, 

应期心不移。 yīng qī xīn bù

ooooooooo  

 

夕顔の返歌:

前の世の 契り知らるる 身のうさに 行く末かけて 頼みがたさよ

 (大意) 私の前世の因縁はこんなものと知られるような辛い人生ですから、今に来世のことを頼みにするのは難儀なことです。 

 

【井中蛙の雑録】 

〇夕顔が、物の怪に取り付かれて亡くなるという事変を予期させるように、その情景設定に“優婆塞が……”の歌を挟む、作者・紫式部の物語構成および作歌にただならぬ力を感じます。

〇“五条に近い某院”とは、ほぼ100年前の百人一首(14番)歌人・河原左大臣こと源融(822~895)が営んだ豪邸・河原院(『こころの詩(ウタ) 漢詩で詠む百人一首』&閑話休題167参照)をモデルにした邸では?とされている。

 

  

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閑話休題384 源氏物語(四帖 夕顔-1) 心あてにそれかとぞ 紫式部

2024-01-08 09:26:20 | 漢詩を読む

[四帖 夕顔-1 要旨] (光源氏17歳秋~冬)

かつて前春宮の未亡人・六条御息所(ミヤスンドコロ)の許へよく通っていた。今、重病を患っている乳母の見舞いに、五条の乳母の息子・惟光(コレミツ)の家の近くに来ている。乳母の家の隣家では青々とした夕顔が勢いよくかかっていて、美しい白い花を咲かせている。

従者が一枝折ってくるよう指示され、門に入り花を折った。すると愛らしい童女が出て来て「これへ載せておあげなさいまし、手で提げては不格好な花ですもの」と言って、薫物で燻らした白い扇を渡した。その扇には上品な字で次の歌が書かれてあった: 

心あてに それかとぞ見る 白露の 

  光添えたる 夕顔の花    (夕顔)

意外だった源氏は、風流遊戯をしかけてきた女性に好感を覚え、惟光に隣家の事を問うが、惟光もよくは知らなかった。

 

本帖の歌と漢詩 

ooooooooo   

心あてに それかとぞ見る 白露の 

  光添えたる 夕顔の花  

 (大意) 当て推量で、あのお方かと推察しています。白露に光をそえている夕顔の花のようで、夕顔の花と同様に美貌なお方。

xxxxxxxxxx  

<漢詩> 

  瓠子     瓠子     [下平声一先韻] 

揣摩真彼位, 真に彼(カ)の位(オカタ)と揣摩(スイサツ)す, 

名声宛神仙。 名声 宛(サナガ)ら神仙。 

茲贈携露瓠, 茲(ココ)に露を携(オ)びし瓠(ユウガオ)を贈る, 

麗質共娟娟。    麗質(レイシツ) 共に娟娟(ケンケン)たり。 

 [註] ○瓠子:ユウガオの花; 〇揣摩:推察する; ○宛:さながら; 〇麗質:美貌; ○娟娟:清らかで美しいさま。

<現代語訳> 

  夕顔の花 

真に彼(カ)のお方と推察致します、その名声が さながら仙人の如くのお方。ここに光り輝く露を置いた夕顔の花を贈ります、この夕顔の花に勝るとも劣ることのない美しいお方へ。  

<簡体字およびピンイン> 

  瓠子        Hùzi

揣摩真彼位, Chuǎimó zhēn bǐ wèi,    

名声宛神仙。 míngshēng wǎn shénxiān.    

兹赠携露瓠, Zī zèng xié lù hù,  

丽质共娟娟。 lìzhì gòng juān juān.   

ooooooooo  

源氏は、自分を光源氏と見て詠んだ歌を寄越されたのに、何か言わねばならぬ として、懐紙に、別人のような字体で次の歌を書き、随身に持たせてやった。

 

寄りてこそ それかとも見め 黄昏に ほのぼの見つる 花の夕顔 

(光源氏)

 (大意) 近寄って、推察どおりのその人か確かめてみたらどうです。黄昏にほのぼのと花の夕顔を見て、その花が誰なのかを。  

  

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閑話休題383 謹賀新年

2024-01-01 10:28:52 | 漢詩を読む

  読者のみなさん、新年 明けましておめでとうございます。 

遥か南の島・喜界島の初日の出を思い描きつゝ、新年のご挨拶を申し上げます。みなさんにとって 今年も佳いお年でありますよう 心より念じております。今後とも よろしくお願いいたします。

 

ooooooooooooo  

     ガジュマルの古木

 

<漢詩> 

   拜元旦初日     元旦の初日(ハツヒ)を拜む   [下平声十一尤韻]

仍然拡大珊瑚島, 仍然(イマナオ)拡大する珊瑚(サンゴ)の島・喜界島,

蔗外榕樹綠陰稠。 蔗(ショ)の外(ムコウ)に榕樹(ヨウジュ) 綠陰(リョクイン)稠(シゲ)し。

遠有茫茫波濤響, 遠く茫茫(ボウボウ)たる波濤(ハトウ)の響(ヒビキ)有りて,

賀正天際初日浮。 賀正(ガショウ) 天際に初日(ハツヒ)浮く。

 [註] 〇仍然:依然として; 〇蔗:甘蔗、サツキビ; 〇榕樹:ガジュマル

  の木; 〇稠:密である、よく茂っている; 〇茫茫:浪や風の音が 

  激しいさま; 〇天際:空の果て; 〇賀正:正月を喜び祝う。  

<現代語訳> 

  元旦の初日を賀する 

今なお生長して止まないサンゴの島・喜界島、

サトウキビ畑の広がる、その向こうにガジュマルの古木が茂る。

遥か遠くに、波の砕ける響きが聞こえて、

新年を言祝ぎ 太平洋の果て 地平線上に明るい初日が顔を覗かせた、

 おめでとう と。 

<簡体字およびピンイン> 

   拜元旦初日        Bài yuándàn chūrì 

仍然扩大珊瑚岛, Réngrán kuòdà shānhúdǎo,

蔗外榕树绿阴稠。 zhè wài róngshù lǜyīn chóu.    

远有茫茫波涛响, Yuǎn yǒu mángmáng bōtāo xiǎng, 

贺正天际初日浮。 hè zhēng tiānjì chūrì .       

ooooooooooooo     

  

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