愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

からだの初期化を試みよう 34 アローン操体法 余話-2 ウオーキング-4

2016-03-23 14:37:50 | 健康
前回触れたように、歩行運動にあっては、大殿筋、腸腰筋、大腿四頭筋、腓腹筋および長拇趾屈筋などが主に働いていることを示しました。これらの筋が特に鍛えられていることを意味しています。さらに言い換えれば、これらの筋に掛かる負荷は大きく、疲労の程度も大きいことを意味しています。

これに対して、下腿前面にあって、足が踵着地に近づくにつれて足首を背屈させ、足先を挙げる働きをしている前脛骨筋は、さほど負担が掛っているようには見えません。

実際上、前脛骨筋は抗重力筋の一つとして、身体を安定した直立姿勢に保つのに重要な役割を果たさなくてはならない筋です。また前脛骨筋が弱くなると、足先を挙げる働きが弱まり、歩行時に物につまずく機会が増える危険性があります。

これらの点を考慮に入れて、前脛骨筋の鍛錬に、また有酸素運動としての意義を高めるのに役立つような歩行法を検討しています。二つの歩行法を紹介しますが、記載の便宜上、以下、新法1および新法2とします。

結論を先に言うなら、一般的な運動目的の歩行では新法1を、さらに有酸素運動としての意義を高めた運動としての散歩では、新法1を基本にしながら、歩行の途中に、新法2を適宜挟んで行くとよいのではないかと考えています。

新法1の趣旨は、大地を蹴って前進する際、足が地を離れるとすぐに、意識的に前脛骨筋を働かせて、足首を背屈させることにあります。以下その様子を写真で見ていきます(写真1)。

写真1 通常の歩行法(上列)と新歩行法1(下列)

写真1では、上の列に通常の歩行、下の列には意識的に前脛骨筋を働かせた場合の新法1を、ほぼ同時点で両者対比させて示してあります。右足の蹴り出しから踵着地までの一歩の歩行運動の過程です。

いずれも普通の速度で歩いています。右足の足首の背屈の具合、地面と足底のなす角度、足先の地面からの距離などに注意して、上下の写真を比較しながら見てください。

足を蹴り出したのち、早い時期の足の部分の状態(写真1-b)は、両歩行法で見かけ上大きな差はありません。しかし下列の新法1では、上列に比べて、下腿に対する足の部分の角度がやや直角に近くなっているように見えます。前脛骨筋が働き出した時期に当たるでしょう。

足が体軸の位置に来たとき(写真1-c)、通常の歩行では踵はなお高く、足先が下方に向いています。新法1では、足底が地面とほぼ平行となっています。以後は、踵着地に至るまで(写真-d, e)、新法1では、足先の上向きの程度が明らかに高く維持されており、また下腿と足部とのなす角度を見ると、前脛骨筋が働いていることがよくわかります。

写真2は、新法2を示しており、やはり右足の蹴り出しから、踵着地までの一歩の過程です。足を蹴り出したのち、すぐに膝を大きく曲げて足を高く挙げます。さらに足部を高く挙げつつ、足首を背屈させて、足部を前に運び、踵着地点に至るような歩行法です。遊走期の足の運びが大きくなり、放物線を描くようにして踵着地点に達します。

 写真2 新歩行法 2

足の軌跡を見る限り、新法2では、ちょうど自転車のペダルを踏んでいる状況に近い足の運びです。しかし両者での下肢の筋の働き具合は、まったく違います。

ペダル踏みでは、ペダルに置いた右足が地面を離れて上がり、頂上(写真2-cの地点に相当する)に達するまでは、左足が力を入れてペダルを踏み込んでいるので、右足は力を抜き、ペダルの上で休憩している状態です。その後、右足に力がいっぱい入り、ペダルを踏み込んで自転車の前進を促進します。

下肢筋の実際の働き具合について、ペダル踏みと新法2、また新法2については、新法1とも比較しながら見ていきます。

写真2-aから2-cに相当する期間では、ペダル踏みでは、先に述べたとおり、右足はほとんど仕事をしていません。新法2では、足を蹴り出すために、腓腹筋と長拇趾屈筋が働き、また足をより高く挙げるために、膝をかなり曲げます。すなわち、大腿部後方のハムストリングが強く働きます。続いて下肢全体を前方に進めるために、腸腰筋が働きます。

足が頂上(図c点)に達したのちに、ペダル踏みでは、右の下肢筋が最も強く働き、ペダルを踏みこみます。すなわち、大腿部前方の大腿四頭筋の働きで膝を伸しつつ、下腿部後方の腓腹筋が働いて、ペダルを強く踏み込みます。一方、新法2では、大腿部前方の大腿四頭筋が働き出して膝を伸ばし、踵着地に備えますが、特に腓腹筋は働くことはなく、むしろ緊張をゆるめていきます。

足首を背屈させる前脛骨筋の働き具合はどうでしょう。ペダル踏みでは、さほど働いているようには見えませんが、ペダルが頂上を過ぎるなり、直ちに前脛骨筋の働きで足首を背屈させて踏み込む態勢に入ります。

新法2では、蹴り出した直後から意識的に働くようにします。すなわち、蹴り出した直後から、c点を過ぎ、さらに踵着地に至る間働くことになります。その間の足先の動きは、ペダル踏みでは頂上で急に上向きに変えますが、新法2では、遊走期を通じて足先が徐々に“輪を描くような感じ”で変わっていきます。

大殿筋はいずれの歩行法でも、重要な働きをしているでしょう。

以下にペダル踏み、通常の歩行法、新法1および2について、比較的に大きな働きをしていると考えられる筋を整理してみます。

ペダル踏み:大殿筋・腓腹筋・大腿四頭筋
通常の歩行法:大殿筋・腓腹筋・長拇趾屈筋・腸腰筋・大腿四頭筋
新法1:大殿筋・腓腹筋・長拇趾屈筋・腸腰筋・大腿四頭筋・前脛骨筋
新法2:大殿筋・ハムストリング・腓腹筋・長拇趾屈筋・腸腰筋・大腿四頭筋・前脛骨筋

最も身近で、多くの人が実施している散歩ですが、歩行法を工夫するならば、比較的容易に、有酸素運動としての効率を高め、またより安全に抗重力筋の鍛錬に役立たせることができるのではないか思われます。その試みを紹介しました。

続いて、これらの新歩行法で、実際にどのような効用が考えられるか、当初に記した結論に至った根拠を含めて、経験を踏まえて、気のついた点を述べることにします。 

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からだの初期化を試みよう 33 アローン操体法 余話-2 ウオーキング-3

2016-03-11 16:07:29 | 健康
本論に入る前に、“拮抗筋”と“相反神経支配”について触れておきます。

身体各部で、前後または左右のそれぞれ反対側にある筋群は、収縮して働く方向が逆となります。例えば、脚の大腿部で、前側の筋が収縮する場合は膝が伸びるのに対して、後側の筋は膝を曲げるように働きます。このような関係にある筋群を“拮抗筋”と呼んでいます。

“拮抗筋”では、一方が収縮する場合は、反対側が弛緩するように、神経中枢で調節が行なわれています。このような調節を行う神経の働きを“相反神経支配”と表現しています。この調節機能は歩行運動に限らず、スムースな身体の動きを達成するよう、全身で働いています。

一方、立位姿勢を保っているような場合は、拮抗筋同志がバランスを取りながら同時に収縮している状態と言えるでしょう。

コメント子から、図があって分かりやすい とするコメントを頂いています。今後もふんだんに図を入れていくよう心がけて行きます。ただ図が鮮明でない点はご容赦ください。

本論に入ります。なお、同じ方向に働いている筋は、必ずしも一個ではなく、複数の筋の協同作用である場合が多い。以下、図では主な筋(群)を示し、また本文では代表的な一筋名または筋群の総称名で話を進めています。その点を念頭において見てください。

ここでは右脚の動きを中心に見ていきます。写真1は、実際の歩行過程を、写真2は、右脚の外側(左)及び内側(右)から見た図で、腰および下肢の前面と後面にあって、各関節の伸展・屈曲に関わっている筋群を示したイメージ図です。写真2で、前側と後側にある筋群は、それぞれ拮抗筋の関係にあります。
  写真1 歩行運動

 写真2 下肢の主要な筋群

歩行運動について、ここでは下腿部後方にある長拇趾屈筋などの働きによる右足の‘蹴りだし’から始めます(写真1 a)。長拇趾屈筋などの詳細は後で今一度触れます。


蹴りだされた足は、大腿部後方にあるハムストリング(写真1 b及び写真3a)の働きで、膝を曲げて地面を離れます。続いてハムストリングの緊張は保って膝を曲げたままで、下腿全体を前に進めるように骨盤前面にある腸腰筋(写真3 b)の収縮が始まります。(ハムストリングとは、大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の総称; 腸腰筋とは、腸骨筋と大腰筋の総称)]。
 写真3 大腿部後方および骨盤前面の筋群

写真3以下、図の左側は、実際の筋の様子を、右側は、それぞれの筋の走行(黒太線)と骨面への付着部位(赤表示)を示しています。

右足が遊脚相の中間点を通る前後(写真1 c)から、大腿部前面にある大腿四頭筋(写真1 d及び写真4 c)が収縮を始めて、膝関節を伸展させ、下腿部を前に振り進めます。(大腿四頭筋とは、外側広筋、中間広筋、大腿直筋、内側広筋の総称; 中間広筋は、他の筋に隠れて見えない)。
 写真4 大腿部および下腿部前面の筋群

膝関節が伸びつつ、着地地点に近づくにつれて、前脛骨筋など(写真4 d)下腿部前面にある筋群が徐々に収縮していき、足首を背屈させます。着地直前には、前脛骨筋などの収縮が最大となり、膝が伸びきり、足首を背屈させた状態で踵着地します(写真1 e)。

踵着地の時点では、踵が地面に対して衝突することになります。歩幅が広くまた歩行速度が高ければ高いほど衝撃は大きくなるでしょう。踵着地と同時に前脛骨筋などの緊張は、徐々に和らぎ、足首が底屈していき、衝撃を緩衝するように働きます(写真4d)。

着地以後の立脚相については、写真1で、左脚の動きを参考に見てください。

右足の踵着地後、右脚の前脛骨筋などはさらに緊張を緩めます。足底全体が一様に地面に着き、身体の重心が体軸と一致した時点(写真1 c左足の状態)以後、腓腹筋や長拇趾屈筋など(写真5 e、f)が収縮を強めていき、踵が上がり、身体の重心が足先側に移動していきます。その間、それらの筋群の働きで身体の前進が促進されます。
 写真5 下腿部後面の筋群

それとともに、この立脚相の脚の踏ん張りをもとに、下肢とは反対方向への上体の回旋運動、さらに遊脚相にある脚の前方移動を促進します。終には長拇趾屈筋などの働きで、足の蹴りだしに至ります。

上体の回旋運動には、脊柱起立筋など腰背部および上半身の筋群の働きが大きく関わってきます。上半身の筋群については、別の機会に見ていきたいと考えています。

ここで大殿筋(写真6)の役割について触れておきます。
 写真6 大殿筋

先に触れたように、ヒトは、四足歩行から二足起立・歩行に移行した経歴を持つことから、筋骨格系の構造上、立位では潜在的に骨盤、ひいては上体が前傾する傾向にあります。その上、青壮年の頃から、上体が前かがみとなる傾向にあり、上半身の重みが骨盤を前傾するように働きます。

加えるに、歩行や走行時には、腰の前方にある腸腰筋は、それが付着している骨盤上部および腰椎部の前面を基点にして、下肢を前進させるように作動します。すなわち、骨盤を前傾させる方向へ作動することにつながります。

それらの骨盤および上体を前傾させようとする力に抵抗して、直立時、運動時ともに、骨盤上部を後方に引っ張り、直立姿勢を安定に保つように働いているのが、大殿筋なのです。骨盤部をして身体の礎たらしめているのは大殿筋の働きによるということができるでしょう。

以上、直立あるいは歩行運動で、安定した姿勢を保ち、また前進移動を推進するに際して、大殿筋、大腿四頭筋および腓腹筋などが特に大きな負荷を強いられていることが解ります。それを反映して、それらの筋が強大であることが納得できます。

続いて、より積極的な健康運動としての散歩について考えていきます。
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