犬や猫を飼ったことのある、あるいは飼っている人はよく次のようなことを経験していると思います。例えば、屋外で飼っていて、一日の決まった時間に散歩に出かける習慣のある犬では、その時刻に小屋の前に行くと、中で体を丸めて寝ていた犬はそそくさと小屋から出てきて、主人を上目使いに見ながら、まず次のような動作をします。両前脚を前に突出し、上体の胸のあたりを地面にこすり付けんばかりにし、一方、後ろ脚は立て気味にお尻を天に突き出し、尻尾をピーンと背中の方に丸め込みます。続いて、からだを前方にずらしていき、上体が起き上がり、お腹のあたりが地面に付くような姿勢をとる。すなわちからだの前面を胸のあたりから続いてお腹のあたりとストレッチする動作である。それからおもむろにからだをブルブルッと震わして、「さあ行こう!」と言わんばかりに散歩に出かけるよう催促する。
現役の頃は、よく日曜日、朝10時過ぎまでゆっくりと寝坊して、起き上がると、まず“ウーん”と両手を挙げて、からだをくねらせながら、時には大きくあくびをしながら、“背伸び”をしていました。人でも犬や猫と同様の動作が自然に行われています。脊椎動物に一般にみられる動作か否かは定かではありませんが、折があれば、動物園の飼育係りに確認したいと思っています。
このゆっくりと“背伸び”をして、特にからだの前面をストレッチする運動は、人間誰しもが日常に経験しているであろうにも拘わらず、いや、だからこそ、意外と注目されていないように思われます。この動作は、今様に言えば、“静的ストレッチング”という運動法・体操法に当たります。
睡眠後の“背伸び”についてその生理的な意義を考えてみるのも意味のないことではないでしょう。少しばかり思いつくままその意義を挙げてみます:
i) 長時間の睡眠の結果として、起床直後は脳神経系、心循環系およびその他,消化機能以外,からだの諸機能がお休み状態にあると考えられます。“背伸び”することにより、反射性に脳神経系が活性化される。つまり、副交感神経系優位から交感神経系優位な状態にスイッチを切り替えることになり、からだの諸機能を目覚めさせることにつながる。
ii) 四足動物のイヌやネコの場合、体を丸めて休んでいる状態から起き上がり上体を反らすことにより、胸腔を広げるとともに、胸部の肋間筋、すなわち生命維持に必須の呼吸運動に関わる呼吸筋を伸長させ、目覚めさせることにつながる。
iii) からだを丸めて休んでいる状態では、例えば、腹部内臓は圧迫された状態にあります。下半身部分を“背伸び”させることにより、圧迫状態を解き、腹部内臓器官の血液循環を促す。
iv) ヒトの場合、イヌ・ネコでの睡眠状態に近い姿勢は、畳の上であれ、椅子の上であれ、長時間座位の状態にある、あるいはガーデニングの際、座り込んで長時間庭仕事をしている状態に相当するでしょう。やはり背中・腰が丸まった状態にあり、内臓諸器官に少なからぬ悪影響をもたらしている筈です。したがって “背伸び”は、イヌ・ネコの場合同様、からだに好ましい影響を与えることにつながる。
v) 一方、2足歩行動物へと進化したヒトでは、特に長時間の座位姿勢から急に立ちあがると股関節を取り巻く靭帯や腸腰筋などに急に異常なストレスを負荷することになるという、イヌ・ネコとは違ったマイナス方向の影響が考えられます。この項については、後程改めて詳しく考えてみるつもりです。
というわけで、イヌ・ネコから学ぶこともあり、また2本足立ちに進化したヒトならではの注意すべきこともある。これから紹介しようとする『アローン操体法』では、まずゆっくりとした“背伸び”から始めます。
現役の頃は、よく日曜日、朝10時過ぎまでゆっくりと寝坊して、起き上がると、まず“ウーん”と両手を挙げて、からだをくねらせながら、時には大きくあくびをしながら、“背伸び”をしていました。人でも犬や猫と同様の動作が自然に行われています。脊椎動物に一般にみられる動作か否かは定かではありませんが、折があれば、動物園の飼育係りに確認したいと思っています。
このゆっくりと“背伸び”をして、特にからだの前面をストレッチする運動は、人間誰しもが日常に経験しているであろうにも拘わらず、いや、だからこそ、意外と注目されていないように思われます。この動作は、今様に言えば、“静的ストレッチング”という運動法・体操法に当たります。
睡眠後の“背伸び”についてその生理的な意義を考えてみるのも意味のないことではないでしょう。少しばかり思いつくままその意義を挙げてみます:
i) 長時間の睡眠の結果として、起床直後は脳神経系、心循環系およびその他,消化機能以外,からだの諸機能がお休み状態にあると考えられます。“背伸び”することにより、反射性に脳神経系が活性化される。つまり、副交感神経系優位から交感神経系優位な状態にスイッチを切り替えることになり、からだの諸機能を目覚めさせることにつながる。
ii) 四足動物のイヌやネコの場合、体を丸めて休んでいる状態から起き上がり上体を反らすことにより、胸腔を広げるとともに、胸部の肋間筋、すなわち生命維持に必須の呼吸運動に関わる呼吸筋を伸長させ、目覚めさせることにつながる。
iii) からだを丸めて休んでいる状態では、例えば、腹部内臓は圧迫された状態にあります。下半身部分を“背伸び”させることにより、圧迫状態を解き、腹部内臓器官の血液循環を促す。
iv) ヒトの場合、イヌ・ネコでの睡眠状態に近い姿勢は、畳の上であれ、椅子の上であれ、長時間座位の状態にある、あるいはガーデニングの際、座り込んで長時間庭仕事をしている状態に相当するでしょう。やはり背中・腰が丸まった状態にあり、内臓諸器官に少なからぬ悪影響をもたらしている筈です。したがって “背伸び”は、イヌ・ネコの場合同様、からだに好ましい影響を与えることにつながる。
v) 一方、2足歩行動物へと進化したヒトでは、特に長時間の座位姿勢から急に立ちあがると股関節を取り巻く靭帯や腸腰筋などに急に異常なストレスを負荷することになるという、イヌ・ネコとは違ったマイナス方向の影響が考えられます。この項については、後程改めて詳しく考えてみるつもりです。
というわけで、イヌ・ネコから学ぶこともあり、また2本足立ちに進化したヒトならではの注意すべきこともある。これから紹介しようとする『アローン操体法』では、まずゆっくりとした“背伸び”から始めます。