多くの問題解決法に共通する「はじめの一歩」は「課題の明確化」です。
もちろん、そのステップ自体は正しいものですが、事象を分析的に分割して考え始めると、しばしば「部分最適」の罠に陥ってしまいます。
たとえば、「利益が上がらない」という課題に対してその原因を「コスト増」にも求め、ひたすら「コスト削減運動」に取組んで縮小均衡のスパイラルに落ち込んでしまうといった具合です。
そういった短絡的な部分最適追求行動を回避する方法のひとつが「現象の構造化」です。
(p72より引用) 構造化していけば、一見複雑に見える現象の数々も、つなげることによってけっこうシンプルにわかりやすく理解することができる。そして、どこから手をつけていいかも明白で、根本問題から手をつけていくことが、もっともスピーディーで効果的な問題解決の突破口となるのだ。
著者は、この構造を顕在化したチャートを「現状ツリー(Current Reality Tree)」と名付けています。システム開発でいえば「E-R図」的な図柄です。
事象を「個々の要素」とその「つながり」で構造化して、まず、全体的な問題構造を俯瞰的に把握する、そして、その「つながり」を辿り根本原因を明らかにして、そこにアクションをうつというのが、この「現状ツリー」にもとづく課題解決のやり方です。
「対立の解消」もこの構造化の方法が適用されています。
すなわち、対立している行動をスタートに、それぞれの行動の背景となる要因(要望)を明らかにします。そして、それらの要望が共通に掲げることのできる「目的」にまで遡るのです。そして、その「目的達成」にベクトルを合わせて「相自時妙」で対立を解消するという段取りです。
著者は、これらの営みを、関係者数人で、声を出しながら行うことを勧めています。刺激を与えながら「三人寄れば文殊の知恵」を活用する実践的な工夫だといえますね。
さて、その他、本書を読んで書き留めておくべき点を以下にご紹介します。
一つ目は、ゴールドラット氏が「ザ・ゴール」で提唱したTOC(Theory of Constraints=制約理論)の復習です。
本書では、「目先の活動が、ロジカルに全体最適になり、最短・最速で変革を実現するための方法論」として紹介されています。「5つの集中ステップ(Five Focusing Steps)」です。
(p92より引用) ステップ1 制約を見つける
ステップ2 制約を徹底活用する
ステップ3 制約にその他のすべてを従属させる
ステップ4 制約の能力を高める
ステップ5 惰性に気をつけながらステップ1に戻る
このステップで重要なのは、ステップ4にいきなり飛びつかないことです。
まず「制約」をフル稼働させ、それ以外のプロセスを「制約に合わせるというステップ3を経ることがポイントです。これにより、余剰稼働を生み出すことができますし、無駄なコストも削ぎ落とすことができるのです。これだけでも現場には大きな余裕が出てくると著者は説いています。
もう一つ、「戦略」と「戦術」の現実的な定義です。
(p161より引用) ・戦略とは、「何のために?」それを行なうのかという質問に答えるものである
・戦術とは「どうやって?」という質問に答えるものである
多くの場合、戦略と戦術との関係は、それらを策定する「組織の上下関係」で説明されていました。が、上記の考え方は、戦略と戦術は「ある事柄」の表裏だというのです。
こう考えると、「戦略と戦術はそれぞれ切り離されうるものではなく、同期して機能するものである」との意識が強まります。
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