久しぶりの中村天風師の著作です。
別に天風師の教えに傾倒しているわけでないのですが、師の著作は、時折、読んでみようと思いますね。今までも「君に成功を贈る」「幸福なる人生」等を読んだのですが、本書もそれらと同じく、師の講演を書き起こしたものです。
もちろん、師の教えは著作によって変わるものではありませんから、新たな本を読んでも、それは師の一貫した考え方を“復習”するということになります。
ということで、改めて「前向きな言葉」の大切さについて。
(p45より引用) 結局、努力ですよ。常に明るく朗らかに、生き生きとして何事にも応接するという気持ちをつくることは。
それにはですね、言葉を気をつけなさい、言葉を。
多くの人は、言葉と気分というものが直接関係があるという大事なことに、正しい自覚を持っていないようです。絶対に消極的な言葉はつかわないこと。否定的な言葉は口から出さないこと。悲観的な言葉なんか、断然もう自分の言葉の中にはないんだと考えるぐらいな厳格さをもっていなければ駄目なんですよ。
「積極的な精神」を作るための第一歩は「悲観的な言葉を決して口にしないこと」です。別な言い方をすると、どんな状況に陥ろうと「感謝」「喜び」に振り替えろ、不運や不幸は「自分の生き方の間違いを自覚させてくれた」のだと考えろという教えです。
常に前向きな言葉を発するように心がけることは、よい結果をもたらすための「暗示の感受習性」を活かした方法でもあります。
(p129より引用) 人間の精神生命の中には、「暗示の感受習性」というのがある。だから、一言いうのでも、この暗示の感受習性が、自分じゃ気がつかなくとも、必ずすぐに感じて、感じると同時に潜在意識に対して、そのとおりの状態で働き出す。潜在意識の状態が実在意識の状態に同化してくる。・・・
真剣に考えろ。人間の日々便利につかっている言葉ほど、実在意識の態度を決定する直接的な強烈な感化力をもっているものはないんだぜ。感化力というより、暗示力といおう。だから、それを完全に応用して生きてみろ。それだけでも、どれだけ健康や運命のうえに大きな良い結果をもたらすかわからない。
その結果、思い続けていると実現する、口に出した言葉がその後の結果に現れてくるとの説です。
(p133より引用) だからねえ、つねに積極的な言葉をつかう習慣をつくりなさい。習い性となれば、もう大した努力をする必要はないもの。・・・人生に生きる場合、常にあとうかぎり善良な言葉、勇気ある言葉、お互いの気持ちを傷つけない言葉、お互いに喜びをよく与える言葉を実際つかう習慣をつくりなさい。
次は、「観念要素の更改」について。
天風師の代表的な言葉に「人生は心ひとつの置きどころ」というものがあります。
(p102より引用) 結局、心が人生を感じる感じ方でそのまま極楽にもなり、地獄にもなるわけだ。そこで、心に極楽を感じせしめて生きようとするには、心のなかを掃除しなければだめなんです。・・・それが、「観念要素の更改」というんです。
その具体的な「心のクリーニングの方法」を天風師はこう語っています。
(p122より引用) 思えば思うほど楽しく、考えれば考えるほどうれしいことだけ思ったり、考えたりして寝るようにしてごらん。
・・・それだけを毎晩毎晩やっていると、どんどん心のなかがきれーいに洗われてくるんだ。
この寝る前に楽しいこと・うれしいことを考えるのは、先に紹介した「暗示の感受習性」の応用でもありますね。
さて、最後にもう一度、「人生は心ひとつの置きどころ」について。
(p375より引用) 目に触れるすべての物は一切合財、・・・もうどんなものでも、ちりっぱ一枚でも人間の心のなかの思い方、考え方から生み出されたものじゃないかい。それ以外の物があるはずないもの。
それがそうだとわかったら、あなた方の一生も、またあなた方の心のなかの考え方、思い方で良くも悪しくもつくりあげられるもんだということがすぐわかってくるはずなんだ。
・・・あなた方の心のなかの考え方や思い方が、あなたたちを現在あるがごときあなた方にしているんだ。
今までとは全く違った見方・考え方で、心の思い方・考え方を「取り扱う」ようになるというのが、天風師の教えの到達点なのでしょう。
自分自身で自らの「考え方」を制御する。体のみならず心も客体化する思想です。