OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

ざっくりわかる宇宙論 (竹内 薫)

2013-01-29 23:18:16 | 本と雑誌

Wmap  久しぶりに竹内薫氏の本を手に取りました。
 よくありそうな「宇宙論の入門書」ですが、竹内流の語り口に期待が高まります。

 宇宙論といえば、古代より人間を取り巻く環境の構造の探究ということで、古代から興味深い変遷を経てきました。そして、近現代においてようやく、アリストテレスの自然哲学体系を脱し、コペルニクス、ガリレオ、ニュートンと続き、20世紀になってアインシュタインの一般相対性理論によるモデルに至りました。

 昨今の宇宙論は、「理論」と「観測」の両輪で発展していきました。
 一般相対性理論遠方の銀河が遠ざかっているという観測事実から「宇宙は膨張している」という結論が得られるのですが、この膨張のスタート地点が「宇宙の誕生」の瞬間になります。全ての物質とエネルギーが一カ所に集まる高温度・高密度状態が原初にあり、その状態からの爆発的膨張が「ビッグバン」です。

 宇宙創生の理論としては、この「ビッグバン理論」が大変有名ですが、竹内氏によると、この分野は1990年代の終わりから21世紀初めにかけて、ハッブル宇宙望遠鏡に代表される望遠鏡技術の大発展とWMAP(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe)等の宇宙探査機から得られた膨大な観測データにより、劇的な理論面での進歩がみられたとのことです。

 ちなみに、現代の「宇宙論」で分かっていることは大体こんなことのようです。

(p68より引用) 現在の宇宙はだいたい137億歳であることがわかっています。
 それから、・・・宇宙が加速膨張をしていることもわかった。さらに、・・・宇宙をつくっている全エネルギーのうち、じつは96%が未知のエネルギーであることもわかりました。・・・96%の内訳をいうと、73%は「暗黒エネルギー」・・・宇宙を加速膨張させている犯人で、真空に充ちている謎のエネルギーなのです。・・・残りの23%を「暗黒物質」といいます。

 わずか4%しか解明できていない・・・。
 未知の「暗黒○○」はその名のとおり目で見ることはできません。重力の分布状況から推測されるのだそうです。エネルギーというだけでその実体はよく分からなくなるのですが、それに「暗黒」が付くとそれこそイメージを浮かべることすらできません。

 誰しも知りたいと思う「宇宙の始まり」についても、最近の定説はこんな感じです。

(p82より引用) ビッグバンは宇宙の始まりではなく、ビッグバンの前が量子宇宙で、インフレーションの後にビッグバンがあった、というのが現在の最先端の定説なのです。

 となると今度は「量子宇宙」はどうやって生まれたのかということになりますが、それは、「量子宇宙」には「時間が実在しない」、すなわち「前」という概念すらないというのです・・・。そろそろ私の頭の中でも「ビッグバン」が起こりそうです・・・。

(p186より引用) 時空というコト的な舞台の上で、超ひもとDブレーンの相互関係が素粒子というモノとして解釈される。

 ・・・???、この本書の最後のフレーズで止めを刺された感じがしますね。だめです、全く理解できません。もっともっと初心者向けのテキストから勉強し直します。


ざっくりわかる宇宙論 (ちくま新書) ざっくりわかる宇宙論 (ちくま新書)
価格:¥ 756(税込)
発売日:2012-03-05



人気ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

拉致と決断 (蓮池 薫)

2013-01-24 22:59:51 | 本と雑誌

North_korea  妻が読み終わったというので、私も借りて読んでみました。

 ご存知の通り、著者は北朝鮮拉致被害者の蓮池薫さん。24年間にわたる北朝鮮での生活を書き綴ったドキュメンタリーです。テーマがテーマだけに、流石にいくつも興味深い記述がありました。その中のいくつかを書き記しておきます。

 まずは、北朝鮮での日常生活について。
 これは周知のことですが、北朝鮮においては「主体思想」を中心とした思想教育が広く国民に課せられています。思想学習の「生活化」「習慣化」です。

(p106より引用) 招待所生活を送っていて驚いたのは、還暦に近い食事係のおばさんも、難しい政治思想学習を免れないということだった。・・・彼女には哲学思想など意味不明の呪文程度にしか聞こえなかったはずだ。

 このあたりのくだりは、やはり伝聞情報ではない現実感がありますね。

 そして、「自由」への戸惑い。子供も含め日本への帰国を果たした蓮池氏は、改めて「自由」について考えました。

(p25より引用) 北朝鮮で言われるままに生きるしかなかった私たちにとって、自由であることは何よりも魅力的だった。・・・
 まわりに空気や水があるような、この当たり前の自由が、実に新鮮に感じられた。

 北朝鮮では、個人の「自由」は国や民族の自主独立にとって望ましくないものと考えられています。現地の人々の中では「自由」という単語は否定的な意味で使われることが多かったのです。

 蓮池氏は、24年間に及ぶ北朝鮮での生活において、「帰国したい」という思いをどう昇華させるのか大いに悩みました。二人の子供たちは、自分たちは朝鮮人だと信じています。北朝鮮の社会の中で生きていかなくてはなりません。

(p222より引用) 現実に戻れば、北朝鮮が拉致問題を認めるなど、私にとっては夢のまた夢、ありえない話だった。・・・だから、日本行きが指示される瞬間まで私は、北朝鮮で一生暮らさなければならないという悲壮な覚悟を負って生きてきた。

 そして、今、自らは帰国を果たしながらも、なお北朝鮮に残されている拉致被害者の方への思いはつのります。

(p222より引用) いくら閉鎖的な北朝鮮社会とはいえ、あれだけ世界を騒がせた私たちの帰国報道が、十年経った今も拉致被害者たちのもとに伝わっていないなどとはとても考えられない。
 彼らは間違いなく私たちの現状を知っているはずだ。

 残っている方々の思い、日本で待つ親族関係の方々の思い・・・、人として正しいことがなされなていない事態は続いています。


拉致と決断 拉致と決断
価格:¥ 1,365(税込)
発売日:2012-10-15



人気ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ある明治人の記録―会津人柴五郎の遺書 (石光 真人)

2013-01-20 09:36:47 | 本と雑誌

Battleofaizu  猪瀬直樹新東京都知事の「職員向け新年の挨拶」の中で紹介されていたので読んでみました。

 会津藩出身の元陸軍大将柴五郎氏の幼年期から士官学校入学までの回想です。
 その具体的な内容は、柴氏本人の過酷な年少期の生活の記録としても重厚なものですが、明治維新期の会津藩の知られざる受難の歴史的証言としても興味深いものがあります。

 幕末、会津藩主松平容保は京都守護職の地位にあり、京都の治安維持に尽力しました。しかしながら、薩長の対立関係から会津藩は旧幕府勢力の中心と見なされ、新政府軍により朝敵とされたのでした。

 慶応4年(1868年)、薩摩の軍勢は会津城下に迫り来ます。

(p21より引用) 後世、史家のうちには、会津藩を封建制護持の元兇のごとく伝え、薩長のみを救世の軍と讃え、会津戦争においては、会津の百姓、町民は薩長軍を歓迎、これに協力せりと説くものあれども、史実を誤ること甚だしきものというべし。百姓、町民に加えられたる暴虐の挙、全東北に及びたること多くの記録あれど故意に抹殺されたるは不満に堪えざることなり。

 常に歴史は「勝者の歴史」であるのが世の習いですが、否定された側の忸怩たる思いは、それこそ当人以外には想像も及ばないものなのでしょう。

 会津戦争(戊辰戦争)に敗れた会津藩ですが、明治2年(1869年)に容保の嫡男容大の家名存続が許され、陸奥国斗南に斗南藩を立てその地に移りました。お家復興に喜ぶ旧藩士たちではありましたが、いざ移住してみるとその地は日々の食べ物にも事欠くような厳しい環境、まさに極寒の荒地でした。

(p74より引用) この境遇が、お家復興を許された寛大なる恩典なりや、・・・何たることぞ。はばからず申せば、この様はお家復興にあらず、恩典にもあらず、まこと流罪にほかならず。挙藩流罪という史上かつてなき極刑にあらざるか。

 この言語を絶する陸奥での悲惨な生活を乗り越え、下男・馬丁にも甘んじながら、柴氏は陸軍幼年学校・陸軍士官学校にと進みました。
 そこには、幾多の恩人の温かい支援がありました。その中のひとり、弘前大参事野田豁通に対する感謝のことばです。

(p101より引用) 野田豁通の恩愛いくばく語りても尽すこと能わず。熊本細川藩の出身なれば、・・・藩閥の外にありて、しばしば栄進の道を塞がる。しかるに後進の少年を看るに一視同仁、旧藩対立の情を超えて、ただ新国家建設の礎石を育つるに心魂を傾け、しかも導くに諫言をもってせず、常に温顔を綻ばすのみなり。

 その後、陸軍大将にまで栄進した柴氏ですが、まさに野田氏のごとく温厚な人柄だったといいます。とはいえ、その生涯を通じて、その心の底に沈殿・堆積して消し得なかったのは、歴史の理不尽さに対する忸怩たる思いでした。

(p8より引用) 悲運なりし地下の祖母、父母、姉妹の霊前に伏して思慕の情やるかたなく、この一文を献ずるは血を吐く思いなり。

 著者のふり絞るような悔恨の吐露は比類なきほどの重さです。


ある明治人の記録―会津人柴五郎の遺書 (中公新書 (252)) ある明治人の記録―会津人柴五郎の遺書 (中公新書 (252))
価格:¥ 693(税込)
発売日:1971-05



人気ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

シリア アサド政権の40年史 (国枝 昌樹)

2013-01-16 23:54:50 | 本と雑誌

Flag_of_syria  ちょうど読む本が切れたので、妻が読み終わっていた本を借りてみました。

 2011年春の民衆蜂起以来、政情不安で大揺れのシリアの紹介本です。著者の国枝氏はシリア大使も歴任した元外交官です。

 私自身、シリアについては全く知識がなかったので、種々興味深いところがありました。

(p70より引用) シリアにとって湾岸諸国との関係は政治的にも経済的にも重要である。イスラエル占領地の回復とパレスチナ人の権利回復というアラブの大義の下、湾岸諸国にとってもシリアは中東紛争の鍵を握る国として支援対象であり、経済交流も少なくない。湾岸諸国で経済活動をするシリア人は多い。

  「中東の活断層」ともいわれ対外的にも微妙な位置にいるシリアですが、国内情勢も複雑です。

(p71より引用) シリア社会は複雑な宗教・宗派社会であり、多民族国家でもあって、歴史的にそれら構成要素の間で緊張関係が展開してきた。

 人口の9割はアラブ人、宗教的にはスンニー派イスラム教徒が75%近くを占めるとのことですが、基本は部族社会で、特に近年は部族意識の高まりが認められるといいます。

 さて、シリアの国際社会における位置づけを理解するには、イスラエル・パレスチナ・アラブ諸国間の歴史的問題を避けて通るわけには行きません。そこには常に権謀術数を巡らした外交交渉や紛争がつきものでした。そして、当然のことながら米ソ英仏(当時)といった大国の思惑も絡んでいました。

 この地域を巡る混乱が「戦争」という形で噴出したのが数次にわたる中東戦争です。当時のキーパーソンの一人はキッシンジャー米国務長官でした。

(p163より引用) キッシンジャー国務長官は、第四次中東戦争の灰燼がまだくすぶっている中東世界に自らが乗り出して戦後世界の枠組みの構築に腐心した。
 その際の戦略は、ソ連を牽制しながらアラブ社会で最大の軍事力を持つエジプトをアラブ戦線から引き剥がしてイスラエルとの単独講和に引きずり込み、シリアとパレスチナ勢力が軍事的にもはやイスラエルに対抗できない状況を作ることだった。・・・
 エジプトと米国との交渉で顧慮されることがなかったパレスチナ人たちは荒野に放たれた。彼らは過激化し、中東地域全体に暴力の芽を拡散させていった。

 こうした米国の対中東基本戦略はその後の政権の変遷を経ても大きな方向性としては堅持されました。
 そういった国際的圧力の中、本書で紹介されているバシャール・アサド現シリア大統領の基本認識は、昨今の多くのマスメディアの論調とは異なるトーンです。

(p217より引用) バシャール・アサド大統領はシリアがイスラエルに対して軍事的に対抗できるような力の均衡を実現できるなどの幻想は一切抱いていない。アラブ世界が経済、技術、社会などすべての分野で発展に努めて総合的にイスラエルと肩を並べ、そのような条件下で平和を求めることこそが永続的で包括的な平和を作れるという認識だった。

 本書を読んで、私自身、改めて中東地域の政治的安定の困難さを認識しました。その困難さのひとつの要因は、伝えられる情報における選択の恣意性・意図的なバイアス等にあります。

 本書で紹介されている事実も多くは二次情報なので、何等かのノイズが入っていう可能性はありますが、それでも、誤った情報や報道が主要関係国の政策決定や国際世論形成に大きな影響を与えていることは、どうやら事実のようです。

 単一の報道(インプット情報)に依存することなく多角的に情報を集めて現状を把握・認識・評価する大切さを改めて感じますね。


シリア アサド政権の40年史 (平凡社新書) シリア アサド政権の40年史 (平凡社新書)
価格:¥ 819(税込)
発売日:2012-06-17



人気ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

月と六ペンス (モーム)

2013-01-12 09:08:36 | 本と雑誌

Paulgauguin  先に読んだひろさちや氏による「「善人」のやめ方」という本の中で、仏教の教えとサマセット・モームが著した小説の主題とを関連付けて自説を語っているくだりがありました。
 振り返るに、恥ずかしながら私は、モームの著作をキチンと読んだことがありません。というわけで、まずはと思い手にとった本です。

 読んでみると、確かに日本流にいうと「世間」との関わり方についてのモームの考えが其処此処に伺われます。

 たとえば、ストリックランド夫人に請われ、彼女を捨てたストリックランドに会いにいったシーン。「僕」は、あまりにも自己中心的なストリックランドの物言いに憤慨しました。彼には、良心に訴えるような説得は何の効果ももたらさなかったのです。

 ただ、モームは、世間体を気にするような「良心」に対しては否定的な考えをもっているようです。

(p105より引用) およそ良心というものは、社会が自らを維持する目的でつくった規則が守られているかどうかを監視するために、個人の内部に置いている番人である。・・・世間の人に支持されたいという人間の願望はとても強く、世間の非難を恐れる気持はとても激しいので、結局、自分の敵を自分の城内に引き入れてしまったのである。・・・良心は個人の幸せよりも社会の利益を優先させる。

 「良心」の欠片もなく利己主義の権化のようなストリックランドですが、タヒチでの暮らしは肌に合いました。

(p344より引用) イギリスやフランスでは、ストリックランドはいわば丸い穴の中の四角い釘であったが、ここでは穴の形など決まっていないので、釘もどんな形でも構わないのだ。・・・彼はこの地で初めて、生まれ育った国で与えられると期待もせず、望みもしなかったもの-共感-を得たのだ。

 ここでもモームは、ストリックランドが変わったとは描いていません。彼は彼のままですが、彼を取り巻く世間の受容度・寛容度が異なっていたのです。

 さて、本書を読んでの感想です。やはりこういった本は実際に読んでみないとだめですね。年を経ても、また、多くの国々においても一定の評価を得ている作品は、素直に素晴らしいと思います。
 読書量自体が落ちつつある昨今ですが、今年は実用書のウェイトを抑えて、少しでも気になった文芸作品を積極的に読んでみましょう。


月と六ペンス (岩波文庫) 月と六ペンス (岩波文庫)
価格:¥ 903(税込)
発売日:2010-07-15



人気ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日本人の9割に英語はいらない (成毛 眞)

2013-01-08 22:49:00 | 本と雑誌

Gandhisevensocialsins   いつもの図書館の新着図書の棚で見つけた本。
 私は英語が全くダメなので、タイトルに反応してしまいました。著者が成毛眞氏であることも気になった原因のひとつです。

 意図的だとは思いますが、かなりセンセーショナルな筆が踊ります。
 まずは、「まえがき」で明確な著者のメッセージが開陳されています。

(p5より引用) 確かに英語ができればビジネスでは有利になるかもしれない。しかし一方、伝統文化やアイデンティティを損なう危険がある。たかだか金儲けのために教育や思想、伝統文化を犠牲にするのだろうか。

 著者は、英語を勉強することを全否定しているわけではありません。日本人のうち1割の人々は、十分に英語を使いこなす必要があると認めています。しかしながら、その他大多数の人々がその目的も不明確なままで「英語礼賛」している状況に大きな疑義を抱いているのです。

(p98より引用) 学生時代にムダにした900時間を取り戻すことはできないが、・・・社会人になってからもTOEICや英検などの勉強のために時間を費やすのも、英会話スクールに通うのも、さらにムダを重ねることになる。
 大人の時間は、子供の時間以上に貴重である。

 この貴重な時間を、英語学習ではなく「学問」に向けるべきだというのが著者の主張です。
 英語はコミュニケーションツールに過ぎない。とすれば、コミュニケーションする必要のある人だけが習得すればいい、その他の人は英語を勉強するくらいなら他に学ぶべきものがいくらでもあるとの考えです。

 昨今日本では、幼児期からの英語教育が流行り、小学校からの英語授業等が推進されています。こういった動きに対して、日本語すら満足に習得していない段階で、その教育を疎かにして英語教育偏重に傾くとは何事かと憂いているのです。

(p140より引用) 言葉は人格を形成する骨格となるものである。その国の文化を理解するのも、歴史を理解するのも、その国の言語を自分のものとしているからである。人は言葉によって思考するのだから、その言葉がおぼつかないと、思考まで揺らいでしまうのである。

 さて、本書で最も印象に残ったくだりは著者の直接の主張ではなく、ガンジーの慰霊碑に刻まれているという「七つの社会的罪 (Seven Social Sins)」に言及している部分でした。
 これは、京都大学原子炉実験所助教小出裕章氏の講演で触れられたものとして紹介されていました。

(p110より引用)
原則なき政治(Politics without Principles)
道徳なき商業(Commerce without Morality)
労働なき富(Wealth Without Work)
人格なき学識(教育)(Knowledge without Character)
人間性なき科学(Science without Humanity)
良心なき快楽(Pleasure Without Conscience)
献身なき信仰(Worship without Sacrifice)
今の日本はすべての罪を抱えてしまっている。

 確かにそのとおりです・・・。


日本人の9割に英語はいらない 日本人の9割に英語はいらない
価格:¥ 1,470(税込)
発売日:2011-09-06



人気ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

海賊とよばれた男 上・下 (百田 尚樹)

2013-01-03 08:32:30 | 本と雑誌

Idemitsu_sazou  評判になった本なので手に取ってみました。

 主人公は、石油会社「国岡商店」を率いる国岡鐵造。石油元売会社出光興産の創業者である出光佐三氏がモデルとのことです。

 物語は、太平洋戦争敗戦の瞬間から始まります。
 戦前から石油販売を生業としていた国岡商店は当然のように倒産の危機に陥ります。どん底からの再生、その苦しい中、店主の国岡鐵造はただひとりとして馘首しないとの信念を持っていました。

 戦争で灰燼に帰した店員名簿が復されたときの国岡氏を、著者はこう描いています。

(上p29より引用) 鐵造はそれを受け取ると、名簿のページを繰りながら、「ほお、これが、ぼくの財産目録か」としみじみと呟いた。それから甲賀のほうを見てにっこりと笑った。
「国岡商店は何もかも失ったという者もいるが、それはとんでもない間違いだ。国岡商店のいちばんの財産はほとんど残っている」
甲賀はそのとおりだと思った。

 人を大切にするに人には、人はついてくるのです。

 また、こんなシーンもありました。
 国岡鐵造が、石油メジャーの販売会社「スタンバック」の有力者ダニエル・コックと面会した時のやりとりです。鐵造とコックは、かつて中国の地で商売を相競った間柄でした。

(上p133より引用) 「お前は終戦後、仕事が何もないにもかかわらず、社員の首を切らなかった。そして彼らに仕事を与えるために、農業や漁業や電機屋までやったそうじゃないか」
 鐵造は黙って頷いた。
「クニオカお前は素晴らしい。国岡の社員たちも素晴らしい」
 コッドの表情には、鐵造に対する真心と尊敬の気持ちが溢れていた。それを読み取ったとき、鐵造の胸に熱いものが込み上げてきた。

 敗戦後、占領者としてのアメリカ人の中に、是々非々を以って事に当たり、人間としての姿勢を尊重して判断する人物がいたことは、とても嬉しく清々しい思いがします。

 本書の魅力のひとつは、こういった国岡鐵造に対する良き理解者を描いたシーンにあります。
 GHQの統治から脱却し、国岡商店が世界に打って出ようと悪戦苦闘しているとき、バンク・オブ・アメリカのタールバーグ東京支店長の台詞です。彼は、2億円の資本金の国岡商店に対し、400万ドルという桁外れの額の融資を決断しました。

(下p77より引用) 「なぜ、うちみたいな会社に?」
と正明は思わず訊いた。タールバーグは笑って答えた。
あなたの会社の資本金に対しては、とても融資はできない。しかしあなたの会社の合理的経営に対してなら融資できる。われわれはあなたの会社と取り引きすることを名誉と思っている」
 正明は深く頭を下げた。

 国岡商店の存続がかかった重要な局面では、国岡氏の人柄・信念や国岡商店の経営姿勢、従業員の奮闘努力を高く評価し手を差し伸べる理解者が決まって現れました。
 本書は、国岡氏のドラマチックな生き様を辿った物語ですが、私はむしろ、国岡氏を評価し信じて、自らの立場で英断を下したこれら多くの関係者の心情の方に目が移ります。

 人から信じられる人間になることはとても崇高なことですが、自らの責任において人を信じる切る姿もそれに負けず劣らず素晴らしいことだと思うのです。


海賊とよばれた男 上 海賊とよばれた男 上
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2012-07-12



人気ブログランキングへ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする