この本も少し前のベストセラーです。
いわゆる「財務3表」、具体的には、損益計算書(PL)・貸借対照表(BS)・キャッシュフロー計算書(CS)の仕組みを「3表の『つながり』」に着目して解説した会計の入門書です。
私も20年ほど前、会社の資金計画部門に勤務していたこともあり、この3表をセットにした財務の見方の重要性は常々感じていました。
当時は「資金計画(資金運用表・資金繰り表)」を中心に、貸借対照表(BS)や損益計算書(PL)とのつながりを理解していました。
貸借対照表(BS)との連関では、「資産科目・負債科目の増減」が資金の源泉・使途として認識されること、また、損益計算書(PL)との連関では、「非現金収入」「非現金費用」といった「非現金」という概念が理解の肝でした。
本書は、会社設立からのひとつひとつのステップ(取引)をたどって、3表の連携した動きを説明していきます。
説明に用いている個々の取引例は、イメージの湧きやすいシンプルなものなので、会計の超初心者にも非常に分かりやすい内容になっています。
これだけで十分というものではありませんが、財務諸表の「仕組み」を俯瞰的にザックリと理解するには、手ごろな本だと思います。
さて、そういう「財務諸表の入門書」である本書ですが、著者は、以下のような重要な指摘もしています。
(p125より引用) 財務諸表で評価できるのは会社の経営内容だけです。それだけでは分からない会社の価値がたくさんあること、とりわけその会社の将来の成長力を診断するうえで欠かせない判断材料である、社員の価値や知的財産の価値は財務諸表の数字に表れないことは、くれぐれも肝に銘じておいてほしいと思います。
もちろん、「人」や「知恵」も何らかの形で「財務数値」に表れます。
例えば「人件費」。
これを分子にして売上高を割れば「一人当たり売上高」が分かります。これで経営の良否を云々することも可能です。
ただ、こういったいわゆる経営指標で生身の「人の努力」や「知恵の価値」が測れると考えるのは、やはり誤りです。
「人」や「知恵」を数値化してしまうと「ひとりひとり」「ひとつひとつ」が見えなくなってしまいます。
「ひとりひとりの人」「ひとつひとつの知恵」に真の価値があるのです。
決算書がスラスラわかる 財務3表一体理解法 (朝日新書 44) (朝日新書 44) |