ハイエクの「隷従への道」は、「自由」とりわけ「経済的自由」を強く主張した書物ですが、その中で、いくつか、今の時代でも別のコンテクストの中で見られるような概念が紹介されていたので、以下にいくつか覚えとしてご紹介しておきます。
まずは、「消費者」という概念とその位置づけについてです。
(p78より引用) ここでは「消費者」という言葉がハイエクの中心概念の一つとして登場します。・・・
談合によって各業界が得するということは、その業界の資本家、経営者、労働者のいずれもが得をすることになる。しかし得をする者がいれば、損する者もいるのが当然です。しかし、資本家と労働者というマルクス主義の観念では、誰が損をするのかはわからない。消費者という概念を出したときに初めて、業界談合によって誰が損するのかがわかるわけです。消費者とは自由主義競争の社会から最大の利益を得る人たちだと規定していいでしょう。
また、「個性の重視・人の多様性に価値をおく考え方」も示されています。
(p252より引用) 違った知識や違った見解を持つ人たちの相互作用が思想の生命だとして、理性の成長は個人の間にこのような違いが存在していることに基礎を置く社会で生まれるのだとハイエクは書いています。
最後に、ハイエクが示す「経済成長の条件」です。
(p312より引用) 経済成長の条件として、ハイエクは次のような項目を示しています。第一に、大きく変化した環境に、全員が自分を素早く適応させる準備があること。第二に、特定のグループが慣れ親しんだ生活水準を維持させようという考慮が、変化への適応を阻害するのを許さないこと・・・第三に、持っているすべての資源を、すべての人々が豊かになるのに最も貢献する分野へ投じること-市場に任せれば自然にそうなります-。
すでに、このころから「変化」への対応の重要性を指摘しています。
自由をいかに守るか―ハイエクを読み直す (PHP新書 492) 価格:¥ 840(税込) 発売日:2007-11 |