レビュープラスというブックレビューサイトから献本していただいたので読んでみました。
「インクルージョン(Inclusion)」というのは普通、包含とか含有とかの意味ですが、著者が本書で紹介している“インクルージョン思考”というのは「複数の問題を一気に解決するアイデアを生み出す思考法」を言うとのこと。複数の課題を根本から解決したり、複数の課題を高次の観点(止揚)から解消したりするもののようです。
本書において、著者は、その具体的な思考法をそれぞれ章立てして説明しているのですが、それは4つのステップで構成されています。
(p172より引用) インクルーシブなアイデアを発想するためのステップは、以下の4つです。
①高次の目的を決めて旅立つ
②目的に従って材料を集める
③異なる分野の材料をつなげる
④手放して「ひらめき」とともに帰ってくる
この中で、特に「インクルーシブ」な解決策にたどり着く中核的なステップは「③」です。このステップで、一見トレードオフ状態になっているように見える複数の課題を“一気に”解決するアイデアを搾り出す「必要十分な準備作業」を完了させるのです。ポイントは「抽象化」です。
(p136より引用) 「構造」や「本質」を抽象化したうえで、異分野に共通点を見つけることが、インクルーシブなアイデアを考えるときに必要な要素です。
「なぞかけ」のように、AとBとの共通点を「その心は・・・」と抽象化して切り出すのです。その抽象化された共通点が課題解決のヒントになるというのが著者の主張です。
さて、本書で取り上げている複数の課題が並存する状況について著者は、こういった指摘もしています。
(p49より引用) 複数の問題の対立が表面化する機会は、じつは真に創造的な問題解決策を考える、またとない「チャンス」です。
安易な「妥協案」を模索することは絶対すべきではないと著者は訴えます。
AとBとの折衷案は、百歩譲っても「暫定対処」でしかありえません。ただ、ほとんどの場合、一旦「暫定対処」に倒してしまうと改めて「本質対処」を考えなくなってしまいます。「喉もと過ぎれば・・・」との諺どおり課題は先送り、再度課題が再浮上したときには既に手遅れで大きなダメージを被るのが関の山です。
となると、結局のところ、最初に課題に直面したときそれに正面から立ち向かう「構え」がもっとも大切だということですね。そして、そのときの「構える」立ち位置を、意識して一段「高次」なところに置くことができれば・・・。ただ、、これが難しい。課題に立ち向かおうとすればするほど、それにのめり込んでしまい近視眼的発想に陥りがちになります。そこで、他者の目、「傍目八目」の出番になるわけですが、知恵者は、これを一人で完結させるのですね。
複数の問題を一気に解決するインクルージョン思考 | |
石田 章洋 | |
大和書房 |