OMOI-KOMI - 我流の作法 -

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親密な手紙 (大江 健三郎)

2024-05-31 11:40:33 | 本と雑誌

 いつも利用している図書館の新着本リストで目につきました。

 大江健三郎さんに関わる本は、以前「同じ年に生まれて-音楽、文学が僕らをつくった」という小沢征爾さんとの対談集ぐらいしか読んだことはないと思います。

 本書は、小冊子「図書」連載のコラムを収録したものとのことで、第一印象では読みやすそうな印象をもったので手に取ってみました。

 数々の興味深いエピソードや大江さんらしい思索の紹介がありましたが、それらの中から特に私の関心を惹いたところをひとつ書き留めておきましょう。

 「人間を慰めることこそ」と題された小文から。大江さんの義父にあたる伊丹万作さんのエッセイからの引用です。

(p29より引用) 私が十三に代って書いた解説のなかに引用しているものだが、伊丹万作が戦後すぐ、その死の直前に発表したエッセイの次の言葉に、「福島三・一一」後の日本の知識人たちからあらためて共感をあらわす幾つもの言及が行なわれた。ここにも私はそれを繰り返したい。《・・・・・・だまされたものの罪は、ただ単にだまされたという事実そのものの中にあるのではなく、あんなにも造作なくだまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになってしまっていた国民全体の文化的無気力、無自覚、無反省、無責任などが悪の本体なのである。》

 まさに、知識人たる伊丹万作氏の面目躍如の指摘ですね。

 さて、本書を読んでの率直な感想です。

 大江さんの作品とはいえ、小冊子に連絡されたエッセイ、コラムを採録したものとのことで少々気楽に構えていたのですが、読み進めていくにつれ私の手には全く負えなくなってきました。
 大江さんと交友関係にある方々の話題については当然私の予備知識は皆無ですし、処々に登場する御子息の光さんに係るエピソードもその背景としてある大江さんの心情まで思いを巡らすこともできずで、かなりの消化不良で終わったという情けない結果でした。

 さて、私にとっては手強い大江作品、次は何にチャレンジしましょうか・・・。

 

 

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〔アニメ〕わたしの幸せな結婚

2024-05-30 16:38:31 | 映画

 
 2023年に放映された日本のアニメです。
 
 小説が原作ですが、コミック、実写映画、そしてこのアニメと様々なメディアで取り上げられた作品です。
 
 一昔前のファンタジー系のいわゆる少女コミック路線で、今の感覚では、かなり “時代錯誤” 的なプロットですね。
 
 ただ、ウジウジし続けた主人公がラストで大きな変身を遂げてそれまでの留飲を下げるというストーリー展開は、“王道” のひとつでもあります。

 

 

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〔映画〕デスノート Light up the NEW world

2024-05-29 13:00:49 | 映画

 
 2016年に公開された日本映画です。
 
 先の「デスノート」「デスノート the Last name」の続編ですが、これはどうにも残念な作品です。
 
 まず、ストーリー自体が不必要に複雑な展開の割にはエピソードの背景やそこに至る経緯が捨象されているので、素直に流れに入っていけません。
 
 キャスティング面でも、今ひとつキャラクタの魅力が十分に発揮されていませんね。
 これは失礼な物言いになりますが、正直な印象では、演じた役者さんのインパクトの軽さによるところも大きいと感じます。
 
 ただ、そもそもの主要人物のプロット自体の弱さが根本的な要因だともいえるでしょう。それだけ、前作の「L」のキャラクタが鮮烈だったということです。

 

 

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〔映画〕L change the WorLd

2024-05-28 09:19:04 | 映画

 
 2008年に公開された日本映画です。

 先の「デスノート」のスピンオフ映画で、“L” が主人公の完結作品です。
 
 「デスノート」の設定や物語は背景としては意識されていますが、全く別のモチーフでつくられたストーリーなので「デスノート」ファンの評価は分かれるでしょうね。
 
 正直な印象でいえば、「デスノート」の関係作だということ、主役が松山ケンイチさんが演じる “L” だということ、この2点を除いてみると、ありがちな感染症パニック映画なのでインパクトは薄いですね。
 逆に、松山ケンイチさんの “L” に思い入れがあれば、魅力的な作品になるのかもしれません。

 

 

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〔映画〕必殺! III 裏か表か

2024-05-27 10:34:30 | 映画

 
 1986年に公開された日本映画です。
 
 テレビドラマで人気だった「必殺シリーズ」ですが、このところはるか昔に映画化された作品を続けざまに観ています。
 
 今回は第3作目、それまでのものとはかなりテイストが違います。

 本作は主水に降りかかる事件を必殺の仲間たちが助けに奔走するという変わったプロットで、そこにもう一人の主役が絡んでいきます。
 
 その役を担ったのが松坂慶子さん。最初に登場したシーンは地味でしたが、その後は流石の存在感。このころの松坂さんは別格の輝きですね。
 
 あと、途中に差し込まれた「せんさん」と「りつさん」の律儀な姿もよかったです。見直しました。

 

 

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恐山殺人事件 (内田 康夫)

2024-05-26 14:54:52 | 本と雑誌

 かなり以前に読んでいた内田康夫さんの “浅見光彦シリーズ” ですが、このところ、私の出張先が舞台となった作品を、あるものは初めて、あるものは再度読んでみています。

 ただ、私の出張先も以前勤務していた会社のころを含めるとそこそこの都道府県にわたるので、どうせなら “浅見光彦シリーズ” の制覇にトライしてみようと思い始ました。

 この作品は「第21作目」です。今回の舞台は “恐山”
 恐山には、大学時代に東北をぐるっと回る旅行をした際訪れたことがあります。もう45年ほど前になりますが、いかにも “賽の河原” といった荒涼とした風景が記憶に残っています。

 ネタバレになるとまずいので内容の詳細には触れませんが、この作品、内田さんのミステリーにしてはかなりレベルが低いと言わざるを得ません。
 犯行の動機は極めて在り来たりですし、読者の推理をミスリードさせるようなエピソードもかなり唐突に差し込まれていて、不自然さが半端ではありません。警察の事件捜査と並行して光彦の推理を辿るという楽しみも用意されず、ラストも雑ですね、とても残念です。

 さて、取り掛かってみている “浅見光彦シリーズ制覇チャレンジ”、それほど強い意志をもって完遂しようとも思っていませんので、まあ、“どこまで続くことやら” です。

 次は、「日光殺人事件」ですね。

 

 

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〔映画〕エリザベス

2024-05-25 09:40:06 | 映画

 
 1998年に公開されたイギリス映画です。
 
 こういった歴史上の人物を描いた作品の場合、しばしば、史実に忠実なところと映画ならではの脚色のところとの差が取りざたされることがあります。
 その点、本作の場合は、レスター伯ロバート・ダドリーとの関係がもうひとつの物語の柱に据えられたことで、史実の映像化を期待する向きには物足りない出来栄えになったようです。
 
 また、主人公のエリザベスを演じたケイト・ブランシェットについて一言。
 彼女にとっては初期の代表作ですが、今観るとその発するオーラがまだ今ひとつだった感がありますね。まあ、それだけの存在感が求められる役者さんだということです。

 

 

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〔映画〕デスノート the Last name

2024-05-24 17:55:13 | 映画

 
 2006年に公開された日本映画です。
 
 先の「デスノート」の後編なので、これだけ観ても無意味ですね。
 
 ただ、前編で引っ張ったわりには、この後編はかなりがっかりものでした。
 アイドルキャラやワイドショーネタはあまりに易きに流れてはいないでしょうか。これでは、前編の長さにエピソードを全部押し込んでグッと物語の密度をあげた方がよかったですね。
 
 ラストも緩いです。主人公の意味づけが甘いので、こういった扱いになるのでしょう。

 

 

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〔映画〕デスノート

2024-05-23 07:38:44 | 映画

 
 2006年に公開された日本映画です。
 
 同名のコミックが原作の作品ですが、後編の「デスノート the Last name」とセットでひとつのストーリー完結というつくりです。
 
 なので、この作品単独では、イントロ的なエピソードとそれによる主人公たちのプロットの紹介にとどまっています。それでも後編に誘うには十分の内容で、「前編」の目的をしっかり果たしていますね。
 
 さて、それでは躊躇なく「後編」に突入することにしましょう。

 

 

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〔映画〕流浪の月

2024-05-22 07:16:05 | 映画

 
 2022年に公開された日本映画です。
 
 同名の小説が原作の作品ですが、モチーフの性質上、ストーリーは沈潜した独特のテイストです。なので、ラストも中途半端感が強いのですが、逆にスキっと幕が引けるような話でもありませんね。
 
 キャスティング面でいえば、主演の広瀬すずさん、松坂桃李さんの安定した演技に加え、横浜流星さんの少々過剰演出とも思える熱演、さらに白鳥玉季さん、増田光桜さんと主要な登場人物を演じたみなさんはとても見応えがありました。
 
 とはいえ、このモチーフ、私の好みからいえばちょっと外れているので観直すことはなさそうです。

 

 

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錆びない生き方 (五木 寛之)

2024-05-21 09:23:43 | 本と雑誌

 いつも利用している図書館の新着本リストで目につきました。

 「サンデー毎日」連載のコラムの書籍化です。定番の「五木寛之」さんの最新版といってもいいエッセイなので、条件反射的に手に取ってみました。

 早速、私の関心を惹いたところをいくつか書き留めておきましょう。

 まずは、1972年春、モハメッド・アリさんへのインタビューの思い出から。

(p145より引用) 少量の白身魚の身を指でほぐして、貴重なものを味わうように口に運びながら、アリはこんなことを話した。
「たとえばエンジェル・ケーキといえば真っ白いケーキで、デビル・ケーキというのはチョコレートで作った黒いケーキのことです。黒い帽子というと不吉の星を意味するし、脅迫することをブラック・メイルという。ブラック・リスト、ブラック・マーケット、とにかく白は常に良くて、黒は常に悪いという印象を私たちは植えつけられてきました。この刷りこみから自由になることが私たちには大事なんです
 これまで会った中でも、ことに忘れがたい人物の一人である。

 モハメッド・アリさんとはじめて会った五木さんは、繊細で知的な人物だという印象を受けたといいます。

 次に、1979年冬、写真家リチャード・アドベンさんへのインタビュー。

(p147より引用) アベドンがベトナム戦争のときに、現地で多くの写真を撮ったことは、あまり語られることがない。私がそのことをたずねたとき、彼は口ごもりながら答えた。
「そう。ぼくはベトナムで千枚以上の写真を撮った。でも、その中の一枚だけしか発表しなかった。ある将軍のポートレートを、一枚だけね」
「なぜベトナムの写真を発表しなかったんですか」
 彼はしばらく黙ってから答えた。
「ぼくの撮った戦争の写真が、あまりにも美しすぎたから」
 私には彼の言わんとするところがよくわかった。

 “考えオチ” のような問答ですが、これもまた言葉のコントラストが心の底にまで響きますね。

 さて、本書を読んでの感想ですが、何より五木さんが持つ “素晴らしい言葉” に出会う能力には驚かされます。何がその確率を高めているのでしょう。
 もちろん “類は友を呼ぶ” ということで、その機会が増すということもあるでしょうし、五木さん自身が育んできた “感度の高さ” も大きな要因です。

 私にはそういった素養は全くないので、こうやって五木さんの著作を読むことで、ご相伴に与ることができでいるわけです。

 

 

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〔映画〕MEMORY メモリー

2024-05-20 11:46:23 | 映画

 
 2022年に公開されたアメリカ映画です。
 
 比較的最近のリーアム・ニーソン出演作ということで観てみました。
 
 ジャンルとしては “アクション・サスペンス” ですが、まあ “可もなく不可もなし” といった印象です。
 
 登場人物の設定がストーリーの進展のなかで十分に活かし切れていないので、どうにも “中途半端感” が拭えません。
 リーアム・ニーソンの役どころも尻切れトンボですし、ラストのサプライズもかなり乱暴ですね。

 

 

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〔映画〕まともじゃないのは君も一緒

2024-05-19 08:21:35 | 映画

 
 2021年に公開された日本映画です。
 
 オリジナル脚本とのことですが、主人公たちのセリフのやり取りが絶妙ですね。
 
 成田凌さんと清原果耶さんのキャスティングも見事にマッチしていました。特に清原果耶さんは若手演技派との定評がありますが、こういった同年代の役柄を演じさせても “自然さ以上の存在感” を感じさせます。
 
 近年に珍しく、とても軽やかで清々しいテイストの作品でした。私は好みです。

 

 

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〔映画〕必殺! ブラウン館の怪物たち

2024-05-18 11:32:36 | 映画

 

 1985年に公開された日本映画で、松竹創業90周年、朝日放送創立35周年記念作品とのことですが、確かに “お祭り映画” です。成功だったかどうかは大いに疑問ですが。


 まあ、ストーリー云々はさておき、当時の人気タレントがどういった顔ぶれだったのか、いろいろと感じるところがありますね。


 シリーズ定番のメンバの中条きよしさんや三田村邦彦さんが抜けてがちょっと地味なころですが、その分、映画の方は、それを補って余りあるバラエティに富んだゲスト出演者の面々です。


 もう40年も前の作品ということで、私としては、笑福亭鶴瓶さん、明石家さんまさんの若かりし頃もそうですが、柏原芳恵さん、塩沢ときさん、兵藤ゆきさんあたりが刺さりました。

 

 

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〔映画〕八つ墓村

2024-05-17 09:37:41 | 映画

 
 1996年に公開された日本映画です。
 
 同じ原作で、1977年に松竹映画から渥美清さんの金田一耕助役で映画化されていますが、こちらは、東宝の提供。以前大ヒットした石坂浩二耕助シリーズの市川崑監督が手掛けた作品で、今回の金田一耕助役は豊川悦司さんが演じています。
 
 映画化にあたってのストーリーはかなり原作に忠実とのことですが、その点からいえば「映像」よりも “犯行の動機” を中心とした登場人物の「心情」が印象に残る作品でした。

 

 

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