OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

2008年の本たち

2008-12-31 19:53:03 | 本と雑誌

 今年も1年間の読書の目安にしている約100冊の本を読みました。
 
 それらを振り返って、私の記憶に残っている本をいくつかご紹介します。
 
 まずは、ビジネス書の系統のものから。
 今年も単行本や新書を中心に読んでみました。そのなかには「流行ビジネス書作家」の方によるものも数多くありますが、それらは概ね既存の視点の延長線上のもので、「新たな刺激」という点では格別「これはすごい!」というものには出会いませんでした。
 そういった中で、私の印象に残った本として1冊挙げるとすると「なぜビジネス書は間違うのか ハロー効果という妄想(フィル・ローゼンツワイグ)」ですね。
 エクセレントカンパニーの「成功の秘訣」を紹介した著作の多くを、「ハロー効果」の衣を纏った後付け評価だと断じています。
 
 次は、古典と言われるジャンルから。
 今年はあまりこの類の本は読みませんでした。強いてあげるとすると西洋ものでは「ゴルギアス(プラトン)」、日本ものでは「枕草子(清少納言)」でしょうか。
 古典というとちょっと違うのですが「アルハンブラ物語(ワシントン・アービング)」は、以前旅行で訪れたグラナダが舞台だったということもあり印象深く読めました。
 
 科学関係では、「物理学はいかに創られたか―初期の観念から相対性理論及び量子論への思想の発展(アインシュタイン)」。理論科学の地道な歩みの様が語られています。超一流の科学者の言葉だけに、その内容には格別の説得力があります。
 
 ノンフィクション系では、「バナナと日本人―フィリピン農園と食卓のあいだ(鶴見 良行)」。ちょっと前の本ですが、オーソドックスなルポルタージュは今読むとかえって新鮮な感じがしました。
 
 その他、「空海の風景(司馬 遼太郎)」「人生越境ゲーム(青木 昌彦)」も面白かったですし、変わったところでは、「旅の途中で(高倉 健)」も、著者の人柄がストレートに感じられて気持ちよい1冊でした。
 
 さて、今年一年読んだ本の中で最も印象に残った1冊ですが、「エコエティカ―生圏倫理学入門(今道 友信)」をあげたいと思います。
 現代における新たな倫理を提唱しようとの試みの著作です。
 著者の今道氏のお話を直接聞く機会もあり、そのお人柄とともに、今の時代だからこそ記憶に止めたいと感じる本でした。

 
 
なぜビジネス書は間違うのか ハロー効果という妄想 ゴルギアス (岩波文庫) 枕草子 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス) アルハンブラ物語 (講談社文庫 あ 31-1)

物理学はいかに創られたか―初期の観念から相対性理論及び量子論への思想の発展 (上巻) (岩波新書 赤版 (50)) バナナと日本人―フィリピン農園と食卓のあいだ (岩波新書) 空海の風景〈上〉 (中公文庫) 私の履歴書 人生越境ゲーム (私の履歴書) 旅の途中で (新潮文庫)

エコエティカ―生圏倫理学入門 (講談社学術文庫)

 

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ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層 (竹中 正治)

2008-12-30 20:22:14 | 本と雑誌

 いつも読書の参考にさせていただいている「ふとっちょパパ」さんが紹介されていたので読んでみました。

 著者は、現在エコノミストとして活躍中ですが、自身の米国勤務の経験等を踏まえたいくつかの日米比較を紹介しています。

 そのなかの1章「希望を語る大統領vs.危機を語る総理大臣」でのフレーズです。

 
(p42より引用) 日本人に多い類型は「危機感駆動型」であると言える。「このままではお前(日本)はダメになる!」「危機だ!」と言われると強く反応して動き出すわけである。
 一方、アメリカ人に多い類型は「希望駆動型」である。「できるじゃないか!」「ステップアップできるぞ!」と励まされると強く反応して動く。

 
 比較の視点はさまざまではありますが、やはり著者本業の経済関係の切り口のものの方が説得力があります。

 「ビル・ゲイツvs.小金持ち父さん」の章で紹介されているリスクマネーに対する日米比較では、「日本の家計の投資ポートフォリオは米国に比較してリスク回避選好が強い」という点を取り上げています。

 
(p126より引用) この日米家計の相違は、文化的相違などという実証不可能な説を持ち出すまでもなく説明できる。・・・所得も金融資産も大きい家計ほど、リスクに対する許容度が高い。その結果、ハイリスクだが、長期で保有すれば銀行預金や確定利回り債券よりも投資リターンの高い株式保有比率が高くなるのは合理的な投資行動であり、自然な結果である。

 
 著者が言うその理由には納得感があります。

 また、「消費者の選別vs.公平な不平等」の章では、日本人の「表面的な平等性」に傾く特性を指摘しています。

 
(p176より引用) 一律金利が適用されると、優良ユーザーが不良ユーザーの起こす貸倒れコストを負担する度合いが増える。すなわち、一律価格による「表面的な平等性」は「実質的な不平等・不公平」でもあるのだ。
 もっとも、その社会(共同体)の価値観に照らして、守るべき最低限水準のセイフティーネット的なサービスの供給には、内容の均質と価格の一律性を設定するのは妥当だと思う。

 
 以下の無担保融資に関するコメントにも代表される「経済合理性に則した指摘」は、当然の内容ではありますが、素人にも分かりやすいものです。

 
(p186より引用) 銀行の中小企業への無担保融資が伸びないことを「銀行の審査に十分な専門性、目利き能力がないからだ」と言うのはトンチンカンな批判だ。・・・情報の壁を乗り越える作業のためには、コストと手間がかかり、一定規模以下の企業を対象にした融資ではコストに見合わない。そうした小規模取引にはスコアリング方式が有効なのである。

 
 最後に、最近よく言われる「格差是正」についての著者の主張です。

 著者は、いくつかの統計データから、日本における格差は諸外国と比較して特に顕著なものであるとは考えていません。

 
(p201より引用) 日本では格差が拡大していないので、何もしなくて良いと言っているわけではない。正反対である。・・・日本がグローバルな経済競争と格差拡大トレンドに抗して行うべきことは、第1に若い世代の教育である。第2に技術革新の結果陳腐化してしまった労働力の再訓練である。

 
 格差拡大の兆しは認めつつも、「地域間格差是正のために地方の公共事業の復活を」といった政策については愚策であると断じています。
 
 

ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層 (新潮新書) ラーメン屋vs.マクドナルド―エコノミストが読み解く日米の深層 (新潮新書)
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あたらしい戦略の教科書 (酒井 穣)

2008-12-28 20:28:53 | 本と雑誌

 「戦略」といえば、よく「ビジョン」→「戦略」→「戦術」という構造のなかで位置づけられますが、本書では、「戦略」と「戦術」とを区別していません。
 「戦略」を「現在地と目的地を結ぶルート」と捉えています。ルートですから実行されなくては意味がありません。

 その点で本書でいう戦略は、現場目線での「実行」に直結した「ボトムアップ戦略」です。

 
(p36より引用) 戦略の存在意義には、目的地にたどり着くためのツール以上のものがあります。
 極端に言うと、仮に目的地にたどり着けないとしても、目的地と現在地とを結ぶための戦略を育て続けるという態度が、業績を向上させるのです。

 
 戦略の「実行」は、策定者ひとりだけでは不可能です。
 当然、戦略をそれに関わるメンバと共有し、彼ら彼女らの「実行」を促すことが必要になります。

 
(p134より引用) 究極的には、戦略とは、コミュニケーションを活性化させるための道具です。

 
 そのための方策の一つとして、著者は「戦略のキャッチコピー化」を薦めます。戦略のエッセンスを「短くて覚えやすいフレーズ」にして関係者に落とし込むのです。
 その場合のポイントは3つです。

 
(p169より引用)
(1) 全社の部門を越えて、「集中すべきポイント」が明確になっている
(2) 社員の行動が正しいものであるかどうかを「判断する基準」になる
(3) 「具体的な方向性」を示しつつも、そこから先の「判断は個々の現場」に任せる

 
 そのほか、本書で示された「戦略の実行」に関する示唆のうち、ちょっと気になったものを以下に覚えとして記しておきます。

 まず、戦略の策定者にとっての「はじめの一歩」について。

 
(p54より引用) 戦略家が取るべき「はじめの一歩」とは、できる限り正確に未来を予測するということ、すなわち「未来の不確実性」を下げることによって、「戦略の難易度」を下げるというアクションだということです。

 
 戦略とは基本的に「未来」を扱うものですから、「未来に関する情報」が最重要だという考え方です。

 次に、勘違いの例としてよく指摘される「競合に対する姿勢」について。

 
(p73より引用) 自分が競合を観察している合間にも、競合は顧客を観察しています。競合と競うべきなのは「どちらがより顧客を理解しているのか」という一点においてこそなのですから、競合のことばかり気にしていては勝敗は戦う前から決まっているようなものです。

 
 「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という有名な孫子の格言も、「敵」を「競合」と見るのか、(相対する相手との意味で)「顧客」と見るのかによって適否の評価も変わってきます。

 最後に、「顧客のクレーム」の活用の肝についての著者のコメントです。

 
(p105より引用) 最近では、顧客からのクレームこそが宝の山であると気が付いた企業は、それをデータベース化しているようですが、それだけで満足してはなりません。
 そこから数多くの定性的な意見に見られる共通の何かを引き出すのに必要な力は、数学的な力ではなく、むしろ国語力です。

 
 定量的なデータの把握はITの得意とするところですが、兆しを捉える力は専門家の感覚器官だということです。
 
 

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バナナと日本人―フィリピン農園と食卓のあいだ (鶴見 良行)

2008-12-27 14:40:18 | 本と雑誌

Banana  岩波書店の「図書」という小冊子に、岩波新書創刊70年記念の企画として「私のすすめる岩波新書」というコーナーがありました。

 本書は、ルポライターの鎌田慧氏や東京大学名誉教授の篠原一氏等、数名の方がお薦めとして挙げられていたので読んでみたものです。

 「バナナ」という身近な食品から、発展途上国の貧困を踏み台にして世界経済を牛耳ろうとする多国籍企業実態や世界経済の歪みを浮かび上がらせています。

 
(p25より引用) 今日、バナナを食べているのは日本の私たちであり、これを作っているのはフィリピン人労働者だ。だが、バナナ農園を支配する四社のうち、三社は米国資本である。かれらは、バナナ植付け面積のほぼ八割を支配している。米国農業産業の比重はかくも大きい。日本の私たちは、フィリピン人の労働の成果を食べている。だが、この交換関係で最大の恩恵を受けているのは、実は、米国企業の株主たちなのである。

 
 外資企業は様々な不当な手段でバナナ農場を手に入れました。
 土地搾取は、当地の農民にとっては人間性喪失の第一歩でした。

 
(p74より引用) 土地問題は、もちろん重要ではあるが、麻経済の一面にすぎない。その不当な誇張は、ナショナリズムの心理に快くはあったろうけれど、他の反面を見落とさせることになった。その反面とは、経営と生産技術の問題である。つきつめていうと、経営や生産技術の進歩にうち込む人間主体の問題である。

 
 生産者と消費者との間に介在する外資企業は、通常働くべき市場原理を機能停止させました。

 
(p144より引用) 安いところで買い、借りる。高いところに売り、貸す。-この市場原理による選択がまるで働かないように、バナナの生産現場は仕組まれている。・・・
 バナナという市場商品を生産する、ここダバオの契約農家や労働者は、その資本主義の仕組みからさえ切り離され、疎外されている。こうした分断、疎外が外資企業の利益を確実なものにしている。ここは外資企業のための「格子なき牢獄」であり、借金は生産者を縛る「見えざる鎖」である。

 
 フィリピンの農民・労働者は、自由な資本主義市場のプレーヤとしては登場できませんでした。

 
(p168より引用) 麻やバナナなど、世界市場につなごうとしてミンダナオに入ってきた外部の勢力は、土地の人びとを経済的に搾取しただけでなく、その自立的な主体の成長を阻むかたちで働いた。

 
 著者は、生産現場の社会的問題は、本来的には当事者が解決に立ち上がるべきものだと語ります。しかしながら、著者のいう当事者とは、生産者である現地の労働者に止まりません。

 
(p224より引用) 作るものと使うものが、たがいに相手への理解を視野に入れて、自分の立場を構築しないと、貧しさと豊かさのちがいは、-言いかえれば、かれらの孤立と私たちの自己満足の距離は、この断絶を利用している経済の仕組みを温存させるだけに終るだろう。

 
 消費者である我々も、まさにこの経済連鎖の中の「当事者」として、そこに底流する問題を自覚すべきだと訴えています。

 
 

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サイクルを回す12の歯車 (3つの成功サイクル(川西 茂))

2008-12-25 23:35:04 | 本と雑誌

Polestar  著者によると、最高の成果をあげている人は、3つのサイクルをバランスよく回していると主張しています。

  1. パフォーマンスサイクル (1目標 2思考 3行動)
  2. パワーサイクル (4情報力 5段取力 6自律力 7改善力)
  3. キャラクターサイクル (8自覚 9主体性 10楽しむ 11徹底 12継続)

 
 このサイクルの12の歯車は、具体的には以下のようなストーリーの中で動き続けます。

 
(p478より引用) まず、「目標」を立てることが最も重要である。目標を達成するためには、「情報」を入手して「思考」し、「段取り」よく「行動」を起こし、「自律」して行動することで、「結果」が生まれ、「改善」することで、次の目標は、さらに高い目標設定が可能となる。そういったサイクルをより強力に回すために、本人が「自覚」をもって「主体的」に「楽しみ」ながら行動し、「徹底」して「継続」することで、BPPと言われる人と同じような、最高の成果を上げることができる。

 
 本書は、上記のサイクルのひとつひとつのステップについて、例示をあげながら分りやすく説明していきます。

 たとえば、「情報力」の項では、「オズボーンの発想チェックリスト」が紹介されています。

 
(p250より引用) 1つのアイデアを「転換」するのに役立つチェックリスト
1.転用・・・ 2.応用・・・ 3.変更・・・ 4.拡大・・・ 5.縮小・・・ 6.代用・・・ 7.置換・・・ 8.逆転・・・ 9.結合・・・

 
 「段取力」の項では、米国のコラムニスト、シドニー・ハリス氏によるこんな辛口のフレーズも紹介されていて、少々耳痛いものがあります。

 
(p262より引用) 「いつも急いでいる人は、自分がエネルギッシュだと思い込んでいるけど、ほとんどの場合、単に仕事の効率が悪いだけだ」

 
 また、「行動力」に関する著者のアドバイスです。

 
(p188より引用) 人間の「行動する力」もオートマチック車と同じで、欲求や責任感によって常に前に進もうとする力は働いています。しかし、なかなか進まないとすれば、それは何かのブレーキがかかっているのです。
 まずは何がブレーキになっているのかを見つけ、その要素を取り除くことからはじめなければなりません。

 
 サイドブレーキを引いたままで、いくら「がんばれ」といってもダメだというわけです。

 ここでの「ブレーキ」の取り除き方として著者が薦めている方法は、「小さなハードルを設定して、それをクリアすることにより、やればできるという成功体験を積み重ねる」ことです。
 これは、以前紹介したロバート・マウラー氏が「脳が教える! 1つの習慣」で紹介している方法と全く同じです。

 ただ、いずれにもまして最も重要なことは、自分の「目標」を立てることです。
 自分の「ポーラスター」は自分で見つけなくてはなりません。
 
 

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パラダイム・マジック (3つの成功サイクル(川西 茂))

2008-12-23 14:51:07 | 本と雑誌

 新しい一歩を踏み出すことを妨げている大きな要因は、一人ひとりが持っている「パラダイム(固定観念・既成概念)」にあります。

 「7+3=?」の?を考えさせるのは、「ひとつの答え」を求める画一的な教育であり、「?+?=10」の?を考えさせるのは、「多様な可能性」を求める柔軟な教育です。
 私たちは多くの場合、幼い頃から前者の思考スタイルに慣らされてきています。

 
(p28より引用) 知らず知らずのうちに固定的に物事を考えてしまうことを、私は「パラダイムマジック」と呼んでいます。・・・
 多くの人は自分の可能性や行動範囲について、まるでそれが「揺るぎない真実」であるかのように思いこみ、その考え方から抜け出すことができないでいるのです。

 
 著者は、「考える」際に私たちが陥りがちな6つの問題点を指摘しています。

  • 問題1 制限を受ける
  • 問題2 固定観念にとらわれる
  • 問題3 パターン化してしまう
  • 問題4 むずかしく考えすぎる
  • 問題5 部分しか見ていない
  • 問題6 近視眼的に見てしまう

 
 これらの思考における無意識の指向を打破することが「パラダイムシフト」であり、新たな発想の原点となるのです。
 特に私の場合は、「問題3」の陥穽に陥りがちなので気をつけなくてはなりません。

 「パラダイム」を変えること(=パラダイムシフト)の応用形として有益な示唆がありました。
 「環境を変えたければ自分を変えればよい」とのアドバイスです。
 自分だけの力で環境を変えるのは困難ですが、自分を変えるのは自分だけでできるはずです。

 
(p306より引用) 変えられないはずの「過去」は変えることができる「今」を変えることによって変わってくる。変えられないはずの「他人」は、変えることのできる「自分」を変えることによって変わってくるのです。

 
 「自分」を変えることによって、「対象との関係性」を変化させるのです。
 それによって、変えられないと思っていたものの位置づけや意味づけを変化させようという考え方です。
 
 

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書くことは考えること (思考のレッスン(丸谷才一))

2008-12-21 18:41:38 | 本と雑誌

 本書は、まさにタイトルどおり、丸谷氏による「考えるための講義」です。

 本の後半部分では、丸谷氏流の「本を読むコツ」「考えるコツ」「書き方のコツ」が紹介されています。
 そのあたりの中から、私が興味をもった部分をご紹介します。

 まずは、至極当たり前のことですが、「本に対峙したときの考え方」についてです。

 
(p109より引用) 登場人物が思考の道筋と語るのではなく、本全体としてある考え方を示している場合もあります。・・・著者のものの考え方は何が特徴か、どのように論理は展開されているか、と考えると、とてもためになります。

 
 本で表明された著者の主張の根底にある「思考スタイル」、そしてその思想の「表出スタイル」を摑むということです。

 私自身、こういうザクッとした「コンセプトの切り出し」が苦手です。
 
 丸谷氏は、コンセプトの切り出しに関して、もうひとつ重要なポイントを指摘しています。
 それは、切り出したコンセプトに「名前をつける」ということです。

 
(p214より引用) 多様なものを要約、概括して、そこから一つの型をとりだす。それがものを考えるときに非常に大事なことだと思うんです。
 その際、もう一つ大切なことがあります。型を発見したら、その型に対して名前をつける。・・・ユングは「集団的無意識」という言葉をつくった。本居宣長は日本人の恋愛好きを「もののあはれ」と要約した。・・・そういう名づけが大切なんですね。

 
 適切な名前をつけるためには、対象の本質を確実に把握し、それを再現させる「ことば」を作り出さなくてはなりません。
 「コンセプト」の説明において「メタファー」の重要性は指摘されていますが、まさに「名付け」の重要性は同根です。

 そのほか、本書で丸谷氏が薦めている「仮説」の効用について。
 仮説を立てるということは、新たなコンセプトを世に問う行為です。

 
(p211より引用) ダメな仮説はやっぱりダメです。でもいいときには、どんどんそれを応援する説がでてくる。だから、仮説は立てなきゃ損なんです。

 
 仮説をたてることにより、自らの思考も鍛えられますし、他者によっても磨かれるというわけです。

 そして、巻末の丸谷氏の主張です。

 
(p269より引用) だから、言うべきことをわれわれは持たなければならない。言うべきことを持てば、言葉が湧き、文章が生れる。工夫と習練によっては、それが名文になるかもしれません。でも、名文にならなくたっていい。とにかく内容のあることを書きましょう。
 そのためには、考えること。そう思うんですよ。

 
 

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発売日:2002-10

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ホーム・グラウンド (思考のレッスン(丸谷才一))

2008-12-20 19:39:40 | 本と雑誌

 本書を読んで、丸谷氏の基本的な考え方の底流には、「対置」「比較」といったコンセプトがあるように思います。

 そのスタートは、「自己の立ち位置」です。
 まずは自分自身の思考においての「基軸」をしっかりもつということです。

 
(p146より引用) 僕は常に、その人のホーム・グラウンドは何かを考えて、そこから分析と比較を始める。これが僕の方法なんですね。

 
 その「基軸」=「ホーム・グラウンド」があるからこそ、ヴィジターとしてのチャレンジングな進出ができるわけです。

 
(p148より引用) ホーム・グラウンドがあるというのは、「何々学者」である、ということとは違うんです。・・・ホーム・グラウンドでの知識、経験を抱えて、専門外の分野へもどんどん出て行くわけです。ヴィジターとして他のグラウンドへ行って、そこで十分に戦うことができる、対等に戦える。そのことが大事なんですね。

 
 同様の考え方の例として、「河上徹太郎氏の『評論』についてのコメント」が紹介されています。

 
(p149より引用) いつだったか河上徹太郎さんが、「一つの主題では評論は書けない、二つの主題をぶつけると評論が書ける」と書いてらした。僕は、これは実にいい教訓だなと思ったんです。
 何かものを考える場合、常に複数の主題を衝突させて、それによって考えて行くとうまく行く、あるいは考えが深まることがよくある。・・・当面の対象と、自分のホーム・グラウンドとをぶつけることによって、新しいものの見方、発想が出てくるんじゃないかという気がします。

 
 「比較する」ことは、「相似」と「相違」の発見による思考の深化プロセスです。

 丸谷氏は、この比較という「方法」を、「ものを書く」ときにも適用しています。
 その時の工夫が、「ひとりで対話する」というものです。

 
(p250より引用) 趣味の問題かもしれないけれど、僕はむしろ「対話的な気持で書く」というのが書き方のコツだと思う。自分の内部に甲乙二人がいて、その両者がいろんなことを語り合う。ああでもない、こうでもないと議論をして、考えを深めたり新しい発見をしたりする。そういう気持で考えた上で、文章にまとめるとうまく行くような気がします。

 
 自己の内部で、反論したり同調したり、さらには論旨を転換させたり飛躍させたりするのです。

 こういった「単一」よりも「対置」を重んじる姿勢は、「ロジックとレトリック」についての丸谷氏の主張にも現れています。

 
(p256より引用) ここで大事なのは、ロジックがしっかり通っているからこそ、レトリックが冴えるということなんです。つまり、ロジックとレトリックを組み合せて話を運ぶ-これが肝心なんですね。単なるロジックでは頭がこわばってしまって、中身が頭に入りにくい。そこにレトリックがあるお蔭で、ロジックが鮮明な形で入ってくる。

 
 「ロジック」と「レトリック」は「相反」するものではなく「相乗」するものだとの考え方です。

 
 

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考えるための文学 (思考のレッスン(丸谷才一))

2008-12-17 22:45:12 | 本と雑誌

 丸谷才一氏については、「輝く日の宮」という作品の抜粋を読んで以来気になっていました。
 ちょっと前にも、家にあった「日本の町」という山崎正和氏との対談集を読みかえしたのですが、その流れで手にとった本です。

 前半は文化論・文学論的な内容、後半は丸谷氏の「考え方」の流儀について語られています。

 まずは前半部分から、私が興味をもったところをご紹介します。

 その1は、イギリスの知的伝統についてです。

 
(p50より引用) イギリスには、アマチュアリズムの伝統というものがあるんです。もっともアマチュアといっても、日本の素人とはまったく別の意味ですよ。
 一番の典型が、シャーロック・ホームズなんです。シャーロック・ホームズはたいへんな名探偵であり、警視総監もかなわない。でも、それによって食べているわけじゃなくて、一流の知識人が、趣味として探偵をしているに過ぎない。
 こういった態度がイギリス人のあらゆる知的行動の基本にあるんですね。

 
 ダーウィンやチャーチルが典型的なタイプです。

 その2は、文学を論じるときの立ち位置についてです。

 
(p55より引用) 文学を孤立させて、もっと大きな文脈から切り離して論じても何も出てこない。文学が機能したり生れてきたりする場を考慮に入れないと文学のほんとうの姿が見えてこない。

 
 この対象が置かれている「場」との「関連性」という視点が、次のような小林秀雄氏に関するコメントにつながっていきます。

 
(p88より引用) これと関連して思い出されるのは、小林秀雄さんが「批評は他人をダシに使って自己を語るんだ」と言ったことがあった。有名なセリフですね。
 けれども、僕は、「対象である作品と自己との関係について語る」というふうに言い直すほうが、読者を惑わすことが少ないような気がします。もしそういうふうに小林さんが言ってくれたら、日本の批評はこんな混乱した状況にならなくて、もっとまともな道を進んだんじゃないか。

 
 「関係性」が存しうるのは、対置可能な対象物があるからです。
 この点につき、丸谷氏は、日本の文学者の優位性を以下のように語っています。

 
(p90より引用) だからね、大事なのは、日本の文学者であることを、不利な条件だと考える必要はないってことです。悪条件と言われているものが、実はものすごい好条件であるかもしれない。われわれの中には古代的なもの、中世的なもの、みんな残っているわけです。それを見ることによって、ヨーロッパの学者や作家たちが気がつかないもの、詩人たちが気がつかないもの、それを僕たちは使えるかもしれない。
 なんと言ったって、こんなに持続的に一国の文学が続いている国は、他にないわけですからね。

 
 

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信頼できる会社、信頼できない会社 (駒橋 恵子・関沢 英彦)

2008-12-14 20:09:27 | 本と雑誌

 近年とみに顕在化している企業の不祥事をひとつの材料にして、企業における「コミュニケーション戦略」の重要性を説いた概説書です。

 著者の言う「コミュニケーション戦略」とは、「企業が市場で競争優位性を築くために、ステークホルダーと双方向の情報受発信を行って信頼を築くこと」をいいます。

 
(p5より引用) あくまでも企業理念を主軸におき、社内外のステークホルダーの感情に配意しながら、企業の方向性を定め、ステークホルダーの日常的な意思決定に寄与するのが「コミュニケーション戦略」である。社内外で情報を共有し、透明性の高い経営を行うことによって、全社員の志気を向上させ、社会的評価と市場競争力を高めていく。それこそが経営課題としての「コミュニケーション戦略」なのである。

 
 「コミュニケーション戦略」の実践が、多様なステークホルダーからの信頼を醸成し、それが企業の持続的経営に寄与するとの主張です。

 
(p110より引用) 企業の持続的経営には、ステークホルダーからの信頼が欠かせない。まずは理念や規範を明文化して、それを全社員が共有することで、価値創造のスパイラルを高めるべきなのである。

 
 企業コミュニケーションが重要視される背景となっているCSRやコンプライアンスという基本事項についても、多くの規定・報告書の内容を引き、歴史的背景も踏まえた丁寧な説明がなされています。

 また、コミュニケーション戦略を推進していくための各論として、「消費者」「投資家・株主」「従業員」といった主要ステークホルダーに対する対応も網羅的に示されています。

 本書は、著者があとがきにも記しているように、当初、「企業コミュニケーション」を専攻する学生に対する授業テキストとして企画されたものです。
 数多くの企業の実例を盛り込んでいるのも、学生に対してリアルな企業現場を紹介しようという意図の表れでし、各章の導入部に挿入された「甘口製菓」を舞台にしたショートストーリーも、本書の分りやすさに寄与しています。

 最後に、巻末に紹介されている「コミュニケーション戦略に向けての必須10か条」を覚えに記しておきます。

  • 第一条 トップ経営者にオープンマインドがあること
  • 第二条 トップ経営者にリーダーシップと品格があること
  • 第三条 企業に社会の変化を取り込む勇気があること
  • 第四条 社員のミスを業務改善のヒントと考えること
  • 第五条 ステークホルダーの苦言を素直に聞くこと
  • 第六条 自由闊達で社員が相互に相手の仕事を認め合える組織風土であること
  • 第七条 外部評価を素直に喜べる組織風土であること
  • 第八条 「根回し」の必要がなく、社内の会議で参加者が意見を言えること
  • 第九条 社員が視野を広げる努力をするのを支援する気運があること
  • 第十条 透明性の高い経営を志向して隠し事がないこと

 
 

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日本の弓術 (E.ヘリゲル)

2008-12-13 22:44:04 | 本と雑誌

Yumi  著者のオイゲン・へリゲル氏は、1924年東北帝国大学の哲学及びギリシャ・ラテン古典語の講師として来日しました。

 5年間の滞日中に阿波研造氏に就いて研鑽を重ねた弓道会得の体験を、ドイツに帰国後講演で紹介しました。本書はその講演録です。
 また、本書には、ヘリゲル氏が弓道を学んだ際の通訳をつとめた小町谷操三氏の跋文も併せて収録されています。

 その二つの著述をあわせ読むと、合理的・論理的西洋思想の持ち主であるヘリゲル氏が、弓術の修業を通して東洋的精神の理解に至る道程が非常に興味深く浮かんできます。

 まずは、へリゲル氏の講演から、「理解における言葉の役割の相違」についての記述です。

 
(p18より引用) 日本人は、自分の語る事をヨーロッパ人としてはすべて言葉を手がかりに理解するほか道がないのだということに、少しも気がつかない。ところが日本人にとっては、言葉はただ意味に至る道を示すだけで、意味そのものは、いわば行間にひそんでいて、一度ではっきり理解されるようには決して語られも考えられもせず、結局はただ経験したことのある人間によって経験されうるだけである。

 
 もうひとつ、合理的思考が阻まれた「無心」に至る道についてです。

 
(p36より引用) 「あなたは無心になろうと努めている。つまりあなたは故意に無心なのである。それではこれ以上進むはずはない」-こういって先生は私を戒めた。それに対して私が「少なくとも無心になるつもりにならなければならないでしょう。さもなければ無心ということがどうして起るのか、私には分からないのですから」と答えると、先生は途方にくれて、答える術を知らなかった。

 
 他方、小町谷氏が小文にて紹介しているヘリゲル氏の困惑です。

 ヘリゲル氏が弓を習い始めた当初の様子です。

 
(p81より引用) 先生は力射を戒めた。弓を引くには全身の力を捨てよ、ただ精神力をもって引けと教えた。へリゲル君は、ここで大きな暗礁に乗り上げてしまった。彼は、弓は弾力を利用して矢を的に当てるものではないか。それには全身の力を用いなければならないはずだ。それなのに、全身の力を捨てたなら、骨なしになってしまうではないか。そんなことは考えられないことだと言った。

 
 さらに修養の段階が進み、実際に「的」を前にしたときの彼の悩みです。

 
(p89より引用) 的前の射をやる時には、先生は的に当てようとしてはいけない。また当てようと放してもいけない、とかならず注意した。・・・これもヘリゲル君にははなはだ不可解なことであった。へリゲル君には、弓は的を射るものである。的が目的物である。射るからには、その目的物に当てることを考えなければならない。弓は意識的に射るものであるはずだ。当てようと思わない射、当てようとしない離れ、すなわち意識的でない射があるなぞということは、嘘だとしか思えなかったのである。

 
 ヘリゲル氏は、全く混乱します。

 
(p90より引用) 彼は私に、日本人の考え方は、西洋人とおそろしく反対だと言い出した。ヨーロッパ的な考え方をしていたのでは、ことごとくが不可解である。日本人の思想を理解するためには、まったく逆の方から考えなければ駄目だと言った。

 
 どうしても阿波師範の戒めが理解できず、ヘリゲル氏は師範に自身の窮状を訴えたこともあったようです。

 
(p40より引用) 私は、自分にとって精神的にはとうてい達し得ないと思われることは技巧的に解決するほか道がないと思うということを、つぶさに申し述べて、先生にはっきりと分かっていただき、それでようやく先生も私の窮状を理解し、謝辞を聞き入れて下さった。

 
 それでも、5年間の修練を経たヘリゲル氏は、「弓術本来の精神」の理解に至ります。
 彼は、ドイツでの講演で次のように話したのでした。

 
(p12より引用) 射手の自分自身との対決は、あらゆる外部に向けられた対決-例えば敵との対決の、実質上の真の根底である。外部に向けられた対決がなくなって以来、弓術の本質は初めてそのもっとも深い根底にまで還元され、その意義も明らかになって来たのである。

 
 

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脳を活かす仕事術 (茂木 健一郎)

2008-12-11 22:55:11 | 本と雑誌

 頭ではある程度わかっているのに実現できないというジレンマ、この原因は、「感覚系学習回路」と「運動系学習回路」が脳内では直接連絡をとっていないところにあるとのこと。

 この状況を解決するためには、一度、頭の中の情報を出力する必要があると著者は説きます。それにより「感覚系」と「運動系」とのバランスがとれてくるのだそうです。

 
(p36より引用) 感覚系回路からインプットした情報を運動系回路を通して一度外部に出力し、再び感覚系回路で入力する。このサイクルが成立して初めて、感覚系と運動系が同じ情報を共有できるわけです。

 
 そして、その出力を、自分の目で客観的に観察し、よい点、悪い点を分析してみることが重要だといいます。
 このサイクルを回すことにより、「最初のインプット」と「アウトプット経由のインプット」とのギャップを解消すべく、脳が活性化するのだと説いています。

 そのほか興味深かったのは、脳科学の視点から見た「創造性」についての説明でした。

 まずは、「創造性」には「応用可能な形で蓄積された『経験』」が必要だとの指摘。

 
(p106より引用) 脳に入力された情報や記憶は、運動系の出力を経て「意味付け」をされて初めて、他の状況などに応用可能な「経験」となります。そして、即頭葉に蓄えられている「経験」が、意識を司る前頭葉の方針に従って編集される時、新しいものが生み出されます。つまり「経験」という要素がないと創造性は発揮できないのです。

 
 もうひとつ、「無意識」が生み出す「創造性」のくだりです。

 
(p119より引用) 意識が処理できることは一度に一つだし、そこには限界があります。しかし、無意識ではもっと並列的にいろいろなことが起りうるのです。
 意識は逐次処理、無意識は並列処理といってもいいでしょう。
 だからこそ創造性は、基本的に、並列的な無意識の中でしか起りようがないという結論を導き出すことができるのです。

 
 最後に、脳を活性化させる具体的な方法です。

 
(p180より引用) 脳を本気にさせるためには、リアル(現実)に触れることが大切です。なぜなら人間の脳には「リアルに触れると本気になる」という特性があるからです。

 
 「仮想現実」よりも、やはりホンモノに直接触れる経験は貴重です。
 
 

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自分が輝く7つの発想―ギブ&テイクからギブ&ギブンへ (佐々木 かをり)

2008-12-09 22:26:47 | 本と雑誌

 会社関係の方からいただいたので読んでみました。

 著者の佐々木かをり氏は、株式会社イー・ウーマンと株式会社ユニカルインターナショナルという2つの会社の代表取締役社長として、コミュニケーション・ネットワークの拡大に活躍されています。

 本書は、著者の活動の原動力となっている考え方や姿勢を自ら紹介したものです。

 キーワードは7つ。
 「Give & Given」「Win-Win」「I am proud」「Choice」「Communication」「Responsibility」「Mission」

 その中からいくつかご紹介します。

 まずは、「Win-Win」について。

 
(p53より引用) 自分と関わる人たちと、一緒にプラスの成果をつくっていくことが、どれだけ素晴らしいことかと想像してみた。・・・英語で言われる、「ウィン‐ウィン(Win-Win)」勝ち‐勝ち。・・・
 それは、勝つというイメージを変えることから始まった。一方が「勝つ」と相手は「負ける」と考えられるのが普通だ。しかし、社会の中では、「勝ち負け」ではなく、「勝ち勝ち」が存在する。一緒に勝つという考え方は、関わっている人たちが皆、それぞれのレベルでプラスに動くことを意味しているからだ。

 
 著者は、「Give & Given」や「Win-Win」の人間関係をつくるにあたって、自分の考え方が固定化されていないか、常に自戒しています。

 そのための著者なりの「チェック項目」も紹介されているのですが、その具体例です。

 
(p65より引用) 「普通は~」とか「一般的には~」とか「みんなそう思っている」などの言葉を使ったときに、次のようなチェックをする。
 これらの言葉が、自分を一般人の代表にしてしまい、自分の固定観念を皆に押しつけていないかどうかを見てみる。「普通はそうだと思うけれど」と発言する代わりに「私はそうだと思うけれど」と発言する。・・・「常識」は、私たちの錯覚なのかもしれない。

 
 また、「~します」という言い方も要注意だと指摘しています。
 「~します」というと「今はしていないけれど、これからします」、もっといえば、ひょっとすると「できないかもしれませんが・・・」というニュアンスも感じられるというのです。

 その対策として著者が薦めているのが「現在進行形(私は~しています)」のコミュニケーションです。

 
(p191より引用) 私は、文章をなるべく現在進行形に変えて、主語を付けて話すようにしてみた。言った瞬間に、・・・この言葉が自分の行動のチェックリストに早変わりしてくれるのだ。・・・
 現在進行形で話すことで、ぐっと現実味のある、地に足のついたメッセージを送れるようになったし、そのうえ、本当に行動を始めることにつながったのだ。

 
 最後に、リポーター・キャスター・起業家等、数々のキャリアを経験した著者の実感のコメントをご紹介します。

 「チャンス」についてです。

 
(p123より引用) チャンスというのは、目立った形で存在していることは少なく、数々の小さな選択の結果のように思えるのだ。振り返ってみてはじめて、チャンスと名付けることができる、というケースが多いようだ。

 
 

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トップの決意 (オンリーワンは創意である(町田 勝彦))

2008-12-07 19:50:05 | 本と雑誌

Jsh04  本書では、町田氏のみならず、創業者早川徳次氏をはじめ歴代の経営者の信念が紹介されています。

 本書のタイトルにある「オンリーワン」の追求は、SHARPに流れる創業者の意志でもあります。

 
(p27より引用) シャープには、創業者である早川徳次氏が提唱した「他人にマネされる商品をつくれ」という伝統と遺伝子が息づいている。ブラウン管がだめなら、いっそのこと他社にないものをつくろうじゃないかという逆転の発想だ。液晶につながる原点は、ここにあった。

 
 町田氏は、SHARPの「他社にマネされる独創的な商品をつくる」という「企業風土」は、経験豊かな「従業員」が受け継ぎ伝えたものだと考えています。

 
(p92より引用) 人が風土をつくり、風土によって再び人間が醸成され、独自性のある商品が生み出される-このサイクルこそが、「オンリーワン」を生む真髄だったのである。
 私は、このサイクルを、リストラによって断つことはできないと決心した。

 
 松下電器産業の松下幸之助氏もそうでしたが、SHARPもまた「人員削減」というリストラ策はとらなかったのです。
 厳しい経営環境は、何度もSHARPを襲いました。
 そのなかでの救世主として町田氏が挙げている商品が、カメラ内蔵携帯電話「SHシリーズ」でした。

 
(p173より引用) 「HSシリーズ」はまさに、私が目ざしているところの「デバイスと商品のスパイラル戦略」を見事に具現化した。「シャープの強みを活かした独創的な商品をつくる」というビジョンを、忠実に体現した理想的な商品だった。

 
 携帯電話機メーカとしては後発だったSHARPが、まさに「他社にマネされる」商品をいち早く作りあげ、マーケットに確固とした地位を築いた実例です。

 
 

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トップのメッセージの意味 (オンリーワンは創意である(町田 勝彦))

2008-12-06 19:54:07 | 本と雑誌

 2000年の年明け、SHARPが大々的に実施したキャンペーンは、消費者に向けたSHARPの決意表明に止まらず、社内の技術者への町田氏からのメッセージでもありました。

 
(p33より引用) 「20世紀に、置いてゆくもの。21世紀に、持ってゆくもの。」
 実はこのキャッチコピーには、「うかうかしていたら、おまえたちもブラウン管といっしょに二十世紀に置いてくぞ」という、社員に向けた強いメッセージもこめられていた。

 
 経営における「ブランド力」の重要性を、特に技術者に対して納得させるのはなかなか大変だったようです。
  町田氏がとった方法は、「ブランド価値の数値化」でした。

 
(p74より引用) それまでのシャープ製品は、ブランド力が低いが故に、たとえ機能性能が優れていても、トップブランド力よりも、安く売られていた。1年間通してその売価差を積み上げてみると、衝撃的な結果が出た。・・・
 販売価格が10パーセント違えば収益はまったく違ってくる。生産過程では、採算性を高めるために、1円、2円という厳しいコストダウンが強いられている。ところが、ブランド力の差によって失われる収益は、まったく桁違いなものだった。・・・
 数字には説得力があった。このデータを見せつけられた社員は、企業ブランドの重要性を徐々に認識していくようになっていった。

 
 トップマネジメントの意志は、あらゆる方法ですべてのステークホルダーに伝えなくてはなりません。

 イメージ戦略もあれば、理詰めの説明もあります。そのすべてがトップの「ぶれない軸」に沿ったものでなくてはなりません。
 
 

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