OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

「井の中の蛙」にならないように

2005-04-30 21:40:35 | ブログ
 仕事は通常「分業」によって成り立っています。それぞれのグループで担当しているパーツの業務を行っています。「パーツ」でないと思ってもそれは程度問題であり、ひとつ上の立場から見るとやはりそれは部分でしかありません。

 したがって、どんな場合でも「井の中の蛙」になる恐れがあります。この点についての戒めは「木を見て森を見ず」とか「部分最適ではなく全体最適」とかの言い様でよく言われていることです。

 では、具体的に「井の中の蛙」にならないようにするにはどうすればいいでしょうか?別の言い方をすれば、「全体最適」を考える癖をつけるためにはどうすればいいでしょうか?

 「全体最適」を考えるのですから、まず、「全体」を視野に入れる必要がありますが、そもそもその場合の「『全体』とは何か?」を規定する必要があります。
 例の「空間/時間」の軸で考えましょう。
 「空間」だと、自分担当のことだけではなく「関連部の考え」「社内の動き」「世の中の動き」や「それらに対する影響」等を考えます。
 「時間」だと、その課題を今日・明日といった「短期スパン」で捉えるのか、1ヵ月後・1年後といった「長期スパン」で捉えるのかといった具合です。
 そうやって「視野」を広げておいてから、思いつく限りの課題と解決案を列挙するのです。

 さて、そうやって洗い出された解決案のうちどれが「最適」かということですが、その「最適」というのはまた立場により異なるのです。すなわち「最適とは何か?」です。
 「最適かどうか」は、何らかの「判断軸」に照らし合わせて決定されるので、何を判断軸とするかで大きく結果が異なります。
 ここでも登場するのが「空間/時間」の軸です。
 「空間」だと「誰」にとって最適か?「時間」だと「いつ」の時点での「最適」か?(今なのか将来なのか?)といった観点で考えるのです。

 さらに「全体最適」を目指す感覚として重要なのが「俯瞰」という意識です。「俯瞰」とはまさに「全体を上から見ること(広辞苑)」です。
 「俯瞰」のコツはいくつかありますが、これは「自ら意識的」にやらねばなりません。たとえば、「意識して『視座』をずらす」「異なる判断軸を、同じ視野の中に捉えて判断する」とかです。

 「井の中の蛙」にならないようにするには、意識的な「拡散」と「集中」が肝なのです。


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「わが経営」(ジャック・ウェルチ)を読みながら(4)

2005-04-26 00:31:56 | 本と雑誌
(p204より引用) 経営者にとって人を切るほどつらい決断はない。「人を切るのを楽しむ」人間や、「人を切れない」人間は、会社を経営すべきではない。
・・・私の場合は、つぎのような単純な基準を満たさないかぎり行動には移さない。すなわち「自分も同じように扱われたいか。公平で平等か。毎朝、鏡の中の自分を見て、これらの質問にイエスと答えられるか」
経営者は昔からコスト削減の常套手段として「一律」の支出カットや給与の凍結をおこなってきたが、われわれは一度もこうした手段に訴えたことはない。・・・これでは経営しているとも、指導しているともいえない。一律に10%の人員削減や賃金の凍結をおこなえば、最高の人材をきちんと処遇できなくなる。


(下p262より引用) 神のように振る舞って人をランクづけするのが好きな人間は一人もいない。とりわけ部下を下位10パーセントのランクに分類するのは嫌な仕事だ。・・・差をつけることはきわめてむずかしい。それが簡単だと考えている人は組織にいるべきではなく、それができない人もいるべきではない。



 ヒューマンリソースマネジメントにおける信念はウェルチ氏の真骨頂のひとつです。

 まさに今評価の時期なのでこれらのウェルチ氏の言葉は非常に重いものです。
 ともかく真摯に虚心で向かうのみです。

ジャック・ウェルチ わが経営
ジャック・ウェルチ,ジョン・A・バーン,宮本 喜一
日本経済新聞社



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2つの関係

2005-04-25 01:09:28 | ブログ
 「2つの関係」・・・抽象的なタイトルですが、ある共通の議論の遡上に挙げられた「2つのことがら・事象」について、それらがどういう「位置づけ」にあるのか、それらにどういう「意味づけ」ができるのかを考える場合のヒントについてです。

 たとえば、以下のような「4つの類型」をイメージしてそれのどれにあたるのかという観点で思考を始めると「位置づけ」や「意味づけ」が分かりやすくなります。

 まずは「代替」関係です。
 A のかわりにBというもので、同じ効能を持つ場合は、ゼロサムになります。たとえば、食後のひと時を過ごすのに「コーヒー」にするか「紅茶」にするかというケースです。

 2番目は「補完」関係です。
 BはAの効能をさらに増す働きをもつような場合で、「コーヒー」と「ミルク」が例になるでしょう。「ミルク」を少し入れることにより「コーヒー」にまろやかさが加わり多くの人の口に合うようになります。

 3番目は「相乗」関係です。
 AとBはそれぞれ単独でも意味のあるものですが、それが揃うとさらに効能を増すような場合です。「コーヒー」と「ケーキ」のようなケースです。

 最後は「相殺」関係です。
 これは2つ揃うと双方の効能を打ち消しあってしまう場合です。想像したくもないですが「コーヒー」と「刺身」とかがそれです。一緒に食卓に並ぶと料理が台無しになります。

 「2つの関係」は企業においていろいろな施策(アクション)を検討したり分析したりする際にもヒントになります。
 これから打つ手は先に打った手の「代替手段」なのか、それとも「補完手段」か、とか。また、「相乗効果」を狙ったのに結局分割損で「相殺効果」になってしまったとか。


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「わが経営」(ジャック・ウェルチ)を読みながら(3)

2005-04-22 00:02:42 | 本と雑誌
(p57より引用) 大企業の利点のひとつは、大きな可能性を持った大きな規模のプロジェクトに取り組めることだ。そのせっかくの利点を失うもっとも簡単な方法は、積極的に夢を描き、夢を追いかけたにもかかわらず失敗してしまった人に対する処分ばかり考えることだ。これではリスクに消極的な文化をますますのさばらせてしまう。



 大企業のデメリットは、新しいことにチャレンジしてもその効果額がかなりのものにならないと実際上の貢献にならないことです。仮に1億円の収益貢献をしたとしても、会社全体の収益規模が1兆円だとその努力は全く見えなくなってしまいます。(少なくとも「金額」という尺度では)

 ただ、他方、それは失敗の場合も言えるわけで1億円の損害が出たとしても、そのダメージは微々たるものということです。
 
 このような環境の功罪についてはいろいろな考えがあろうと思いますが、少なくとも「個人」では到底経験できないチャレンジができるというのは、非常な魅力ですし大きなやりがいにつながります。

 1円の大切さを知っている人なら、失敗を謙虚に反省し次のアクションの糧にできる人なら、どんどんチャレンジしてもらいたいと思います。

ジャック・ウェルチ わが経営(下) (日経ビジネス人文庫)
宮本 喜一
日本経済新聞社



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「見る」 - 考えるための「はじめの一歩」-

2005-04-19 00:34:00 | ブログ
 ものごとを考える場合、その考える対象を捕まえなくてはなりません。対象を「見る」のです。

 「見る」ための基本は3つです。
 
 まずは「視点」です。
 これは「視線が集まる位置」のことを言います。すなわち「何を見るのか?」ということです。これはだれでもやっていることです。が、対象を「考える対象=課題」とすれば漠然と見るだけでは不十分です。意図的に見方の工夫をする必要があります。

 工夫の第一は「視座」です。
 これは「どこから見るのか?」ということです。
 どこといった場合、いつものパターンですが「空間」と「時間」で考えます。

 「空間」的にどこから見るのか。これは物理的な空間たとえば1m離れて見るのか宇宙空間から見るのかということでもありますが、もっと広い概念をイメージすべきです。
 会社の中での場合を例にとると、「自分の部の立場で」とか「会社としての立場で」「業界としては」「日本経済の中で」「グローバルな観点から」・・・また「担当者の立場で」「中間管理職の立場で」「トップマネジメントの立場で」・・・「自社の立場で」「顧客の立場で」「競合の立場で」・・・という感じです。見る立場が変わると見る対象の価値・評価が変わってきます。

 同じように「時間」的にどこから見るのかという見方もあります。
 「今この瞬間」で見るのが普通ですが、「過去から」見たり「未来から」見たりすることも重要です。特に「未来から」という観点は近視眼的見方を排除する点でも特に意識する必要があります。

 工夫の第二は「視野」です。
 これは「どの範囲を見るのか?」ということです。ものごとを考える場合の影響範囲の捉え方でもあります。前述の「空間的視座」と似ていますが、「空間的視座」はどこから(どういう立場で)見るのかということなので、仮に俯瞰的立場で見るとしても「見る範囲(対象の広がり)」は広いこともあれば狭いこともあります。
 見る視野(考える対象の範囲)を広げ過ぎると思考は拡散し抽象的議論になってしまいますが、ある程度は意識して広がりを持たさないと周辺系との関係の中での検討(影響の見極め等)が不十分になってしまします。


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「わが経営」(ジャック・ウェルチ)を読みながら(2)

2005-04-17 23:07:08 | 本と雑誌
(p54より引用) 部下が過ちを犯したとき、もっとも避けなければならないのは厳しい懲罰だ。このときこそ本人を励まして信頼感が生まれるようにすべきなのだ。上司の仕事は、部下に自信を取り戻させることだ。落ち込んでいる人を「鞭打つ」ことだけは絶対にしてはならない。



 どんな会社においても、自分ひとりで仕事をする(業績を残す)ことはできません。会社という実態はなくそれが人の集合体である以上、人なくして事業は成り立ちません。

 真剣さは必要ですが、一人ひとりの人が最大限の能力が発揮できるように、気持ちよくおおらかに考え動けるような環境が重要です。人は萎縮してしまうと脳みそは固まって柔軟な思考は停止してしまいます。

 過ちがあった場合、一番そのことを身にしみて後悔しているのは失敗した本人そのひとです。(過ちに対し本人にその認識も反省のないのであれば論外ですが)十分に反省しているうえにさらに覆いかぶせた非難は必要ありません。

 過ちを将来の糧に次のアクションに向けてリスタートできるように動機付けることが、結果的には人をより大きく育てることになり、あらゆる面でプラスの効果をもたらすのです。

ジャック・ウェルチ わが経営
ジャック・ウェルチ,ジョン・A・バーン,宮本 喜一
日本経済新聞社



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「今までと同じ」は要注意 -「常識」(と思っていること)の落とし穴-

2005-04-16 02:23:13 | ブログ
 「今までと同じ」とか「前回と同じ」といった内容は、一昔前だと安定的な結論であり肯定的にとられることがありました。

 しかしながら、今は違います。「なぜ」そういう結論なのかということを常に意識的に問う癖をつけなくてはなりません。
 「今までと同じ」とか「前回と同じ」という事項のうち「深い理由なくそうなっている」ことは結構あります。また、「以前はそれなりの正当な理由があったが、現在は変わっている」こともよくあることです。
 時間がたつということは人が変わり、環境が変わるということですから、むしろ以前と同じ答えになる方が不自然なのです。

 従来からの延長線上の答えを鵜呑みにせず、まずは素朴に「なぜそうなのか?」と疑問にもつことが大事です。
 「なぜ?」「なぜ?」を繰り返すのです。そして「なぜ?」と問うてみて納得できる答えのないところが「改善のポイント」になるのです。


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「意味づけ」-刑務所建替プロジェクト-

2005-04-05 00:33:02 | ブログ
 たとえば、「刑務所」を建て替えるプロジェクトがあるとします。
 3人のプロジェクトメンバがアサインされました。さて、この3人は「刑務所」に対してどんな「意味づけ」をするか?

 A氏は非常に厳しい人です。刑務所は「犯罪者に懲罰を与えるところ」と意味づけています。刑務所にはいった犯罪者にはできるだけ重い刑罰を課し、もう二度と来たくはないと思わせなくてはならないと考えています。

 B氏は優しい人です。人間誰しも過ちを犯すことはある。悪事を犯したとしてもそれは拠所ない事情があるはずだ。根っからの悪人などいない。刑務所は、そういう不幸な人である「犯罪者を矯正する教育機関」と意味づけました。

 C氏はちょっと変わっています。刑務所は犯罪者という似た者が集まっている。犯罪は商売みたいなものでどうせ出所してからまた悪事を働くことになる。その場合の仲間の目星をつけるには刑務所はうってつけだ。刑務所は、「犯罪者のネットワークを広げる同志リクルートの場」 と意味づけているのです。

 さて、そういう3人が刑務所を建て替えるとしていったいどんな刑務所を建設するでしょうか。
 A氏が作る刑務所は、環境も劣悪で規則も厳しく「悪魔の城」のような刑務所を作るでしょう。
 B氏が作る刑務所は、出所してから困らないよう手に職がつけられる訓練施設や、更正教育が施せるような学習施設が備え付けられています。色調も精神的にも安定できる穏やかな色あいで学校のようです。
 C氏の作る刑務所は、収監されている人どうしがコミュニケーションをとれないよう独房が基本で共有スペース等は全くないビジネスホテルのようなつくりです。

 このように、プロジェクトをどう意味づけるかによってメンバそれぞれが作る刑務所は全く異なるものになってしまうのです。
 「意味づけ」ひとつで具体的アクションは大きく異なります。この「意味づけ」の内容がまさに「コンセプト」です。

 プロジェクトを進めるうえでは、メンバ間の「コンセプトの共有化」が最も重要なポイントなのです。

 (「刑務所建替プロジェクト」の例示の原型は東京大学妹尾堅一郎教授のセミナで教えていただきました)


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「意味」を考える (意味づけ=コンセプト)

2005-04-04 00:47:10 | ブログ
 プロジェクトを進めていく過程では、様々な課題に対していろいろなメンバがそれぞれの場面で「決める」という行為を行うことになります。その場合でもひとつのプロジェクトですから、Aさんの決めた内容とBさんの決めた内容が矛盾することがあってはなりません。

 しかしながら、現実的には「決定内容のばらつき」は起こります。この主な原因は、それぞれの人の能力の差ではなく「プロジェクトのコンセプトの不徹底」にあることが多いのです。すなわち「プロジェクトのコンセプト」が共有化されていないので「判断する軸・基準・価値観」等がぶれて、それに基づく決定内容が異なってしまうのです。

 この「プロジェクトのコンセプト」とは言葉を換えると「プロジェクトの意味づけ」ということです。
 実現しようとしているプロジェクトにはどういう意味があるのか、どんな価値観に基づいて考えられているのか。この点がしっかりとメンバ間で共有化されていないプロジェクトは空中分解してしまいます。


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「決める」ということ

2005-04-03 23:17:23 | ブログ
 ひとつのプロジェクトを進めていくということは、「決める」という行為の積み重ねです。
 この「決める」という作業がうまくできていないと、そのプロジェクトは迷走したり手戻りが起こったりします。

 「決める」という行為にはいくつかの型があります。私は通常以下の4つの型をイメージして、必ずそのどれかに当てはめるよう意識しています。
 
 ① 完全に決める(不変) : その場で、Yes or Noとか Go or Stopとか、これはこうする とかを決めることです。通常、これが「決める」の基本形です。

 ② 条件づきで決める : そうはいってもその場で決めきれないことがあります。その場合は、「決定の条件」を明確にして「仮にこうしておく」という決め方もあります。たとえば、「○○という条件でYes」とか「○○の場合は●、もし今後△△になったらその時は▲」というものです。この型は結構実業務の中では使います。
 この場合の肝は、「その場で決められるか、条件づき決定にするかの見極め」と「条件づけをする場合の『条件の具体性』」です。 また、いったん「条件づき決定」をしたら、その後の「条件の管理=条件が満たされたかどうか」も重要になります。

 ③ 「いま決めない」ということを「決める」 : 課題の議論をしていると時折「今決められないことを議論している」ことがあります。この場合は「決めるための条件」を明確にし、②の「条件づき決定」の型を適用します。
 また、「今決める必要のないことを延々と議論している」こともあります。これは時間的な余裕がある場合はまあいいのですが、通常は「時間の無駄」になります。
 積極的な意味で決定を後ろ送りにできれば、今後の変動要因が少しでも明確になるのですから「決定変更リスク」を抑えることができます。 「今やるべきこと」と「今やるべきでないこと」を峻別することが重要です。もちろん、この場合、「では、いつ決めるのか」の決定は必須です。

 最後に、④「決めない(決める必要がない)」ということを「決める」 : 数々の課題の中にはクリティカルなものもあればどうでもいいものものあります。
 どうでもいいものは課題から落とせばいいのです。どんな場合でも「重点思考」は基本です。


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