タイトルに惹かれて読んでみた本です。私にとっての「今年」はひとつの節目の年でもあったので、なおさら気になりました。
会社の中で、人事関係の業務に長年たずさわっていたという著者の実体験にもとづく示唆が記されているのですが、それらの中で、私がちょっと気になった部分を書き留めておきます。
著者は、40歳を過ぎてメンタルが原因で休職したとのこと。その際の気持ちを以下のように語っています。
(p122より引用) 問題は会社の中にいれば不自由で、独立すれば自由になれるという思い違いである。私の場合、いきなり休職して1人になった時に、自由なんてないことを思い知らされた。・・・二者択一を推し進めれば、それこそ不自由になるリスクが生じる。
会社内に限ったことではありませんが、人間が生きていく中では、日々何らかの判断・決断を下しています。究極の判断は「Yes or No」「Go or Stop」といった「二者択一」の形式をとります。そのいずれかを選ばざるを得ないのは、判断主体が「ひとつ」だからです。判断主体が「複数」であれば、複数の選択肢を併存させることができます。
(p195より引用) ドラッカーが、第2の人生に対する課題で提示した3つの解決方法、「文字どおり第二の人生を持つこと」「パラレルキャリア(第二の仕事を持つこと)」「ソーシャル・アントレプレナー(篤志家)」になることは、やはり複数の自分を作ると言っているのだと解釈できる。・・・
2つの立場を持てば、無理して自分を変えようとしなくてもよい。二者択一に追い込まれるリスクも回避できる。
著者が本書の読者として意識しているのは、いわゆる「勤め人」です。特に、中堅社員から退職近く、年齢的には40歳から50歳前半あたり。今の会社生活に慣れ、今後の会社人生を見通してある程度先が見えてくる年代です。
(私もそのうちの一人だと思いますが、)この世代の多くの会社員は著者いわく「こころの定年」を迎えているのですが、こういった人たちへの著者のメッセージです。
(p200より引用) 世の中では、起業することをことさら強調したり、会社員は、自立するために武器を持たなければならないなどという主張が闊歩している。
しかし働き方はあくまでも形、器に過ぎない。起業・独立やフリーランス、会社員といった働き方自体に優劣や意味があるのではなく、やっていることが楽しいかどうかがポイントである。何をしているかよりも、そのありようが重要なのである。
さて、本書の感想ですが、世の中の多くの会社において、著者が指摘しているような実態がまだまだ存在していることは否定しません。しかしながら、取り上げられているシーンのいくつかには、かなり違和感を感じました。私が読んでも「一昔前」感が拭えませんでしたね。
会社に入って数年程度の若手ビジネスパーソンは読まない方がいいと思います。まだまだ身近な問題ではありませんし、読んだからといって、明日から元気に会社で頑張ろうというモチベーションが沸くかといえば、そうでもないでしょうから。
サラリーマンは、二度会社を辞める。 (日経プレミアシリーズ) 価格:¥ 893(税込) 発売日:2012-11-09 |