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ウェブを変える10の破壊的トレンド (渡辺 弘美)

2008-04-29 13:37:48 | 本と雑誌

 著者の渡辺弘美氏は、昨年(2007年)までJETROニューヨークセンターにおいてIT分野の調査を担当していたとのこと。
 最新のWebの世界のトレンドを10のキーワードにまとめ、それぞれごとに、欧米を中心にすでに提供されているサービスや技術の具体的な紹介により、その内容や意味づけ等を明らかにしていきます。
(いつも読書の参考にさせていただいている「ふとっちょパパさん」も最近読まれたようです)

 著者が示す「10のトレンド」は以下のキーワードでまとめられています。

  • ダイレクト(Direct)
  • フリー(Free)
  • クラウドソーシングCrowdsourcing)
  • プレゼンス(Presence)
  • ウェブオリエンテッド(Web-Oriented)
  • メタバース(Metaverse)
  • ビデオ(Video Hosting)
  • インターフェース(Interface)
  • サーチ(Search)
  • セマンティックテクノロジー(Semantic Technology)

 
 これらの中で、今までも言われていることを含めて、押さえておくべきいくつかの指摘を覚えとして書き留めておきます。

 まず、「Direct」の章における「主役の交代」について。

 
(p34より引用) 「ダイレクト」は、個人のニーズが多様化している時代が求めていたトレンドなのだ。
 ニュース、映像、広告などの、これまでマス(大衆)を相手に一斉に流れていた情報は、「ダイレクト」な時代では、ユーザーから選別されることになる。情報の選択権が配信者から利用者に移るのだ。

 
 また、「Crowdsourcing」の章では、「サービス提供の形態」について。

 
(p73より引用) さまざまな事例を見て感じるのは、プラットホームを持つサービス提供者がコンテンツも提供するという従来の形態よりも、サービス提供者はプラットホームの提供にとどまってコンテンツは集合知に委ねるという「クラウドソーシング」型のサービスのほうがユーザーに支持されるケースが増えてきたということだ。

 
 このあたりは、従来からの指摘の復習です。

 この他、SaaSやWeb OSという形で顕在化している「Web-Oriented」のトレンドについては、以下のようなコメントを加えています。

 
(p111より引用) 大きなトレンドとして「ウェブ・オリエンテッド」の方向に時代が変化していることは間違いないが、何もかもウェブベースに総置き換えすることでユーザーの利便性を損ねるようならば本末転倒ということだ。

 
 さらに、こう続けます。

 
(p111より引用) 「ウェブ・オリエンテッド」は、ハードウェア、ソフトウェアからサービスへというベンダー側の視点だけで捉えるべきトレンドではない。「ウェブ・オリエンテッド」の潮流により、ユーザー側の企業のビジネス・スタイルも破壊的に大きく変わるのだ。
 第1に、コア・ビジネスへの特化という変化をもたらす。・・・
 第2に、「ウェブ・オリエンテッド」は業務プロセスの改善をもたらす。・・・
 そして第3に、「ウェブ・オリエンテッド」は企業の生産性を上げる武器にもなる。・・・

 
 最後の覚えは、「Semantic Technology」についてです。
 このトレンドについては、私もほとんど意識していませんでした。ここでのキーワードは「関連性」です。

 
(p207より引用) 第3次産業革命であるともてはやされた「情報化社会」とは、単体での情報の価値の重要性を説くものであった。セマンティック技術の登場により、単に情報であれば価値がある時代は終わり、情報の意味や情報の関連性が重要になってくる時代へと転換していく。セマンティック技術は、我々を「情報化社会」から「関連性社会」へと導く破壊的トレンドなのだ。

 
 本書は、全体の構成としては、著者のコメントよりも、今、欧米を中心に顕在化しつつある技術・サービスの具体事例を数多く掲載しています。
 あえて事実・現象の列挙に重きをおいた本書のコンセプトのおかげで、紹介された情報の密度は濃くなり、私としても、いろいろな気づきを得ることができました。

 この本の情報鮮度はすぐに低下するのでしょうが、本書で著者が示した姿勢はこの世界では非常に重要です。

 
(p210より引用) 破壊的トレンドは、ここに紹介した10のキーワードがすべてではない。・・・大事なことは、破壊的トレンドになり得る小さな変化を見逃さずに捉えることだ。日々伝えられるイノベーションに関する情報が、これまでの延長線上にある動きを示すものなのか、これまでの延長線上から外れた新たなものなのかを判別する必要がある。
 最初、変化は小さな点のようなものに過ぎないので見逃すこともある。しかし、いくつかの点が結び付いてだんだん短い線となってきた段階で破壊的トレンドが起きていることに気づかないと、取り返しがつかないことになる。

 
 おまけですが、Web2.0、CGMといったの流れの中でで、最近こんな「動画バナー」が登場しています。
 動画を見終わったら、お勧めのサイトに案内されるというものです。(推奨ブラウザ:InternetExplorer6.0 SP1以上)

<script type="text/javascript" src="http://bn.my-affiliate.com/movie_bn.php?p=00000305&s=00000188&w=320&h=240&hid="></script >

 

ウェブを変える10の破壊的トレンド ウェブを変える10の破壊的トレンド
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2007-12-22

 

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効率が10倍アップする新・知的生産術-自分をグーグル化する方法 (勝間 和代)

2008-04-26 17:57:24 | 本と雑誌

 勝間氏の本を手に取ったのは初めてです。
 正直なところ、ちょっとがっかりしたというのが読後感です。
 本質的な部分について、説明が貧弱だったり、他の書籍の紹介で済ませていたりと物足りなさが残ります。How-Toのインデックスといった趣きです。
(もちろん、そういう本も有益ですし、その観点からは、読みやすく即効性のある内容だと思います。)

 たとえば、「情報洪水から1%の本質を見極める技術」の章で、「ディープスマート力」についての説明部分です。

 
(p74より引用) 「ディープスマート力」とは、フレームワークを超えて、ある分野における長年の経験に基づき、時間をかけて私たちの中に暗黙知をためて、新しく洞察ができるようになることをいいます。

 
 一瞬分ったような感じがしますが、落ち着いて考えてみると極く当たり前のことで、いったい具体的にはどういう力なのかどうも明確ではありません。

 ふつう「考える」という脳のはたらきは、「入力」「演算」「出力」の3つの機能で説明されることが多いですね。そういう観点から、「入力」「出力」機能についていえば、本書は、他のビジネス書・自己啓発書で示されているポイントは外していないようです。

 「入力(インプット)」については、「アナログ情報」の重要性を指摘し、

 
(p131より引用) 情報入手の中心にはアナログ、特に「紙」を据えることをお薦めします。また、紙と同じぐらい大事なアナログの情報は、「自分の体験・観察」と「対面での人との関わり・学び」です。
 情報入手というと、何となく積極的にウェブで検索したり、ITを使うようなイメージがありますが、実際にはアナログで受け取る情報のほうがはるかに多いのです。

 
 「出力(アウトプット)」においては、「絞り込み」や「再現性」に重きをおいています。

 
(p197より引用) 次にアウトプットとして必要な技術は、絞り込みの技術です。・・・重要なことは、いかに枝葉の情報を切り落として、本質的なものに集中するかということです。
 絞り込みの技術は、以下の3つに分かれます。
①簡略化
②階層化
③フレームワーク化

 
(p201より引用) いかにある情報を再現性のある形で分解し、再構築できるかということがアウトプットの技術の最大のポイントであり、そのことが必要であるということを認識するだけでも、効率が変わってきます。

 
 そして、「アウトプット」を積極的に発信し続けることにより、自らさらに有益な「インプット」を得て、スパイラル的に知的生産性が向上してゆくと語ります。

 
(p197より引用) アウトプットというと、どうしても何か正式な文書にするとか、プレゼンをするようなイメージなのですが、実際に大事なのは、日常のささいなことに気づいて、そのことに疑問を感じて調べてみて、新しいことを発見する、という繰り返しがアウトプットの技術なのです。
 そして、そのアウトプットが新しいインプットになり知識がスパイラル的に上昇するという習慣をぜひ身につけてほしいと思います。

 
 本書で紹介されているTipsは、非常に具体的で、ともかく何か実行しようと決意した場合はストレートに参考になりそうです。
 参考文献はともかく、お薦めのツールを具体的商品名まで挙げて説明をしている本にお目にかかったのは初めてです。

 また、日頃の「生活習慣」の重要性とその向上方法を具体的に示している点には、勝間氏なりの独自性が感じられました。

 時間は有限な資産だということを前提に、その中での効率性を、他の価値とバランスをとりながら実現してゆく、そして、そのための具体的方法を自分なりに考え、工夫していく・・・、こういった真面目な姿勢は素直に見習うべきだと思います。

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発売日:2007-12-14

 

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奇想遺産‐世界のふしぎ建築物語 (鈴木 博之 他)

2008-04-20 19:40:26 | 本と雑誌

Juedisches_museum_berlin  建築関係の本は、安藤忠雄氏の「連戦連敗」をはじめとして、中村 好文氏による「意中の建築」古市 徹雄氏による「世界遺産の建築を見よう」等々を読んでみています。

 今回の本は、朝日新聞日曜版「be on Sunday」の同名《奇想遺産》という連載コーナーで紹介された建築物の中から「77作品」をセレクトしてまとめたものです。

 個々の紹介文はそれぞれの建築物の解説にとどまらず、その建築物に触発された著者たちの主張が垣間見られ、そちらの方も興味深いものがありました。

 たとえば、パリのラ・ビレット公園の紹介での松葉一清氏(朝日新聞社編集委員)のコメントです。

 
(p20より引用) 米国は20世紀の建築を、超高層という極点化と密集のシンボルに集約させた。それへの実作による批判である。
 広大な敷地に機能を分散し、ちりばめられた施設群が呼応し合う相互の関係性を重視するチュミの手法は、多様な価値観が平準化され同居する21世紀の姿を先取りしていた。それはインターネット時代の社会のありかたにも通じる。

 
 また、隈研吾氏(建築家)が説くシュレーダー邸(オランダ・ユトレヒト市)にこめられた想いについて。

 
(p152より引用) なにしろ、すべてが小さくて、すべてが軽いのである。・・・
 設計したのは建築家リートフェルト。・・・1924年完成という年にも注意する必要がある。19世紀までの暗く重いヨーロッパを捨て去って、すべてを軽く、明るくしようという空気が、このころ頂点を迎えていた。・・・
 この家の住人、シュレーダー夫人もユニークであった。彼女は住宅を機械のように軽やかで合理的なものにすることで、女性は家事から解放され、社会に進出すべきだと主張し、「働く女性」という雑誌を発行していた。
 しかし、リートフェルトの独創も、シュレーダー夫人の主張も、世界をすぐに変えることはなかった。石やれんがでできた建築が、コンクリートと鉄とガラスの建築に置き換わったにすぎなかった。
 だからこそ彼らの大きな夢は未完で、そしてその未完さが我々を惹きつける。
 この家は世界遺産に登録され、世界一小さな世界遺産と呼ばれる。その小さい中に、世界を変える大きな夢が生き続けている。

 
 最後は、ムッソリーニが目指した古代ローマを再現させた街、エウル
 その街に残る当時の建築が今日在る意義について、山盛英司氏(朝日新聞西部本社記者)はこう語ります。

 
(p156より引用) 週末、エウルのオフィス街からは人影が減る。がらんとした街路を歩くと、突然、古代遺跡のはりぼてのような巨大建築が、行く手をふさぐ。
 ここは、ファシズムの記憶が刻印された街だ。それをこの国の人々はしたたかに残し、活用する。古代ローマの皇帝たちの偉大な遺産に比べれば、ファシストの夢など、ちっぽけな妄想だといわんばかりに。

 
 「奇想」であるということは、ありきたりではない、大勢におもねらないということです。
 そこにあるのは、建築家の強烈な個性の主張であったり、為政者の企図であったり、また、その時代の潮流・趨勢に対する反発・反逆であったり・・・。と、この本に紹介されている建造物には、それに関わった人間の何がしかの強い意志が込められているようです。

 本書に収められた77の建築物。サグラダ・ファミリア教会やロンシャン礼拝堂といった世界的にも有名な定番といってもよい建築物もあれば、ノルウェーのキージ島の教会やアフリカ、マリ共和国の泥の大モスクのように世界遺産として登録され広く世に知られるようになったものもあります。

 そういった中で、特に私の目を引いたのは、大阪はミナミのシンボル「通天閣」でした。さすがにコテコテのオーラを発散していますね。
 本書で紹介されていた「新世界」のウェブサイトは、さもあらんというノリで、なかなか楽しいものでした。
 

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価格:¥ 2,940(税込)
発売日:2007-09-25

 

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バカにならない読書術 (養老 孟司・池田 清彦・吉岡 忍)

2008-04-19 13:58:09 | 本と雑誌

 養老氏の本は、いままでもベストセラーの「バカの壁」をはじめ「ぼちぼち結論」など読んでみています。

 今回の本は、大きく2部構成。

 前半は、「本を読む」ということを材料に、養老氏お得意の「脳」の話や「虫」の話が、気の向くままという感じで展開されます。
 その内容は、必ずしも「養老流読書術」の解説とは限りません。

 たとえば「読み聞かせ」の効用について語っている章では、脳の発達において、「入力」だけでなく「出力」の重要性を説いています。

 
(p13より引用) 昔から言われているように、人は、「知育」「徳育」「体育」という三つで、成長していきます。・・・
この「知育」「徳育」「体育」というのは、脳のはたらきそのものと言ってもいい。
 われわれの脳は、外からの「入力」を受けて、内部で「演算」をして、それで結果を身体の動きとして外へ出す、つまり「出力」する。・・・
 人間は歩けない状態から始まります。それが歩けるようになるのは、前述した「入力」「演算」「出力」という脳のぐるぐる回しによって、脳の中にプログラムが自然にできていくからです。

 
 多様な入力が、さまざまな出力を生み出し、脳のはたらきを柔軟に活性化するというわけです。

 
(p53より引用) 入るところと出るところ、つまり入力と出力が豊かにならないと、真ん中の「演算」部分はサボるのです。真ん中にプログラムを作っていくことが一番重要なことなのであって、そのためには出口と入口を広くしておけばいい。

 
 この他にも、「虫は関節の振動音でコミュニケーションしている」とか「日本語(漢字仮名交じり文)は、脳の2ヶ所で読んでいる」とか、興味深い話が数多く紹介されています。

 本書の後半は、養老氏を含め3名の鼎談です。
 加わるのは、生物学者の池田清彦氏、ノンフィクション作家の吉岡忍氏。つながりは「虫仲間」とのこと。

 個性豊かな3者が、「米国がわかる本」「鷗外vs.漱石」「居酒屋で哲学を」等々14のテーマについて、わいわいがやがやとお勧めの本を紹介していきます。以前読んだ本も何冊かはとり上げられていましたが、それ以外、自分では気づかないような本を見つけるには、こういう書評?は役に立ちます。

 最後に蛇足ですが、本書の書名は「どうかな?」と思いますね。あまり内容を的確に言い表しているようは思えませんし、いつまでも「養老氏=「バカ・・・」というのでもないでしょう。それこそ「○○の一つ覚え」になってしまいます。
 

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発売日:2007-10-12

 


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庭と日本人 (上田 篤)

2008-04-13 14:57:01 | 本と雑誌

Byodoin  著者の上田氏は、建築家・建築学者です。
  とはいえ、本書は、建築学的側面からの「庭」の解説・紹介ではありません。縄文時代から江戸期にかけての「庭」を材料に、「日本人の精神文化」を論じた著作です。

 「日本文化論」としての専門的論考を求めると、さすがに少々立論に粗さが感じられますが、著述のなかの「和歌」や「俳句」を引用した解説には興味深いものがありました。

 たとえば、宝池を中心とした浄土庭園を説明した章での、有名な芭蕉の句の解釈です。

 
(p102より引用) 「浄土の庭」は乱世がつづいて人々が極楽浄土をもとめるたびに、その後もたゆまずつくられた。じっさい西芳寺の庭も金閣寺の庭も、南北朝の動乱のころにつくられている。銀閣寺の庭も応仁の乱の直後だった。・・・
 芭蕉もまた奥州平泉をおとずれたとき、毛越寺庭園跡のすぐ北にある中尊寺金色堂の阿弥陀仏に一句をささげている。
 五月雨の降りのこしてや光堂(「奥の細道」)
 五月雨を乱世とみ、そのなかに光るものを阿弥陀仏とみたのだろう。

 
 この芭蕉の句を「浄土思想」のなかに位置づけて解する見方は珍しいものだと思います。

 もうひとつ。庵に代表される日本建築の特徴について、いくつかの和歌を材料に解説した部分。

 
(p149より引用) 簡素なすまいを愛するのはこの国の伝統だった。
 たとえば奈良時代に山部赤人は、
 春の野にすみれつみにと来しわれぞ、野をなつかしみ一夜寝にける(『万葉集』1424)
とうたって、野に生きる万葉人の喜びをあらわした。・・・
 また鎌倉前期に『愚管抄』というかな文字の日本歴史をかいた天台僧の慈円は、
 引きよせてむすべば草の庵にて、解くればもとの野原なりけり
とよみ、野のなかにすまうことを理想とする日本建築の本質をいいあてている。

 
 こちらは「なるほど」という感じがします。

 本書で紹介されている庭のいくつかは、私も実際訪れたことがあります。
 ただ、最近は、ゆっくりと庭を眺めたり歩いたりすることはありません。こういう本を読むと、久しぶりに京都あたりに行きたくなりますね。
 

庭と日本人 (新潮新書 246) 庭と日本人 (新潮新書 246)
価格:¥ 714(税込)
発売日:2008-01

 

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ゴルギアス (プラトン)

2008-04-09 16:45:10 | 本と雑誌

Platon  プラトンの著作は、ちょっと前にも「プロタゴラス」を読んでみましたが、本書は、参加しているセミナーでの課題図書として指定されたので手に取ったものです。

 例のごとくソクラテスと論客との対話形式で立論が進んで行きます。

 以下のフレーズは、ソクラテスの「対話」に対する姿勢の表明です。

 
(p48より引用) ところで、そういうわたしとは、どんな人間であるかといえば、もしわたしの言っていることに何か間違いでもあれば、こころよく反駁を受けるし、他方また、ひとの言っていることに何か本当でない点があれば、よろこんで反駁するような、といっても、反駁を受けることが、反駁をすることに比べて、少しも不愉快にはならないような、そういう人間なのです。なぜなら、反駁を受けることのほうが、より大きな善であるとわたしは考えているからです。それは自分自身が最大の害悪から解放されるほうが、他の人をそれから解放するよりも。より善いことであるのとちょうど同じ程度に、そうだからです。

 
 また、別のところではこうも言っています。
 いわゆる「無知の知」の構えです。

 
(p213より引用) ぼくたちはみな、いま話題になっている事柄について、その真実は何であり、また何が偽りであるかを、お互いに競い合って知るようにしなければならない、とこうぼくは思うのだ。というのは、それが明らかになることは、ぼくたちすべての者にとって、共通に善いことなのだからね。・・・それでもし、諸君のなかの誰かに、ぼくがぼく自身に同意をあたえていることは、事実に反していると思われるなら、その人は話の中に割り込んで、ぼくを反駁してくれなくてはいけない。それというのも、いいかね、諸君、ぼくとしては、これからぼくが話そうとしていることは、決して知っていて話すのではなく、むしろ、諸君とともに共同で探究しようとしているからなのだ。したがって、ぼくに異議を申立てる人の言い分に、何か一理あるということが明らかになれば、ぼくがまず一番に、その人の賛成者になるだろう。

 
  本書においてソクラテスは、ゴルギアスらの説く「弁論術」を、快楽への「迎合」として否定しています。

 
(p197より引用) 最善ということは無視して、・・・ただ魂の快楽だけを問題にし、どうしたなら魂に快楽がもたらされるか、ということは考えているけれども、快楽のなかでも、どれはより善いものであり、どれはより悪いものであるかということについては、考えてみようともしなければ、また、より善いことになろうが、より悪いことになろうが、ただ気に入られて喜ばれさえすれば、それ以外のことには全然、関心のないといったものなのである。

 
 ソクラテスとの対話に登場する3人目の論客カルリクレスは実際の政治家です。彼との対話は双方非常に好戦的?で、本書の中核部分と位置づけられます。

 その対話のなかで語られた「ソクラテスの政治姿勢」です。

 
(p262より引用) 現代の人たちの中では、ぼくだけが一人、ほんとうの政治の仕事を行なっているのだと思っている。そこで、いつの場合でもぼくのする話は、人びとのご機嫌をとることを目的としているのではなく、最善のことを目的としているのだから、つまり、一番快いことが目的となっているのではないから、それにまた、君が勧めてくれているところの、「あの気の利いたこと」をするつもりもないから、法廷ではどう話していいか、ぼくはさぞ困るにちがいないのだ。

 
 最善を追究するというソクラテスの政治信念の表明とともに、後の歴史を暗示する内容となっています。

 最後に、不動の「ソクラテスの信念」です。

 
(p277より引用) ただこの説だけは、反駁にも揺がないで、止まっているのだ。すなわち、ひとは不正を受けることよりも、むしろ不正を行なうことのほうを警戒しなければならない。また、ひとは何よりもまず、公私いずれにおいても、善い人と思われるのではなく、実際に善い人であるように心がけなければならない。

 
 肝に銘じて守りたい言葉です。
 
 

ゴルギアス (岩波文庫) ゴルギアス (岩波文庫)
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