村上春樹さんの原作を映画化したものです。唯一私が読んだ村上春樹さんの著作である「レキシントンの幽霊」に収録されていたものとのことなのですが、かなり以前に読んだせいもあり原作の記憶はまったくありません。
映画の作りとしては、語りとセリフを融合させてみたり、シーンの移動を横スライドにしてみたり、とあれこれ工夫しているのでしょうが、私には不自然さだけしか残りませんでした。
原作も映画作品も、こういったテイストのものは私にはダメですね、合いません。もちろん、イッセー尾形さんと宮沢りえさんは一流の役者さんで、キャスティングはまったく問題ないのですが・・・。
好悪がはっきり分かれる作品だと思います。
最近はいわゆる「ビジネス書」は全くと言っていいほど読んでいません。野中郁次郎氏の著作も久しぶりです。
この本は、かなり長い間“積読”状態になっていたのですが、新型コロナウイルスの影響でいつも行っている図書館が長期間閉館されて、手元に読む本がなくなったので手に取り直したものです。
前半のかなりの部分は、ノルマンディ―上陸作戦の詳細なノンフィクション的記述が続きます。その中で、ところどころに「戦略」「戦術」「組織」といったマネジメント色が感じられる解説が挟み込まれています。
たとえば、アメリカ軍とイギリス軍の対比について。
(p264より引用)
同じ連合軍でも、アメリカ軍とイギリス軍の戦闘スタイルには大きな違いがあった。アメリカ軍では現地司令官に一定の使命と兵力とを与え、その実行に関して参謀本部が細かく干渉することはほとんどなかった。その裏には、現地にいる人間のほうが数千マイルも離れた場所にいる人間より判断が的確だという考え方があった。アイゼンハワーは現地司令官について、「彼らはどんな場合にも、上から逐一指摘を受けなくても、敏速かつ効果的に行動するものと期待していた」と書いている。それに対してロンドンにあったイギリス参謀本部は毎日、司令官と密接な連絡を取り、情勢や兵力の状態を絶えず報告させていた。アメリカ軍は先に紹介したライノー戦車にせよ、歩戦一体作戦にせよ、実戦を通じてさまさまな戦い方の新機軸を生み出したが、イギリス軍には目立ったものはなかった。彼我の戦闘スタイルの違いがそこに反映しているのかもしれない。
もうひとつ、
(p338より引用)
ノルマンディー上陸作戦は、機動戦と消耗戦という両方の性格を持っていた。将兵や兵器の物量だけでなく、人間の判断力や知力、そして行動力が大きな鍵を握っていた。既に見てきたように、勝利を収めた連合軍においては、通常の指揮統制に加え、現場における各人の文脈判断と行動が重んじられた。
連合軍の組織は、官僚制的なヒエラルキー組織だったドイツ軍に比べて、圧倒的にフラクタル性が強かったことが衆知のマネジメントを可能にした。さらに連合軍の中でも、イギリス軍よりアメリカ軍のほうが機動戦に適合した組織だった。アメリカ軍の司令官はどんな場合にも上からの指示を参照しつつも、各状況に応じて主体的に、すばやく、効果的に動くことを期待されていた。その意味で、ノルマンディー機動戦の最大の立役者はやはりパットンであった。
「消耗戦」と「機動戦」とは対置される戦術ですが、両者は現実的な適用においては、相互補完的な関係にあります。敵を固定化する消耗戦(通常兵力)と敵陣を突破する機動戦(臨時兵力)のタイムリーな合体が、ノルマンディー上陸作戦でも連合軍に大きな成果をもたらしました。
また、本書では、ノルマンディ―上陸作戦をはじめとする第二次世界大戦を舞台に活躍したチャーチル・ルーズベルト・アイゼンハワーといった当代一流の人物像についても、その特徴的な人間力を紹介しています。
(p335より引用)
パットンについて次のような言葉が彼の指揮官としての柔軟性を物語っている。
「指導者とは、原則を状況に適応させられる者だ」。パットンは戦史や軍事科学を実によく読んだが、 その際、メモをインデックス・カードに打ち出す習慣があった。これはそこに書き残されていた言葉だ。鍵になるのは、「適応」という言葉だ。通常なら「応用」としそうだが、パットンはあまりにもアグレッシブであり独創的だった。単に原則を状況に応用するだけに収まらなかったのだ。彼はもっと基本的で活動的な何かを求めていた。原則は尊ぶが、焦眉の急は優先した。現実を前にしたときに 大切なのは、原則を無視したり忘却するのではなく、それを必要に応じて変えていくことである。
野中氏が唱える「人間力」にかかる主要概念は「フロネシス」です。
アリストテレスは「ニコマコス倫理学」において、知識を「エピステーメ(形式知)」「テクネ(暗黙知)」「フロネシス(実践知)」に分けて説明しています。「形式知」と「実践知」の相互変換螺旋運動によるイノベーション創出を促進するものとして「実践知」があるとの文脈です。
その「実践知」を有する未来創造型リーダーの条件について、野中氏はこう解説しています。
(p345より引用)
われわれは、数多くの優れた政治家、軍人、企業のリーダーを研究した結果、実践知リーダーは次の6つの能力を備えていると考える。
(1)善い目的をつくる能力
(2)ありのままの現実を直感する能力
(3)場をタイムリーにつくる能力
(4)直観の本質を物語る能力
(5)物語を実現する能力(政治力)
(6)実践知を組織する能力
善い目的がなければ、多くの人を巻き込むことができない。現実を正確に把握できなければ、間違った判断を下してしまう。場をつくる能力がなければ、衆知を創発できない。うまく物語る能力がなければ人を説得できない。政治力なくしては優れた構想も画餅に終わってしまう。実践知を組織に広められなければ、メンバーが育たず、組織が一代限りになってしまう。だからこそ、この6つが必要不可欠なのだ。
本書ですが、ノルマンディー上陸作戦の戦略・戦術の詳細にも興味がある方は、第一章からじっくり読み進めていけばいいと思いますし、ノルマンディー上陸作戦を材料にした戦略論・リーダーシップ論に関心のある方は、第7章・第8章から読んでみるというアプローチの仕方もあるでしょう。
いずれにしても、実践的ストーリーテラーとしての野中氏の面目躍如たる中身の濃い著作だと思います。
東野圭吾さんの原作です。前作の「麒麟の翼」に続いて観てみました。
先の作品はどうも私の波長には合わなかったのですが、こちらは結構楽しめましたね。
キャスティングから“犯人”は見え見えではありましたが、そこに至る謎解きの複雑さ加減が、適度な“無理筋”のプロットとも相俟ってミステリーとしての興味を高めていたように思います。
さて、その“犯人(ヒロイン)”を演じたのは松嶋菜々子さん。この役は彼女にはピッタリでした。惜しむなくは、少女期の子役さん、ちょっと荷が重かったかもしれません。
在宅勤務が続いているので、運動不足にならぬよう、天気のいい日は朝起きて近所を「散歩」するようにしています。
ただ同じコースを歩くもの能がないので、毎日ルートを変えています。その記録としてgoogle mapの「タイムライン」機能を使ってみたのですが、これが思いの外難物で・・・、本来の機能を発揮させるのに少々手こずりました。
設定では、「ロケーション履歴もON」「位置情報へのアクセスも許可」にしているので問題ないと思い、楽しみにスマホをポケットにいれて散歩開始。ですが、何度やってもタイムラインが記録されません。心当たりの設定を確認しても、原因がわかりませんでした。
で、ようやく分かった犯人が「バッテリーセーバー」でした。
確かに、これがONの時には「画面をオフにすると位置情報サービスは停止する」と「バッテリーセーバー」のヘルプには記載されているのですが、そこに気づきませんでした。
「タイムライン」のヘルプには、バッテリーセーバー利用時の注意点は書かれていないんですね。
androidスマホを使っている人でバッテリーの減少を気にしている人はそこそこいると思います。「バッテリーセーバーをON」にしている人も多いでしょうから、そのあたりもちょっと意識してヘルプの説明を充実させて欲しいですね。
まあ、いかにもgoogleのヘルプという感じもしますが・・・。