OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

入社1年目の教科書 (岩瀬 大輔)

2011-09-25 12:50:02 | 本と雑誌

 岩瀬氏の本は、以前、伊藤真氏との共著の「超凡思考」を読んだことがあるので、本書で2冊目。タイトルどおり、「仕事に対する取り組み方のイロハ」が紹介されています。

 まず、「はじめに」の章の中で岩瀬氏が示す「仕事において大切な3つの原則」は、以下のような内容です。

 ・原則1 頼まれたことは、必ずやりきる
 ・原則2 50点で構わないから早く出せ
 ・原則3 つまらない仕事はない


 これ以外にも重要な原則は数多くあると思いますが、もちろん、この3つは全く否定されるものではありません。本書では、こういった具体的な50のアドバイスが提示されています。

 それらの中で、改めての覚えとして「社会人の勉強」についての岩瀬氏のコメントを書き留めておきます。

(p117より引用) ビジネスパーソンの勉強は、必ずアウトプットに結びつけるべきだ

 インプットだけでは不十分、「So what?」と問いかけながら、その自分なりの答えをアウトプットとして活かしてこそ意味があるとの指摘です。

 さて、本書を読んでですが、(「自分も実行しよう」と思うものも中にはありますが、)むしろ、「最近の新人社員に対してはこういったアドバイスが必要なのか」と改めて気づかされるものの方が圧倒的に多いというのが実感ですね。私のような年配になると、(私に対して)そのように「振舞われる」ケースの方が圧倒的に多くなるからです。

 最後に感想です。
 今回は岩瀬氏の著作ということで期待して手に取ったのですが、正直なところ、内容的にはかなり物足りない印象を受けました。読者として想定している「新人社会人」のレベルはこんなものなのでしょうか。とても残念です。(私の娘ももう2・3年もすると社会人の仲間入りするはずなのですが、彼女の様子を見ていると、確かにそうかもしれないとも思いますが・・・)

 著者自身、本書の中で「本を速読するな」「骨のあるものをしっかり読め」と薦めているのが、なんともシニカルに感じてしまいました。


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価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2011-05-20

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今道友信わが哲学を語る―今、私達は何をなすべきか (今道 友信)

2011-09-23 08:43:13 | 本と雑誌

Koushi  今道友信氏のお話は、数年前、直接伺う機会がありましたが、著作も以前「エコエティカ」を読んだことがあります。とても興味深い内容でした。さて、本書は、鎌倉高徳院で開講されていた今道氏の講義の書き起こしです。

 第一章は「芸術と宗教をめぐって」、第二章は「東西の哲学を読みなおす」。この章の「自然哲学」を論じた講において、今道氏は、昼と夜に関して面白い指摘をしています。

(p144より引用) 昼と夜は同じ場所で起こりますが、同じ現象ではありません。・・・
 昼の知覚はどのようになっているのか。顔の前方に「パースペクティヴ(perspective)」が広がります。・・・昼は背後を知らない世界です。昼は前方に向かって進んで行く、仕事をする世界だと言えます。
 一方、夜の世界はどのようになっているのか。電気の明りがない真っ暗な夜では、聴覚を中心とした世界になります。自分を中心として円がある。聴覚や嗅覚や触覚の及ぶ円があります。そのため夜の世界では、前方も後方も両方感じられます。・・・自分を中心とした同心円の世界なのです。

 昼は、明るい日のもとで対象物を精緻に計ることができます。この表出化された「量の認識」に基づく「自然科学」は「昼」の学問です。他方、夜は「質の認識」に内面化され、「自然哲学」のひとつのテーマとなると説いています。

 もうひとつ、この章で教えられたのは、孔子の教えの幅広さでした。

(p152より引用) 『論語』は、道徳を含めた三つの大きな部門からなっています。第一が「論理学」、第二が「美学」つまり「芸術論」、そして第三が、「道徳」と「政治学」となっています。

 論語は封建思想の礎としての「儒学」ではなく、より広い哲学思想だとの指摘です。
 たとえば、「論理学」としての側面。論語の中の一節に「必ずや名を正さんか」との孔子の言葉かあります。この「名」が孔子の「論理学」の基本コンセプトです。「名」とはものの「定義」を意味します。定義がはっきりしなければ「言葉」は通じません。論理的な思考も対話も成り立たないのです。

 本書の最終章、第三章のタイトルは「21世紀の倫理学」。身近で具体的な題材を採り上げて「倫理」を語ります。
 たとえば、平成11年に制定された「国家公務員倫理法」をもとに「倫理と法との関係」について語ったくだりです。

(p245より引用) 倫理を法で取り締まる国があればお目にかかりたい、と思っていたのですが、実は日本がそうでした。これは非常に大きな間違いです。倫理を法で取り締まるのではなく、法を倫理で規制しなければなりません。議会の多数決により決めることができるのは、法律であって倫理ではありません。服務規程と倫理は絶対に違うのです。服務規程が整っていても、倫理的反省ができているとは言えません。・・・倫理学が「善」の理念を忘れた時、それはただの服務規程や行動規則に堕するのです。

 現代は「人権」が認められる社会です。その基本は「人命の尊重」です。しかしながら、現実的には不慮の死が世界中のいたるところで見られます。

(p262より引用) こうした、餓死、事故死、戦死、公害死は、倫理の四大社会倫理、四大徳目である、「正義」「中庸」「勇気」「節制」を知っていないがために起こっているのです。・・・以前、哲学とは「魂の世話」であり、そのために必要な基本的知識があるとお話ししましたが、その知識とはこの四大社会倫理のことなのです。

 今道氏は、この四大倫理徳目の中で、とりわけ「勇気」の大事さを訴えています。「自分が正しいと信じたことをためらわずに主張する」こと、戦中を生きた今道氏は、この「勇気」の欠如による不幸を身に沁みて感じているのです。


今道友信わが哲学を語る―今、私達は何をなすべきか 今道友信わが哲学を語る―今、私達は何をなすべきか
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発売日:2010-07

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〈アイデア〉の教科書 電通式ぐるぐる思考 (山田 壮夫)

2011-09-18 09:08:45 | 本と雑誌

 この本も、以前参加していたセミナーの事務局からいただいたものです。とてもコンパクトな本ですが、なかなか興味深いアドバイスがあり刺激になりました。

 冒頭、著者は、タイトルにもなっている「ぐるぐる思考」についてこう説明しています。

(p20より引用) ぐるぐる思考は個人がひとつの脳みそを徹底的に使って〈アイデア〉をつくるプロセスです。東洋的な主観で発想を広げ、西洋的な客観で収束を図ります。評論家的な薄っぺらい正論なんて、相手にされません。

 「ぐるぐる思考」のプロセスは4つのモードから構成されます。

(p20より引用) 最初は思考の材料を準備するための「感じる」モード。それに続くのは、ありとあらゆる可能性を考え尽くす「散らかす」モード。第三のモードは〈アイデア〉を見つける「発見!」。そして〈アイデア〉を実現するための「磨く」モードです。

 このプロセスにより「左脳」→「右脳」→「左脳」と思考が脳みその中をぐるぐる回るというわけです。この個人の脳内サイクルのイメージは、まさに野中郁次郎氏と竹内弘高氏が「知識創造企業」において提唱した組織としての知識創造モデル(「SECIモデル」)と相似形をなします。

 本書は、あくまでも〈アイデア〉創造のプロセスを紹介したものです。単発的なアイデア発現のTipsを並べたものではありません。アイデアは「天才的なひらめき」により独創的なアイデアが生まれるという立場にたったものではなく、右脳と左脳の往還により試行錯誤を繰り返し、あらゆる可能性を考え尽くすといった「窮地に追い込まれた」ところから搾り出すものだという考え方です。

 本書を読んで、もう一つ大きな気づきになったのが、「電通『鬼十則』」です。
 ちょっと長くなりますが、覚えとして書き止めておきます。

(p24より引用)
1.仕事は自ら「創る」べきで、与えられるべきでない。
2.仕事とは、先手先手と「働き掛け」て行くことで、受け身でやるものではない。
3.「大きな仕事」と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4.「難しい仕事」を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5.取り組んだら「放すな」、殺されても放すな、目的完遂までは…。
6.周囲を「引きずり回せ」、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7.「計画」を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8.「自信」を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9.頭は常に「全回転」、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10.「摩擦を怖れるな」、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

 電通4代目社長の吉田秀雄氏が1951年に社員の行動規範として示したものとのことです。
 今から50年以上も前の言葉ですが、全く古さを感じさせません。リーダの示す指針として、現場に根ざした迫力と説得力がありますね。


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ウソを見破る統計学 (神永 正博)

2011-09-14 21:37:11 | 本と雑誌

Poissonfig1   「数字をどう読むか、どう見せるか」という点においては、統計学の基本的な知識は不可欠です。

 本書では、母集団の特性を表す代表値として「平均値」を用いることの適否や、「相関」と「因果関係」との違いといった初歩的な統計的思考の例が豊富に紹介されています。

 たとえば、「太った人ほど年収が高い!」という仮説。実際、肥満度と年収のデータを収集してその分布をみてみると一見「正の相関」があるようです。

(p130より引用) BMIと年収との間に何か関係があるように思えます。しかし、・・・これは見かけだけの可能性があります。
 この例では、
(a) 年齢が上がると、BMIが徐々に大きくなる
(b) 年齢が上がると、年収が上がる傾向がある
というように、年齢という、ここには書かれていない変数が、BMIと年収の双方を増やす点が考慮されていませんでした。
 このような例は、他にもたくさんあります。
 たとえば、血圧と年収の関係を調べたら、おそらく「血圧が高いほど年収が上がる」という傾向が見られることでしょう。

 これは、表面に現れる変数の裏に、真の因果関係のある要素が隠れているという好例です。この場合、「同じ年齢」の標本をとってBMIと年収の相関をみなくては、短絡的に「太った人ほど年収が高い!」と言えるかどうか分らないということになります。

 ちなみに私の場合は超初心者なので、統計というとまず頭に浮かぶのは「正規分布」のベル型のグラフです。この正規分布を基本にした統計分析はもちろん実用性の高いものですが、もうひとつ、「ポアソン分布」も実社会の現象を説明するには有効なようです。

(p165より引用) 「独立な(互いに無関係に起きる)事件や事故などが、決まった期間に何回起きたか」を記録すると、ポアソン分布というものが現れます。

 このポアソン分布では、一つの事象が起きてから再び同様の事象が起きるまでの期間は指数分布になることから、「互いに無関係な事象は連続して起きやすい」という特性が発現するとのこと、このあたり、素人的には「へぇー」という感じですね。

(p170より引用) ポアソン分布の理論が示唆するのは、「関係がなくても連続する傾向がある」ということだけです。言い換えれば、「連続した現象同士が本当に関係しているかどうかを知るためには、別の情報が必要だ」ということを示唆しているのです。
 そして、これも重要なことですが、ポアソン分布から外れている場合は、現象の独立性が疑わしいということになります。

 さて、最後に本書を読んで思ったこと、それは、統計学的な思考はまさに「リスク管理」を議論するには必要不可欠だとの再認識でした。

 先のポアソン分布から導き出される稀少事象生起の特質や、「極値分析」による最悪リスクのレベル想定等は、危機に対する準備にはとても重要な情報となります。また、他方、統計的思考を身につけることによって、因果関係として根拠のない風評にも惑わされない冷静な対応もとることができるようになります。

 今回の大震災・福島原発事故を鑑みるに、津波の想定規模や放射能汚染の影響度等の判断の適否、また、各種発表数字・報道内容への反応等については、事実や理論の裏づけのない情緒的行動がそこここに見られました。省みるべき点が数多くありますね。

ウソを見破る統計学 (ブルーバックス) ウソを見破る統計学 (ブルーバックス)
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フェイスブック 若き天才の野望 (デビッド・カークパトリック)

2011-09-10 09:48:01 | 本と雑誌

Facebook  遅まきながら読んでみました。ちょっと前に映画化もされ大いに話題になったfacebookの創設者マーク・ザッカーバーグを取り上げたノンフィクションです。
 内容は、しっかりした取材に裏打ちされているようで、著者が紹介する数々のエピソードも想像していたよりずっと充実していました。

 まず始め、著者はfacebook誕生のときをこう綴っています。

(p29より引用) ハーバードの学生向けのこの新しいサービスは、フレンドスターのようなデートサイトではなかった。ザ・フェイスブックは同級生を追って彼らの最新の動静を知るという非常に基本的なコミュニケーションのためのツールを目指した。・・・
 2004年2月4日水曜日の午後、ザッカーバーグは借りたサーバーへのリンクをクリックした。ザ・フェイスブックが誕生した瞬間だった。

 私自身、最近ははぼ毎日facebookにアクセスしています。登録した当初は馴染めなかった機能も、今では当たり前のものとして受け入れるようになっています。最初、ちょっと面食らった機能は「ニュースフィード」でした。この「ニュースフィード」がfacebookに登場したのは2006年9月5日のことです。

(p281より引用) ニュースフィードはフェイスブックにとって単なる変化以上のものだった。それは、人と人との間で交換される方法に、重要な変化が訪れる前兆だった。それは、コミュニケーションの「普通の」方法を逆さまにした。今まで自分に関する情報を誰かに伝えたい時には、自らプロセスを始める、すなわち電話をかけたり、手紙やメールを送ったり・・・するなど、相手に何かを「送る」必要があった。
 ところが、ニュースフィードはこのプロセスを逆転させた。誰かに自分に関する通知を送る代わりに、フェイスブックで自分について何かを書くだけで、その情報に興味を持ちそうな友だち宛にフェイスブックが送ってくれる。・・・
 フェイスブックがつくったのは、実質的に友人の情報を「定期購読」する手段だった。

 自分のコメントや行動が自動的にオープンになるというのは如何なものか・・・。

(p283より引用) ある人にとってのオープン性は、別の人にとっての侵入行為だった。

 おそらくこの機能に対する是非がfacebookのファンになるか否かのひとつのメルクマールになるように思います。

 さて、最後に本書の中で紹介されている興味深いやりとりをひとつ。
 2009年1月にダボスで開催された世界経済フォーラム期間中、あるレストランでザッカーバーグはgoogleのラリー・ページとテーブルを囲みました。

(p463より引用) 「ラリーはフェイスブックを使っているの?」
と彼は尋ねた。
「いや、実は使っていないんだ。」
ページが普段どおりの鼻にかかったかん高い声で答えた。ザッカーバーグががっかりしたように見えた。
「でもなぜ?」
と食い下がる。
「私向きにはデザインされていないからね、実際」
とページが答える。

 このときページの頭の中には、すでに「google+」の構想があったのでしょうか。


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ハーバードの人生を変える授業 (タル・ベン・シャハー)

2011-09-04 08:22:28 | 本と雑誌

 M.サンデル教授の「ハーバード白熱教室」以来、ハーバードものがちょっとした流行になっていますね。

 本書も、ついその今どきのタイトルに惹かれて手に取ったものです。

 著者は心理学博士で組織行動論の専門家とのこと。内容は、著者のハーバードでの講義(ポジティブ心理学)のポイント紹介です。ポイントは52、それぞれに考え方とアクションが記されています。
 それらアクションの中から、実践してみたいと思ったもの(私の場合、根がずぼらな性格なので、ほとんど実行できないのですが)を書き止めておきます。

 まずは、感謝するということ。

(p10より引用) 感謝ノートをつくる
 この1週間、感謝することを毎日5つ書きとめるようにしてください。・・・書いていることを目の前に思い浮かべたり、書きながらもう一度経験しているように感じたりしてください。

 これはノートでなくても、twitterでつぶやくことでも代替できそうです。
 次に「習慣化」。私も、これまでやってみようと思ってできなかったことはそれこそ山のようにあります。

(p14より引用) 2つの習慣を実行する
 これをすればもっと幸せになれると思う2つの習慣を考えてください。・・・習慣にすることを決めたら、スケジュール表に書いて実行してください。

 そして、「失敗から学ぶ」ということ。

(p50より引用) つらさを見つめる
 今週1週間、毎日15分間かけて、失敗した経験やその状況について書いてみましょう。

 ちょっと趣旨は違うのですが、この「失敗」に関してはこういう興味深い指摘もありました。

(p175より引用) チームワークのいいチームは「より多くのミスを起こすのではなく、より多くのミスを報告していた」のです。・・・うまく統制されたチームでは「心理的な安全性」が確保されている・・・そこでは、遠慮なく意見を言っても、助けを求めても、たとえある業務で失敗しても、決して恥ずかしい思いをさせられたり、罰せられたりしないという安心感があるのです。

 こういう「安心できる環境」をつくることはとても大事ですね。ただ、この環境の構成要素は「人」ですから、これがまたなかなか難しいのでしょう。

 さて、本書では、数多くの「ポジティブシンキング」に向けたTo-Doリストが紹介されていますが、それらの中で私が最も腹に落ちたののは、「プロセスを楽しむ」という言葉でした。
 結果は結果でしかない、結果もプロセスの一部に過ぎない。だとすると「○○に向けてどうしたか」という「プロセスへの納得性」が最終的なゴールではないかと思うのです。
 その流れではこういうフレーズもありました。

(p88より引用) 最高の出来事が起こるのではありません。起こった出来事を最高のものにできる人がいるのです。

 中村天風氏のいう「人生は、心ひとつの置きどころ」と同根の思想ですね。


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