OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

歴史を動かした会議 (加来 耕三)

2011-07-31 09:28:54 | 本と雑誌

Kaishu_katsu  ひとつの「会議」の成り行き次第でその後の歴史が大きく変わった、そういう実例を数多く紹介し、その中から「会議」を有利に導くためのポイントを紹介しています。

 会議に臨んでは「根回し」「かき回し」といった調整・折衝手段が、平場でもしくは裏舞台で登場しますが、本質は如何にして議論のリーダシップを自らの掌中に納めるかというパワーゲームでもあります。

 しかしながら、もちろん会議の場で働くのは、文字通りの物理的パワーではありません。権威や論理のパワーであり、そこには説得・納得という要素も関わってきます。会議の発言者は、みずから是としている論理で論陣を張ります。その論理のベースには、当然のことと考えている思考基盤があります。

(p116より引用) 常識に則って-などというと、いかにもありきたりの事柄と思われる方がいるかもしれないが、会議の発言で混同されやすいものに、常識=社会通念(習慣・慣例)といった思い込みがある。両者は明らかに違う。思い込み=社会通念と置くべきではあるまいか。

 「社会通念」はあるコミュニティでは共通の思考基盤たりえますが、コミュニティが異なると通用しません。相手の「社会通念」そのものを否定することは、相手の論理構成を根本から崩す有効な攻め口となります。
 著者は、「海防」をテーマにした幕末の御前会議における勝海舟の議論を、このパターンの実例として紹介しています。

(p119より引用) 非常の際に唯々諾々としていては、元も子も失ってしまう。概ね世論とか、多数の意見というのは、過去の因習、通念といった周知の所産で、旧態を脱皮しきれないものが少なくない。非常事態のさなかの会議では、指導的立場の者は以前にもまして、斬新な知恵と発想を示さねばならない。

 ところで、勝海舟といえば、江戸城開城をめぐる西郷隆盛との会談(会議)が有名ですが、それに関して、本書では興味深いエピソードが紹介されています。それは、勝・西郷会談以前に、西郷としては江戸城攻撃の中止を決断していたというものです。

(p162より引用) 大村藩出身の渡辺清男爵の「江戸、攻撃中止の真相」と題する回想だが、三月十三日、東征軍参謀の木梨精一郎とともに、横浜のイギリス公使館のパークスを訪れたおりの出来事。・・・「江戸での戦争は何のためか、・・・江戸に戦火が起これば、この横浜にも飛び火するであろう。居留地に住むわれわれ外国人の生命、財産を守るために、海兵隊と上陸させてあのように守らせている。われわれは江戸の戦争に賛成できない」

 勝との会談の前日にこのパークスの抗議の情報を聞いて、西郷は戦闘意欲をなくしていました。勝がこの情報を得ていたか否かは定かではありませんが、このケースのように、いくつかの会議は、それが開かれる前にすでに結論が見えているものも数多くあるのです。

 本書は、どちらかといえば、そういう事前準備の巧拙がその後の成り行きの明暗を分けた例を多く紹介しているように思います。
 ただ、それは「根回し好き」という日本人的行動スタイルとして指摘しているのではありません。会議を成功に導くための(海外も含めた)普遍的な秘訣として論じているのです。


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なぜ「改革」は合理的に失敗するのか 改革の不条理 (菊澤 研宗)

2011-07-29 09:09:46 | 本と雑誌

Prospect  菊澤研宗氏の著作は、以前読んだ「『命令違反』が組織を伸ばす」に続いて2冊目になります。

 本書のタイトルもなかなか興味を惹きますね。合理的(と考えている)行動が失敗を招くという筋書きからいうと、クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」を思い起こさせます。

 著者がいう「改革の失敗(=不条理)」には3種類あります。

(p17より引用)
「全体(社会)合理性」と「個別(私的)合理性」の不一致によって起こる不条理・・・
「効率性」と「正当性(倫理性)」の不一致によって起こる不条理・・・
「長期的帰結(利益)」と「短期的帰結(利益)」の不一致によって起こる不条理・・・

 本書では、これらの不条理の分析を試みるのですが、その立論においてキーになる理論は「新制度派経済学」から3つ。「取引コスト理論」「エージェンシー理論」「所有権理論」。そして、「行動経済学」からは「プロスペクト理論」です。

 まずは、「取引コスト理論」。

(P18より引用) この理論では、すべての人間は完全に合理的でもないし、完全に非合理的でもなく、ある程度合理的であると仮定される。・・・
 このように、限定合理的な人間世界では、取引を行う場合に「取引上の無駄」が発生する。・・・このとき、発生する人間関係上の駆け引き(無駄な手間暇)のことを「取引コスト」と呼ぶ

 この「取引コスト」は会計上には表れません。が、実際はビジネス推進上大きな阻害要因になります。こういった「取引コスト」を避けようとする際、人間は不条理に陥るとの考えです。

 あと二つの理論も、それらが説明する発生事象の概略だけ書き止めておきます。

(p24より引用) 「エージェンシー理論(Agency Theory)」では、・・・すべての人間関係が「依頼人(principal)」と「代理人(agent)」というったエージェンシー関係で分析される。・・・
 ・・・両者の利害が不一致で情報が非対称な関係-エージェンシー関係-のもとでは、エージェントは取引契約後にプリンシパルの不備に付け込んで、隠れて手抜きを行って利己的利益を追求した方が合理的となる

 これは、「道徳欠如(moral hazard)」の問題です。そして、次。

(p30より引用) 「所有権理論(The Theory of Property rights)」・・・によって、「財産や資源をめぐる所有関係の不明確さが、結果的に資源の非効率的で不正な使用に導く」ことが明らかにされた。簡単にいってしまえば、「人間というものは自分の所有物は大切に効率的に扱おうとするが、自分の所有物でなければ大切にしない」ということを説明する理論である。・・・
 そして、そのような財の所有権が不明確な世界では、財の使用によってもたらされる効果-プラスもマイナスも含む-を誰にも帰属できないような無責任な事態が起こる

 最後は、行動経済学における中心理論「プロスペクト理論(Prospect theory)」です。

 この概念の概要はこうです。まず、横軸に「利益・損失」を、縦軸に「心理的価値(満足・不満足)」をとったとき「S字型の曲線」で表されます。レファレンスポイント(2軸の交点)を境に、相対的利益が増加するほど心理的満足の増加傾向は逓減する傾向(感応度逓減)と、同一単位の利益と損失の場合、損失による心理的不満足の程度が増すという傾向(損失回避)が、このグラフにより説明されるのです。
 こういった経営者の心理状態が、たとえば、赤字ビジネスへの固執といった行動を生み出し、結果として、合理的な企業改革を妨げているのだと著者は指摘しています。

 「プロスペクト理論」で説明される最悪の例の一つが、第二次大戦期ビルマで敢行された「インパール作戦」における牟田口中将の行動です。

(p141より引用) この事例から学ばなければならないのは、マイナスの心境で改革を進めることは危険だということだ。リスクの高い方向へと改革を進め、改悪となって合理的に失敗する可能性が高い。このような改悪の不条理を避けるには、プラスの心境にあるメンバーを集めて改革を進める必要がある

 著者のこの指摘は至極当然ではありますが、現実には、同様の環境下において「プラスの心境にあるメンバー」を集めること自体、また、そういう心境に至る人を生み出すことこそが困難なのです。

 その点に関しては、本書の後半では、著者は、カントの「実践理性」等の概念を紹介しつつ、「自律的人間」の重要性に言及しています。が、このあたり少々論理的な飛躍や実社会環境の現状とのギャップがあって、つい左脳的論理展開という印象を強く感じてしまいます。

 著者の着眼は面白く、大変読みやすい本なのですが、立論が淡白でステレオタイプすぎるのが残念です。


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中谷宇吉郎随筆集 (中谷 宇吉郎)

2011-07-23 08:04:16 | 本と雑誌

Yuki  中谷宇吉郎氏は、低温科学の草分け的な物理学者です。
 雪の研究で有名で、そのままズバリのタイトルを冠した岩波新書の「雪」は、ファラデーの「ロウソクの科学」にも比肩する素晴らしい著作だと思います。

 本書は、その中谷氏の随筆集です。寺田寅彦門下でもある中谷氏は、やはり随筆の名手でもありました。

 たとえば、「雪雑記」。雪の結晶の観察のために十勝岳のヒュッテに滞在したときのくだりです。

(p25より引用) 夜になって風がなく気温が零下15度位になった時に静かに降り出す雪は特に美しかった。真っ暗なヴェランダに出て懐中電燈を空に向けて見ると、底なしの暗い空の奥から、数知れぬ白い粉が後から後からと無限に続いて落ちて来る。・・・風のない夜は全くの沈黙と暗黒の世界である。その闇の中を頭上だけ一部分懐中電燈の光で区切って、その中を何時までも舞い落ちて来る雪を仰いでいると、いつの間にか自分の身体が静かに空へ浮き上がって行くような錯覚が起きて来る。

 続いて「『西遊記』の夢」の一節。これは昭和17年の随筆ですが、当時の子供はよく本を読んでいたようです。その姿を見て中谷氏はこう語ります。

(p64より引用) 時々その本を覗いてみると、今昔の感にたえないくらい子供向きの良い本が沢山出ているようである。しかしああいう良い本ばかりでは少し可哀そうな気がしないでもない。
 少しひねくれたような言い方になるかもしれないが、子供にもよく分って面白くて為になるような本ばかり読んで育ったならば、本当の意味で自然に驚嘆する鋭い喜びを知らなくなる虞れがなくもない。

 西遊記を読んでいる子供の目の輝きは、好奇心という探求の根源となる動機の誕生でもあるのでしょう。
 このあたりの問題意識については、続く「簪を挿した蛇」というタイトルの随筆にも見られます。

(p76より引用) 本統の科学というものは、自然に対する純真な驚異の念から出発すべきものである。不思議を解決するばかりが科学ではなく、平凡な世界の中に不思議を感ずることも科学の重要な要素であろう。不思議を解決する方は、指導の方法も考えられるし、現在科学教育として採り上げられているいろいろな案は、結局この方に属するものが多いようである。ところが不思議を感じさせる方は、なかなかむつかしい。

 思い切った「非科学的な教育」がむしろ自然に対する驚異の念を深める効果があるのではというのが中谷氏の考えです。

(p78より引用) 人間には二つの型があって、生命の機械論が実証された時代がもし来たと仮定して、それで生命の神秘が消えたと思う人と、物質の神秘が増したと考える人とがある。そして科学の仕上仕事は前者の人によっても出来るであろうが、本統に新しい科学の分野を拓く人は後者の型ではなかろうか。

 興味を拡大する想像力に富んだタイプの人間が、その好奇心をエンジンにしてフロンティアを切り開いていくのです。

 さて、本書に採録されている随筆のひとつの柱となっているのが、恩師寺田寅彦氏にまつわる思い出です。寺田氏の学者・教育者としての素晴らしさ、また師に対する中谷氏の私淑の情は、本書の随所で披瀝されています。
 それらのうちから、ひとつ。科学に対する寺田氏の俯瞰的視野を紹介したくだりです。

(p291より引用) 自然現象は非常に深くまた複雑であって、科学は、自然全体を対象とするものでない。自然界の中から、現在の科学の方法に適った面だけを抜き出して、それを対象としているという見方も成り立つ。この立場をとれば、比較科学論も成り立つわけである。
 寺田先生は、はっきりと、この後者の立場をとっておられた。「今日の科学を盛るでき容器はすでに希臘の昔に完成してそれ以後には何らの新しきものを加えなかった。」内容はつぎつぎと変って行ったが、容器、すなわち思考形式は変っていないという意味である。こういう立場をとれば、形の物理学や綜合の物理学などという全く新しい物理学も考えられる。それが本当の比較科学論である。

 欧米で主流となっている従来型の画一的・分析的科学手法への拘泥は全くありません。素直な構えで対象に正対し、そこから得られる発見・驚きという「着眼」を重視しています。そして、その「着眼」を起点に、新たな科学の発展を創造・活性化するというハイレベルの姿勢だといえるでしょう。


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しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール (香山 リカ)

2011-07-18 15:27:00 | 本と雑誌

 ちょっと旬を過ぎた本ですが、出張の往復で読みきれる程度のものということで選んでみました。

 香山リカ氏の著作としては、以前「なぜ日本人は劣化したか」を読んだことがあります。そのときにも感じたのですが、香山氏の立論は、今ひとつ踏み込みに物足りなさが残ります。本書もまさにそうでした。

 その中で、ちょっと書きとめておこうと思ったくだりをいくつかご紹介します。

 2000年からそれ以降10年間ぐらいの若者の姿勢についてのコメントです。

(p78より引用) 2000年頃までは「その瞬間にやりたいことをやる」という若者の姿勢は、むしろ評価、肯定されていたはずなのに、その後の数年のあいだに、一転して当の若者の中でさえ、それを批判したり非難したりする動きが見られるようになったのである。「やりたいからやっている」「先のことなんてわからない。いまがあるだけ」といった発言やそれに基づく行動も、賞賛ではなくて侮蔑の対象となった。

 私と香山氏はほぼ同年代ですが、私の感覚では、2000年ごろにおいても、香山氏が指摘するような刹那的思考や行動が評価・賞賛されていたという風潮は感じられませんでした。
 まあ、私の記憶はともかくとして、「過去において賞賛し、現在においては侮蔑している人々」の側について、香山氏はこう続けます。

(p80より引用) 彼ら自身が刹那主義を脱してより長い目で自分や社会を見られるようになったのかというと、それは違う。逆に、彼らは寛容さを失い、さらに狭い視野でしかものごとをとらえられなくなっているからこそ、自分とは少しでも違う行動をする人たちの心を想像し、理解することができなくなっているのではないか。

 香山氏は、この「視野を狭めた」要因として、一瞬の勝ち負けのみを問題にする新自由主義的風潮を採り上げているのです。

 本書が話題になったのは、勝間和代さんの主張に代表される「がんばれば成果が出る」という自己啓発成功本のアンチテーゼとしてでした。

(p201より引用) 人生には最高もなければ、どうしようもない最悪もなく、ただ、“そこそこで、いろいろな人生”があるだけなのではないか。だとしたら、目指すモデルや生き方がどれくらい多様か、というのが、その社会が生きやすいかどうか、健全であるかどうかの目安になると言えるはずである。

 当時は、こういう結論でも共感する人が数多くいたのでしょう。
 しかし、今、未曾有の大災害「関東大震災」とそれに続く「福島原子力発電所事故」に苦しむ被災者の皆さんの姿を目の当たりにするとき、新自由主義的人間観は言うに及ばず、香山氏流の「そこそこの幸せ」という考え方ですら、場違いで現実感のないものに感じられてしまいます。
 人知を越える苦難であるからこそ、人知を尽くして再び立ち上がらなくてはと強く思います。


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諜報の天才 杉原千畝 (白石 仁章)

2011-07-16 10:26:19 | 本と雑誌

Sugihara  杉原千畝氏(1900年1月1日~1986年7月31日)は、第二次世界大戦前後の時期に活躍した外交官です。
 リトアニアのカウナス領事館に赴任していた当時、ナチス・ドイツの迫害によりポーランド等欧州各地から逃れてきた難民たちに対して大量のヴィザを発給し、数千人にのぼる難民を救ったことで有名ですね。

 本書は、杉原氏の研究をライフワークにしている白石氏による「杉原伝」です。ただ、その着眼は、「日本のシンドラー」と言われた「命のヴィザ」の発給にかかわるものではありません。本書のタイトルにもあるように「諜報の専門家」(インテリジェンス・オフィサー)としての杉原氏の足跡・功績を、大量の外交文書/電報等をもとに解明し詳細に紹介したものです。

 著者により具体的に明らかにされた「インテリジェンス・オフィサー」としての杉原氏の活躍は、それはそれで興味深いものがありましたが、やはり、私として気になるのは「命のヴィザ」発給にかかわるエピソードでした。
 ただ、その点についての記述は、本書の全体のヴォリュームに比するとごく少量に止まっています。そのわずかな記述の中でも特に興味深かったのは、「通過ヴィザ」の発給を正当化するために杉原氏がとった奇策でした。

(p169より引用) 当初、避難民へのヴィザ発給をめぐり本省と何度か電報のやりとりをし、発給が認められないことが明らかになると、独断でヴィザを発給しつつ、本省からの指令を守っていることを装う「アリバイ工作」を続けた。・・・
 ・・・八月末までヴィザを発給し続け、その後電報第六七号で「外国人入国令」を拡大解釈してヴィザを発給していることを報告した。これに対して九月三日、本省から避難民の取り扱いに困っているので、電報第二二号の趣旨を厳重に守るようにとの電報第二四号が送られたのであった。
 これにより、形式上、九月三日まで「外国人入国令」拡大解釈の可否をめぐる交渉が続いていたことになる。

 本省から指示されていた厳しい資格要件を如何にしてかいくぐり、少しでも多くの人々へヴィザを発給したか。著者は、ここに紹介している一連の杉原氏の行為を、自己が独断で発給しているヴィザの有効性を担保するための工作だったと解しています。事実、この時期に発給されたヴィザを携えた人々の日本入国は果たされました。
 ともかく杉浦氏のとった超法規的な勇気ある行動が、数多くの罪なき人々を悲惨な運命から救ったのでした。

 ちなみに、先の東日本大震災に関係してこういう記事もありました。
 2011年4月3日時事通信社からの配信です。

「日本は今の苦難を乗り越えると確信している」-。第2次大戦中、リトアニア駐在の外交官だった故杉原千畝氏の「命のビザ」でナチス・ドイツの迫害を逃れた米大手先物取引所CMEグループのレオ・メラメド名誉会長が、東日本大震災に見舞われた日本へエールを送っている。・・・

 杉原氏の英断は、世界のあちこちから日本を見つめる暖かい目となって現在にも生きているのです。


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ニーチェ『ツァラトゥストラ』 (西 研)

2011-07-12 22:28:33 | 本と雑誌

Nietzsche1882  NHKテレビで放送された「100分de名著」のテキストです。
 講師は西研氏。西氏の著作は以前も「ヘーゲル・大人のなりかた」や苅谷剛彦氏との共著の「考えあう技術」等を読んだことがあります。

 今回は、以前から興味があった「ニーチェ」の解説ということで手にとってみました。100ページ程度のブックレットなので内容は超概論です。が、それでも私レベルには勉強になります。

 題材は、ニーチェの代表的著作の「ツァラトゥストラ」。西氏によるとその主要なテーマは「超人」と「永遠回帰」のふたつだと言います。
 ニーチェが語った最も有名なフレーズのひとつは、「神は死んだ」ですね。「超人(Übermensch)」とは、神を否定したニーチェが示した「神に代わる新たな人類の目標」です。
 もうひとつの「永遠回帰」、こちらは、人生のあらゆるものが永遠にそっくりそのまま戻ってくることです。

(p80より引用) 「われわれの魂がたった一回だけでも、絃のごとく幸福のあまりふるえて響きをたてたなら、このただ一つの生起を引き起こすためには、全永遠が必要であった」(『力への意志』§1032)。すなわち、たった一度でもほんとうに魂がふるえたことがあるなら、その人生は生きるに値するだろう。悲しみ、苦しみをひきつれて「よしもう一度この人生を」といいうるだろう、と。

 この「永遠回帰」を受け入れることができるか、悲しみや苦しみも含めて、無限に同じ人生を繰り返すことに耐えられる人は稀でしょう。それを受け入れることができる人が、ニーチェのいう「超人」になりうるというのです。

 本書では、この二つの概念を中心にして、固定的な真理や価値の喪失である「ニヒリズム」、「うらみ・ねたみ・そねみ」といった感情を意味する「ルサンチマン(無力からする意志の歯ぎしり)」、価値判断の方法としての「貴族的価値評価法」「僧侶的価値評価法」等々のコンセプトをごく簡単に説明してくれています。

 こういったニーチェの「ツァラトゥストラ」の解説以外にも、私の興味を惹いた哲学の基礎としての指摘もありました。
 たとえば、ショーペンハウアーやニーチェが批判・反駁した「ヘーゲル」の哲学について。

(p14より引用) ヘーゲルの哲学を一言でいうと、「人類の歴史は、自由がしだいに実現されていく歴史である」というものです。近代になると、神様の教えにひたすら従う生き方に代わって、自分で判断して自分の意志で生きようとする人間が生まれてくる。つまり人類の歩みとは、無方向、無目的ではなく、「自由を自覚した個人」が生まれ、それに対応して、社会制度においても人権が認められ議会制が成立していく。ヘーゲルはこう説いたのです。

 こういうヘーゲルの思想は、当時の世相に苦しむ人々を勇気づけるものでした。

 さて、本書の冒頭、西氏は「ツァラトゥストラ」を評して、

(p5より引用) 「私たちはどうやって生きていけばよいのか」という問いについて、これほどまっすぐに記した哲学書はほとんどない

と語っています。そして、その問いに対するニーチェの答えを一言でいえばこうだと説いています。

(p7より引用) 「固定的な真理や価値はいらない。君自身が価値を創造していかなくちゃいけない

 ニーチェの哲学は決して虚無的なものではなく、大いに創造的な思想なのです。
 ということで、いつかは「ツァラトゥストラ」を読んでみようと関心が高まってきました。とはいえ、実行はいつになりますか・・・。


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自分の中に毒を持て―あなたは“常識人間”を捨てられるか (岡本 太郎)

2011-07-10 10:17:24 | 本と雑誌

Tower_of_the_sun_osaka_japan  今年は岡本太郎氏生誕100年に当ります。

 私が岡本太郎氏の名前を初めて目にしたのは、1970年大阪万博、「太陽の塔」の作者としてでした。そして、その後、岡本氏は、「芸術は爆発だ!」との印象的なフレーズとアクションでマスコミにも登場し、さらに広く一般の人々にも大きなインパクトを与え続けました。

 岡本氏の生き方は、一言でいえば「闘い」だといえるでしょう。

(p16より引用) 人々は運命に対して惰性的であることに安心している。・・・
 これは今でも一般的な心情だ。ぼくはいつもあたりを見回して、その煮えきらない、惰性的な人々の生き方に憤りを感じつづけている。

 天才・奇才としての岡本氏が、社会通念に反旗を翻し自ら「危険な道を運命として選んだ」のは、25歳、パリで芸術活動をしていた時だったそうです。
 自らの心に忠実に生きることは、そうでない人々の集まりの中では大きな軋轢を生み出します。そのプレッシャーに抗することは、まさに「闘い」であり、岡本氏は自らの気持ちに正対して、その道を突き進もうと決意したのでした。

(p60より引用) 人間は自分をきつい条件の中に追い込んだときに、初めて意志の強弱が出てくる。・・・
 ・・・何かをやろうと決意するから意志もエネルギーもふき出してくる。
 何も行動しないでいては意志なんてものありゃしない。

 「今この瞬間の行動」が大事です。「いずれそうします」とか「昔はこうだった」と言う人は現在の生き方をごまかしているのだと岡本氏は語ります。

(p61より引用) 自信はない、でもとにかくやってみようと決意する。その一瞬一瞬に賭けて、ひたすらやってみる。それだけでいいんだ。また、それしかないんだ。

 こういう感じで、本書では、岡本氏の「爆発の姿勢」が自らの言葉で熱く語られています。

(p98より引用) あらゆる場所、あらゆる状況で、孤独な、「出る釘」であったのだ。そして叩かれても叩かれても、叩かれるほどそれに耐えて自分をつき出してきた。・・・いや、むしろ、出ずにはいられなかった。それが情熱であり、生きがいだからだ。

 まさに岡本氏の生き方の「原点」ですね。

 最後に、もうひとつ、「芸術」に関する岡本氏のことばです。

(p202より引用) ぼくはこう考える。コミュニケーションを拒否するコミュニケーションをこそ人間存在の真ん中に主役としてすえなければいけない。情報化社会だからこそ、単なる理解を越えた超情報にもっと敏感に、真剣になるべきだ。ここで、とりわけ無目的な情報を提供する呪力をもった「芸術」の意味が大きく浮かびあがってくる。

 本書を通して発している岡本氏のメッセージはとても刺激的であり挑戦的です。恥ずかしながら私には到底真似できませんが、岡本氏が貫いた「独立不羈の気概」のひとかけぐらいは持ち続けたいと思います。


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大前研一 洞察力の原点 プロフェッショナルに贈る言葉 (大前 研一)

2011-07-09 19:02:36 | 本と雑誌

 大前教の信者ではありませんが、氏の著作は30年ほど前の「企業参謀」をはじめとしてある程度は読んでいます。

 本書は、大前氏の数多くの著作の中から、Twitterの「ohmaebot」のノリで代表的なキーフレーズを選び出して採録したものです。
 約250のフレーズが、
「第1章 答えのない時代に必要なこと」「第2章 基本的態度」「第3章 禁句」「第4章 考える」「第5章 対話する」「第6章 結論を出す」「第7章 戦略を立てる」「第8章 統率する」「第9章 構想を描く」「第10章 突破する」「第11章 時代を読む」「第12章 新大陸を歩く」「第13章 日本人へ」
といった項目ごとに分類され、原本のまま引用されています。

 たとえば、「第1章 答えのない時代に必要なこと」から。

(p22より引用) 生命力の強さ
誰かに答えを教えてもらうことに慣れた人間より、自分に忠実であり、自分なりの解を出せる人間のほうが生命力が強いに決まっている。 『考える技術』

 こういった「自分で答えを出せ」という姿勢は、多くの大前氏の著作で共通的に発せられているメッセージですね。

 本書の「第10章 突破する 正解への道」の中でも「答えのない時代」でのサバイバル方法としてこんなフレーズが紹介されています。

(p190より引用) 正解への唯一の道
答えのない世界では、新しいことにトライして、試行錯誤していく能力が問われる。「リスクを取る」ということが、正解への唯一の道となる。リスクを軽減しながら、答えのない危険な道を歩むことが、成果を出すための当たり前の方法となるのだ。 『大前の頭脳』

 また、同様の問題意識からのコメントが、最終章の「第13章 日本人へ」でも繰り返し述べられています。

(p245より引用) 答えは自分の外側にあるのか?
日本人は「どこか自分の外側に答えがある」と勘違いしている。そのため、何か困ったことに突き当たると、最初から「この問題の答えはどこにあるのか、何なのか」と考えてしまう。自分が「解決すべき問題はそもそも何か」を考えずに、目先の問題への答えばかりを見つけようとする。 『日経コンピュータ』2008年3月24日号

 そのほか、よく言われる「変化への対応」についての大前氏のアドバイス。

(p99より引用) 変わるべきは自分である
自分の思い込みや思考のクセを排除し、ファクト・ベースで考え、議論する。その結果、変わらなくてはいけないのは自分であり、自社である、という発想ができるかどうかがいま問われているのです。 『ザ・プロフッショナル』

 「自分が変わるべき」という指摘であればどんな書き物にも見られます。大前氏はさらに一歩踏み込んで、自らが変わるための動機づけのステップとして、「ファクトベース」の議論を薦めています。とはいえ「事実からの気づき」を具体的な自己変革のアクションに結び付けられるか、なかなか難しいところですね。

 最後に紹介するフレーズは、「アイデアと独創性との関係」に言及したもの。「第9章 構想を描く」からです。

(p180より引用) アイディアの証明
新しいアイディアが生まれると、あとは計算と実験によってそのアイディアを証明することだ。だが、このアイディアだけを独創性と思い込む風潮が、ないでもない。アイディアは具体的な「道具」、計算や実験によってはじめて意味あるもの、すなわち独創性に変わるのだが、この当然なことが案外に私たちにはわかっていないようである。 『悪魔のサイクル』

 さて、本書、安易なつくりといえばそのとおりですが、改めてヒントになるアドバイスもそれなりにありました。もちろん、もしこの手の体裁の本が好みであれば、「ドラッカー365の金言」から手に取るべきでしょう。


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阪急電車 (有川 浩)

2011-07-06 21:59:48 | 本と雑誌

Hankyu6000  この本も、会社の寄贈文庫の棚にあったものです。そういう機会でもないと、私の場合、まず手に取らない本ですね。

 物語の舞台は「阪急電車今津線」
 今から30年以上前、帰省の途中によく会っていた学生時代の友人が「西宮北口」に下宿していました。「阪急電車」は懐かしくまた馴染みのある電車です。

 本書は当代の人気作家有川浩さんの作品。中谷美紀さんの主演で映画化もされています。ひとつのシーンをその場にいるそれぞれの人の視点で切り替えながら、次々にストーリーの形で繋いでいく手法はなかなか効果的ですし、映画向きかもしれません。

 ネタばれはまずいので、これ以上のコメントは控えておきますが、この物語の中で印象に残ったフレーズをひとつだけ。

(p100より引用) 相手の嫌がることせぇへんとこうと思うのが好きっていうことちゃうん。

 とてもシンプルなことですが、つい知らず知らずのうちに破ってしまうことがあります。心に留めて。
 ちなみに映画ですが、「萩原時江」役の宮本信子さんはちょっと気になりますね。第一印象としては、just fit です。

 

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ビジネスパーソンの街歩き学入門 (藤巻 幸夫)

2011-07-03 09:45:56 | 本と雑誌

Yanaka  タイトルに惹かれたのと以前カリスマバイヤーとして注目された藤巻幸夫氏の著作ということで読んでみました。

 目次を眺めると、「1.感性を磨く街歩き」「2.世の中の流れを見抜く街歩き」「3.人脈を広げる街歩き」「4.考える力をつける街歩き」「5.発見力を鍛える街歩き」「6.審美眼を養う街歩き」「7.気持ちを切り替える街歩き」といったように「目的別」に章立てされています。

 藤巻氏にとっての街歩きとは、新たなものを「発見」したり、その「意味」を考えたりする訓練として位置づけられているようです。藤巻氏がもつ結果としての「感性」は、こういう意図した街歩きで培われたと自らも語っています。

 さて、その具体的な街歩きの方法ですが、誰でもできるようなものもあれば、やはり藤巻氏と同類の関心を持っていないとどうかなと思うものもあります。ちなみに、私は、流行とかファッションとかには全く無頓着なタイプなので、藤巻氏が薦めるアドバイスについては、大いに首肯するところはあっても、実践という点では、半分ぐらいやってみるかという感じですね。

 他方、本書で語られている「マーケティング」に関する藤巻氏流の考え方については、いくつか興味を惹くところがありました。

 たとえば、「ブランド」について。
 藤森氏は、年々の流行の変遷にもぶれないクラシックなブランドとして、「シャネル」「エルメス」を挙げていますが、それらには共通の条件があると指摘しています。

(p59より引用) そこには、確固たる「ストーリー・ヒストリー・フィロソフィー」がある。
 そのブランドの背景となる「ストーリー」、どういう経緯で作られたのかという「ヒストリー」、そして、ものづくりのコンセプトとなる「フィロソフィー」。

 今はブランド品を持っているだけで満たされる時代ではない、人(購買者)は、そのブランドが持つ「物語」に価値を見出しているということです。野中郁次郎氏らの言葉を借りれば「モノ」から「コト」へという指摘と同値でしょう。

 もうひとつ、マーケティングの古典的フレームワークの「4P」について。藤巻氏はこう語ります。

(p107より引用) 正直、僕はマーケティングなんでする必要ないと思っている。マーケティング戦略で重要だとされる「4つのP」-Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)-なんて考える必要はない。・・・パソコンに向かってデータと向き合うよりも、もっと街に出てほしい。

 要は「実践」であり、その実践の積み上げによって磨かれた「感性」が重要という主張です。

 最後に、私が本書を読んで、改めて思いを強くしたのは、「着眼」の大事さでした。
 考えるにも行動するにも、スタートは「何を(what)」です。目に入らないものは、考える対象にも、行動する目標物にもなりえません。きょろきょろと好奇心を持って、意識的に視野を広げること、これは確かに重要なことだと思います。また、やる気になれば誰でもできることです。


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価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2010-12-10

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大学生がダマされる50の危険 (三菱総合研究所/全国大学生活協同組合連合会)

2011-07-02 09:29:16 | 本と雑誌

 今年から娘が大学生になったので、ちょっと気になって読んでみた本です。

 私が大学に入学したころ(今から30年以上も前ですが、)からあったケースもあれば、いかにも今日的といったものも取り上げられています。ちなみに「目次」を紹介するとこんな感じです。

  •  第1章 入学前に知っておきたい!―大学生が巻き込まれやすい危険(悪質な宗教団体の勧誘―ボランティアサークルのはずが… キャッチセールス―断りきれないと深みにハマる ほか)
  •  第2章 そのワンクリックが危険の入り口―ネット上に仕掛けられた罠(クリック詐欺―安易にクリックして陥る危険 出会い系詐欺―悪質な業者に引っかからないための予備知識 ほか)
  •  第3章 大学生がねらわれる―1人暮らしの落とし穴(訪問販売―不用意にドアを開けたばっかりに… 送りつけ商法―泣き寝入りしないために知っておきたいこと ほか)
  •  第4章 学生生活は誘惑もいっぱい!―日常に潜むトラブルの芽(ドラッグ(薬物中毒)―その好奇心が破滅を招く 大麻栽培―隠していても必ず見つかる! ほか)
  •  第5章 自由になれば責任も増える!―成人になって変わる生活(喫煙―嫌われない喫煙者になるための必須知識 金銭トラブル―友人でもお金がからむと意外にモメる ほか)

 紹介されているケースは、確かに身近に起こりやすそうなものが選ばれています。そして、それぞれごとに、具体的な対応方法・相談先等が示されているので、トラブルに直面した大学生にとってはとても頼りになる内容です。

 たとえば、「ワンクリック詐欺」といったネット上でのトラブルを扱った「第2章 ネット上に仕掛けられた罠」では、関係法律を示して分かり易く説明しています。

(p47より引用) 電子消費者契約法
 錯誤の無い正式な契約の意思表示を顧客より受けるには、業者は次の要件を満たす必要がある。
・それが契約行為であるということを承知させる
・契約の前に利用料金や規約などを明示する
・顧客による契約の意思表示のあとに、再度意思表示の確認を行うように求める

 本書で紹介されているリスクと対処方法は、改めてチェックしても参考になるところが多々ありました。

 振り返ると、私も大学入学直後、池袋の路上でセールスマンに薦められて教材を購入後、クーリングオフ制度を使って解約した覚えがあります。娘には大きな顔はできません・・・


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男子の本懐 (城山 三郎)

2011-07-01 22:14:44 | 本と雑誌

Inoue_junnosuke  先日、浜口雄幸氏の遺稿ともなった「随感録」を読んだのですが、そこに顕れた浜口氏の質実剛健・実直な姿勢には大きな感銘を受けました。
 本書は、その流れで手に取ったものです。

 主人公は、浜口雄幸氏と井上準之助氏。第一次大戦後の混乱収拾期、経済財政面での最重要案件であった金輸出解禁に、まさに命懸けの決意で望み断行しました。

(p36より引用) 政治家の売り物となるのは、常に好景気である。あと先を考えず、景気だけをばらまくのがいい。民衆の多くは、国を憂えるよりも、目先の不景気をもたらしたひとを憎む。古来、「デフレ政策を行って、命を全うした政治家は居ない」といわれるほどである。容易ならぬ覚悟が必要であった。

 財政政策としての金輸出解禁の評価は、ほぼ同時期に発生した世界大恐慌の影響もあり、必ずしも高いものではありませんが、一国を預かる政治家が、口先だけでなく真に一身を投げ打って自らの信念を貫いた生き様には心を動かされます。

 浜口氏と井上氏は、静と動、表面的には正反対といってもいいようなパーソナリティとして描かれていますが、共通するところは「信念への決意と執着」です。その信念にお互いが共感し「同志」としての絆を深めていきます。

 凶弾に倒れた浜口氏が、数ヶ月にわたる闘病生活の後、遂に亡くなったとき。

(p363より引用) 死の知らせに、最初にかけつけたのは、首相の若槻であった。・・・
 閣僚や党幹部たちが次々にとびこんできた。
 その中でただ一人、玄関に入ると同時に、大声を上げて泣き出した閣僚が居た。井上準之助である。
 見えっぱりでスタイリストと見られた井上のその姿は、ひとびとの目には、あまりにも異様であった。たとえ肉親を失っても、井上なら見せない姿に思えた。
 あっけにとられて静まり返った邸の中に、しばらくは、井上の号泣だけが聞えた。

 政治家の言う「命懸け」とは、彼ら二人の覚悟に至ってはじめて口にするできる台詞でしょう。
 そして、こんなくだりもあります。

(p276より引用) この内閣の求めるのは、東洋の強大な君主国というよりも、民主的な平和愛好国として国際社会に共存する姿であった。井上の言葉を使えば、体外的にも、内政面でも、「民主的の動きが正しき道を進めば、国は安全にして、国民は幸福を享有し得る」という考え方である。
 浜口内閣には、理想があり、「遠図」があった。

 それにつけても、今の政治家の何と志の貧しいことか・・・、とはいえ、政治家の責任だけに押し付けることも正しくないでしょう。私たちにも、そういう不甲斐ない姿を批判できる志の高さがあるか、自省です。


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発売日:1983-11

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