竹内薫氏の本は、チョッと前に流行った「99.9%は仮説」がはじめてでしたが、本書はそれより前の著作です。
相対性理論と量子力学の発見を端緒とする現代物理学の展開が、世界像を大きく変えたということなのですが、そもそもの従来の物理学で理解されていた世界像をイメージできない私にとっては少々消化不良でした。
著者によると、従来は「モノ的世界観」であり、これはイコール「実在論」、その代表的な人物は、プラトンやアインシュタイン・・・。そして現在は「コト的世界観」で、イコール「実証論」、同じく代表的人物は、ボーア・ホーキング・・・ということのようです。
ここで「実在論」や「実証論」が登場しますが、本書は、かなりの部分が科学哲学的な観点からの解説です。
量子論における「経路」の概念を例にして、「実在論」と「実証論」とを説明しているくだりもそうです。
まずは、「実在論」です。
(p85より引用) 実在論の立場からすれば、量子の途中経路は、存在すべきなのであり、もしも経路が決まらないのであれば、それは量子論に何かが足りないからなのであり、その意味で量子論は「不完全」とみなされます。
実在論は、
「自然の奥深くの隠された実在に迫る」
という哲学をもっています。
他方、「実証論」はこうです。
(p86より引用) それに対して、実証論の立場では、量子の最初と最後の場所さえわかれば、それが量子論という理論の予測と合っているかぎり、途中の経路の実在は問いません。経路が存在しないというのは、特定の決まった経路があることを測定によって明らかにできない、という意味で、実証不可能なことがらだからです。
その名のとおり、実証論は、
「実証できることだけを問題にする」
立場なのです。
このあたりの記述は、科学史や科学哲学の知識がないとなかなか腹に落ちません。
ニュートンの天才性を説明した以下のような内容であれば、私でも素直になるほどと思えるのですが・・・
(p25より引用) よく林檎の実が落ちるのを見て、ニュートンは万有引力を発見した、と説明されますが、その天才性は、
「林檎が落ちるという特殊事情を宇宙全体にまで一般化した」
という思想の飛翔にあるのです。
やはり、この手の本をキチンと理解するには、物理学の基礎の基礎から勉強しなくてはダメです。
世界が変わる現代物理学 価格:¥ 756(税込) 発売日:2004-09-07 |