この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

共感しにくい映画だと思った『市子』。

2024-01-05 21:00:12 | 新作映画
 戸田彬弘監督、杉咲花主演、『市子』、1/1、キノシネマ天神にて鑑賞(映画サービスデーにつき鑑賞料金1300円)。2024年2本目。

 当初はこの映画を観る予定ではなかったんですよ。
 前日まではユナイテッド・シネマ福岡ももちで『NOCEBO ノセボ』を観るつもりでした。
 ただ、『NOCEBO ノセボ』のネットでの評判が今一つよろしくなかったのと百道まで移動するのが面倒だったので、当日になってキノシネマ天神で本作を観ることにしました。
 これで映画がつまらなかったら、やっぱり『NOCEBO ノセボ』を観とけばよかった!ってことになるのですが、幸い面白かったです(重かったですけどね)。

 いろいろ共感しにくい映画だと思います。
 ここまで生活環境が複雑で過酷な人もそうはいないでしょうからね(いるのかな?)。
 だから観る人は主人公の市子を始め、彼女を取り巻く登場人物に感情移入出来ないのではないでしょうか。

 どこが共感出来ないのか人によって異なると思いますが、自分が理解出来なかったのは市子が月子として生きることを拒絶したことでした。 
 彼女が月子として生きたとしてもいずれ生活はは破綻したと思うのですが、少なくとも映画の中の彼女よりもスムーズに社会生活を送れたはずです。
 それほどまでに彼女にとって「市子」としてのアイデンティティは重要だったということでなのでしょうか。
 その心情は戸籍を持つ者には決して理解出来るものではないのでしょう。

 あと理解出来なかったのは北に対する市子の態度ですね。
 彼女のせいで人生を狂わされてしまった北が彼女に執着するのはある意味当然だと思います。
 その彼を彼女が「うちのこと忘れて欲しい」と言うのはあまりにも身勝手というか、素っ気ないというか。
 そういう態度を取るのは(いろんな意味で)よくないということが彼女にはわからなかったんですかね…。
 まぁ、わからなかったんでしょうね。
 市子には人として備わっていて当然の心情が生まれつき欠落していたのでしょう(だから万引きしたたまごっちをプレゼントしても喜んでもらえると思っていた)。

 それと細かいことをいうようですが、北と自殺志願者の女性を乗せた車を崖から転落させ心中に見せかけて殺すことは車の運転をしたことがない彼女には到底無理だろうと思いました。
 仮に運転したことがあったとしてもあの偽装工作を女性一人でするのは無理ですよね。
 それに自殺サイトの運営(?)の知識が彼女にあるとは思えません。
 月子として生きることを拒んだ彼女が別人として生きることを選択するというのも何だか変です。
 残念ながらそういった細かい瑕がこの作品にはいくつかあります。

 とはいえ、この映画が観るべき価値のある作品であることは否定しようがなく、杉咲花の代表作になるのは間違いないと思います。
 公開から三週間が過ぎ、上映館も少なくなっているようですが、近くで上映している映画館があるのなら、観に行かれては如何でしょうか。

 お気に入り度★★★☆、お薦め度★★★☆(★は五つで満点、☆は★の半分)です。
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