この世界の憂鬱と気紛れ

タイトルに深い意味はありません。スガシカオの歌に似たようなフレーズがあったかな。日々の雑事と趣味と偏見のブログです。

映画『ガタカ』のキャラクターについての考察、ヴィンセント編。

2021-01-17 22:21:22 | 旧作映画
 映画『ガタカ』についての考察はこれまで拙ブログで嫌というぐらいしてきました。
 言いたいことはすべて言ったという思いはあります。
 ただ、言いたいことを上手く言えたかについては自信がありません。
 今日はキャラクターに焦点を絞って考察をしてみたいと思います。
 またか!と思われる方も多いかと思いますが、しばしお付き合いください。

 映画『ガタカ』の大前提は「ヴィンセントには生まれつき心臓に重い障害があり、宇宙飛行士として適性に欠ける(宇宙に行けば死んでしまう)」ということです。
 しかしヴィンセントの心臓が完治した、そう思っている人も多いようです。
 けれどそれは間違いです。
 常識で考えればわかることです。
 生まれつきの重い心臓の障害が外科的出術を受けたわけでもないのに自然に治癒することなどないということが。
 あり得ない、そう言い切ってしまって構わないと思います。
 もちろん根拠もあります。
 彼はたった20分間ランニングをしただけでその直後、ロッカールームで崩れ落ちてしまいました。
 たった20分すらもまともに走れない人間が心臓に問題がないわけがありません。

 彼自身はそのことに気づいていたのでしょうか?
 もちろん気づいていたでしょう。
 たった20分、まともに走れなかった人間が、自分の心臓に何も問題がないなどと思うはずはなありません。
 しかし彼はその現実から目をそらしていました。
 それだけでなく、奇跡が起こって自分の心臓は完治したのだ、そう思い込もうとしていました。
 その心情は痛いほどよくわかります。
 子どもの頃からどうしても叶えたい夢があるというのに自分にはその適性がない、などというつらい現実を誰が受け入れたいというのでしょう?
 奇跡が起こって心臓の障害が完治し、自分は宇宙に行けるのだ、ヴィンセントがそう思い込もうとしたとしても何も不思議はありません。
 しかし奇跡など起こりはしないのです。
 『ガタカ』は奇跡についての物語ではないのですから。

 明日はジェロームについての考察をしたいと思います。
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