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風のゆくえには~たずさえて22-1(菜美子視点)

2016年08月30日 07時21分00秒 | 風のゆくえには~たずさえて

2016年4月3日(日)


(バカじゃないの?)

 自分自身に呆れてしまう。

(私、何、不機嫌になってんの? バカじゃないの?)

 小走りに駅に向かいながらも、さっき見た場面が、声が、耳から離れない。

『あ、ごめんっ。卓也くん!』
『あいかわらずだなあ、アサミ……』

 甘ったるい女の声。笑っていた山崎さんの声……。

(だから何? 別に関係ないし)

 そう思おうとすればするほど、深みにはまっていく。

 知ってる。分かってる。これは嫉妬………だ。


**


 その4日前……
 目黒樹理亜が母親と決別してから約10日後の、3月最終週の水曜日のことだった。

「戸田先生、次、新規の患者さんです」

 看護師の柚希ちゃんにそう言われながら、カルテを渡され、

「えー……と、佐伯……。佐伯?」

 その名にドキッとなる。樹理亜のストーカーも佐伯という名前。年齢も53歳。おそらく同じくらい。
 そう思いながら固まっていたら、診療室の扉が開き、入ってきたのは……

「……失礼します」
「!」

 一瞬立ち上がりかけたのを、何とか理性で押しとどめる。……本人だ。

「こんにちは。どうぞお座りください」

 なんとか、医者の仮面をかぶって笑いかけると、佐伯氏は下を向いたままゆっくりと椅子に座り……こちらを見上げた。その表情を見て、心の中だけで軽く驚く。

(………あらま。相当弱ってるわ)

 何度か見たことのあるこの男とは別人のよう……
 私の知っている彼は、目力が強く、自信に満ち溢れたオーラを放っていた。それが今は……

 佐伯氏は心臓のあたりを苦しそうに押さえながら、絞り出すように、言った。

「先生……俺、なんでこんなに、苦しいのかな」
「…………」

 苦しそう。辛そう……
 気持ちの持って行き場がない苦しさ……
 それは……。それは、たぶん。

「それはたぶん……、恋、じゃないでしょうか?」

 そんなありていなことを言うと、佐伯氏はボソッと「俺、バカみたいですね」と言った。自覚はある、らしい。

「いえ、バカみたいじゃないです」

 言いきると、

「……そうかな」

 恥ずかしそうな苦笑いを浮かべた佐伯氏。その表情は、まるで少年のようで……

(………かわいいじゃないの)

 思わず、そんなことを思ってしまった。




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お読みくださりありがとうございました!

って、めちゃめちゃ短くて申し訳ないです……
話はもちろん決まっているので、後は書くだけなんですけど、どうしても今回、スマホで打つ気になれず……
でもパソコンだと時間をあまり取れなくて……ああ自分の筆の遅さが恨めしい……
とりあえず、書いたところまでで更新させていただきますーーー。
続きは明日…う……無理かな……明後日かも……

クリックしてくださった方、見に来てくださった方、本当にありがとうございます!
こんな普通の話でいいのだろうか……と不安になるところを背中押していただいています。本当にありがとうございます!
よろしければ、また次回も宜しくお願いいたします!

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コメント (2)
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