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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 14-4(泉視点)

2017年01月03日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


 自分でも歪んでいると思う。 
 親友の諒と侑奈がしている最中の音を、隣の部屋で盗み聞き……

「ユウ……」
「あ………んんっ」

 諒の侑奈を優しく呼ぶ声と侑奈の喘ぎ声に興奮しながら、自慰行為をする。それが今のオレの唯一の発散方法。

(………諒)

 心の中でその名を呼ぶ。目をつむり、聞こえてくる「ユウ……」という言葉を「ユウマ」の「ユウ」に置き換えて、自分が呼ばれている錯覚に陥りながら、諒に攻めたてられるところを想像して、自らの手で自らを慰める。

 家で一人でするときは、諒のオレを頼りきった瞳を思い浮かべて、自分が諒を抱くイメージを持つんだけど、この場にいると、侑奈にシンクロしてしまうのか、自分が抱かれているような気持ちになることが多い。

 どちらであっても、諒を欲しいと思う気持ちに変わりはなく……、そして、どちらであっても、果てた後には虚しさが襲ってくる。

 こんな歪んだことを続けていていいはずがない。分かってはいても、どうしようもなかった。小学生の頃から抱き続けている思いは、醜い劣情となってオレを苦しめる。


***


 二人が付き合いはじめて5ヶ月たち……

 周りから見たら、オレはお似合いカップルの「お邪魔虫」でしかない。だから、二人とは距離を置くべきなんじゃないか、と思いはじめていた。 

 それなのに、諒はオレの気も知らないで、オレに抱きついてきながら、

「どうして、今のままじゃいけないなんて言うの?」

 なんて、小学生に戻ったような口調で言う。
 抱きしめ返したい気持ちをおさえて、ゆっくり頭を撫でてやる。頭を撫でるのはすごく、すごく、久しぶりで……

「お前……バカ?」
「うん……」

 さらにぎゅうっと強く抱きついてくる諒……
 幸福感で気が遠くなりそうになったけれど……

 翌日の夜、諒が侑奈を抱きしめているところを目撃してしまい、一人暗い穴の中にゆっくり落ちていくような感覚に囚われて、立ちすくんでしまった。

(やっぱり、今のままではダメだ……)

 この二人は本当にお似合いのカップルで。オレなんかが立ち入る隙はどこにもなくて。
 でも、これからも一緒にいたくて。
 だから……だから。



 タイミング良く、ライトが合コンに誘ってくれたので、二つ返事で行くと答えた。

 諒も侑奈も相当驚いていたけれど、オレが二人と一緒にいるためには、オレはオレで恋人を作ればいい。それしかない、と思った末での決断だった。


 ただ、その前に一つだけ、どうしても我が儘を許してほしい。


 せめて、初めてのキスは諒と………


 だから、合コンの日にちを設定するのに少し時間をもらった。チャンスは試験前、と思っていたからだ。

「オレが考える理想的なシチュエーションなんだけどさっ」

 試験勉強にかこつけて諒の部屋で二人きりになり、なるべくわざとらしくならないよう話を持っていって、それで……

「…………」

 ほんの少しだけ、唇と唇を合わせた。

 諒が驚いたように瞬きをしたので、すぐに離したけど、でも、出来た。ほんの少し触れただけなのに、震えるほど愛しい感触……

 しかも、あれだけ女遊びしているくせに、諒も唇にキスをするのは初めて、という、とんでもない事実まで知って……

(もう、充分だ)

 こんなに幸せなことはない。
 もう、先に進もう。この幸せな感触を胸に、先に進もう……



 そんなことを思っていたから、バチが当たったんだろうか。諒が交通事故にあってしまった。しかも、オレの目の前で……

 守るって約束したのに。いつでも助けるって誓ったのに……

「ごめんな、諒、ごめん。約束守れなくて、ごめん。助けてやれなくて、ごめん」

 気がついたら、倒れた諒を抱きしめて口走っていた。言葉が止まらなかった。

 やっぱりオレは他の奴と付き合うなんてできない。一生叶わない想いだってわかっているけれど、それでも諒のそばにいて、諒を守ることができればそれでいい。



 桜井先生のおかげで、諒は軽い打撲傷だけですんだ。
 それなのに一週間も学校を休んだ諒。毎日家に行ったけれど、会ってもらえず……
 ようやく出てきてからも、話しかけてもロクな返事もしないし、誘っても無視するし、こんな諒は初めてだった。

 その上、

「相澤とは別れる」

 突然の、侑奈とは別れるという宣言……

 意味が分からない。

 その後も、諒はオレと侑奈のことを無視し続けた。無視は辛い。こんな辛い日々は生まれて初めてだ。



***



 夏休みに入って3日目。
 最高気温35度以上になるという猛暑日の中、侑奈の家に呼びだされた。

「諒に本心を言わせるから、ここで隠れて聞いてて」

 侑奈はそう言って、オレをリビングの侑奈の部屋との仕切りの襖の前に座らせると、「靴はベランダに置いておくね」と言って出て行ってしまった。

(………本心?)
 侑奈の言っている意味がイマイチ分からない。分からないまま、しばらくしてから呼び鈴がなり、諒の低い声が聞こえてきた。

(……諒)
 ドキン、と正直に心臓が跳ね上がる。


 でも、この後、その数千倍の跳ね上がりの瞬間がおとずれる。

 聞こえてくる諒と侑奈の会話は、よくわからない内容だった。頭に疑問符がたくさんついたまま話は終わった。
 それから二人が抱き合うような音がして……、そして、はっきりと、襖の向こうから聞こえてきたのだ。


「優真、優真……優真、優ちゃん……」


 ……え?
 諒の声に耳を疑う。オレ、ついに幻聴が聞こえるようになったのか…?
 でも続いた言葉に、心臓が跳ね上がる。


「優真……優ちゃん……大好き、大好きだよ……」


 え………


 思わず立ち上がる。

 どういうことだ?
 どうしてオレの名前を呼んでいる? 大好き? 大好きって……


 呆然としている中、

「ちゃんと聞いてた? 泉」

 襖が開き、涼やかな声が聞こえてきた。

「大丈夫? 泉優真君?」
「え………」

 侑奈の声の方を見返すと、その後ろで諒が真っ青な顔をして立っていた。



---


お読みくださりありがとうございました!
今回めっちゃ「処理回」(^_^;)
さっさと終わらせたくて、猛スピードで泉君に振り返ってもらいました。

詳しくは、

「どうして、今のままじゃいけないなんて言うの?」の話がこちら→ 7(泉視点)
翌日の夜、諒が侑奈を抱きしめているところを目撃してしまい、の話がこちら→ 8-2(浩介視点)の終わりの方
「オレが考える理想的なシチュエーションなんだけどさっ」の話がこちら→ 11-2(諒視点)
交通事故の頃の話・「相澤とは別れる」の話がこちら→ 13-1(侑奈視点)
「大丈夫? 泉優真君?」で終わったのがこちら→ 13-3(侑奈視点)

ってとこですかね……。

次回は明後日更新予定です。ようやく甘々突入かなあ。ああ早く書きたい~~っ!どうぞよろしくお願いいたします!

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コメント (2)
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