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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 16-1(諒視点)

2017年01月15日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘


 子供の頃、嫌なことがあると、いつも公園の滑り台の下のトンネルの中に隠れていた。しばらくそこで膝を抱えて待っていると、

「諒」

 彼が必ず迎えにきてくれた。優しく声をかけてくれて、温かいぬくもりで包んでくれた。いつも一緒にいて、いつも守ってくれた。


 あれから何年経っただろう……

「ずっと、ずっと、お前のことが好きだった」

 柔らかい唇の感触が残る中、あの頃と変わらない温かさで、ぎゅううっと抱きしめられて、気が遠くなった。

「これからもずっとそばにいて、ずっとずっと守ってやるからな?」
「………」

 涙が溢れて止まらない。ずっとずっと欲しかった言葉。

「優ちゃん……」

 今はもう、狭すぎて身動きするのが大変なトンネルの中で、オレ達はぎゅううっと抱きしめ合った。


***

「……で? 昨日はあのあとどうした?」
「どうしたって……」

 翌日、久しぶりに部活に行くことにしたら、侑奈が一緒に行こうと誘ってくれた。駅までの徒歩15分の間、侑奈が興味深々に昨日のことを聞いてきたので正直に話す。

「うちでおしゃべりしてたら、泉のバイトの時間になっちゃって……」
「で?」
「それだけ」
「はああ?! 夜は?!」
「おやすみってメールした」
「…………」

 はああああっと大きくため息をついた侑奈……

「せっかく両想いになったっていうのに、おしゃべりしてただけなんて……あ、キスくらいはしたよね?」
「え」

 動揺して声がひっくり返ってしまうと、侑奈は「あ、そう。それはしたんだ」と納得したようにうなずいた。 

「手の早いことで有名な高瀬諒君も、本命さんには手を出せないってこと?」
「………。出せないというか……出してもらえないというか……」
「え」

 きょとん、とした顔で侑奈は立ち止まり、「え?え?」と言いながら口に手を当てた。

「あの……念のため確認なんだけど」
「うん」
「諒ってもしかして……ネコ希望なの?」
「ネコ?」

 猫? なんのこと?

 首を傾げたオレの腕に、侑奈の指が突き刺さる。

「抱かれたいってことだよ」
「え」

 それ、ネコっていうの?

 言うと、侑奈はものすごい呆れた顔をして、

「女役がネコ、男役がタチ。そんなの常識でしょ?何で知らないの?」
「…………」

 絶対常識ではないと思う……

「受けと攻め、とも言うけど。ってそんなことはどうでもいいや」
「………」
「ネコ、受け、希望ってことね?」
「………」

 否定も肯定もしないでいたら、侑奈は、ふーん……と肯いてからまた歩きだした。おれも慌てて横に並ぶ。
 しばらくの沈黙のあと、侑奈はとんっとオレの腕を叩くと、

「ねえ……そのこと、泉にちゃんと言った?」
「えええ?! 言うって……っ」

 そんなこと、あえてわざわざ言う話?!

「そんなの、泉は当然する側……」
「いーや。絶対、泉、諒はタチだと思ってると思うよ。あんだけ女喰いまくってたんだから」
「………え」

 そ、そうなの?

「それ、確認しなよ?」
「え、か、確認って……」

 ど、どうすれば……っ

 おろおろとしていたら、侑奈が急にクスクスと笑いだした。

「……どうかした?」
「いや、自分でもおかしいなあと思って」
「何が?」

 侑奈はフワッとした笑顔でオレを見上げると、

「元彼の恋愛相談に乗っている私の図、が」
「あ………ごめん」

 そうだった……考えてみたら侑奈とは昨日正式に別れたのに、こんな話……

「いやいや。面白いからいいの。っていうか、嬉しいくらいだよ」
「相澤……」
「あ、その相澤っていうの、侑奈に戻してくれない? ホントは相澤って呼ばれるの嫌だったんだよね」
「え」

 彼と同じこと言ってる。昨日彼にも「泉」と呼ばれるのが嫌だったと言われた。

「二人とも今まで何も言わなかったから……」

 小6の夏に彼への恋心を自覚したオレは、想いを押さえるために、彼を名字で呼ぶことにしたのだ。その言い訳を「ゆうまとゆうなで紛らわしいから」としたため、侑奈のことも相澤と呼ぶことにして……

「3人して本音隠してたから、こんなにこんがらがっちゃったんだよね私たち。もう、嘘はやめようね」
「侑奈……」

 うふふ、と笑った侑奈。

「あ、あとね……。最後に一つだけ教えて?」
「最後?」

 首をかしげると、侑奈は立ち止まり、ふっと真面目な顔をして言った。

「私としたあと、誰かとした?」
「え」

 侑奈はジッとこちらを見上げている。

「もしかして、あの髪の長い3年生としちゃった?」
「…………してないよ。誰ともしてない」

 質問の意図が分からないけれど、正直に答えると、侑奈は何だかすごく嬉しそうに笑った。なんだろう?

「どうして?」
「うん……。諒にとって、私は『最後の女』になれたんだなーと思って。特別な感じでちょっと嬉しい」
「……………」

 侑奈……侑奈のおかげでオレは壊れずにすんだ。侑奈が彼の代わりに包み込んでくれたから……だから……

「オレにとって、侑奈は昔からずっとずっと特別な女の子だよ」
「…………そっか」

 嬉しい。

 そういって、侑奈はくすぐったそうに微笑んだ。それは「女の子」として見せた最後の笑顔で……、この後、振り返った侑奈は「親友」の顔をしていた。


***

 夕方から侑奈のうちに集合して、3人で夏休みの宿題をして、夕飯を食べて、帰宅。そこまでは去年と同じ。

 でも、侑奈の家を出てからは、去年と違った。

(き、緊張する……)

 3人でいるときは、まあまあ大丈夫だったのに、2人きりになった途端、手に汗かいてきて……

「なあ………」
「な、なに!?」
「………。なんでそんなびびってんだよ」
「びびってなんかないよっ」
「ふーん……」

 再びおとずれる気まずい沈黙……
 実は昨日も「おしゃべりしていた」と言っても、二人して上滑っていて、半分くらいは沈黙だったのだ……

「お前、女といる時いつもこんな感じなのか?」
「え?」
「ずーっと黙ーっててさ」
「………………」

 女といるときって………

「女といるときって………優真は女じゃないじゃん」
「…………。そうだけど」
「………………」

 再度おとずれた沈黙の中、ふいに脳内によみがえった今朝の侑奈の言葉……

『そのこと、泉にちゃんと言った?』
『それ、確認しなよ?』

 ちゃんと言う……確認……

「あの………優真」
「…………なんだよ」

 ふてくされたように返事をする彼。
 なんて思われるか怖い……けど……

「オレ、優真のこと女だと思ったことないよ?」
「は!? そんなの当たり前……っ」
「うん」

 彼のTシャツの裾をぎゅっと掴んで立ち止まると、彼が驚いたようにこちらを見返した。

「なんだよ……?」
「うん……」

 なんて言えばいいんだろう……

「あの……」
「だから、なんだ?」
「!」

 裾を掴んだ手を上からきゅっと握ってくれた。温かい、愛しいぬくもりに、胸がいっぱいになって泣きそうになる。

「あのね……」
「おお」

 見上げてくれる瞳をまっすぐに見返す。

「オレね……」

 愛しい愛しいあなたに、嘘のない本当の気持ちを告白する。

「優真に、抱かれたい」

 勇気を出して、そういったのだけれども……

「………………」
「………………」
 
 彼は沈黙したまま、まばたきだけをしていて………
 たっぷり一分くらいたってから、

「………………え?」

 ようやく、そう言った。


***


 それから………
 彼は、絵にかいたような動揺っぷりで、オレから飛び離れた。

「いや、あの……っ」

 顔、真っ赤だ。真っ赤なまま、捲し立てるように言う彼。

「そりゃ、それ、考えないこともないっていうか、すげー考えてたけど……っ」
「考えてた?」

 わ、嬉しい。そう思って一歩近づいたのに、

「いや、ちょっと待て。考えてはいたけど、なんていうか、その……っ」
「…………」

 ジリジリと後ずさっていく彼………

「ちょっと、待ってくれ」
「…………待つ?って?」

「あのー………、そうだな……高校卒業するまで……」
「えええええ!?」

 あと2年近くも!?

「いや、ほら、桜井先生も高校卒業してからだって言ってたし……」
「そうだけど……」
「その頃までには、オレ、お前より背高くなるように頑張るし」
「………………」

 それはオレも望んでいることだけど……。でも今、オレは185センチある。彼は174センチ。オレの父はオレと同じくらい背が高いし、母もわりと長身。でも、彼の父親は彼と同じくらいで、お母さんはわりと小柄。お兄さんも170ない。お姉さん達も小柄な方。そう考えても、もう少し近づくことはあっても、オレより高くなるのは、無理な気がする……。

「………。背は関係ないよ」
「いや、ある。オレは絶対にお前より高くなる。それでお前のこと守るって決めてる」
「…………優ちゃん」

 嬉しい。嬉しいけど……背が高くならないとダメなの?

「……諒」
「……うん」

 ぽんぽんと頭を撫でてくれた……けど、

「…………くそっ。撫でにくい」
「……っ」

 ボソッとつぶやいた言葉が聞こえてきて悲しくなってくる。

 やっぱり、背が高いとダメなんだ……


 

---


お読みくださりありがとうございました!
ちょっと話が前後してまして、前回のお話(浩介視点で、お祭りに行った時の話)の数日前のエピソードでした。次回がお祭りの話になるはず。

尻込みしている優ちゃん……。これはもう、諒君襲ってしまえ!!襲い受けだ!頑張れ!………と、いいたいところだけど、諒君わりと乙女なので……。同じく乙女な浩介先生のアドバイスを期待しております。

次回は明後日更新予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

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