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(BL小説)風のゆくえには~嘘の嘘の、嘘 16-2(諒視点)

2017年01月17日 07時21分00秒 | BL小説・風のゆくえには~ 嘘の嘘の、嘘



「優真に、抱かれたい」

 勇気を出して、言ったのだけれども……

 彼の答えは「ちょっと、待ってくれ」だった。

 高校卒業するまで(今、高2の七月末。あと二年弱もある)と言ったけれど、ようは、彼がオレの身長を抜くまで(オレは今185センチ。彼は174センチだ)、ということらしい。
 オレも相当身長にコンプレックスを持っている自覚はある。でも、彼も彼で思うところがあるようで……

 小学校6年生の夏に恋心を自覚してから、もうすぐ丸5年。想いを確認しあうまで5年もかかったというのに、また待たないといけないなんて……


 そして、両想いになって、3日経っても彼とはギクシャクしたままだった。

「お前、女といる時いつもこんな感じなのか? ずーっと黙ーっててさ」

 彼に聞かれて、思い返してみて気がついたのだけれども、確かに女の子といるとき、オレは黙っていることが多い。

 でも、女の子というのはたいていお喋りが好きで、こっちが何も話さなくたって、勝手にぺらぺら喋ってくれる。少し何か聞くと、それが10にも20にもなって返ってくるので、こちらが話す必要はほとんどない。

 それに、元々オレは無口な方だし、彼と侑奈の三人でいるときも、二人が話しているのを黙って聞いていることが多い。今まで彼と二人きりの時だって、彼が話していることが大半だった気がする。だから、黙っているのはオレにとっては普通のことであって、今、沈黙が続いてしまうのは、確実に彼が話さないからなのだ。


 侑奈のうちで一緒にいるときは、わりと普通なのに、二人きりになった途端、ぎこちなくなる彼……

 今までみたいに話せなくなってしまったのは少し寂しいけれど、でも、今まで通り「友達」みたいに接されたら、もっと複雑な気持ちになっていたと思う。だって、オレ達は「恋人」になったんだ。今までと変わって当然だ。

(それだけオレのこと意識してるってことだし……)

 そう思うと、彼のことが余計に愛しくてしょうがなくなってくる。

 無言でスタスタ歩いていってしまう彼の後ろ姿を見つめながら、斜め後ろを黙ってついていっていたら、

「……諒」
「ん?」

 ふいっとこちらを向いて、手を出してきた彼。

「手」
「…………え?」

 何のことだか分からなくて固まってしまったら、手をぐいっと掴まれた。

「優ちゃ……」
「引っ張ってってやる」
「…………」

 きゅっと掴んでくれる力強い手。温かい……
 でも、誰かとすれ違うかもしれないのに、いいの?

「引っ張ってる風ならいいだろ」
「…………ん」

 わざと歩くのをやめると、彼が「重っ!おめーよ!」と、笑いながら文句を言って、オレの手を引っ張ってくれた。大好きで大好きで、泣きたくなってくる。

「優ちゃん」
「んー?」

 笑っている彼の手をぎゅっと握り返す。

「大好き、優真」
「!」

 彼はびっくりしたような顔をして……

「そんなのっ」
 真っ赤になって、怒るみたいに言った。

「そんなの、オレの方がもっと大好きなんだからなっ」
「………っ」

 繋がった手からあふれてくる想い。

「優ちゃん……」

 好き。大好き。

 だからもっと……もっと欲しい。もっと欲しいよ、優真……。



***

 翌々日、侑奈が参加しているボランティア教室が出店するお祭りに彼と一緒にいった。
 そこで偶然、桜井先生とその恋人の渋谷さんに出くわした。2人は親友ではなく、本当は恋人同士なのだと聞かされてから、初めて二人が一緒にいるところを見たわけだけれども……

(うらやましい……)

 二人があまりにもお似合いすぎて、うらやましくてしょうがなくなった。その上、渋谷さんの方が13センチも背が低いのに(その上、渋谷さんは中性的な面差しの美青年なのに)、桜井先生が抱かれることもあるという。なんてうらやましい……。


「先生……ちょっといいですか?」
 桜井先生と二人きりになれるチャンスが回ってきたので、すぐに声をかけた。二年後の話だけれど、今から知っておきたい。

「抱かれる側の準備、みたいなのがあったら教えていただきたいんです」

 言うと、桜井先生は目をパチパチとさせて……

「本当は立場的に、生徒にする話じゃないんだけど……」

 友人として、人生の先輩としての話だからね? と念を押してから、色々なことを教えてくれた。

 オレは男同士だとどうするのか、ということは漠然とは知っていた。でも、妊娠の可能性がないからコンドームは必要ないのかと思いきや、桜井先生によると「絶対に必要」で、付けないと挿入した側も細菌をもらう可能性があるし、もし中出ししてしまったら、全部かきださないと受け側がお腹を下してしまうことがあるという。それにいきなり挿入ではなく、潤滑油やジェルとかを使って指で少しずつならしていく必要もあるし、いざ本番、の前には、浣腸をしておいたほうがいいらしい。シャワー浣腸のやり方も教えてもらった。

 先生の話し方は、すごく事務的で、いやらしさが少しもなくて……周りからみたら、まさかオレ達が男同士のセックスのやり方の話をしているなんて思いもしないだろう。


「まあ、あとは……男女間ですることと変わらないんじゃないかな……」
「なるほど……」

 頭の中のメモに書きこみしつつ、先生にお辞儀をする。

「参考になりました。ありがとうございました」
「うん。頑張ってね。……って、先生としては生徒の性行為を推奨するようなことはNGなんだけど」
「あー……大丈夫です」

 苦笑した先生に、手を軽くふる。

「彼、高校卒業まではしないっていってるので」
「えええ?!そうなの?!」

 自分も高校卒業まではしなかったらしいのに、驚きの声をあげた桜井先生。

「それでいいの?」
「いいのって……先生だって高校卒業まではしなかったんですよね?」
「まーそうなんだけど……うちは、付き合いはじめたのが高2のクリスマス頃で、そのあとなんだかんだで受験突入で、気持ち的にも余裕がなかったっていうのもあったから……」
「あ……そうなんだ」

 受験……まだ少しも現実味のない話だ。
 しかも、高校卒業というのは、言い訳でしかない話で……

「でも、どっちにしろ、卒業してもダメかも……」
「え? どうして?」
「背が……」

 事故の後の病室でもそうだったけれど、オレは普段はこんな風に人と話したりできない方なのに、桜井先生にはなぜか話せてしまうから不思議だ。今も、彼に「待ってくれ」と言われた話を思わずしてしまった。すると、桜井先生は眉を寄せて、

「高瀬君はそれでいいの?」
「本当は良くないですけど……しょうがないかなって」
「そっか……」

「でも、彼がオレの身長を抜かしてくれる保障はどこにもないし……」
「だよね……」

「我慢できなくて爆発したらどうしようとも思ってて……」
「うーん……」

 桜井先生は、難しい顔をして、うーんうーんと唸ったあげく……

「あ」

 いきなりポンと手を打った。

「あのさ、泉君って誕生日いつ?」
「え」
「それか高瀬君の誕生日か、二人の記念日か……近くに何かない?」

 いきなりなんなんだ。よく分からないけれども何とか答える。

「えーと、彼の誕生日が来月ですけど……」
「わー!グッドタイミング!それは一番いい!これは神様からのお告げだね!」
「え?」

 お告げ? なんだなんだ?
 きょとんとしているオレに、先生はビシッと指をさしてきた。

「プレゼントだよプレゼント!」
「え」

 プレゼント?

「ほら、前に泉君、自分が童貞なこと気にしてたよね?」
「え」

 見返すと、嬉しそうな瞳の桜井先生が、楽し気に言った。

「これはチャンスだよ!」
「え?」

「誕生日に、童貞卒業をプレゼント! これで決まり!」
「え、えええええっ」

 叫んだオレに、桜井先生は満足そうにうなずいた。



---


お読みくださりありがとうございました!
と、いうことで、乙女な桜井先生、乙女的発想。誕生日プレゼント大作戦!でございました。

そして、桜井先生「コンドームは絶対に必要」と教え子には偉そうにいっていますが、自分はあまりしません^^; そして指で慣らすこともしません^^; ダメじゃん!!
浩介氏のここら辺の諸々の知識は、大学時代の友人西崎情報によります。

ということで次回は明後日更新予定です。どうぞよろしくお願いいたします。

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コメント (2)
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