創作小説屋

創作小説置き場。BL・R18あるのでご注意を。

月の女王-40

2014年10月20日 20時53分31秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
最近普通に書きすぎてて話が進まん、これじゃ終わらんと反省。
要約して話進めます。要約すればあと数回で終わるはず。

----------



 アーサーが月の女王の元に行くのは片道切符になってしまう、と、反対する香たち。
 それでも行きたいとアーサーが強固に言っていたところ、アル=イーティルが、

「発想の転換。マリアをこちらに連れてくればいいんだよ?」

と、言い出した。香・ミロク・アルによると、行くのは大変だが戻ってくるのはビューンと一っ跳びらしい。

 連れてきても魂の器がないことに関しては、アーサーが魂ごと引き受ける、と言う。


 もう一度、香たちが月の女王の元に行くことに関して危険はないのか心配はあったが、香とミロクがぜひマリアとアーサーを会わせてあげたい、といい、アーサーも、織田家・ホワイト家との和解に必ず協力する、と約束したため、クリスとイズミも渋々了承する。


 再び、月の女王の元へと行く香とミロク。アルもマリアを探すのを手伝う、と言って一緒に行ってしまった。

 今度ははじめから月の戦士4人揃ってのオーラ放出のため、先ほどよりも早く到着したようだった。


 香たちが戻ってくるのを今か今かと待っているところへ、

 ゴゴゴゴゴ………と地響きのような音がしてきた。

 なんだ?!と身構えたところに、真田が飛び込んでくる。

「お逃げください!」

 その途端、地面が激しく揺れ、木の根でできた壁も傾きはじめた。

「早く外へ!!」

 クリスが香を、真田がミロクを抱き上げ、外に逃げ出す。
 木の根でできた部屋を出てもなお、地面は揺れ続けている。

 月の女王が間近でまぶしい光を放っている。
 その念波のせいなのか、木が大きく揺れ、振動が伝わってきている。


「山が崩れる……っ」
「下まで降りるぞ!」
 
 一気に山を滑り落りる。

 香もミロクも目覚める様子はない。心配だがとりあえずは体の安全だけを考え、しっかりと抱きかかえて山から降りる。


 車道に出たところに、高村の車と桔梗のバイクが停まっていた。
 香を抱いたクリス、イズミ、白龍、ミロクを抱いた真田が高村の車に、忍が桔梗のバイクの後ろに乗りこむ。

「スタンは?!」

 クリスがハッと気がついて窓から見ると、リンクスに担がれたスタンが山から降りてくるところだった。
 先に行って、という身振りのスタンを認め、高村に出発を指示。

 車とバイクが山を離れた直後に、山が本格的に崩れた。
 月の女王も少しずつ遠ざかっていくようだった。

 車を道路脇のスペースに停めさせ、クリスと真田はあわててそれぞれ香とミロクを抱いたまま外に出た。
 バイクで追いついた忍もすぐにミロクの元にかけよる。


「香!戻ってこい!」
「ミロク!」

 必死の声。しかし応答はない。
 遠ざかっていく月の女王。

 白龍とイズミはなんとか気配を読もうとしているが、つかめない。


「香っ頼むから戻ってきてくれ……っ」
 香を抱きしめ、祈るクリス。

「アル……ミロク……」
 消え入りそうにつぶやく忍。

 そこへ……


「きた!」
「くる!」

 白龍とイズミが同時に叫んだ。

 まぶしい光が空から猛スピードで香とミロクに向かって飛んできて、2人の体にぶつかりパアンッと弾ける。
 
 ドクンッと体が波打つ。

「香!」
 ゆっくりと目を開ける香。そして、間近にあるクリスの瞳を見てふっと笑った。
 笑われたクリスがきょとんとする。

「なに?」
「……ここのところ、気絶して目が覚めるってこと多いじゃない?私」

 香が身を起こし、クリスの瞳を正面から見つめる。

「でも目が覚めると、たいていこの青い瞳が目の前にある」
「香……」

 クリスは優しく香の頭をポンポンッとたたいた。

「言っただろ? オレが必ず守るって。10年前からずっと言ってるんだぞ?」
「………それって」

 香は複雑な表情をして何かを言いかけたが、

「なんだ?」
「なんでもない」

 軽く首をふり立ち上がる。
 そして、遅れて到着したアーサーの元に歩みよった。

「アーサーさん……マリアさんを……呼ぶね」



------------------------




この、「戻ってきてくれ……っ」の叫び。

かーらーのー「青い瞳が目の前にある」。

このセットも、書きたかったリストに入ってました。
ああ、ここも無事に書くことができてよかった。


次回は10月22日(金)です。

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月の女王-39

2014年10月17日 22時21分41秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
「使役魔が……っ」

 リンクスが目を見開く。
 手の形をした異形の物たちが、光る球体の中に吸い込まれていく。

「僕たちも月の女王の元にいってくるんだよ~~」
「アル!」

 まぶしい光に目を細めながら、忍が手を伸ばす。アル=イーティルはその手に一度乗るとポンッと飛び上がった。

「アル!!」
「行ってきまーすだよ~~」

 鳥のように、アルやアルの仲間の小人たちも光に向かって飛び立っていく。

「なんで……っ」
 忍が珍しく表情を露わにした。
「なんで僕は行けないんだ……っ」
 小さな小さな叫び。絞りだすような、まるで子供のような……。


「今……小人みたいなのがいなかった?」
「……いたな」
 ジーンとリンクスが顔を見合わせる。でも視界が白くてお互いの顔もよく見えない。
「これはいったい……」

「予言が成功したんだよ」
 クリスが2人に言い切る。
「どうするんだ?お前ら。もう予言は成就したんだから、戦う必要ないよな?」
「………」
「………」

 リンクスは押し黙り、ジーンは軽く肩をすくめた。
 二人とも毒気を抜かれたような顔をしている。

「………予言とはいったいなんだったんだ?」
 リンクスの問いに、クリスが白龍に視線を移した。

「白龍?」

「魂世界の扉が開いた……と」

 白龍は声を聞きもらさないよう目をつむっている。用心深くセリフを皆に伝える。

「地球上にいる魂世界の住民の移住を許可する、と」
「移住……」

「もしかして……今、イーティルの奴らはどんどんこの球体に吸い込まれていってるのか?」
「そう……みたいだな」

 クリスの言葉に白龍がうなずく。
 アーサーがはっとして、白龍に詰め寄る。

「今までイーティルに吸収された魂もいるのか?!」
「………」

 ちょっと待って、というように手で制して、白龍はしばらく目をつむっていたが、

「………いるそうです」
『オレがそこに行くことはできないのか?!月の姫たちはそこにいるんだよな?!』

 アーサーは慌てるあまり英語になり言葉使いも荒くなっている。

「…………それは」
 しばらくの沈黙の後、白龍が答える。

「できないこともないけれど命の保障はできない、と言ってます。月の姫と月の王子は交わった状態なので往復も可能ですが、魂一つでは耐え切れない可能性が……」

「構わない。一目でいい。マリアに会いたい。それができればどうなってもいい」

「…………」
 アーサーの思いが苦しいほど伝わってくる。

 しばらく目をつむっていた白龍が、ゆっくりと目を開ける。

「姫たちが一度戻るといってます」
「分かった。………忍サン?」

 クリスがぼんやりとしている忍に声をかける。

「ミロクのそばにいた方がいいんじゃないか? こないだミロク、あんたの気配を頼りに下りたっていってたから」
「ああ………そうですね」

 忍らしくないのっそりとした動作でミロクを抱き上げる。

 その横でクリスがそっと香の手を取る。


「………スタン」
 リンクスが腕組みをしたまま、スタンに声をかけた。
 スタンがビクーッと飛び上がる。

「な、なに?」
「お前、いつまでそいつらと一緒にいるつもりだ?」
「そ、それは……リンクが司の部下を辞めるまでだよ!」
「………」
「………」
「………それは無理だな」
「………っ」

 言い捨てると、リンクスは出口に向かっていく。

「どこ行くの?」
「司様の指示を仰ぎに」

 聞いた途端、スタンがあーあ!と大げさにため息をつく。

「でーたーよー。司の指示、司の指示、つーかーさーの、しーじー!」
「様をつけろ」

 いつものリンクスの注意に、べーッだ!とスタンがしてみせる。ふっと笑みがこぼれるリンクス。

「早く帰ってこい、スタン」
「…………」

 あげかけた手をおろすスタン。
 リンクスの背が見えなくなってもそこから動けなかった。


「じゃ、ボクも行ってこようカナ」
 ジーンが明るく言う。

「ちょっと予想と違う展開だから、これから家族会議になるナ」
「さっき……気になる言い方をしたな」

 イズミが冷静に言う。

「ワルター家、といったな? ホワイト家、ではなく」
「言ったヨ。ホワイト家は昔も今も保守的すぎるからネ……我々ワルター家が正しい方向に導かなくてはならない」
「正しい方向って……?」
「それを今から決めるんダヨ?」

 バイバイ、と手を振って、ジーンも出て行った。


 残された部屋では、香とミロクの魂が、無事それぞれ本人の体に入っていったところだった。


「香! 良かった!元にもどった!」
 まわりの目も気にせず、クリスが香をギューッと抱きしめて、
「何するのよ!!」
と、香に思いっきり突き飛ばされ、ひっくり返っている。


 そして……

「ただいまだよ~~」
 アル=イーティルが座っている忍の膝の上にピョコンとのぼった。

「アル………」
 笑うような泣くような忍の顔。

「あっちは居心地良さそうだったけど、僕はやっぱり地球がいいんだよ。だって忍がいるから」
「アル……」

 忍がアルの小さな頬に優しく頬をすり寄せた。
「……おかえり」

「忍が泣いてたから急いで戻ってきたんだよ?」
 いたずらそうに笑うアルに、ミロクが驚きの声を上げた。

「忍兄様、泣いてたの!?」
「泣いてないよ」

 忍が苦笑していい、ミロクをあらためて抱きしめた。
「無事で良かった……」


「それで……」
 待ちきれないように、アーサーが香に問う。

「私をそこに連れて行っていただけますか? 月の姫」



-----------------------------------


ここで切りまーす。

忍様にとって、アルは家族同然なんです。

忍様は母親を小さい頃になくして、祖父と暮らしていたんですね。
祖父も研究に忙しい人だったので、アルが唯一の心許せる人だった。

中学生の時に祖父も亡くなって、織田家に引き取られるんだけど、そこでも孤独で。
それを支えてくれたのが、やっぱりアルだった。

でもアルのことはずっと隠していたので、
ミロクも桔梗も、真田でさえも、アルとは「初めまして」だったんですね。

で、真田は、忍様と話しているアルを見て、

「忍様とあんなに親しく話すなんて……」

と、アルに嫉妬心をメラメラと燃やしていたわけです。

↑の、アルと忍のほっぺすりすりの姿なんて見たら卒倒しちゃうかも^^;
いなくてよかったね真田。


そんなこんなで、次回は20日(月)です。


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月の女王-38

2014年10月15日 23時07分18秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
「マリアの弟? マリアって誰?」
 スタンがキョトンと聞きかえす。

「月の戦士だった女性です」
 押し黙っているアーサーに代わって忍が答える。

「だった?」
 ハテナ?と首をかしげたスタンに、忍は確かめるように、

「君は……三年ほど前に急に能力が芽生えたんですよね?」
「うん。いきなり。朝起きたら突然。忍サマ、よく知ってるね~」

「夢を見なかった?」
 アーサーが震える声で問いかけてくる。

「夢?」
「浜辺の少女の夢だよ」

「うーん。オレ、夢って見ないんだよね~。いつも寝て起きたら朝だもん」
「………」

 アーサーがジッとスタンを見つめる。
「君の瞳……マリアと同じ緑。髪の色も同じ。面差しも少し似ている」

 切ないアーサーの眼差し。
「三年前、マリアが亡くなったことにより、能力が移動したんだろうね。君の作り出すオーラはマリアそのものだ。昼間、織田家で君のオーラを見たときには驚いた」

「そういえば……」
 クリスがふと思い出したように、

「あの時もオレ、お前のオーラ見えたんだよな。今ほど赤くはなかったけど……。オレにちゃんと見えるってことは、お前、テーミスなのか?」
「なにそれ?」

 スタンが眉間にシワを寄せる。

「なんか、あんたたちが話してる内容、全然わかんなくてヤダ。それよりあの手の気持ち悪いやつ、あそこから動かないんだけど、落ちてこないよね?」

「リンクス=ホウジョウの使役魔か。まだ大丈夫だと思うよ。リンクス=ホウジョウは入口近くで菅原司の指示を待っていたから」
「司の指示、司の指示」

 ケッとスタンが吐き出すように言う。

「リンクはいつでも司の指示待ち。あーやだやだ」

「アーサーさん……あなたは父上の指示でここまできたのですか?」
「いえ……」

 忍の質問に、アーサーが苦笑して答える。

「正直、予言のことは二の次でした。とにかくマリアのオーラの君に会いたかった」

「お前の目的は何だ? アーサー。何がしたいんだ」
 クリスの鋭い言葉に、アーサーは柔らかく視線を向けた。

「だから言っただろう? 私は新世界を見てみたい。それがマリアの望みでもあるからね」
「……織田の大将を世界の王にするとか言ってなかったか?」
「だから、言っただろう?」

 アーサーがふっと笑った。

「私は長いものに巻かれるタイプだ、と。昨晩、予言が成就しなかった時点で、君たちに見切りをつけて織田の指示に従ったが、予言を成就させられるのなら、喜んで君たちに巻かれよう」
「………。なんだそれ」

 クリスが複雑な表情でつぶやいたのと同時に、

「クリス、スタンさん」
 鋭く、白龍に名前を呼ばれた。

「姫がもう少しのところで進まない、と言ってる。もっと本気でオーラ放出してください」
「悪い。やる」

 クリスが両手を上に突き出し、精神を集中させる。

「え、オ、オレも?!」
 スタンが動揺したように後ずさる。

「何すればいいの?」
「こちらに来てください」

 忍が香たちの足元にスタンを誘導する。
「ここで上に向かってオーラを放出してください」

「オーラを?何で?というか、何で香ちゃん寝てるの? それにあの丸いの何?」
 質問攻めのスタンに、忍は安心させるようにうなずくと、

「今、香さんの魂はあの丸い物体に向かって進んでいます。それを手助けできるのが、あなたを含め、4人の月の戦士なんです」
「月の戦士……」

 スタンは、ふーんと言うと、

「なんかよく分かんないけど、香ちゃんの助けになるっていうならやるよ」

 そして、えいっとばかりに天井に向かって、オーラを放出した。


 その数秒後……


「……着いた、そうです」
 ポツリ、と白龍が報告する。

「おおっ着いたんだ」

「………で?」

「………」

「………」

 特に何も起こらない……。

 黄色い物体はかなりの近さまで下りてきていて、まぶしい光を放っているが、それは先ほどから変わらないことである。
 とりあえず、オーラの放出をやめてみる4人。


「何も起こらないんだよ?」
 今まで木の根の影にいたアル=イーティルが忍の肩にぴょこんと飛び乗った。

 初めて見る生き物に、アーサーが驚きの目を向ける。

「……小人?」
「小人じゃないんだよ。イーティルの王子、アル=イーティルだよ?」

 アルが偉そうに言うと、忍が困ったように、

「アル……君の存在を父上に知られたくなくて、危険を冒してまで織田家を逃げ出してきたというのに、ここで君がそういう自己紹介をしてしまっては元も子もないでしょう」
「もともこ?もこもこ?」
「元も子も」

「こんな風に話せるイーティルが存在するなんて……」
 アーサーが呆然としていう。

「マリアを取り込んだ奴は、意志疎通できる能力は皆無だったが……」
「取り込んだっていうのは、魂を吸い込んだってことだよ? その中で意志疎通できるんだよ?」
「その中で……?」
「色々な魂がその中で意志疎通してるんだよ?」
「……それって……」

 アーサーが苦しいかのように胸を押さえて言葉を継ぐ。

「まさか……マリアの魂は、まだその取り込んだ奴の中にあるってこと?」
「当たり前だよ?」
「………っ」

 息を飲み、アーサーが思わずといった感じに、祈るように手を組んだ。

 ああ、神様……

 アーサーのつぶやきが、静寂を作った、その時。


「落ちてきたーー!っていうか、何匹いるの?!気持ち悪っ」
 スタンがギャーッと叫んでわめいた。

 リンクスの使役魔である手の形をした異形の物が、天井からボトボトと落ちてきたのだ。

「ちょっと待て、攻撃するな」
「えーーっ無理無理っ」

 クリスの停止も聞かず、スタンが異形の物に攻撃をしようとしたときだった。

「オヤオヤ、皆さんお揃いで……」
 ヒョイと、出入り口から顔をのぞかせたのは……

「………ジーン!!」
 クリスとイズミが同時に叫ぶ。

 そこに立っていたのは、ジーン=マイルズ=ワルター。
 テーミス王マーティン=ホワイトの甥であり、クリスのいとこであり、イズミの姉の夫の弟である。

「なぜここに……」
 アーサーが思わず言うと、ジーンは肩をすくめて、

「カトリシアはキミのウソ情報に踊らされてまだ九州にいるヨ。ボクはね、別の情報網があるんだヨ」
「別の……情報網?」

「ジーン、勝手に先に行かれては困る」
 憮然とした表情で現れたのは……

「リ、リンク!」
 今度はスタンが叫んだ。

 リンクス=ホウジョウはわざとそちらには視線を向けず、忍に向かって、

「忍様、予言はどうなったのですか?」
「……さあ?」

 忍が小首をかしげてみせる。

「また失敗ですか?」
「どうだろうね?」
「どちらにせよ………」
 リンクスの体から紺青のオーラが立ち上る。

「失敗してもらうことに決まりました」
「!? 何?!」
 クリスが臨戦態勢に入る。

「ワルター家も同じ考えダヨ」
 ジーンの体からも透明なオーラが立ち上りはじめる。

「予言は失敗してもらうヨ。月の姫も……もう、いらない」
「!!」

 とっさにクリスが香を後ろにかばい、イズミと白龍がバリアーを張る。

 そこへ、

「うわっ手がきた!もーやだーーー!気持ち悪ーーー!!」

 またしても現在の緊迫した雰囲気をまったく読まずに、スタンが一人でギャアギャアと騒ぎ立てた、その時。

「……!!」
「なに?!」

 まぶしい光が、雨のように嵐のように、降りそそいできた!





-----------------------------------

 
なかなか切れずに長々と書いてしまった…。

スタンの「オレ、夢見ないんだよね~」発言も書きたかったセリフの一つだったので、書けてうれしい。


スタンは複雑な家庭環境に育ちながらもあっけらかーんと生きている強い男の子です。
夢なんか見ません。毎日眠るときに「あー今日も一日楽しかった!」って思いながら速攻でぐーっと寝て、
翌朝バチッと目が覚めて、朝っぱらから公園のバスケットコートでシュート練習とかしちゃう子です。

どちらかというと陰気なリンクスは、そういうスタンの明るいところが羨ましくもあり鬱陶しくもあり……って感じ。


マリアもスタンと同じく、あっけらかーんとした子です。さすが姉弟。
アーサーはマリアのそういうところが愛おしくて大好きなんです。

アーサーもリンクスも良い血筋の家の子なので、色々と窮屈な思いをしながら育ってるのね。
だからマリアやスタンのような自由でのびのびとした子に惹かれるのかもしれません。

リンクスとスタン、早く仲直りできるといいね。


次回は10月17日(金)予定です。よろしくお願いいたします。

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月の女王-37

2014年10月13日 22時09分27秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
 そこは木の根に囲まれた奇跡のような空間であった。
 学校の教室の半分くらいの大きさはある。
 壁も天井も木の根でできていて、床は根と土でできている。
 10年ほど前に小人たちで作り出した空間なのだそうだ。

 その中央あたりに忍と白龍とイズミが立っていて、ミロク(香の姿)は十数人の小人たちと一緒に端の木の根に座っている。
 スタンは奥にある上とつながっている通路の前に立って、上からの侵入者に備えるつもりのようだ。

 網目状になった根の天井からうっすらと月が見えている。

「ここが……秘密の場所?」
「なんか……すごくないか?」

 クリスが自分の両手を見て驚きの声をあげる。
「オーラが、増えていく……」

「木と土と水の力でオーラが増幅されるようなんです」
 忍が穏やかに言う。

「どうでしょう? ここでもう一度試してみませんか? 予言の日はまだ終わっていないのですから」

 考えてみればそうなのだ。今日はまだ香の誕生日から10日目。ミロクの誕生日当日なのだ。


「香さん」
 ミロク(香の姿)に手招きされた。
 月が一番よく見えるのがここの場所だ、と、木の根の壁の端に呼ばれた。

 二人で並んで座り、月を見あげる。

 本当にできるのだろうか。

 不安な香を勇気づけるように、ミロクが香の手をそっと取る。

「一緒に行こうね。香さん」
「………うん」

 香はうなずき、ミロクと向かい合わせになりミロクの両手を握ったまま、昨晩と同じように祈るようにオーラを放出した。



 金色のオーラが部屋中に広がる。
 すぐにミロクと香の体の力がぬけてその場に崩れ落ちた。
 それでも金色のオーラは消えず、部屋中を温かく包み込み続けている。

 クリスとイズミで即座に二人の体を横たわらせる。
 今回は昨晩とは逆に、香の右手側にミロクの体をおくようにした。


 異変はすぐに起こった。
 月明かりが急激に明るくなっていく。

 しかし、それは月明かりではない。


「わあ。月の女王が下りてくるんだよ!」

 小人たちが騒ぎ出す。
 昨晩と同じ、月に似て否なるもの、黄色い大きな球状のものが近づいてきている。


「では、月の戦士の皆さんも……」

 忍が言いかけたときだった。


「うわ!やっばいよ!リンクが来るっぽい!」
 見張りをしていたスタンが叫んだ。

「来るっぽいってなんだ!来るっぽいって!」
「だって近くにいる気配がするんだもん!」

 クリスのツッコミに、スタンがわーわーと答える。

「こんなオーラ全開にしてたら、この場所バレちゃうよ~!」
「入口は一つだ。入ってこようとしたら攻撃しろ!」
「オレの攻撃なんかじゃリンクに効かないよ~~」
「何でもいいから時間稼いでくれ!」

 クリスは言い捨てると、月状のものに向かってオーラを立ち昇らせた。
 白龍、イズミもそれに続く。

 そこへ……

「うわわわわっ気持ち悪いの入ってきたっ」

 スタンが悲鳴をあげる。
 人の手の形をしたものが、天井にへばりついている。
 リンクスが使役している「異形の物」だ。

 しかし、クリス・白龍・イズミはそちらに気を回している余裕はない。
 特に白龍とイズミは、香とミロクの魂の位置を把握しようと必死なので言葉を発することもできない。

 クリスがスタンを振り返り、

「とりあえず攻撃……」

「ダメ!僕たちの仲間だよ!」
「!」
 小人たちに叫ばれて、クリスが押し黙る。

しかし、

「うわっ落ちてきそうっ気持ち悪っ」

 小人たちとクリスの間の微妙な空気も読まず、スタンは叫ぶと、

「わーーやだーーー来ないでーーーっ」

 思いっきり天井に向かってオーラを放った。

 その時だった。

「なに?!」

 クリス、白龍、イズミが叫ぶ。忍が目を見開く。

「!!!」

 スタンから放出されたのは、鮮やかな真紅のオーラ。
 それが、クリスたちの放っているオーラと溶け合い、月状のものに向かって立ち上りはじめた。

「お前……っ」
 クリスが叫ぶ。

「お前、その赤のオーラ、まさか……」

「え?なになに? っていうか、なにこれ!止まらないんだけど!!」
 スタンが自らの手から流れでるオーラを見て驚きの声をあげる。


「やはり……君が本物の月の戦士だったんですね」

 冷静にいう忍の言葉に、一同、は?!と振り返る。

「やっぱりって……どういうことだよ!!」
 オーラを上に向かって放出しつつ、クリスが忍にがなりたてる。

「このタイミングで我々に同行すると言った人物だから、そうである可能性は高いと思っていたのです。予言は絶対ですから」
「………だからスタンの同行をあっさり許したのか」

 本当に食えない奴だよな……と心の中でつぶやくクリス。
 忍は穏やかな笑を浮かべながら続ける。

「スタン=ウェーバー君の出自については私も調査していたのですが、なかなか複雑で辿りきれず……」

「え~別に複雑じゃないよ~?」
 あっけらかんとスタンが言う。スタンから放出される赤いオーラは、天井のあたりでクリスの青・白龍の白・イズミの漆黒と混ざり合い、月状のものへと続いている。

「あのね~生まれてすぐ両親が離婚して、オレは父親に引き取られて、でも父親がすぐ死んじゃって、父親の再婚相手が育ててくれてたんだけど、その人に恋人ができたから施設に預けられて、そこで養子にしてくれるって人が引き取ってくれて、でもその人も無理ってなって、また別の施設に預けられて、そこでウェーバーさんが引き取ってくれたんだけど、ウェーバーさん死んじゃって、また別の施設に入って、それで……」
「……充分、複雑だぞ?」

 クリスが眉を寄せて言った、そのときだった。

 
「君はもしかして……マリアの弟じゃないか?」
「!?」

 驚いて振り向いた先には、悲しいオーラをまとったアーサーがいた。
 先ほど、香とクリスが落ちた方の穴から来たようだ。



--------------------------


どこで切ったもんかと悩んで、ここで切ってみた。


スタンのセリフの続きは、

それで、その施設がつぶれちゃって、別の施設にうつされて、そこの近所にリンクスが住んでて仲良くなっておうちに入り浸るようになって、3年前に突然超能力が芽生えてからは、リンクスの両親が家に引き取ってくれて、今年の夏休みに入ってからはリンクスと一緒に日本に住んでる。

ってことでした。


香の封印が、儀式をしたにも関わらず完全に解けきらなかった原因は、南の戦士が偽物だったからって裏設定(裏でもないか)があったんですね。
南の戦士が本物だったらならば、儀式後に封印は解けていたはず。

でも、きっと、香にとっては良かったんだと思う。
キョウコとヒトミの呪縛から解かれるためには、一度自分で正面から向き合わないといけなかったんだから。
向き合ったおかげで、香はクリスの協力のもと自ら封印を解きました。

昔、うまくいかなかった人とか、うまくいかなかったこととかに、いつまでも囚われていたらダメなんです。
今、一緒にいる人、今、自分を愛してくれている人、今、やろうと頑張っていること、そのことに目を向けないと。
過去は過去です。今は今です。

……なんて、何を熱弁ふるっているんでしょうか私。
いや、そこらへんちゃんと書いてなかったなあ……なんて急に思いまして;


さて。次で予言が成就します。たぶん。
頑張らないとだ!

次回は10月15日(水)に更新します。たぶん。
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月の女王-36

2014年10月10日 23時11分00秒 | 月の女王(要約と抜粋と短編)
 木の室から転がり落ちた香(ミロクの姿)。
 しかし、途中から何かに抱えこまれた感触があった。
 下まで落ちきってから、目を開けると……

「………クリス」
 当然のように、クリスの腕の中にいた。

「大丈夫か?!」
 心配そうにのぞきこんでくるクリスの瞳を見上げ……

 ムッとした。

「どうした?どこか打ったか?」
 オロオロというクリスを押しのけると、

「大丈夫。ありがとう」
 パタパタと体についた砂や木くずを払う。

 ここは木の根が作り出した、三畳ほどの狭い空間である。
 落ちた場所が違うのか、先に下りたはずの忍とミロクもおらず、イズミ・白龍・スタンも、香を突き飛ばしたアルもいなかった。

 不機嫌に木くずを払い続ける香に、クリスは心配そうに、

「どうしたんだよ? 本当はどっか痛いのか?」
「痛くない」
「髪にもついてる。ほら……」

 優しく頭をなでられるように木くずを取られ、香はムッとした顔のまま、クリスを見上げた。

「そうやって誰にでも優しいの、問題だと思う」
「へ? 」

 きょとん、とされ、香はぼそりと付け加える。

「自然に髪とか触るのも問題」
「………何の話だ?」
「………。何でもない」

 香の口はへの字のままだ。クリスは首をひねりひねり、

「オレ、別に優しくないぞ?」
「優しいじゃない。だからあんなに上手に編み込みもできたりするわけじゃない」
「………編み込み?」

 何のことだ? と頭をかしげるクリス。
 香は、大きく息をつくと、

「……ごめん。何でもない。早く行こう。そこ通れそうじゃない?」

 一か所だけ人が通れそうな隙間がある。香がクリスの前を通り過ぎようとすると、

「香」
 腕をつかまれた。ドキッとして立ち止まる。

「編み込みって……もしかして、カトリシアのことか?」
「…………」

 無視して行こうとするが、力強く掴まれていて進めない。

「もしかして……関係ない、とかいいながら……気にしてる?」
「…………」

 ゆっくりとクリスの方を振り向き……
 クリスの表情を見て、もーーーーーー!!と叫んだ。

「何なのよ!そのニヤけた顔はーーー!」
「え、だって……焼きもち……だよな?」
「ちーがーいーまーすーーーー!!」

 ギャアギャアと騒いでいるところに、

「いたいた二人。こっちにみんないるんだよ」

 隙間からアルが顔を出した。

「月が見えはじめたんだよ。月の女王がやってくるんだよ」



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短くてすみません。とりあえずここまでっ。
どうにか10日中に更新したかった。

はやくミロクとの入れ替わり、元に戻ってほしい。何もできやしないじゃないか(←何を?)


次は10月13日(月)体育の日、です。たぶん。
どこまで書けるかな~~。
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