ジェラシー

睡眠中に観る夢は現実とかけ離れたものであるから面白い

たまに現実と重なり、正夢などと言われることもあるが、殆どはSF大スペクタクル張りの意外なものである

いつかのテレビ番組で、夢は最初から最後までと言う連続したストーリーではなくて、突然その部分が始まるからその前後を覚えていないらしいのだが、人間の心理として起承転結であるはずだと思うのは当然のことだ


ある朝、朝食の最中に突然、妻が「悪い夢みた～」と言い出した

長女が「どんな夢？」と問うと、「爺ちゃんの浮気が発覚した夢、女の人を囲ってた」

そう聞いて私は思わず吹き出してしまった


何があったのか知らないが、凄い夢を観たもんだ

この歳になって女性を囲うなど、森進一の26歳下の恋人でも無かろうに

いくら夢だからと言っても迷惑な話だ

長女は「詳しく教えて」と訊いていたが、覚えていないらしい

前述の起承転結でなくてよかったと胸を撫で下ろした


囲っている女性が発覚して、子供でもいて、今更離婚だ結婚だなどの修羅場があったなどの展開にでもなればもっと機嫌が悪くなるに決まっている

妻はその変な夢の為に目覚めた所、丁度トイレで私とバッタリ会ったもんだから余計に現実味を増したようだ


一瞬で変な空気になった食卓を元に戻そうと、歯磨きしながら「婆ちゃんは爺ちゃんの事を嫉妬してくれてるんだねえ」と嬉しそうに話しかけた

すかさず、「爺ちゃんはこんな夢観たこと無いでしょう」とバッサリ切り替えされてしまった

「俺だってしょっちゅう観てるよ！」とも言えず、歯磨きと共に吐き捨てた


本当に迷惑な話である