「サレンダー」(豪)ソーニャ・ハートネット (訳)金原瑞人・田中亜希子 2008刊河出書房新社
サレンダーというのは犬の名前なのだが特に犬が主役というわけではない。
児童文学なのかヤングアダルト向けなのか、はたまた大人向けなのか・・・・。
ガブリエルとフィニガンという二人の少年が交代で語るという構成で物語は進行していく。
二人に共通の生き物がサレンダーという犬である。
冒頭から衝撃的な書き出し。
「ぼくは死にかけている(ダーイング)。美しい言葉。チェロの長くゆったりしたため息のようだ。」
・・・印象的な書き出しで始まる。回想と現実が入り乱れ、隠された過去の真実が本人によって暴かれていく。
児童文学にしてはかなり、強烈な内容でそこまで表現するかという感じもするが、微妙な人間の心の奥の決して見せたがらないものまで、見せようとする。
父と子、母と子、兄弟、親友、恋人、全ての関係に作者の心の揺らぎがみてとれる。
哀しくも怖い物語である。