カンチャン狂騒曲

日々の事をあれこれと、大山鳴動してネズミ1匹がコンセプト。趣味さまざまなどを際限なく・・。

ボリバル侯爵

2017-07-20 09:57:34 | 本と雑誌
 この頃図書館から借りる本と言えば、俳句・詩歌に関するものばかりだった。

 俳句の風景の捉え方や、ドラマ性溢れる短歌などは面白いし肩が凝らないし、川柳の作句のヒントにもなる。

 しかし時々は小説もいいかと、1冊だけ借りてきた。

 
 「ボリバル侯爵」レオ・ペルッツ(著)垂野創一郎(訳)2013・11kk国書刊行会(刊)

 いわゆる一気読みを促されるスト-リーが展開される。

 ナポレオン軍占領下のスペインのある地方都市を攻略するナッサウ・ヘッセン両連隊の将兵の物語で語り手はナッサウ連隊の少尉である。

 ゲリラ側の有力者ボリバル侯爵が指示した「三つの合図」が侯爵の死後も確実に実行されていく過程が主軸で、ナッサウ連隊の将校の私的な行動が横軸になっているが、横軸の方が断然面白い。

 ささやかと見える偶然の絡み合いで、三つの合図を招いてしまい連隊は崩壊する。

 最後に語り手自身によるどんでん返しがあるが、人の心理を問えばこれは超自然的でも何でもなく、気づかない小さな偶然の積み重ねから発生した結果でしかない、と言外にいっている。

 冒頭の語り手と最後の語り手の立場の矛盾は修正されないままだが、もしこの小説を幻想歴史小説というなら、このことを指してのことだろうと解釈する。

 作者のカトリック教への語り口は、優しさと辛辣さに溢れている。

 確かに中世ヨーロッパの宗教観が理解出来ていれば、更に面白味は倍加するだろうが、な~に分からずとも無理に労力を費やせずとも、御免オイラは日本教徒と読み飛ばしても物語は矛盾なく続いてくれる。

 行間の広さ、300ページ以下の長さ、テンポの良さ、ストーリーの卑近さ、どれも読むために準備されている。

 
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