五月十三日(火)雨後晴れ。
最近は、暇があると事務所で本の片づけをしている。過日、大磯の小早川貞夫先生の遺品として蔵書の整理をさせて頂いた折に事務所に持って来た分だけでも約二百冊。そして平澤次郎先生が田園に居することになり貴重な蔵書をご恵送頂いた。更に、野村先生の奥様から先生の蔵書を頂くなど、嬉しい悲鳴を上げている。しかし整理が追いつかないので、段ボール箱に入れたままであったそれらの本を系統立てて整理している。
それでも何と言ってもスペースは限られている。私の事務所は、まあ狭いか広いのか良く分からんが、そこに事務机を中心に印刷機が三台、それに丁合機(ちょうあいき・頁を揃える機械)、中綴じ機やパソコンなどがあって、さらに資料ロッカーが五つほどある。書棚が大小合わせて十二個。そこに野村先生関係の出版物、いわゆる在庫本と私の蔵書が「おしくら饅頭、押されて泣くな」と言った状態で、隙間がほとんどないくらいに置いてある。
意を決して、私の趣味の本などを段ボールに入れて、書棚を維新運動関係の本のみを入れることにした。まずは中国史関係のものを箱詰めして片づけたのだが、これが七箱にもなった。本をしまっている最中にも、あれっ、こんな本があったっけ。とつい読みふけってしまったり、家でもう一度ゆっくり読もうか、などと作業の手が止まってしまう。
ふと思い出したのが、「汗牛充棟」(かんぎゅうじゅうとう)の四字熟語。汗牛充棟とは「蔵書がきわめて多いことの形容。本が非常に多くて、牛車に積んで運ぶと牛も汗をかき、家の中に積み上げれば棟木(むなぎ)にまで届いてしまうという意味の言葉」。
事務所内を移動しているだけで牛ならずとも汗をかく。そう言えば名古屋の栗野成人さんが発行しているのが「牛喘通信」。これも同じで本を運ぶ時に牛が余りの重さで喘ぐことから来てる。
また、単に趣味のみで読んだ、集めた本は資料にならないので後輩に贈呈するものを仕分けしたり、涙を呑んで断舎利したりと悲喜こもごもが続いている。落ち着いたならば、蔵書のリストを作成するつもりでいる。
夜は、酔狂亭で筍、蕗、筋子で独酌。あーあ酒だけは避けられない。