四月十日(火)晴れ。
海外に出た時に、どんな本を持って行くかと聞かれたら、即答できる。野村先生の『銀河蒼茫』と『唐詩選』の二冊である。俳句や漢詩はいい。読んでいて、目の前にその景色が実感できるからである。といっても大陸に行ったのは上海だけだが、別離、望郷、左遷されて都落ちする嘆き…の凝縮された『唐詩選』を声を出して読んでいると、作者や対象人物の思いを実感できる。
町を歩いていると、すでに桜は散り、葉桜となった青が日に眩しい。野村先生の「葉桜の風の言葉は独り聴く」が好きだ。勝手な解釈だが、「一人」とせずに「独り」と書く所に、獄中の寂しさが感じられてならない。獄中では、ほとんどの場合「一人」ではなく「独り」なのだ。ゆえに一人の居房を「独房」と言う。
松山の刑務所施設である大井造船の作業所から脱走した受刑者が逃走を続けている。どんな理由で脱走したは分からないが、自由を求めたり、望郷の念にかられた、と言うのではないと思ってしまう。狭い日本に、そうそう逃げおおせる場所はない。多分、看守へのあてつけではないだろうか。脱獄王と言われ、吉村昭の『破獄』のモデルとなった白鳥由栄は、二十六年間もの服役中に四回の脱獄を決行、累計逃亡年数は三年にも及んだが、その脱獄のきっかけは看守との諍いにあり、その看守の当直の時をねらって決行したという。
松山刑務所から逃走した受刑者は、逃走用の車を拝借するときも「書置き」をするくらいだから、本気で逃げることよりも、看守に対する意趣返し、という意味合いが強いのではないだろうか。
久しぶりに禁酒。中々寝付けなかった。
海外に出た時に、どんな本を持って行くかと聞かれたら、即答できる。野村先生の『銀河蒼茫』と『唐詩選』の二冊である。俳句や漢詩はいい。読んでいて、目の前にその景色が実感できるからである。といっても大陸に行ったのは上海だけだが、別離、望郷、左遷されて都落ちする嘆き…の凝縮された『唐詩選』を声を出して読んでいると、作者や対象人物の思いを実感できる。
町を歩いていると、すでに桜は散り、葉桜となった青が日に眩しい。野村先生の「葉桜の風の言葉は独り聴く」が好きだ。勝手な解釈だが、「一人」とせずに「独り」と書く所に、獄中の寂しさが感じられてならない。獄中では、ほとんどの場合「一人」ではなく「独り」なのだ。ゆえに一人の居房を「独房」と言う。
松山の刑務所施設である大井造船の作業所から脱走した受刑者が逃走を続けている。どんな理由で脱走したは分からないが、自由を求めたり、望郷の念にかられた、と言うのではないと思ってしまう。狭い日本に、そうそう逃げおおせる場所はない。多分、看守へのあてつけではないだろうか。脱獄王と言われ、吉村昭の『破獄』のモデルとなった白鳥由栄は、二十六年間もの服役中に四回の脱獄を決行、累計逃亡年数は三年にも及んだが、その脱獄のきっかけは看守との諍いにあり、その看守の当直の時をねらって決行したという。
松山刑務所から逃走した受刑者は、逃走用の車を拝借するときも「書置き」をするくらいだから、本気で逃げることよりも、看守に対する意趣返し、という意味合いが強いのではないだろうか。
久しぶりに禁酒。中々寝付けなかった。