白雲去来

蜷川正大の日々是口実

恍惚と寒し青夜のもがり笛。

2024-12-28 16:26:28 | 日記

12月27日(金)晴れ。

野村先生の獄中句集『銀河蒼茫』の中の「冬の部」に「恍惚と寒し青夜のもがり笛」という句がある。厳寒の夜空を、風がヒューヒューと音を立てて渡ることのたとえである。わが陋屋(ろうおく=むさくるしい家)は、建物の関係か風の通り道となっており、少しの風が吹いても風音が気になって仕方がない。有難いことに、周りは建売の住宅が多いせいか、風が通る音だけしか聞こえないが、一昔前ならば、竹でや丸太で組んだ垣根などに当たって、まるで笛を吹くような音が聞こえたものだ。この音を「虎落笛(もがりぶえ)」と呼ぶことを知ったのは大人になってから。

「虎落」の「もがり」とは、竹を筋違いに組み合わせた冊のことを言う。語源は、大昔は、人が死ぬと、その屍(かばね)を一定期間据え置いたと言う。その仮の葬儀場を囲む柵のことを「もがり」と呼んだそうだ。それがなぜ「虎」の字に当てられたのかは、不明である。(私が知らないだけなのかもしれない)この虎落笛の音は、「鳴る」よりも「唸る」という形容の方がふさわしい。「風が唸る」。人生も下り坂になると「風の音」にも様々な想いが巡る。

昼は、高校の同級生のY氏、昨年仕事を引退したI氏と共に関内の「橘」という小料理屋さんでランチ。三人で会うのは久しぶりの事だ。当然ながら三人とも古希を過ぎているので病気の話や、久しく会っていない友人、知人の消息などの情報交換。「亡くなった」方が多くて歳月の流れを実感する。送って頂き帰宅。お世話になりました。夜は、これまた久しぶりに、自宅近くのお好み焼き屋の「つるや」で一杯。最近は、座敷の席が辛い。長い時間座って居られないのだ。日本の伝統文化を守れなどと言いながら、我ながら情けない。

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