[あらすじ] 自宅に、端渓が有った。
まあ、そういえば、知っていた気はする。
以前、見たことが有る気はする。
けれど、その頃は書なんかやっていなかったし、
硯?へー。という程度の気持ちでしか見なかったのだろう。忘れていた。
祖父のこういった遺品は、てっきり、祖母が最後に住んだ大阪の家に在るのだと思っていた。
紫檀の箱を開くと、灰色の硯が収まっていた。
硯に合わせて作ったのだろうか、ぴったり嵌まっている。
硯の池んところに、梅の枝が伸びて咲いている。
横には鶴がいる。
うぇー、これじゃ墨を洗うのたいへんだし、
実用じゃなくて観賞用なんじゃないかな?
そもそも本当に端渓なのか?
まあ、ウチに端渓など有るのは、祖父の物に違いないが、
いつ手に入れたとも知れない。
ちょっと調べてみると、硯にはサイズの規格が有る、ということが分かった。
まあ、そりゃそうだな。
同じサイズに四角く切り分けて作業するのが効率的だ。
そして、その規格は日本と中国とでは異なるということだ。
ふむ。では、この硯がウッカリ日本規格サイズだったりしたら、
明らかにドッチラケだな。
測ってみると、硯は182×116㎜。
日本の規格で近いのは大四六の180×120㎜、
中国の規格で近いのは175×115㎜か。
どうとも取れるな。
測るためにいじくり回していたら、
紫檀(ということにしておく)の箱から硯が外れた。
裏は平らで、松と竹の彫刻がしてある。
そりゃそうだ。両面に池を穿ったら穴あいちゃう。
紫檀に硯を戻そうとするが、入らない。ゲ?
二面が入れ違いになっていたようだ。
入れ替えても入らない。ゲ?
上下が逆さになっていた。
なるほど、この箱にはこの硯がぴったり収まるようになっているのか。
ずいぶん精巧だな。
しかしこれ、書を始めて一年やって半年ほとんど書いていない
私のような者が、墨をこれで磨ってみて良いもんだろうか。
かなり白っぽい石で、磨り心地には興味がある。
書道の先生やっている友達に見せびらじゃない相談してみよう。
つづく
まあ、そういえば、知っていた気はする。
以前、見たことが有る気はする。
けれど、その頃は書なんかやっていなかったし、
硯?へー。という程度の気持ちでしか見なかったのだろう。忘れていた。
祖父のこういった遺品は、てっきり、祖母が最後に住んだ大阪の家に在るのだと思っていた。
紫檀の箱を開くと、灰色の硯が収まっていた。
硯に合わせて作ったのだろうか、ぴったり嵌まっている。
硯の池んところに、梅の枝が伸びて咲いている。
横には鶴がいる。
うぇー、これじゃ墨を洗うのたいへんだし、
実用じゃなくて観賞用なんじゃないかな?
そもそも本当に端渓なのか?
まあ、ウチに端渓など有るのは、祖父の物に違いないが、
いつ手に入れたとも知れない。
ちょっと調べてみると、硯にはサイズの規格が有る、ということが分かった。
まあ、そりゃそうだな。
同じサイズに四角く切り分けて作業するのが効率的だ。
そして、その規格は日本と中国とでは異なるということだ。
ふむ。では、この硯がウッカリ日本規格サイズだったりしたら、
明らかにドッチラケだな。
測ってみると、硯は182×116㎜。
日本の規格で近いのは大四六の180×120㎜、
中国の規格で近いのは175×115㎜か。
どうとも取れるな。
測るためにいじくり回していたら、
紫檀(ということにしておく)の箱から硯が外れた。
裏は平らで、松と竹の彫刻がしてある。
そりゃそうだ。両面に池を穿ったら穴あいちゃう。
紫檀に硯を戻そうとするが、入らない。ゲ?
二面が入れ違いになっていたようだ。
入れ替えても入らない。ゲ?
上下が逆さになっていた。
なるほど、この箱にはこの硯がぴったり収まるようになっているのか。
ずいぶん精巧だな。
しかしこれ、書を始めて一年やって半年ほとんど書いていない
私のような者が、墨をこれで磨ってみて良いもんだろうか。
かなり白っぽい石で、磨り心地には興味がある。
書道の先生やっている友達に見せびらじゃない相談してみよう。
つづく
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