一昨年の今日、2005年3月1日に私は春風に誘われるようにシチリアに向かった。その旅の紀行文『シチリア紀行』の序文を、
「ニーノよ 明日はパレルモだ!」(ガリバルディ)
--序にかえて
というテーマで書いた。思い出して開いてみると、
「1860年5月11日、貴族政治打破、共和制樹立によるイタリア統一を目指したガリバルディは、シチリアの西端マルサーラに上陸、そこで体制を整えいよいよ州都パレルモに攻め入る前夜、腹心の部下ニーノに呼びかけた言葉がこれである。この雄姿を、義勇兵としてガリバルディに仕え彼を愛してやまなかった彫刻家ヴィンツェンツォ・ラグーザが描いて、その彫像がパレルモ市のイギリス公園に建っている。ガリバルディにとって、イタリア統一の端緒を開くパレルモ攻略は、どんなに夢多き事業であっただろうか? 『ニーノよ明日はパレルモだ!』という言葉には、ガリバルディの心の躍動感がほとばしっている」
という書き出しだ。そのあと、ヴィンツェンツォの妻である日本人ラグーザ・お玉(清原玉)のことなどに触れ、夫妻の絵画や彫刻を観る楽しみを書き継ぎ、序文の最後を次の言葉で結んでいる。
「2月26日、東京には春一番が吹いた。南イタリアを連想させるような生暖かい突風が、少なくなった私の白髪を巻き上げ、北西の空へ吹き去った。これに導かれるように、私は初めてのシチリアへ旅立った。
--『和弘よ 明日はパレルモだ!』--」
春 三月・・・毎年、一番希望に胸ふくらます時節である。